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「国葬」評価、若い世代に急激な変化~もはや「世論を二分」ではなく「反対多数」

 先週末に実施されたNHKと朝日新聞の世論調査のうち、安倍晋三元首相の国葬への賛否の評価を問う設問への回答結果が、興味深いことになっています。
 朝日新聞の調査(9月10、11日実施)では、国葬に対し「賛成」38%、「反対」56%でした。前回調査(8月27、28日)では「賛成」41%、「反対」50%でした。2週間で賛否の差は9ポイントから18ポイントに拡大しました。
 NHKの調査(9月9~11日実施)でも「評価する」32%に対し、「評価しない」は57%でした。差は25ポイントです。7月の調査では「評価する」49%、「評価しない」38%だったのが8月の調査で「評価する」36%、「評価しない」50%と逆転し、今回はさらに差が開いています。朝日、NHKに限らず他社の調査でも、肯定的評価を否定的評価が上回り、しかもその差が開いていく傾向が顕著です。安倍元首相の国葬に対する世論は、「賛否拮抗」「二分」から「反対(ないしは否定的評価)多数」に変わっています。
 さらに興味深いのは18~39歳の若い世代の動向です。
 NHKの今回の調査では、18~39歳では「評価する」43%に対し、「評価しない」47%と、否定的な回答が上回っています。8月の調査では、「評価する」53%、「評価しない」30%と、「評価する」が23ポイントも上回っていました。1カ月の間に、「評価する」は10ポイント減り、「評価しない」が17ポイントも増えるという急激な変化が起きています。他の世代でも「評価しない」が8月より増えてはいるのですが、ここまで急激な変化はみられません。そもそも8月調査では、「評価する」が「しない」を上回っていた世代は18~39歳だけでした。これですべての世代で「評価しない」が「する」を上回ることになりました。
 このブログの以前の記事で触れましたが、1週間前の9月2~4日に実施された読売新聞の調査でも、18~39歳では同様の“急変”がありました。「評価する」が8月調査の65%から22ポイント下がり43%に。「評価しない」は28%から21ポイント上がり49%になっていました。「評価する」が「しない」を40ポイント近くも上回っていたのに、わずか1カ月で逆転しました。
 読売新聞の調査結果について、わたしは以前の記事で「当初は若い人たちの間では、国葬に対して好意的な評価が高い割合を占めていました。ここにきて、否定的な評価が急速に取って代わりつつあるようです」と書きました。世代別の回答状況は、メディアによって明らかにしたりしなかったりとまちまちなのですが、読売新聞の調査と1週間後のNHKの調査の二つの調査で同じ傾向が見られることから、若い人たちの間で国葬への評価が急変していることは間違いありません。
 若年層のこの評価の変化の持つ意味をどう考えるか。以前の記事に書いたことを再掲します。 

 若年層の中で、国葬の社会的議論を通じて、安倍政治への評価それ自体に変化が起きているのだとしたら、その意味は小さくありません。安倍元首相が長期政権を誇った大きな要因の一つは、まさに若年層の支持が高い水準で安定していたことだったからです。自民党は安倍政治の当時と今も変わらず、岸田文雄政権は基本的に安倍政治を継承しています。若年層に安倍政治への評価の変化が生まれているのだとしたら、まさに「今」の政治に大きな影響を与えうるはずです。

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【追記】2022年9月14日22時15分

 朝日新聞とNHKの世論調査の結果を「安倍元首相『国葬』 世論の推移」に追記しました。わたしの目に留まった範囲ですが、7月以降、マスメディア各社の世論調査で、国葬に対する民意がどのように推移してきたかをたどることができます。

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