「軍事優先社会」で何が起こるかを伝えることが衆院選報道に必要~マスメディアにも「表現の自由」の当事者性

 衆院選が10月19日、公示されました。自民党、公明党連立の岸田文雄内閣は10月4日に発足したばかり。一方で野党は、立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の4党が市民連合との間で共通政策に合意し、選挙区での候補者一本化を進めるなど共闘体制を組んでいます。国民民主党や日本維新の会も含めて、それぞれの政党が掲げる公約やその実行可能性を有権者が判断し、自公連立の政治の継続か、新しい枠組みの政治か、どちらかを選ぶことになります。政権選択です。
 新型コロナウイルス対策が与野党とも重点課題になるのは当然として、岸田首相は「新しい資本主義」を掲げて「分厚い中間層の再建」を訴え、野党もそれぞれに富の再分配として税の見直しや給付金などを訴えています。経済政策や格差の是正が主要争点と位置付けられており、東京発行の新聞各紙の20日付朝刊紙面でも、見出しに「コロナ」のほか「格差」「分配」「経済」などのキーワードが目立ちます。しかし、具体論となるとよく分からないことが少なくなく、有権者からは、与野党の主張の違いが見えにくいのではないかと思います。
 そういう中で、自民党の政策の中で他党と際立った違いがあるのは、例えばジェンダーや多様性の問題です。公示前日に開かれた日本記者クラブ主催の党首討論会では、選択的夫婦別姓、LGBT法案の賛否を問う質問に対し、与野党の党首9人のうち8人は挙手して賛意を示しましたが、自民党の岸田総裁は手を挙げませんでした。
 しかし、もっとも際立っているとわたしが考えるのは、このブログの一つ前の記事(「自民党公約が明示する『軍拡』~政権選択の最大論点」)でも書きましたが、これまでとは質、量ともまったく異なる軍事力強化、異次元と言ってもいいような自民党の軍拡路線です。公約集「令和3年政策BANK」の「安全保障」には以下の2項目が記載されています。

 ○自らの防衛力を大幅に強化すべく、安全保障や防衛のあるべき姿を取りまとめ新たな国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画等を速やかに作成します。NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)以上も念頭に、防衛関係費の増額を目指します。
 
 ○周辺国の軍事力の高度化に対応し、重大かつ差し迫った脅威や不測の事態を抑止・対処するため、わが国の弾道ミサイル等への対処能力を進化させるとともに、相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みを進めます。

 かつて自民党政権は、防衛費はGDP比1%以内を上限とすることを定めていました。今はその制限はないとはいえ、1990年度以降で1%を超えたのはリーマン・ショックでGDPが落ち込んだ2010年度だけです。GDP比2%以上というのは、現在の防衛費を倍以上に増やすという意味を持ちます。国家の中で防衛費の扱いを根本的に変えてしまうことです。
 また、「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」とは、いわゆる敵基地攻撃能力のことであり、先制攻撃できる軍事力を保有することを意味します。憲法違反との指摘が出るのは当然です。
 折しも公示当日の19日午前、北朝鮮が弾道ミサイル2発を発射したと報じられました。同日午後の国家安全保障会議の後、岸田首相は記者団に、防衛力の抜本的な強化策として「敵基地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を検討するよう確認した」と述べたと報じられています。公示前日の18日には、中国軍とロシア軍の艦艇計10隻が津軽海峡を通過したとのニュース(防衛省発表)もありました。
 中国や北朝鮮のこうした動きには確かに不安を感じます。しかしだからと言って、軍事力に軍事力で対抗しようすれば、果てしない軍拡競争に陥ります。その果てに何が起こるかは、1945年の敗戦が教訓として示しています。
 そもそも財源はどうするのでしょうか。2021年度の日本の防衛費は5兆3422億円です。仮にそれを倍増させようとするなら、増税などで新たな財源を見出すか、別の支出を削るかのどちらかです。とても「再分配」「格差の是正」どころではないでしょう。
 また一口に「敵基地攻撃能力」と言っても、日本がまさに攻撃を受けようとしていることをどうやって探知するのか、それに対してどのような手段で先制攻撃をするのかなど、技術的なハードルは極めて高く、その能力の保有までに巨額の資金と膨大な社会的資源が必要なことはおのずと明らかです。
 それでもこの防衛力(軍事力)拡張に乗り出すのだとすれば、防衛費(軍事費)を国家の中で聖域扱いにし、すべてに優先して予算を確保しなければ実現できないでしょう。そうなると軍国主義とまでは言わないまでも、軍事国家への変容、転換です。そしてこの衆院選でも自民党中心の政権が続くなら、この軍拡路線も国民の承認を得た、ということになるのです。公約に明記してある以上、そうなります。

