ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

新聞:社説・論説

「共通のアイデンティーは育ちにくい」(沖縄タイムス)、「戦後日本の矛盾が沖縄に集中」「国民の理解不十分」(琉球新報)~敗戦80年、沖縄の新聞の本土への視線

一つ前の記事の続きです。 1945年の敗戦から80年の8月です。地方紙、ブロック紙が8月15日付、16日付で掲載した関連の社説、論説をネット上の各紙のサイトで見てみました。 目を引くのは沖縄の2紙、沖縄タイムスと琉球新報です。 それぞれ、見出…

「歴史を見過ごさないために」(朝日新聞)、「平和つくる行動を今こそ」(毎日新聞)、「80年続いた平和を次の世代に」(読売新聞)~敗戦から80年、在京紙の報道の記録

日本の敗戦から80年のことし8月15日、各地で追悼式典が開かれたと報じられています。東京発行の新聞各紙の16日付朝刊は、東京・日本武道館で開かれた政府主催の全国戦没者追悼式の様子を始め、「敗戦80年」の関連記事を複数のページにまたがって掲…

「広島、長崎と本質的に同じ」発言の意味と被爆国のメディアの報道

思わず耳を疑いました。米国のトランプ大統領が、イランの核施設への攻撃を広島、長崎への原爆投下になぞらえて「戦争を終結させた」と正当化した、とのニュースです。 【ハーグ共同】トランプ米大統領は25日、米軍によるイランの核施設攻撃が「戦争を終結さ…

訃報の異例の扱いを説明した東京新聞「ぎろんの森」~「かつてのようなマス」はもうない

一つ前の記事(「戦後史のアイコン『長嶋茂雄』~訃報を伝える視点と在京紙の報道の記録」)の続きです。 元プロ野球選手、元監督の長嶋茂雄さんの訃報を、東京発行の新聞各紙が大きく掲載したことを巡って、東京新聞が6月7日付朝刊に掲載した「ぎろんの森…

新聞がフジテレビ批判に終始するなら危うい~在京各紙の社説の記録

「中居正広・性加害問題」やフジテレビの「性接待疑惑」に対して、フジテレビの対応を直接取材する東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)が、それぞれ社説でどう言及しているか、ことし1月分を見てみました。 フジテレビは1月17日の…

第三者を交えた「検証」が検察に必要~袴田さんの冤罪 新聞各紙の社説、論説

再審無罪が確定した袴田巌さんの冤罪事件に対し、最高検と静岡県警が昨年12月26日に公表した捜査や公判の検証結果のことは、このブログの以前の記事に書きました。特に最高検に対しは、全体として自己弁護に終始し「検察は悪くない」とだけ主張している…

民意が求めたのは「熟議」~「自民1強」のおごりが問われた衆院選、地方紙の社説・論説の記録

自民、公明両党の与党が大敗した衆院選の結果を、地方紙はどんなふうに見ているか、10月28日付、29日付の社説、論説を各紙のサイトでチェックしてみました。 全文を読めたものに限ってのことですが、自公の大敗の直接の要因は自民党派閥パーティー券裏…

石破政権の支持急落、しかし「続投容認」が多数派~産経、読売は辞任を求める

衆院選は自民党、公明党の与党が大敗した一方で、野党の間にも議席の過半数を占める多数派を形成できる枠組みは見えず、当面は国会での首相の指名と、どのように政権が構成されるのかが焦点のようです。自民党に対しては、石破茂首相・党総裁の責任論も指摘…

政治不信が極論の一層の台頭を招くことを危惧~衆院選 低投票率と与党大敗の意味を考える

衆院選は10月27日、投票が行われ、28日早朝に全議席、当選者が確定しました。備忘を兼ねて、主な結果を書きとめておきます。 ・自民党は公示前から56議席減らして191議席、公明党も8議席減の24議席。与党は計215議席と、石破首相が勝敗ライ…

「被爆者が立ち上がるまでに11年もの月日」(中国新聞社説)~被団協にノーベル平和賞 地方紙の社説、論説

ことし2024年のノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に贈られることに対して、地方紙も社説、論説で取り上げています。インターネット上の各紙のサイトで確認できた範囲で見てみました。 被爆地広島の地元紙、中国新聞は10月12日付…

