コロナ死者1万7千人超、在宅死続出に、総裁選候補者は当事者意識があるだろうか~宝島社が今度は“見殺し”広告

 出版社の宝島社が、9月22日付の朝日新聞、読売新聞、日経新聞の各朝刊に、見開き2ページ前面を使った企業広告を出稿しました。放り出されたようなクマのぬいぐるみと、新型コロナウイルスとおぼしき赤い球体。「国民は、自宅で見殺しにされようとしている。」との大きめの活字の後に、小さな文字列が以下のように続きます。
 「今も、ひとりで亡くなっている人がいる。/涙がでる。/怒りと悲しみでいっぱいになる。/この国はいつから、こんなことになってしまったのか。/命は自分で守るしかないのか。」 ※「/」は改行
 宝島社の公式サイトには、広告意図が掲載されています。

 新型コロナウイルスによる医療逼迫が起きました。
 新規感染者は減少しているとも言われますが、
 いまも十分な治療を受けられないまま、亡くなるかたもいます。
 信じられないことですが、これは現実です。
 こうなる前に、できることはなかったのでしょうか。
 今後、再び感染が拡大した時の対策は、講じられているのでしょうか。
 この広告が、いま一度考えるきっかけになれば幸いです。

f:id:news-worker:20210923234449j:plain

※写真出典・宝島社公式サイト 

https://tkj.jp/company/ad/2021/index5.html

 ブランケット判と呼ばれる大きなサイズの新聞紙全体を使っているだけに、実際に手に取って眺めると、ほかの媒体にはない迫力を感じます。
 宝島社はことし5月11日付の朝日、読売、日経3紙にも、新型コロナウイルスを巡る企業広告を出稿しています。このときは「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」と、直接的な表現で政治を批判していました。
※参考過去記事
「宝島社 タケヤリ広告に改めて思う『だまされることの罪』 ※追記 宝島社のヘイト本」=2021年5月11日
 https://news-worker.hatenablog.com/entry/2021/05/11/230838

news-worker.hatenablog.com

 その続編ということになるのでしょうか。政治の無策の果てに、今や新型コロナウイルスに感染しても入院すらままならず、自宅で死んでいく人が出ていることへの怒りと悲しみを訴えています。

 厚生労働省のまとめによると、前作の広告が掲載された5月11日時点での新型コロナウイルスによる日本国内の死者は11060人でした。9月21日時点では6200人余り増えて17269人に上っています。
※出典 https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html

 在宅死については、以下のような報道がありました。
※NHKオンライン「コロナ感染 自宅で死亡した人 8月は250人 7月の8倍に 警察庁」=2021年9月13日
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210913/k10013257851000.html

 新型コロナウイルスに感染し、自宅などで体調が急に悪化して亡くなった人は、8月は250人に上り、前の月、7月の8倍に急増したことが、警察庁のまとめで分かりました。50代までの比較的若い世代がおよそ半数を占めていて、専門家が注意を呼びかけています。
 (略)
 去年3月から先月までの合計では、新型コロナに感染して自宅などで亡くなった人は、警察が把握しているだけで817人に上っています。

 5月11日から9月22日までをあらためて振り返ってみます。まず思うのは、東京五輪・パラリンピックの強行です。終わった後でこそ、マスメディア各社の世論調査では「開催して良かった」との積極評価の回答が消極評価を上回りましたが、事前の民意は今夏の開催には反対の意見が多数でした。にもかかわらず、またなぜパンデミックの最中に無理を押して開催しなければならないのか、菅義偉政権からも大会組織委員会からも納得性が共有できるような説明がないまま、両大会は強行されました。挙げ句の果てに、五輪大会の期間中に東京のコロナ感染者は急増し、専門家が制御不能と評するほどの惨状を呈しました。
 五輪とパラリンピック自体は世論に好意的に受け止められましたが、菅首相がもっとも期待していたはずの政権浮揚には結びつかず、最終的には退陣を表明するに至りました。そして今は、事実上の後任首相選びである自民党総裁選が繰り広げられています。安倍晋三前首相以来の9年近くに及ぶ「安倍・菅政治」の検証と総括が不可欠なはずですが、実情はイメージと人気を競う「自民党劇場」とも呼ぶべき状況です。

 総裁選への関心は、どうしても誰が優位かに収れんしがちです。事実上の次期首相選びであることから、それも仕方がない面はあるのですが、それにしてもコロナ禍で死者が1万7千人を超え、うち自宅などで亡くなった人が800人超に上っていることに対して、総裁選の各候補者にどこまで当事者意識があるのか疑問です。それをどう問い報じていくかは、マスメディアの課題でもあるように思います。宝島社の広告を見ながら、そんなことを考えています。