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 20日付の東京発行各紙の紙面では、読売新聞の1面が目を引きました。トップの見出しは「岸田政権の信任問う」。その横に「北、弾道ミサイル2発」の3段見出し、さらにその下に1段ながら「敵基地攻撃能力検討を政府確認」の見出しが並んでいます。岸田政権への信任とは、まさに上記のような軍事優先の社会、今までとは質的にも量的にも次元の異なる軍事力拡張を進める社会を選択することなのだと感じます。
 北朝鮮のミサイル発射や、中国軍艦艇の日本近海航行などのニュースに、不安を感じることもあります。しかし、軍事の世界では、こちらが考えるようなことは相手も同じように考えているはずです。北朝鮮や中国も、在日米軍や自衛隊のありようや行動に対して言い分はあるでしょう。仮に日本が敵基地攻撃能力を保有するに至ったとして、北朝鮮や中国がそれを黙って見ているはずもありません。次は日本のその能力を上回る攻撃能力を持とうとするはずです。
 複数のマスメディアがあるのですから、多様な価値観、考え方を担保する意味で、軍拡を是とする論調があるのは当然かもしれません。一方で、GDP比2%以上も辞さない防衛費(軍事費)の増額と、敵基地攻撃能力の保有に乗り出した時に、日本社会はどう変わるのか、その近未来の予想図を提示することもマスメディアの役割ではないかと思います。投票権を行使する有権者の判断に資するはずですし、他国の動きに不安にかられることがあっても、軍事力で対抗することの危うさに思いを致せるだけの心の強さを保つことに寄与できるはずです。
 軍事が聖域となる社会で、例えば格差の是正や多様性の尊重はどこまで実現できるでしょうか。自民党内で敵基地攻撃能力の保有を主張する人たちが、選択的夫婦別姓やLGBTの問題ではどんなことを主張しているのかを見ることも、判断のひとつの手掛かりになると思います。また、このブログでも何度も繰り返し触れている通り、軍事優先の発想は表現の自由や、自由な情報流通とは相いれません。
 自民党が公約に明記しているこの軍事力増強を是とするか非とするかは、有権者がどのような社会を選び取るのかに端的に結び付く争点です。マスメディアは「表現の自由」という自らの当事者性も自覚しながら、多角的、多面的な判断材料を選挙報道の中で示していかなければならないと思います。

 以下に、10月20日付の東京発行の新聞各紙朝刊のうち、目に付いた衆院選関連の主な記事の見出しを書きとめておきます。

▼朝日新聞
1面トップ「コロナ・格差・多様性 問う/岸田・菅・安倍政権に審判/5野党、217選挙区で共闘/衆院選公示」
社説「衆院選 経済対策 財政規律も忘れずに」
▼毎日新聞
1面トップ「コロナ・経済 各党競う/安倍・菅・岸田政権に審判/衆院選公示 31日投開票」
1面「政治を変える1票を」佐藤千矢子・編集編成局総務
社説「日本の選択 『脱炭素』への戦略 原発の位置付けが焦点だ」
▼読売新聞
1面トップ「岸田政権の信任問う/衆院選公示/自公vs野党共闘 31日投開票/立候補最少1051人」
1面「政権選択に参加を」望月公一・編集委員
(1面準トップ「北、弾道ミサイル2発/日本海に 1発SLBMか」「敵基地攻撃能力検討を政府確認」/2面「北ミサイルに危機感/首相 敵基地攻撃力『選択肢』」)
社説「衆院選公示 将来への責任感が問われる」
▼日経新聞
1面トップ「候補者多様化 道遠く/20~30代 初の1割未満/衆院選公示 1051人立候補」
1面「責任ある分配議論を」藤井彰夫・論説委員長
社説「高齢化に耐える社会保障改革案を示せ」
▼産経新聞
1面トップ「衆院選公示 日本の進路は/1051人立候補 コロナ・経済争点/自民 単独過半数なるか」
1面「リーダー選択『一票』に託そう」大谷次郎・政治部長
社説(「主張」)「衆院選公示 国民を守り抜くのは誰か 『台湾危機』への備えを語れ」/論戦から投票先選ぼう/野党4党合意は危うい
▼東京新聞
1面トップ「あすの社会を選ぶ/衆院選公示 1051人届け出/4年ぶり政権選択」
社説「分配と格差是正 実現への道を訴えて」「選挙戦始まる 有権者の声を届けたい」

自民党公約が明示する「軍拡」~政権選択の最大論点

 衆議院が10月14日、解散されました。衆院選は19日公示、31日に投開票されます。憲法70条は、衆院選の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は総辞職をしなければならないと規定しています。自民党、公明党連立の岸田文雄内閣は10月4日に発足したばかりですが、衆院選後に総辞職します。首相は国会議員の中から国会の議決で指名することになっており、衆院の議決が参院に優越するため、衆院選は有権者による事実上の政権選択の選挙です。では、今回の衆院選で問われるのは何なのでしょうか。
 解散翌日の15日付の東京発行新聞各紙の朝刊1面の記事から、主な見出しを書きとめてみます。
▼朝日新聞
「岸田・菅・安倍政権の4年 問う/衆院解散 31日投開票/首相、最大争点は『コロナ対策』」/「『悪弊』断ち切る覚悟 見極めを」坂尻顕吾政治部長
▼毎日新聞
「衆院解散 総選挙/31日投開票 戦後最短 19日公示/首相『与党で過半数目標』」/「国会軽視 国民の審判は」中田卓二政治部長
▼読売新聞
「コロナ・経済 争点/衆院解散 総選挙/31日投開票 短期決戦」
▼日経新聞
「コロナ・成長 争点に/衆院解散、岸田政権の信任問う/31日投開票」
▼産経新聞
「首相『奇襲』道開けるか/衆院解散 31日投開票」/「寝耳に水の党幹部 焦る野党」
▼東京新聞
「社会 つくり直す機会に/衆院解散 総選挙へ 19日公示31日投開票」/「分配・多様性・コロナ…問う」高山晶一政治部長

 「コロナ」「成長」「分配」といったキーワードが散見されます。岸田首相は「新しい資本主義」「分厚い中間層の再建」を強調しています。一方で野党第一党の立憲民主党は公約で「1億総中流社会の復活」を掲げています。格差社会の是正を巡って「成長」「分配」は大きな論点なのですが、政権選択の観点から見た時に、与野党の主張の違いは、有権者には分かりにくいのではないでしょうか。

 この衆院選で、わたしが自民党と野党との違いがもっとも具体的に、明確に表れていると思うのは、自民党の軍拡志向です。軍国主義とまでは言わないにしても、軍事優先の国家像を目指していることが、自民党の公約からは読み取れます。この点こそが、政権選択のもっとも先鋭的で具体的な論点だと考えています。
 自民党の公約集は公式サイトにアップされています。
 ※自由民主党「令和3年政策BANK」
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/20211011_bank.pdf

