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2018年の政府見解、なぜ必要だったのか~「安倍政治」総括にもかかわる日本学術会議の6人非任命

 前回の記事の続きです。日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人が菅義偉首相から任命されなかった問題に対し、菅政権は詳しい説明を避けています。手続き論についても、加藤勝信官房長官が5日の記者会見で、日本学術会議法の解釈変更はしていないと述べ、6日には、政府が野党に対し、首相が会議の推薦通りに任命する義務はないとの見解をまとめた2018年11月13日付の文書を公開したと報じられています。

※47NEWS=共同通信「加藤官房長官、法解釈変更せず/学術会議、新会員候補の任命拒否」2020年10月5日
 https://this.kiji.is/685701175415161953

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※47NEWS=共同通信「政府、任命拒否へ内部文書/秘密裏に作成、公表せず」2020年10月6日
 https://this.kiji.is/686159541324727393

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 このブログの前回の記事で触れた通り、1983年当時に政府は「形式的に任命行為を行う」と明言しています。今回は形式的な任命ではなく、6人を除外するという政権の判断が加わったのですから、法解釈に変更があったと受け止めるのは、ごく自然なことだと思うのですが、菅政権の主張は理解できません。
 ただ、はっきりしたのは、2018年11月当時の政府見解がこれまで公表されることなく、その経緯についても政府は説明していない、ということです。仮に法解釈の変更ではないとしても、1983年当時の国会答弁を踏まえれば、変更ではないということが極めて分かりにくい(というか、わたしには理解できないのですが)のは明らかですから、何らかのアナウンスがあって然るべきだったと思います。
 2018年当時は安倍晋三政権で、菅首相は官房長官でした。国会にも報告することなく、法の解釈を政府内だけでいじって、自らの行為が正当であることの理由にするその手法は、東京高検検事長の定年延長問題と同じ構図です。日本学術会議の会員候補6人の任命拒否自体は菅首相の判断だとしても、2018年当時の経緯まで踏まえれば、この問題は「安倍政治」に起源があると言えます。菅政権が「安倍政治」を引きずっていることをあらためて見せつけられている気がしますし、「安倍政治」をどう総括するのか、ということも問われるように思います。
 2018年当時の政府見解については、安倍政権下でどのような必要があってこの見解をまとめたのか、は重要なポイントだと思います。菅政権が説明を拒むのであれば、事実として追求するのはマスメディアのジャーナリズムの役割だと思います。