「戦争で最初に犠牲になるのは真実」~自由な報道、自由な表現への弾圧は、戦争に反対する世界中の人々への攻撃

 ウクライナに軍事侵攻しているロシアのプーチン大統領が、報道に対する規制を強めています。ロシア軍の行動や戦況を巡る虚偽情報に対しては、最大で禁固15年や150万ルーブルの罰金を科す内容の刑法改正案に、プーチン大統領が3月4日、署名したと報じられています。ウクライナ侵攻への国際的な批判の高まりにいら立っているのだと思います。
 朝日新聞の報道によると、具体的には以下のようです。

 新たな刑法では、ロシア軍の行動に関して「信頼できる情報を装った明らかな虚偽の情報の流布」や、公の場での「軍事行動の停止の呼びかけや、軍の名誉や信頼を傷つける活動」を禁止している。国際的な民間団体ジャーナリスト保護委員会(CPJ)によると、「偽情報の単純捏造(ねつぞう)」で最大で禁錮3年、「公的な立場や集団を使い、偽造した証拠などを用いた『偽情報』の拡散」に最大で禁錮10年、「社会的に危険な影響が伴う偽情報の拡散」に最大で禁錮15年の刑罰が規定されている。また、対ロ制裁を科すよう外国や国際機関などに呼びかけることも禁止され、違反者には最大で禁錮3年が科される可能性があるという。

※「ロシア、フェイクニュースと見なせば禁錮刑に 欧米メディア取材停止」=2022年3月5日
 https://digital.asahi.com/articles/ASQ356J15Q35IIPE00N.html

digital.asahi.com

 ロシアのメディアはもちろんのこと、ロシア国内で活動する外国メディアの報道も対象になります。「軍事行動の停止の呼びかけ」や「軍の名誉や信頼を傷つける活動」と同列に虚偽情報の流布が扱われるのですから、軍を礼賛し、ウクライナへの侵攻を支持しない限り、何を報道しても「虚偽」としてしか認定されないおそれが大きいと感じます。
 英国BBCはロシア国内での取材活動の一時停止を表明し、米国CNNなどもロシアからの放送を一時的に停止したとのことです。日本の報道機関も影響は避けられず、朝日新聞と日経新聞は5日、自社サイト上で、新たな規制がどのように運用されるのかはっきりするまで、ロシア国内からの報道を一時見合わせることを明らかにしました。

▼朝日新聞 ※上記記事

 朝日新聞社は、ロシアの新たな法律は報道の自由への重大な侵害と懸念します。適用範囲や運用状況などを詳しく把握できるまで、ロシア国内からの報道は一時見合わせます。

▼日経新聞 ※「ロシアが情報統制急ぐ SNS遮断、報道でも世界と断絶」=2022年3月5日
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0527X0V00C22A3000000/

 日本経済新聞社は改正法の適用範囲や運用など詳しい情報が得られるまで、ロシア国内からの報道を一時的に見合わせます。

 ロシア軍がウクライナに侵攻している現在、ロシア国内で何が起きているかは、現地に滞在しているジャーナリストが直接伝えるべきことです。ロシア政府の発表だけでなく、独立したジャーナリズムが提供するそうした情報も踏まえて、日本社会にいるわたしたちを含めて情報の受け手は、ウクライナを巡って何が起きているのかを判断できます。しかしロシアの新たな措置によって、そうした報道ができない状況になっています。
 ロシア当局はまた、フェイスブックやツイッターへの接続も遮断しており、ロシア国民の自由な情報発信にも制限を強めています。ロシアで反戦を訴える人たちの活動や、戦死したロシア兵の遺体の帰還など、ロシア社会の戦意を低下させ、ひいてはプーチン大統領への支持をも失わせかねないような情報発信を何としても抑え込みたいのであろうことは、容易に想像できます。
 ロシア当局の措置は、情報統制と言えばスマートに聞こえますが、自由な表現活動や自由な情報発信への弾圧です。禁固15年と言えば、社会的に抹殺されるに等しい措置です。直接は自国民、自国のメディア、自国に滞在する国外メディアのスタッフが対象かもしれませんが、それにとどまらず、事実を知ることができなくなるとの意味で、ウクライナ侵攻に反対する世界中の人々への「攻撃」を意味するとわたしは受け止めています。「戦争で最初に犠牲になるのは真実」という言葉を思い起こします。