 「安全保障」の項目の中で、とりわけ以下の二つの項目は看過できません。

 ○自らの防衛力を大幅に強化すべく、安全保障や防衛のあるべき姿を取りまとめ新たな国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画等を速やかに作成します。NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)以上も念頭に、防衛関係費の増額を目指します。

 ○周辺国の軍事力の高度化に対応し、重大かつ差し迫った脅威や不測の事態を抑止・対処するため、わが国の弾道ミサイル等への対処能力を進化させるとともに、相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含めて、抑止力を向上させるための新たな取り組みを進めます。

 かつて日本の防衛費はGDP比1%以内が政府の正式方針であり、1986年に中曽根康弘内閣が撤廃を決めた後も、1%をわずかに超えた事例があっただけのようです。
 ※参考 ウイキペディア「防衛費1%枠」

 「相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力の保有」とは、安倍晋三元首相が退陣間際に置き土産のように残した「敵基地攻撃能力」のことと思われます。一口に「敵基地攻撃能力」と言っても、その技術開発のハードルは高く、膨大な社会的リソースと資金を必要とします。こうした「先制攻撃」の能力を含めて、これまでとは次元の異なる発想で軍事力の強化に努めることを明確に掲げています。
 確かに、北朝鮮がミサイル開発をやめないこと、あるいは中国が軍事力を増強し、その力を背景に一方的に現状変更を迫っていることが強調されれば、自衛のために限定して日本が敵基地を先制攻撃できる能力を持つのも致し方ないと考える人もいることと思います。そうでなければ国は守れない、それも独立国家の自衛権の行使だという主張には、なるほど説得力がありそうに見えます。
 しかし、問われるのはその先の想像力です。仮に日本が北朝鮮、さらには中国の軍事拠点を先制攻撃できる能力を保持する、あるいは保持に向けて軍事力の強化に乗り出したとしたら、北朝鮮や中国は黙って見ていてくれるのでしょうか。今度は、日本のその先制攻撃能力を無力化するための軍事力強化に乗り出すはずです。こちらが考えることは、相手も当然考えます。そうやって、果てしない軍拡競争に陥ります。それがわたしたちの社会にとって最善の道なのでしょうか。
 相手と国力に圧倒的な差があるにもかかわらず、軍拡競争の果てに戦争に至ってしまえばどうなるかは、1945年の敗戦で、わたしたちの父や祖父の世代は骨身に沁みて理解しました。直接はあの戦争を体験していない世代でも、歴史に学ぶ姿勢を持ち、少し想像力を働かせれば、そのことは容易に分かります。
 現在の視点で見て、米国を相手にあの戦争を戦ったことがいかに無謀だったかには、異論はないと思います。歴史から何を学ぶかは、なぜあの戦争を避けることができなかったのかを考えることだろうと思います。
 強調しておきたいのは、対米開戦前に、米国と戦争すれば必ず負ける、国が存亡の危機に陥ると予告していた軍人がいたことです。日本海軍の「最後の大将」として知られる井上成美(いのうえ・しげよし)は海軍航空本部長当時の1941年1月、及川古志郎・海軍大臣宛てに「新軍備計画論」という建白書を提出しました。その中の「日米戦争の形態」の一節で、仮に日米が戦った場合のこととして「日本が米国を破り、彼を屈服することは不可能なり」「米国は、日本国全土の占領も可能。首都の占領も可能。作戦軍の殲滅も可能なり。又、海上封鎖による海上交通制圧による物資窮乏に導き得る可能性大」と述べていました。東京のほか日本全土の占領、陸軍部隊の相次ぐ玉砕、連合艦隊の壊滅、海上封鎖による物資窮乏等は、ことごとく現実のものになりました。開戦前から結果を見通した慧眼の軍人もいたのに、その指摘は顧みられることなく開戦に至り、自国とアジア各地におびただしい住民、非戦闘員の犠牲を生んだ末に国家は破局を迎えました。
 軍事力増強はしばしば「抑止」が目的であって、戦争することが目的ではないかのように語られますが、そこを疑う必要があります。「今なら勝てる、勝負できる」と自国の軍事力と国力を過信すれば、戦争は止めることができなくなります。敗戦の経験と教訓が社会で受け継がれていれば、軍事力による抑止を「疑う」ことができると思いますし、そこに戦争放棄にとどまらず戦力不保持を定めた日本国憲法の歴史的な価値と意義があります。

※参考過去記事。井上成美に触れています

news-worker.hatenablog.com

 衆院選の自民党公約に戻れば、今の日本社会で、軍拡の一方で分厚い中間層を再建などと、本当に両立できるのでしょうか。1960年代の高度成長も、軽武装だから実現できたことです。今は60年代と違って少子高齢化社会であり、就労構造も非正規雇用が増大して様変わりしています。軍拡競争に充てる社会的資源を別の用途に充てる選択肢もあるはずです。
 各党の公約の違いによって、社会観や将来の国家像にどんな差異があるのか、そのことを具体的にイメージできる最大の論点が、自民党のこの軍拡路線を是とするか非とするかではないかと思います。衆院選では、その是非を考えるのに資する報道が、マスメディアの組織ジャーナリズムの役割と責任だと思います。このブログで繰り返し書いてきたことですが、軍事優先の発想は、自由な表現活動と相いれません。表現の規制や監視の強化も危惧されます。そこにマスメディアの当事者性もあります。

