元外務省局長が法廷へ〜再びの「沖縄密約はマスメディアも当事者」(追記あり)

 1972年の沖縄返還に際して、米国が負担することになっていた軍事施設の原状回復費400万ドルを日本が肩代わりするとの密約が日米両政府間で交わされていた「沖縄密約」問題をめぐり、密約文書の開示請求に対し国が「文書は存在しない」として非開示処分にした措置を不当として、元毎日新聞記者西山太吉さんらが非開示処分の取り消しなどを求めた訴訟が東京地裁で係争中です。その第2回口頭弁論が25日に開かれ、6月の第1回口頭弁論に続いて大きな動きがありました。

「吉野氏『密約文書は自分が署名』 沖縄返還で元局長が陳述書」(47news=共同通信
http://www.47news.jp/CN/200908/CN2009082501000794.html

 72年の沖縄返還をめぐり、日米両政府が交わしたとされる密約の存否が争われている訴訟の第2回口頭弁論が25日、東京地裁であり、原告側が吉野文六・元外務省アメリカ局長(91)の陳述書を提出、吉野元局長は密約の存在を示す文書中の「BY」の文字について「自分が書いたイニシャルで間違いない」と明らかにした。
 杉原則彦裁判長は10月27日の次回期日で国と原告側の主張を整理、12月1日に吉野元局長の証人尋問を行う方針を示した。

 吉野元局長はこれまでにもマスメディア各社の取材に応じ、密約の存在を証言しています。法廷での証言が実現すれば「密約はない」との不自然不合理な弁明を強弁する日本政府の欺瞞性は確定的になります。
 また、そのときまでには今月30日投開票の衆院選を経て、自民公明連立政権から恐らくは民主党を中心とする政権に変わっているでしょう。沖縄密約や、もう一つの日米間の密約である米軍艦船などの核持ち込み密約などに対する新政権のスタンス次第では、司法の場での展開を待たずに真相究明が大きく前進するかもしれません。いずれにせよ、沖縄密約問題は大きな曲がり角に差し掛かっていると言っていいようです。
 沖縄密約訴訟をめぐっては以前のエントリーで、第1回口頭弁論で東京地裁の異例の訴訟指揮がありながら、在京大手紙のうち読売、日経、産経の3紙が1行も報じなかったことを書きました。沖縄密約はマスメディアも当事者なのであり、政府が不自然不合理な弁明を続けることを許すのは、国民だけでなくマスメディアもまたバカにされているに等しいと思います。25日の審理のもようを26日朝刊各紙はどのように報じたのかについても注目したいと思います。

【追記】2009年8月27日午前2時15分
 26日付の朝刊各紙(東京本社発行最終版)は、扱いの大きさはそれぞれながら、東京地裁の審理の様子を伝える記事を掲載しました。産経新聞は第1回口頭弁論の時と同じく、記事がありませんでした。
 扱いがいちばん大きかったのは東京新聞で1面に4段見出し、吉野元局長の顔写真付き。朝日新聞は第3社会面に見出し3段、毎日新聞は第3社会面に見出し3段。この3紙は第1回口頭弁論のときにも記事を掲載しました。前回は記事がなかった読売新聞は今回は第2社会面に見出し2段、日経新聞は第2社会面に見出し1段(いわゆるベタ記事)でした。

 吉野元局長の出廷は公務員の守秘義務との兼ね合いからか、民事訴訟法の規定で外務省の承認が必要のようです。朝日新聞などの記事によれば、杉原則彦裁判長は「外務省の承認は得られる、と期待している」と述べていますが、被告の立場にある外務省はどんな対応を見せるでしょうか。
 また、これも報道によれば国側は開示を請求された文書について「最終的な合意文書ではなく、外交交渉の途中において、米国が経過を示すために作成した備忘録などに過ぎない」などと主張したようですが、仮にその通りだとしても米国で公文書として取り扱われている文書であることに変わりはありません。それが日本では存在しない、ということになれば、外務省自身が運命共同体のように位置づける日米関係とは一体何なのか、ということになると思います。
 今月30日の衆院選後には、外交をめぐっても様々な動きが出るでしょう。その中で戦後史の裏面にも光が当たることを期待したいですし、取材と報道によって戦後史の見直しが進むよう、マスメディアも奮起するときだと思います。