ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「辺野古新基地に自衛隊常駐を極秘合意」沖縄タイムスと共同通信が合同取材~新基地の位置付け明確に

 1月25日付の沖縄タイムスに、陸上自衛隊と米海兵隊が、辺野古新基地に陸自の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させることで2015年、極秘に合意していたことが分かった、との記事が掲載されました。「沖縄タイムスと共同通信の合同取材に日米両政府関係者が証言した」とのことです。共同通信からも同趣旨の記事が配信されており、沖縄のもう一つの地元紙、琉球新報をはじめ全国の地方紙に掲載されました。
 沖縄タイムスの記事はネットで読めます。
 ※沖縄タイムス「辺野古の新基地に自衛隊を常駐 海兵隊と自衛隊のトップが極秘合意」=2021年1月25日
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/697461

www.okinawatimes.co.jp

 辺野古新基地について、日本政府は米軍が使用すると説明してきています。しかし、記事では「政府内には陸自常駐が表面化すれば沖縄の一層の批判を招くとの判断があり、計画は一時凍結されている」としています。実際は辺野古新基地で日米の軍事組織の一体化が進み、仮に米海兵隊の駐留が縮小、撤退となっても、自衛隊が米軍の役割を補完することになります。辺野古新基地の位置付けが、従来の日本政府の説明とは異なることを明らかにした報道として、意義は大きいと思います。
 沖縄タイムスはサイト上で「沖縄タイムスと共同通信が初の合同取材」のサイド記事も掲載し、取材、報道の経緯を説明しています。マスメディアの取材、報道の新たな試みとしても、取材の経緯の開示という意味でも意義があると思います。

 陸自と米海兵隊の極秘合意に対して、琉球新報は25日付で、沖縄タイムスも26日付でそれぞれ社説で取り上げています。地域の住民が自分たちの未来を自分たちで決めることができるのかどうか。沖縄には自己決定権がないことを、日本本土に住む日本人、主権者はどう考えるのかが問われています。

 ※琉球新報「シュワブ共同使用合意 文民統制逸脱する暴挙だ」
  https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1261432.html

 そもそも南西諸島への自衛隊配備強化は沖縄にとって新たな基地負担となっている。県内の自衛隊施設面積は18年現在で、沖縄の日本復帰時の約4.3倍に上っており、先島などへの陸自配備が進めば、さらに拡大する。
 政府が言う「沖縄の基地負担軽減」はもはや絵空事である。キャンプ・シュワブでは、政府が新基地建設を強行している。県民投票で投票者の7割が埋め立てに反対し、軟弱地盤のある大浦湾側で着工の見通しも立っていないにもかかわらずにだ。
 辺野古新基地は将来、陸自基地になると陸自幹部は見込む。文民統制を逸脱した合意によって、先の大戦のように沖縄に犠牲を強いることは決して許されない。軍部の暴走を許した昭和史が沖縄戦の悲劇を招いたことを忘れてはならない。沖縄が戦後76年間も過重な基地負担を押し付けられ、危険と隣り合わせの環境に置かれることを拒否する。

 ※沖縄タイムス「[辺野古に陸自部隊]軍事要塞化を拒否する」
  https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/697914 

 負担軽減の掛け声とは裏腹に、宮古・八重山、沖縄本島、奄美に至るまで軍事化が急速に進む。
 懸念されるのは沖縄が戦場になることを前提にした作戦計画が立てられ、訓練が重ねられていることだ。
 昨年11月、徳之島で行われた大規模な訓練は、同島の防災センターを「野戦病院」と位置付けた戦時の医療訓練だった。
 離島が戦場になったとき、住民にどのような事態が起きるか。戦傷者の発生を想定した何とも生々しい訓練は、沖縄戦の女子学徒隊を想起させるものがある。
 沖縄戦で起きたことを沖縄の人々は戦後76年たっても忘れていない。私たちは沖縄が戦場となることを前提にした軍事要塞化に反対する。
 軍事力偏重の安全保障政策は他国との緊張を高め、思わぬ事態を招きかねない。
 沖縄の歴史経験を真に生かすことができるかどうかが、切実に問われている。