 以下は自民党が公約を発表した翌日の13日付の東京発行各紙の関連記事の見出しです。朝日新聞が総合面でも大きく展開しているのが目を引きましたが、焦点を当てているのは、「経済重視、軽武装」を伝統としてきた派閥・宏池会の領袖である岸田首相の「変節」のようです。組織ジャーナリズムの検証はそこで終わりではなく、自民党の軍拡路線が現実のものとなったときに、わたしたちの社会では何が起きるのかを探ることが必要ではないか、と思います。
▼朝日新聞
1面トップ「自民公約 力での対抗重視/防衛費『GDP比2%以上も念頭』/財政規律確保の文言 消える」
2面・岸田文雄研究「敵基地攻撃能力・憲法9条改正 前向きに/平和主義 名門派閥の理念封印」「『手段』か『変節』か」
▼毎日新聞
5面(総合)「自民公約『高市色』濃く/総裁選時の主張ふんだん」
▼読売新聞
1面「『中期防改定 前倒し』/自民公約 防衛力を大幅強化」
4面「自民公約『挙党』演出/高市氏政策 色濃く反映/『令和版所得倍増』は見送り」
▼日経新聞
2面「公約 党内主張寄せ集め/自民 コロナ・経済安保で法整備/防衛費『GDP比2%も念頭』」
▼産経新聞
1面「感染症 国の権限強化/『分厚い中間層』再構築」
▼東京新聞
1面トップ「自民 明記せず姿勢後退/立民 『早期実現』掲げる/『選択的夫婦別姓』巡る公約」

岸田首相の所信表明に地方から懐疑、批判~「『みんな』に沖縄は含まれるのか」(琉球新報)、「被災者にどう寄り添う」(福島民報)、「被爆地の期待、裏切られた」(中国新聞)

 岸田文雄首相が10月8日、国会で就任後初の所信表明演説を行いました。総じて具体性に乏しく、就任以来盛んに強調している「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」についても、何がどう新しいのかよく分かりません。実質的には、安倍晋三元首相が進め菅義偉前首相が受け継いだアベノミクスを基本的に継承するようです。格差拡大を是正し、分厚い中間層を再興させようとするなら、不安定で低賃金の非正規雇用がこの20年間、増大を続けていることをどうするのか、そのことを抜きにはできないと思うのですが、その点についても見るべき言及はなかったと感じています。
 9日付の新聞各紙の社説、論説もこの所信表明演説を取り上げています。やはり、具体論を欠いていることへの批判的なトーンが目立ちます。所得税の累進性を高めることや、金融所得への課税強化など、富裕層や企業の不評を買いそうなテーマに触れなかったのは、衆院選が控えているためではないか、との指摘も多く目に付きました。
 地方紙、ブロック紙の社説、論説はネット上の各紙サイトで読める範囲で見てみました。それぞれの地域の視点からの厳しい論評が目立ち、全国的に期待よりも懐疑、批判が上回っているように感じます。地方からこうも厳しい視線が注がれていることは、岸田政権の大きな特徴かもしれません。

 ■沖縄の民意より日米同盟
 わたし自身、所信表明演説で「たったこれだけか?」と感じたことの一つは、沖縄・辺野古の新基地建設です。外交・安全保障の項で、以下のように触れただけです。

 日米同盟の抑止力を維持しつつ、丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築きながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進めます。

 これに対して琉球新報の社説は以下のように疑問を投げ掛けます。

 首相はアフリカのことわざを引用し「遠くまで行きたければみんなで進め」と国民の協力を呼び掛けた。
 しかし基地なき沖縄という戦後ずっと続く目標に向かっては「みんなで」進むつもりはなさそうだ。沖縄に言及した部分で最初に抑止力維持を掲げたように、あくまで日米同盟の強化が主である。「みんな」に沖縄は含まれるのか。

 沖縄タイムスの社説も「『沖縄に寄り添う』と言いながら、新基地建設を強行に進めてきたのが『安倍・菅政権』だった」と振り返り「岸田首相が本当に沖縄と信頼関係を築きたいなら、そのための道筋をしっかりと示すべきだ」と指摘しています。

 ■被災地の声をどうするのか
 東日本大震災も短く触れただけでした。
 「東日本大震災からの復興なくして日本の再生なし。この強い思いの下で、被災者支援、産業・生業(なりわい)の再建、福島の復興・再生に全力で取り組みます」―。わずか66字。ツイッターのツイート1回の上限の半分もありません。東京電力福島第一原発事故を巡る現状や課題にも触れていません。
 福島民報の社説は「拍子抜けの感が強い。被災者にどう寄り添い、被災地の声を政策に反映させるのか。具体策が聞きたかった」とし「『車座対話を積み重ね』の言葉の通り、各閣僚が現地に足を運び、住民目線で課題の解決策を見いだすべきだ」と指摘しています。
 河北新報の社説も「復興支援に関して聞くべき内容はなかった。被災地は震災と原発事故を美談にすることなど望んでいない」として「課題を直視した対応」を求めています。
 東京電力の巨大原発が地元に立地する新潟日報も「極めて残念なのは原発政策に対する言及がなかったことだ」としています。

 ■核兵器禁止条約に触れず
 岸田首相は被爆地・広島の選出であることに強いこだわりがあるようです。そのこと自体には期待もあるのですが、所信表明演説では踏み込みが浅いと感じました。口にしたのは、以下のようなことです。

 被爆地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは、「核兵器のない世界」です。私が立ち上げた賢人会議も活用し、核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、唯一の戦争被爆国としての責務を果たします。
 これまで世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶という名の松明(たいまつ)を、私も、この手にしっかりと引き継ぎ、「核兵器のない世界」に向け、全力を尽くします。

