批判高まるバッハ会長~組織委のサポートはあるのか

 7月23日の東京五輪開幕まであと5日です。米紙ワシントンポストが早くも「失敗」と指摘している、との記事が目に止まりました。
 ※東京新聞(共同通信)「『東京五輪は完全な失敗』『国民の熱気は敵意に』」と米紙ワシントン・ポスト」=2021年7月18日
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/117569

 【ワシントン共同】米紙ワシントン・ポスト電子版は17日、開幕を23日に控えた東京五輪について、これまでのところ「完全な失敗に見える」と指摘し、1964年の東京五輪のように日本に誇りをもたらすことは期待できないと伝えた。新型コロナウイルス流行の影響で国民に懐疑論が広がり、当初の五輪への熱気は敵意にすら変わっていると報じた。

 コロナ禍の中で日本社会では人々が我慢を続けているのに、こと五輪に関連することに限っては特別扱いなのか、との疑問と不満が高まっていることは、わたしは実感としても理解できます。東京では、感染拡大抑制のために緊急事態宣言などの措置を取りながら、五輪関連のスケジュールに合わせるように、中途半端な状態で解除し、短期間でまた宣言発令に追い込まれていました。背景の要因としては、そうしたことも大きいのだと思います。
 そして、ここにきて顕著になってきたのが、IOC(国際オリンピック委員会)とバッハ会長に対する批判の高まりだと感じています。日本の新聞各紙の社説、論説でこの数日、バッハ氏に言及したものがいくつか目に付きました。

【7月18日付】
▼西日本新聞「五輪の感染対策 選手包む『バブル』に懸念」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/772048/

 開会が近づいても五輪の感染対策は問題点が尽きない。関係者の多くが認識しているはずだが、そうでもない人がいる。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長である。
 先日、小池百合子東京都知事との会談で「日本の皆さんのリスクはゼロ」と語った。菅義偉首相には、感染状況が改善した場合は観客を入れるように検討を求めたという。新型コロナの現状に対して、あまりに無自覚な発言ではなかろうか。
 東京や全国の事前合宿地で感染防止に尽力している人たちがいる。一方で、主催組織のトップがこうした発言をするようでは五輪への不信を招くだけだ。

【7月17日付】
▼産経新聞「五輪の感染対策 ルール順守を徹底させよ」
 https://www.sankei.com/article/20210717-M5FQDFXG4JPZLPC7YKKABBBFD4/

 日本人へのリスクについて、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は「ゼロ」と明言したが、不用意に過ぎる。ワクチン接種の遅れに加え、多くの外国人が来日することを不安視する国民は多い。自身の発言が五輪への賛同を妨げていることを、そろそろ自覚してはどうか。

 ※産経新聞社は大会の公式スポンサーです。

▼信濃毎日新聞「感染再拡大 不信感が覆うままでは」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021071700073

 期間中であっても中止する際の基準を明示すべき局面なのに、国際オリンピック委員会のバッハ会長は、菅首相との会談で「感染状況が改善したら観客入りを検討してほしい」と口にしている。
 首相は、大会に関わる5者協議で対応を検討するとだけ説明したとされる。この期に及んでも最悪の事態を想定しない。認識の甘さと無責任さが際立つ。

【7月16日付】
▼中国新聞「バッハ氏の広島訪問 核廃絶誓う気あるのか」
 https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=773414&comment_sub_id=0&category_id=142

 バッハ氏の広島訪問中止を求める市民のネット署名も広がっている。反対の声を押し切ってまで来るなら、核が人類にもたらした悲惨から目をそらしてはならない。今後は、核保有国では五輪を実施しないと、被爆地で明言するくらいの覚悟があってもいいはずだ。巨大ビジネスと化した五輪を、真に「平和の祭典」に変えることを、被爆地で誓ってほしい。
 核兵器廃絶について踏み込んだ発言をできるのか、被爆地訪問を今後の五輪運営にどう生かすのか。被爆地の内外で、核なき世界を求める人々が、厳しい視線を注いでいることを、忘れてはならない。

 バッハ氏の広島訪問は、わたしも疑問を持っています。被爆者の最大の願いは「核の廃絶」です。広島で核兵器廃絶について踏み込んだ発言を避けたことは、被爆地と被爆者の国際的な知名度を、五輪の「平和の祭典」のイメージに利用しただけであると受け止められても仕方がないように思います。

 18日夜には、東京・迎賓館でバッハ氏の歓迎会も開かれました。菅義偉首相や橋本聖子・大会組織委会長のほか、森喜朗・前組織委会長まで参加したと報じられています。東京は緊急事態宣言下にあり、都民には会合の自粛が呼びかけられているさなかです。飲食を伴わない形であれ、到底、理解を得られるものではないように思います。
※毎日新聞「バッハ会長ら40人招待 迎賓館で歓迎会 菅首相、森喜朗氏ら参加」=2021年7月18日
 https://mainichi.jp/articles/20210718/k00/00m/040/171000c

 バッハ会長は「われわれはゲストでしかない」と述べ、橋本会長は「延期前から決まっていたこと」「十分な対策は取っている」と述べたとも報じられています。日本社会の民意との乖離は驚くばかりです。

 バッハ氏が批判の対象になっていることに対しては、バッハ氏だけの責任でもないのかもしれません。本人は、批判されていること自体を認識できておらず、いわば善意で、自らの仕事をただ熱心に進めようとしているだけなのかもしれません。いずれにしても、大会組織委員会やJOC(日本オリンピック委員会)のサポートが不可欠のはずです。ただでさえこの時期の開催強行に厳しい見方が多数を占めている日本社会の世論を踏まえて、少なくとも反発を増大させるような言動は避けるよう、バッハ氏に具体的に助言をするべきだろうと思います。迎賓館での歓迎会などは、組織委やJOCの判断で中止を決めることがあっても良かったのではないでしょうか。そういう意味でも、組織委はその負っている責任を果たしているのか、果たせる状況にあるのか、はなはだ疑問に感じています。

 これは想像するしかないのですが、橋本会長やJOCの山下泰裕会長では、バッハ氏に直言などとてもできない、ということなのでしょうか。辞任した森前会長なら、バッハ氏とも対等に話すことができたのでしょうか。そう考えると、組織委関係者の間で森前会長の評判が良かったという理由が分かるような気がします。

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 ※7月16日~18日付の新聞各紙の社説、論説は以下の記事に追記しました。

news-worker.hatenablog.com