「被団協にノーベル平和賞」在京紙の報道の記録~日本の役割強調の一方で、産経は「核抑止」訴え

ことし2024年のノーベル平和賞は、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受賞することが10月11日、ノルウェーのノーベル賞委員会から発表されました。東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京の各紙)は12日付朝刊で、いずれも…

「政治とカネ」、石破政権への信任を問う衆院選へ~大学生に教えられた政治報道、選挙報道の課題

衆議院が10月9日、解散されました。衆院選は15日公示、27日投開票の日程が正式に決まりました。石破茂内閣の発足から8日後の解散、26日後の衆院選投開票はともに、戦後最短とのこと。国会で予算委員会などの論戦がなかったことに対し、石破首相が…

石破新政権に厳しい新聞各紙~地位協定は沖縄の過重負担是正、解消の試金石

石破茂・自民党総裁が10月1日、国会で首相に指名され、新内閣が発足しました。首相就任前から10月27日の衆院選投開票を表明したことに対し、自民党総裁選では、衆院解散は国会の論戦を経て有権者に選択の判断材料を示してから、と主張していたことと…

石破新総裁「日米地位協定見直し」必ず実現を~沖縄の自己決定権は最優先の課題

自民党の新総裁に9月27日、石破茂・元幹事長が選出されました。候補9人が乱立する中で1回目の投票でトップになったのは高市早苗・経済安全保障担当相でした。閣僚でありながら靖国神社に参拝し、首相就任後の参拝も否定しないなど、ある意味、右派色の…

「核廃絶」巡る深い溝を見せつけたG7大使級ボイコット~被爆国、不戦憲法を持つ国の新聞の記録

広島、長崎への原爆投下から79年の今年、核廃絶を願う世界中の人々と、核兵器を有用とする核保有国やその同盟国の為政側との間には、依然として深い溝があることを痛感させられました。米英など日本を除くG7各国とEUが、8月9日の長崎の平和祈念式典…

予測通りの規正法ザル改正~問われるべきは検察

政治資金規正法改正案が6月19日、参議院で可決され、改正法が成立しました。自民党の派閥パーティー券裏金事件を契機に始まった改正論議でしたが、終わってみれば抜け穴はそのままで「ザル法の改正もザルだった」と言わざるを得ない内容です。意外な結果…

「なお遠い『平和の島』」(朝日)、「沖縄の自治は神話なのか」(中日・東京)、「不平等な地位協定見直せ」(神戸)~沖縄復帰52年、本土紙の社説の記録

少し時間がたってしまいましたが、5月15日の沖縄の日本復帰の日に、日本本土の新聞各紙が掲載した社説の記録です。ネット上の各紙のサイトで読めるものが対象です。朝日新聞、中日新聞・東京新聞、神戸新聞、南日本新聞の4紙が目にとまりました(南日本…

「主権者の責任」を説く地方紙の社説、論説~中日・東京新聞は「内閣の暴政」を批判

少し時間がたちましたが、5月3日の憲法記念日の紙面に新聞各紙が掲載した社説、論説の記録です。インターネット上の各紙のサイトで読めるものをチェックしました。 安倍晋三政権以降、憲法解釈を閣議決定で変更するなど、重要なことを国会を通さずに内閣が…

政治への社会の関心とマスメディアの政治報道~衆院3補選「自民全敗」の各紙報道を読み解く

衆院の3件の補欠選挙が4月28日に実施され、いずれも立憲民主党の候補が当選しました。自民党は東京15区、長崎3区では候補を擁立せず、与野党一騎打ちとなった島根1区でも大差が付きました。29日付の東京発行の新聞各紙朝刊もそろって1面トップの…

意見の違いを認めつつ、読み手に納得してもらえるスキル~4月から半期、文章指導の講座を担当

この4月から半期、東京・成城大学文芸学部で非常勤講師を務めることになり、第1回の授業を先日行いました。講座名は「マスコミ特殊講義」。マスメディアの実務経験者による実習を含んだ実践的な内容です。わたしの場合は、新聞ジャーナリズムの実務経験者…

オスプレイ飛行再開、防衛相発言のグロテスクさ~「日米同盟の犠牲拒否する」(琉球新報)、「住民無視の暴走行為だ」(沖縄タイムス)