 これに対して、地元の中国新聞の社説は、以下のように失望が露わです。

 「唯一の戦争被爆国としての責務を果たす」と言うなら、なぜ今年1月に発効した核兵器禁止条約に触れないのだろう。来年春に初めて開かれる禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を打ち出すべきではなかったか。被爆地で高まっていた期待は、あっさり裏切られた。

 他地域でも、福井新聞の論説が「『核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努める』では安倍、菅政権と何ら変わらない」と批判的に評しているのが目に止まりました。
 ほかに外交では、北方領土を巡って北海道新聞は「首相は自民党総裁選で四島返還を目指す意向を示し、事実上の2島返還路線に転換した安倍氏との違いをにじませる。ならば、四島返還を実現するための具体的な戦略を語るべきだろう」と指摘しています。

 ■民主主義の危機
 ほかにも地域を問わない大きな論点があります。民主主義に対する姿勢それ自体です。
 中日新聞・東京新聞は「岸田氏は首相就任後、民主主義の危機に直接言及しなくなった」として、森友学園への土地払い下げ問題、日本学術会議会員の任命拒否、河井克行元法相夫婦の選挙を巡る自民党の1億5千万円の支出などの再調査にいずれも消極的であることを挙げて「首相交代とは思えない『安倍・菅政治』の継続だ。総裁選で示した覚悟は何だったのか」と強く疑問を呈しています。
 信濃毎日新聞も「これらを放置したままでは『丁寧な説明』とはいえまい。岸田首相は『言葉』と『行動』が一致していない。これでは政治への信頼回復の道は遠いままである」と批判しています。「政治の信頼回復には、十分な説明と国民の納得が欠かせないと肝に銘じてほしい」(神戸新聞)、「『負の遺産』とどう向き合うのかも政権の評価に影響する」(高知新聞)などの指摘もあります。

※首相官邸「第二百五回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説」2021年10月8日 

https://www.kantei.go.jp/jp/100_kishida/statement/2021/1008shoshinhyomei.html

 以下に9日付の新聞各紙の社説・論説の見出しと、本文の一部を書きとめておきます。ネット上の各紙サイトで読めるもの(10日午前の段階)は、リンクを張っています。

▼朝日新聞「初の所信表明 信頼と共感 遠い道のり」
 https://www.asahi.com/articles/DA3S15070670.html

 総裁選の期間中に首相が繰り返したキーワードで、演説にはなかった言葉がある。「寛容な政治」だ。「我が国の民主主義が危機に陥っている」という現状認識と、それを踏まえた信頼回復策も示されていない。
 コロナ禍や社会の分断を乗り越え、「絆の力」で新しい時代を切り開く――。演説では前向きなメッセージに重きを置いたのかもしれないが、初志をおろそかにすれば、「信頼と共感」は得られないと心すべきだ。

▼毎日新聞「岸田首相の所信表明 転換への踏み込み足りぬ」
 https://mainichi.jp/articles/20211009/ddm/005/070/131000c

 「絆」「やさしさ」などの言葉をちりばめ、独自色を打ち出そうという姿勢はうかがえた。だが、安倍晋三、菅義偉両政権の路線を見直すとは明言せず、踏み込み不足だった。転換への意気込みが伝わらなかった。
 首相は、両政権を念頭に「国民の信頼が大きく崩れ、民主主義の危機にある」と繰り返してきた。問われるのは、その問題意識を実行に移すことができるかだ。
 ところが、国民の信頼を大きく損なってきた「政治とカネ」や、公文書改ざん・廃棄などの問題には、演説で一切触れなかった。これでは本気度が疑われる。

▼読売新聞「所信表明演説 成長と分配の具体策が肝心だ」
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20211008-OYT1T50319/

 首相は、自身が提唱した「新しい資本主義」について、「成長も分配も実現するため政策を総動員する」と説明した。実現会議を創設して構想をまとめるという。
 新自由主義的とされた小泉政権以来の規制改革路線は、所得格差を拡大し、国民の分断を招いた、という認識があるのだろう。
 経済成長を重視するアベノミクスを基本的に継承しつつ、さらに分配に力を入れる姿勢を鮮明にしたと言える。働く人の所得を増やし、消費や投資の拡大につなげる方針を示したのは理解できる。
 安倍内閣も「成長と分配の好循環」を掲げていたが、成長戦略は不発に終わり、分配は道半ばだった。経済政策の柱とする以上、実効性のある施策を明示し、目に見える成果を出すことが重要だ。

▼日経新聞「首相はビジョンの中身にもっと踏みこめ」

▼産経新聞「首相の所信表明 中国問題を正面から語れ」
 https://www.sankei.com/article/20211009-OVLI33WFVRI6TKKIUOZUYGEGC4/

 物足りないのは、演説で北朝鮮の核・ミサイルや拉致問題を取り上げた一方で、中国の覇権主義的行動を問題視する言葉を発しなかった点だ。これは歴代首相の演説と同様の対応だが、中国に気兼ねしている時代ではもはやない。首相の語る外交・安全保障政策の大部分は中国への備えである。分かりやすい説明をしてほしい。
 中国は尖閣諸島(沖縄県)を狙い、台湾への軍事的威嚇を重ね、南シナ海では国際法無視の人工島の軍事拠点化を進めている。日本の首相として、これらへの明確な「ノー」を代表質問などの機会に発信するのは当然だ。

▼北海道新聞「岸田首相所信 路線転換の道筋見えぬ」
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/598145

