「後手後手」「独善」の菅政権の「入院制限」~フェーズの変化にメディアは対応しているか:東京五輪・在京紙の報道の記録⑨8月4日付

 東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)が東京五輪をどのように報じたかの記録です。各紙の朝刊1面が中心です。

【8月4日付】
 8月3日に発表された新型コロナウイルスの新規感染者は、東京都は3709人、全国では1万2千人を超えました。4日は東京都では過去最多を更新して4166人。計14都府県が最多を更新し、感染者急増の範囲が東京から地方へとこちらも急速に拡大しています。コロナ禍は新たな、かつ深刻な事態に進んでいます。

■デルタ株の評価を誤った責任
 政府が2日に打ち出した「入院制限」の方針に対しては3日、全国知事会からも異論、疑問が相次ぎ、4日の国会審議では与党の公明党からも疑義が示されました。また、事前に政府の対策分科会の尾身茂会長に相談していなかったことも判明しました。田村厚労相は、中等症でも呼吸管理が必要な患者を入院させずに自宅に戻すことはないなどと釈明。「フェーズが変わってきており、関西での4月、5月の急激な感染増加では、本来は病院に入らなければいけない人が『ベッドがない』ということで対応できないという問題があった。一定程度、ベッドに余裕がないと、そういう人たちを急きょ搬送できないので、重症化リスクの比較的低い人に関しては、在宅で対応することを、先手先手で打ち出させていただいた」(NHKニュースより)と強調したとのことです。
 ※NHK「“自宅療養を基本 病床確保する必要 理解を” 田村厚労相」
  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210804/k10013180001000.html

www3.nhk.or.jp

 果たして「先手先手」なのでしょうか。十分に予測できたはずなのに、変異種デルタ株の感染力の強さを過小評価したために、医療態勢を拡充強化することもできた時間を無駄に失ったばかりか、東京五輪という巨大イベントを民意の反対を押し切って強行し、そこに多くの社会資源を注ぎ込んだ挙げ句に、その五輪期間の真っただ中で、感染者の爆発的な増加を招いているのが現在のありさまです。わたしには、菅政権はこの惨状に対してなすすべもなく、中等症以下の患者が医療から放棄されるリスクを多分にはらんだ「入院制限」に追い込まれたように見えます。まさに「後手後手」です。
 「フェーズが変わった」と判断し、ほかに打つ手がないのであれば、菅首相と政権はまずはデルタ株に対する評価を誤ったことを認め、責任の所在をはっきりさせることから始めるべきです。しかし実際は、感染症の専門家や医療界との事前の協議もなく、与党内ですら根回しがなかったことが明らかになりました。「独善」という言葉が頭に浮かびます。

■フェーズは変わったのに五輪は続行しかないのか
 4日付の東京発行新聞各紙のうち、「入院制限」を社説で取り上げたのは朝日、毎日、読売、産経の4紙ですが、総じて甘さ、緩さが目立つと感じました。
・朝日新聞「入院方針転換 『自宅急変』に備え急げ」
  https://www.asahi.com/articles/DA3S14998988.html
・毎日新聞「コロナの入院制限 患者切り捨てにならぬか」
  https://mainichi.jp/articles/20210804/ddm/005/070/112000c
・読売新聞「コロナ自宅療養 症状の急変に対応できるのか」
  https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210803-OYT1T50465/
・産経新聞「コロナの新治療薬 在宅患者向けにも工夫を」
  https://www.sankei.com/article/20210804-PFQKZTBPAVOM5KOMLSVP6QZ7JA/

 朝日は冒頭部で「限られた医療資源を、病状が厳しい人から割り当てていく考え方自体は理解できる」としていますが、これは一般論です。本質は、どうしてここまで追い込まれたのかのはずです。「楽観論を振りまいてきた首相や小池百合子都知事の責任は重い」としていますが、全体として甘い、手ぬるいと感じます。毎日も「より症状が重い患者のために病床を空けるのが目的というが、課題が多い」と課題列挙に重心を置いています。悠長さを感じざるを得ません。
 むしろ何かと政権擁護が目に付く読売が今回は「病床確保の重要性は、以前から指摘されてきた。これまでの政府や自治体の取り組みが不十分だったのは明らかである」と、読売としては最大級の表現で政権を批判していることが目を引きました。産経の論点は新治療薬です。

 新型コロナウイルスを巡って、確かにフェーズは変わりました。東京は危機的な状態です。それなのに、新聞を手に取れば、目に入ってくるのは日本選手のメダル獲得の大きな記事に大きな写真という状況は、例えば後世の研究者の目にはどのように映るでしょうか。
 五輪期間中、ネットで読める限りですが、地方紙も含めた新聞各紙の社説、論説のチェックを続けています。4日付では、五輪の打ち切りに言及したのは琉球新報のみ。それも間接的な表現でした。 

news-worker.hatenablog.com

 4日は五輪に参加していたギリシャ選手団のうち5人のコロナ感染が確認され、大会組織委員会もクラスターと考えざるを得ないことを認めました。開会から2週間。当初からバブルの破たんは指摘されていました。
 この状況に至っても、菅政権には大会打ち切りのオプションはないのでしょうか。それを問えないマスメディアは、後世の歴史の検証に耐えられるでしょうか。

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 以下、4日付在京各紙の1面記事の記録です。
▼朝日新聞
①「入院制限 基準明示を要請/知事会、政府に リスク見極め課題/首相『有疾患の方は入院』」
②「橋本『金』体操・鉄棒」/「延期に悩んだ入江、奮起の『金』/ボクシング女子初」
表・全国高校野球選手権・組み合わせ決定
▼毎日新聞
①「知事会長『客観的基準を』/自宅療養 批判と混乱 新型コロナ」
②「ボクシング入江が金/体操 橋本2冠」/「女子初 環境改善で躍進」
③「国会の不作為『違法』/旧優生保護法 違憲4件目 神戸地裁」
▼読売新聞
①」「入江『金』/ボクシング女子初」「橋本2冠 鉄棒『金』」」/「サッカー決勝ならず」
②「吉川元農相 無罪主張/初公判 収賄の認識 否定 鶏卵汚職」
③「アストラ製 宣言地域優先/6都府県 ワクチン配分 16日から」
▼日経新聞
①「三菱ケミ、米で1000億円投資/日本企業『バイ・アメリカン』念頭/対米投資、1~3月4割増」
②「円安頼み『貧しい日本』生む/円の実力、48年前に逆戻り」通貨漂流 ニクソン・ショック50年(3)
③「『疾患ある患者は入院』/在宅療養の中等症巡り 首相表明」
④「体操・橋本2冠/ボクシング入江『金』」
▼産経新聞
①「橋本2冠/体操・鉄棒 内村からバトン 着地で魅了/入江『金』ボクシング女子初/卓球女子団体 決勝へ」
②「自宅療養でも『適切医療』/新方針説明 首相、医師会に要請」
▼東京新聞
①「一家感染 症状も悪化/自宅療養 増すリスク/入院に5日『追い詰められる』」/「急変や重症化 対応できるのか/在宅中の中等症患者 保健所が観察」/「高齢者も自宅療養の可能性 厚労相」