鹿児島県屋久島沖で昨年11月29日、米空軍横田基地(東京)所属の輸送機CV22オスプレイが墜落し、乗員8人が死亡しました。その後も沖縄の米海兵隊普天間飛行場所属のMV22オスプレイはしばらくの間、飛び続けていました。米軍が海兵隊、海軍の所…

「安倍派幹部『不問』」になお8割超が疑義~民意の検察不信と新聞

自民党のパーティー券裏金事件で、自民党安倍派の政治資金収支報告書の虚偽記載に対し、東京地検は会計責任者を起訴しただけで、事務総長経験者ら派閥幹部の国会議員については不問としました。1月に実施された2件の世論調査では、「納得できない」「適切…

「派閥幹部は不問」に疑義を示す地方紙の社説、論説~続・検察は捜査を尽くしたか

自民党のパーティー券裏金事件をめぐり、安倍派の政治資金収支報告書への虚偽記載に対して、検察が会計責任者を起訴しただけで、事務総長経験者ら派閥幹部の政治家は不問としたことをめぐり、東京地検特捜部が捜査を尽くしたと言えるのか疑問を感じているこ…

辺野古の工事強行 本質は「地域の自己決定権」~問題意識共有する地方紙の社説、論説

沖縄の米軍普天間飛行場の移設計画をめぐり、米映画監督のオリバー・ストーン氏らが辺野古の新基地建設に反対し、建設の中止を求める声明を1月6日に発表したとのニュースが目にとまりました。琉球新報の報道によると、声明には「沖縄の自己決定権、民主主…

「法治をゆがめたのは政府と司法」(琉球新報)~辺野古代執行、沖縄の地元紙の社説

米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、軟弱地盤の改良工事の設計変更の承認の代執行を岸田文雄政権が強行したことに対し、沖縄の地元紙の琉球新報は12月26日付から29日付まで4日連続で社説で取り上げ、「歴史に刻まれる愚行だ」(29日付)と激しい…

辺野古の代執行 自治の根幹揺るがす~普天間の危険性除去につながらない可能性も危惧、地方紙の社説、論説

沖縄の普天間飛行場移設を巡り、沖縄県の玉城デニー知事は12月25日、辺野古沖の軟弱地盤改良工事の設計変更を承認しないことを表明しました。代執行訴訟の判決で福岡高裁那覇支部は20日、承認するよう命じ、期限をこの日に指定していました。斉藤鉄夫…

「相互理解に向けて対話を重ね、抜本的解決が図られること」こそ結論ではないのか~辺野古設計変更、信を失った政権の下で代執行へ ※追記・地方自治法の規定

地域の住民の総意と言いうる民意を「公益」と認めず、国策の強行にお墨付きを与える司法判断が示されました。沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更を玉城デニー沖縄県知事が承認しないことを不服として国が争い、代執行に…

飛行停止、日本政府は明確に要求したのか~オスプレイ墜落から1週間余、ようやく米軍が決定  ※追記 “あいまい要請”官房長官も

一つ前の記事の続きです。米軍は12月6日、輸送機V22オスプレイ全機の飛行を停止することを発表しました。日本では翌7日午前中に報じられました。鹿児島県・屋久島沖に11月29日、東京・横田基地所属の米空軍CV22が墜落してから1週間以上も経…

危険は沖縄も東京も変わらない~オスプレイ墜落、焦点は配備撤回と日本の主権

開発段階からトラブル続きで安全性に疑念がある軍用機が、運用段階に入っても各地で墜落事故を起こし、とうとう日本国内でも墜落して死者が出た。日本中いつ、どこで市街地に墜落するか分からない。そんな事態ではないのか―。 11月29日午後、鹿児島県・…

「日本本土の国民に伝えたい」(琉球新報) 安全保障の負担は日本全体の問題~辺野古埋め立て・代執行と本土メディアの報道

米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐって先週来、重要な動きが続いています。 埋め立て予定地にマヨネーズ状とも指摘される軟弱地盤があるために、防衛省は当初の設計を変更せざるをえなくなりました。その変更の申請を沖縄県の玉城デニー知事が承認しな…