 ただ、富の再分配の具体策としては賃上げを行う企業の税制優遇、看護師や保育士らの待遇改善などを挙げるにとどまった。
 その一方で、大企業や富裕層に恩恵が偏ったと指摘されるアベノミクスの三本柱である「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「成長戦略の推進」を改めて経済政策の軸に据えた。
 これで効率と競争を重視する新自由主義を修正できるのか。そこからこぼれ落ちる人を救う手だてが後回しになる懸念は拭えない。
 (中略)
 外交では日ロ関係について「領土問題の解決なくして、平和条約の締結はない」と強調した。
 首相は自民党総裁選で四島返還を目指す意向を示し、事実上の2島返還路線に転換した安倍氏との違いをにじませる。ならば、四島返還を実現するための具体的な戦略を語るべきだろう。

▼河北新報「岸田首相が所信表明/『成長』への具体策見えぬ」
 https://kahoku.news/articles/20211009khn000005.html

 演説冒頭で東日本大震災の際に発揮された日本社会の絆については言及したが、復興支援に関して聞くべき内容はなかった。被災地は震災と原発事故を美談にすることなど望んでいない。課題を直視した対応を求めたい。

▼東奥日報「信頼築く具体策を示せ/岸田首相初の所信表明」
 https://www.toonippo.co.jp/articles/-/704757
▼秋田魁新報「岸田首相所信表明 『分配』の財源明示せよ」
 https://www.sakigake.jp/news/article/20211009AK0016/

▼福島民報「【首相所信表明】具体策がまだ見えない」
 https://www.minpo.jp/news/moredetail/2021100991025

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に関しては「東日本大震災からの復興なくして日本の再生なし。この強い思いの下で、被災者支援、産業・生業の再建、福島の復興・再生に全力で取り組む」という短い文言のみだった。これは、政府が四日に閣議決定した基本方針の中の「東日本大震災からの復興、国土強靱化」の本文の文面とほぼ同じだ。
 前首相が就任直後に出した基本方針には復興の文字はなかった。今回の基本方針は「福島」の固有名詞まで挙げて力点を置くことを強調しており、演説に注目していたが拍子抜けの感が強い。被災者にどう寄り添い、被災地の声を政策に反映させるのか。具体策が聞きたかった。
 (中略)
 過去の政権が地元の訴えを無視してきたとは言わないが、形式的な対話のみに終わっていた印象は拭えない。「車座対話を積み重ね」の言葉の通り、各閣僚が現地に足を運び、住民目線で課題の解決策を見いだすべきだ。

▼福島民友新聞「所信表明演説/『成長と分配』の具体策示せ」
 https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20211009-660444.php

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興は、まだゴールが見えない。歴代首相も口にしてきた「復興なくして日本の再生なし」の言葉を、どう行動で示していくのか注視していきたい。

▼信濃毎日新聞「’21衆院選 所信表明演説 『丁寧な説明』には程遠い」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021100900099

 政治手法では、新型コロナウイルス対策で「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行う」と強調するなど、各所に「対話」と「説明」の言葉をちりばめた。
 ならば聞きたい。所信表明演説だけで衆院選挙に臨む姿勢を、どう説明するのか。
 岸田首相が説明すべきことは数多い。自民党幹事長に起用した甘利明氏の金銭授受問題や、参院選広島選挙区の買収事件で党が1億5千万円を送金したこと、日本学術会議の会員候補を菅義偉前首相が任命拒否した問題、森友学園問題の再調査などである。
 これらを放置したままでは「丁寧な説明」とはいえまい。岸田首相は「言葉」と「行動」が一致していない。これでは政治への信頼回復の道は遠いままである。

▼新潟日報「首相所信表明 信頼の獲得実現できるか」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20211009646462.html

 所信表明は首相が重視する中長期的な目標を列挙し、政策を網羅的にまとめた印象が強い。そうした中で極めて残念なのは原発政策に対する言及がなかったことだ。
 菅前首相は昨年10月に行った初めての所信表明演説で「グリーン社会の実現」の章を立て、温暖化防止へ脱炭素を進めるため再生可能エネルギーを最大限導入し、安全最優先で原子力政策を進めると述べた。
 10年前の東京電力福島第1原発事故以降、本県では原発への不安感は根強い。柏崎刈羽原発を巡る相次ぐ失態で、県民の東電不信はさらに高まっている。
 それだけに、首相には自らの考えを語ってほしかった。

▼中日新聞・東京新聞「民主主義の再生 首相の覚悟が見えない」
 https://www.chunichi.co.jp/article/344458

 岸田氏は首相就任後、民主主義の危機に直接言及しなくなった。森友問題の再調査に否定的で学術会議会員の任命拒否も撤回せず、自民党は選挙違反事件があった参院選広島選挙区への支出一億五千万円の再調査もしないという。
 首相交代とは思えない「安倍・菅政治」の継続だ。総裁選で示した覚悟は何だったのか。
 岸田氏は所信表明で「私をはじめ全閣僚が車座対話を積み重ね、国民のニーズに合った行政を進めているか、徹底的に点検する」と述べたが、民主主義を危機に陥らせた誤りを正さずして、危機を克服することはできない。

▼福井新聞「岸田文雄首相所信表明 具体策、痛みをなぜ語らぬ」
 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1413941

 「被爆地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは『核兵器のない世界』」と大上段に振りかぶりながら「核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努める」では安倍、菅政権と何ら変わらない。地元からは核禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を求める声が上がっているのに、どうこたえるのか。外交・安全保障でも路線継承にとどまらず、緊迫化する台湾情勢を含め総合的な外交戦略を早急に示す必要があるだろう。

▼京都新聞「首相所信表明 政策の根拠が見えない」
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/654191

 人の話をよく聞くことを長所と自認するだけに、「丁寧な説明を大切にする」と繰り返し、「車座対話」を行うなどコミュニケーション重視の姿勢を見せた。
 説明不足を批判された菅義偉前首相との違いを際立たせたといえる。
 ただ、岸田氏が力説した「新しい資本主義の実現」は、具体策に乏しい印象が残った。

