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思惑外れた菅首相、世論からは「ダメ出し」~東京五輪・在京紙の報道の記録(番外)8月10日付

 東京五輪閉会から1日過ぎて、東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)の紙面がそれぞれに興味深かったので、番外編としてもう1日、記録を書きとめておきます。

【9月10日付】
 ■バブル崩壊
 1面トップに東京五輪を持ってきたのは毎日新聞、読売新聞、産経新聞の3紙です。
 毎日新聞は、選手村の新型コロナウイルス感染対策に焦点を当てたルポ風の記事です。見出しは「スーパーに五輪選手/買い出し 市民出待ち バブル壊れ」。大会終盤、選手村の近くのスーパーやコンビニでは、首に大会参加資格証を下げた外国人選手らが次々に買い物に訪れていた様子を写真付きでリポートしています。選手村のゲート前では、日本人の親子らの人だかり。選手とハグしたり、肩を寄せて写真を撮ったりしていたとのことです。「バブル方式」の実情を記録に残すリポートです。閉会式翌日の9日、ポロシャツ姿で銀座を歩くバッハ・IOC会長の写真も掲載しました。
 読売新聞と産経新聞は検証企画の初回を掲載しました。主見出しは読売が「五輪の意義 選手が体現」、産経は「団結生んだコロナ禍の闘い」。それぞれ、コロナ禍の中での選手たちの活躍を好意的に振り返っています。大会期間中、読売新聞と産経新聞は日本選手のメダル獲得を大きく報じるスタンスが他紙と比べて突出していました。

 ■菅首相にダメ出し
 10日付の読売新聞は1面準トップで7~9日に実施した世論調査の結果を報じています。菅義偉内閣の支持率は、前回7月調査から2ポイント減の35%で、発足以来の最低を更新しました。不支持率は54%。五輪開催に対しては、「よかったと思う」が64%に上り、「思わない」28%を大きく上回りました。
 10日夜にはNHKの世論調査結果も報じられ、菅内閣の支持率は29%と、やはり発足以来最低を更新。五輪開催には「よかった」26%、「まあよかった」36%、「あまりよくなかった」18%、「よくなかった」16%でした。
 前日報じられた朝日新聞、JNNの各調査も含めて①五輪開催に高い評価②菅内閣支持率は発足以来最低―の傾向は一致しています。
 菅首相は何が何でも五輪を成功させ、それをてこに政権浮揚を図り、党総裁選、衆院選に勝利することを狙っていると、繰り返し報じられてきました。開催前と比べて五輪自体は好評価に転じましたが、それが内閣支持率に結び付いていないことがはっきりしています。

 読売新聞は10日付朝刊の総合面で「五輪で政権浮揚 不発/首相の解散戦略に暗雲」との見出しを立てています。一方、産経新聞は総合面では「首相 薄氷の五輪成功/迷走続き政権浮揚は限定」と、読売新聞とはちょっとニュアンスが異なっています。
 読売新聞の世論調査結果によると、菅首相にどれぐらいの期間首相を続けてほしいかを尋ねたところ、「すぐに交代してほしい」18%、「今年9月の自民党の総裁任期まで」48%なのに対し、「1、2年くらい」21%、「できるだけ長く」8%でした。また、自民党の政治家の中で次の首相にふさわしいと思う人のトップは石破茂氏で19%。次いで河野太郎氏18%、小泉進次郎氏17%の順ですが菅氏はわずか3%でした。朝日新聞の調査でも、秋の自民党総裁選で菅氏が再選され、首相を続けてほしいと思うかを尋ねた質問では、「続けてほしい」25%に対し「続けてほしくない」は60%に上りました。国民の間に、菅首相へのダメ出し機運が醸成されていることがうかがえます。

※以下、各紙の1面掲載記事の記録です
▼朝日新聞
①「『最後の被爆地に』長崎の決意/核禁条約 首相また触れず/原爆投下76年」/「『ダメだ、ダメだ』言い続ける 平和宣言に引用の手記」
②「20年以内 1.5度に上昇/IPCC報告書 対策した場合も」
▼毎日新聞
①「スーパーに五輪選手/買い出し 市民出待ち バブル壊れ」「バッハ会長 銀座を散策」/「『また会いましょう』続々出国」
②「長崎『被爆体験者救済を』/市長訴え 76回目 原爆の日」
▼読売新聞
①「五輪の意義 選手が体現/政府と都 丁寧な説明欠く/立ち向かう姿 共鳴」検証Tokyo2020+(1)
②「内閣支持最低35%/五輪開催『よかった』64% 本社世論調査」
③「気温『21~40年に1.5度上昇』/IPCC 温暖化対策講じても」
④「長崎 刻む記憶 原爆の日」
▼日経新聞
①「気温1,5度上昇 10年早く/IPCC報告『21~40年に』/パリ協定 達成難しく」
②「ワクチン誤情報拡散/29のSNS投稿→転載5万件/接種進展 阻害も」データの世紀
③「長崎76回目『原爆の日』」
④「日本企業M&A最多/1~6月2128件 東証再編に備えも」
▼産経新聞
①「団結生んだコロナ禍の闘い/感染抑制策 世界の羅針盤に」TOKYO2020+1 時代への教訓
②「コロナ厳格措置 見直し/厚労省着手 感染症法扱い 緩和も」
③「長崎原爆76年 核廃絶祈り」
▼東京新聞
①「愛されたハギー 核の犠牲/ヒロシマ出撃 現地で捕虜に/廃絶願う娘『世界は何を学んだ』」原爆で死んだ米兵 遺族の証言 (上)
②「核禁条約『世界のルールに』/被爆地訴え 首相は応じず 長崎原爆の日」つなぐ 戦後76年