▼神戸新聞「所信表明演説/政策実現への道筋を示せ」
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202110/0014745696.shtml

 首相には政策実現への道筋を明確に語る責務がある。ところが演説では、山積する政権の課題に対し、総花的に政策を羅列した印象が拭えない。衆院選を控え、痛みを伴う政策への言及を避けるのではなく、財政再建策や国民負担の方向性も併せて示さなければ説得力に欠ける。
 (中略)
 安倍、菅両政権で相次いだ「政治とカネ」問題も重要事案だが、言及は一切なかった。政治の信頼回復には、十分な説明と国民の納得が欠かせないと肝に銘じてほしい。
 岸田首相は「国民の声を真摯(しんし)に受け止める信頼と共感を得られる政治が必要だ」と力説した。対話重視を貫けるかどうかは、政権の命運を握る。国会軽視の姿勢を改め、丁寧な議論を尽くすことを求めたい。

▼山陽新聞「首相所信表明 政策実現への道筋見えぬ」
 https://www.sanyonews.jp/article/1184085

 一方、自民党総裁選と新政権発足までの動きが注目を集める中、野党が埋没したことも否めない。与党が分配政策にかじを切れば、野党は独自色を出しにくくなる。与党以上に実効性のある生活保障案を示せるかが鍵となろう。

▼中国新聞「岸田首相の所信表明 課題解決へ具体策欠く」
 https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=798928&comment_sub_id=0&category_id=142

 自民党総裁選でも掲げた「新しい資本主義」については、実現していこうと呼び掛けた。被爆地広島から選出された首相として「核兵器のない世界に向け全力を尽くす」とも誓った。
 聞こえの良さと裏腹に、物足りなさが募った。課題解決や目標達成への道筋が示されていないからだ。例えば核なき世界の目標では、米国など核兵器を持っている国と、持っていない国との橋渡しに努めるとの従来の方針を繰り返しただけだった。
 「唯一の戦争被爆国としての責務を果たす」と言うなら、なぜ今年1月に発効した核兵器禁止条約に触れないのだろう。来年春に初めて開かれる禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加を打ち出すべきではなかったか。被爆地で高まっていた期待は、あっさり裏切られた。

▼山陰中央新報「所信表明演説 信頼築く具体策を示せ」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/105504

▼高知新聞「【岸田首相所信】『丁寧な説明』はできたか」
 https://www.kochinews.co.jp/article/493176/

 所信表明で触れなかったのは、忘れていたわけではないだろう。「負の遺産」とどう向き合うのかも政権の評価に影響する。
 森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんについて、世論調査では6割以上が再調査を求めている。自民支持層でも5割を超える。
 「政治とカネ」問題の解明も怠れない。参院選広島選挙区の買収事件を巡る資金問題や、「桜を見る会」前日の夕食会を巡る問題の説明も十分とは言い難い。甘利明幹事長の現金授受問題もくすぶる。

▼西日本新聞「新首相所信表明 有権者の判断材料足りぬ」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/813189/

 国民や党内の賛否が分かれることは慎重に扱い、異論も聞く柔軟性を示したのであれば、従来政権とひと味違う「岸田カラー」と言えるかもしれない。国民との車座対話もそうだろう。
 一方で、菅義偉前首相の「自助・共助・公助」のように、物議を醸しながらも政権の方向性を明確にする言葉はない。岸田政権の姿はまだ像を結ばない。
 こだわりがのぞいたのは「核兵器のない世界」への言及だ。被爆地・広島出身という使命感がうかがえる。それだけに、核兵器禁止条約に触れず、日本の役割についても従来方針を繰り返すにとどまったのは残念だ。

▼佐賀新聞「所信表明演説 信頼築く具体策を示せ」※共同通信
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/752041

▼南日本新聞「[所信表明演説] 『選択』へ具体策提示を」
 https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=144826

 さらに安倍・菅政権が信頼を損なう一因となった「政治とカネ」や森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんの問題に言及はなかった。独善的な姿勢が際立った両政権の「負の遺産」を清算する姿勢がうかがえなかったことは残念だ。
 首相は総裁選でも国民への説明を重視する姿勢を強調してきた。それならば、野党が開催を求める臨時国会での予算委員会に応じ、政策論争を通じて国民に選択肢を示すよう求めたい。

▼沖縄タイムス「[岸田首相 所信表明]美辞ではなく具体策を」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/844194

 沖縄には、外交・安全保障政策の中で言及している。
 「丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築きながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組む」とし、前政権同様、「辺野古沖への移設工事を進める」と明言した。
 県内移設では、沖縄の負担軽減は実現しない。
 2019年の県民投票では、県民の7割超が辺野古移設に反対し、民意はすでに示されている。辺野古移設推進では「信頼関係を築く」ことにはならない。
 来年は復帰から50年になるが、「世界一危険」といわれる普天間飛行場の返還は、日米合意から25年が経過した今も、実現していない。
 「沖縄に寄り添う」と言いながら、新基地建設を強行に進めてきたのが「安倍・菅政権」だった。
 岸田首相が本当に沖縄と信頼関係を築きたいなら、そのための道筋をしっかりと示すべきだ。

▼琉球新報「岸田首相所信表明 沖縄だけを取り残すな」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1404996.html 

 所信表明で首相は「日米同盟の抑止力を維持しつつ、丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築きながら、沖縄の基地負担軽減に取り組みます。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進めます」と述べた。
 新基地の土台を文字通り揺るがす軟弱地盤の存在に目を背け、工事を強行するのにどうして信頼が得られよう。
 歴代政権が呪文のように唱えた「丁寧な説明」という言葉を使ったが、これまで果たされたことがあったか。地元の信頼を得たいのであれば、まずは辺野古新基地を断念し、普天間飛行場の閉鎖へ米政府と交渉するのが筋だ。
 首相はアフリカのことわざを引用し「遠くまで行きたければみんなで進め」と国民の協力を呼び掛けた。
 しかし基地なき沖縄という戦後ずっと続く目標に向かっては「みんなで」進むつもりはなさそうだ。沖縄に言及した部分で最初に抑止力維持を掲げたように、あくまで日米同盟の強化が主である。「みんな」に沖縄は含まれるのか。
 同時に安全保障政策で海上保安能力やミサイル防衛能力の強化も挙げた。
 いずれも沖縄にとって見過ごせない問題だ。
 (中略)
 米国追従の歴代政権は核兵器禁止条約への参加も消極的だったが、「広島出身の総理大臣」として核兵器のない世界を目指すとも述べた。
 広島は、沖縄、長崎とともに国内でも特に平和を希求する地域である。広島から誕生したリーダーであればこそ、平和という芯に貫かれた政権運営に当たってもらいたい。

 

支持率45~59%、岸田政権“ご祝儀”少な目~「新しい資本主義」は耳当たりがいいが「雇用の質」をどう考えるのか

 自民党の岸田文雄総裁が10月4日、国会で第100代首相に選出され、自民、公明両党連立の新内閣が発足しました。岸田首相は同日夜の記者会見で、臨時国会会期末の14日に衆院を解散し、19日公示、31日投開票とすることを表明。これまでは自治体などの準備期間を考慮して11月7日か14日の投開票の公算と報じられていたこともあって、「随分と急ぐんだな」と、ちょっと驚きました。5日付の東京発行の新聞各紙によると、新内閣の刷新感をアピールできる間に衆院選に持ち込むのが得策として、岸田首相自身が決めたことのようです。表向きの理由としても、新型コロナウイルスの感染が今のところは収まっていること、10月21日に衆院議員が4年間の任期を満了するため、衆議院の空白期間をなるべく短くすることなどもあるようです。
 果たして目論見通りに進むのかどうか。新内閣発足に対する世論調査がさっそく5日夕方から夜にかけてネット上で報じられました。いずれも4~5日に実施。朝日新聞調査では、支持率は5割を下回る45%、不支持率は20%でした。毎日新聞と社会調査研究センターの調査でも支持率は49%と5割に届かず、不支持率は40%。以下、読売新聞:支持56%、不支持27%/日経新聞・テレビ東京:支持59%/共同通信:支持55.7%、不支持23.7%―となっており、目にした限りでは支持率が60%を超えた調査結果はありません。
 昨年9月の菅義偉内閣発足時の支持率は、60%台半ばから70%超でした。今回の岸田内閣の支持率は始動時としては低いと感じます。岸田首相が意気込むほどには、民意は「刷新」と受け止めていない可能性があるようです。高い支持を得てスタートした菅政権はこの1年、コロナ対応で失政を繰り返した上に、民意の反対や懐疑に正面から向き合うことなく五輪パラリンピック開催を強行。挙げ句に、一時は「制御不能」と言われるほどに感染が急拡大したことは、記憶に新しいところです。この1年の経験を経て、政権の表紙が変わったぐらいでは、民意はそう簡単に“ご祝儀”をはずむことはなくなった、ということでしょうか。

 さて、岸田内閣の発足を5日付の東京発行新聞各紙はそろって1面トップに据え、総合面や政治面、経済面、社会面にも関連記事を大量に掲載しています。雑駁な印象になるのですが、新内閣や報道に対して感じたことを若干書きとめておきます。

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 ■「新しい資本主義」と雇用の質
 昨年の菅内閣発足時のキーワードは、安倍晋三政権の「継承」でした。岸田内閣については、新型コロナウイルスへの対応が当面の最重要課題である点は当然だとして、政権のキーワードという点で各紙の1面を見渡したところでは「新しい資本主義」がチラホラと目に止まります。岸田首相は会見で「分配なくして次の成長はない」「成長と分配の好循環を実現し、豊かに生活できる経済をつくり上げる」と強調し、「新しい資本主義実現会議」を立ち上げることを表明しました。岸田氏が率いる派閥「宏池会」の創始者、池田隼人首相(当時)が「所得倍増計画」を掲げて1960年代に高度経済成長をもたらしたことをほうふつとさせます。
 在京紙各紙も、この「新しい資本主義」に焦点を当てたサイド記事を総合面や経済面に掲載しています。安倍政権のアベノミクスが格差の拡大を招いたとの指摘があることを意識して、岸田政権の独自色を出そうと意気込んでいる、との見方がおおむね共通しています。
 富の分配は政治の役割であり、そのことを重視するのはいいのですが、具体策となるとまだこれからのようです。懸念は、衆院選です。内容がはっきりしないまま「成長と分配の好循環」という耳当たりの良いスローガンだけが目玉政策のように強調されることになりはしまいか。野党が掲げる格差の縮小・解消策との差異、さらには求める社会観の違いが目に見えるように示され、有権者がはっきり理解できるようでなければならないと思います。マスメディアの役割も重要であり、大きな責任があります。
 アベノミクスでは、企業や富裕層からのトリクルダウン効果は期待外れに終わりました。当たり前だと思います。昭和の高度成長期とは社会の就労構造が大きく様変わりしています。小泉純一郎政権期の雇用・労働面での規制緩和以降、不安定で低賃金の非正規雇用が増え続けています。かつてのように社会に分厚い中間層を復活させたいというのなら、この「雇用の質」の問題をどう考えるのか。岸田首相にそのことを問うてみたいと思います。そもそも、岸田氏はアベノミクスからの脱却を明確にするのかどうか。そうだとしたら、岸田首相は総裁選で大きな借りができた形の安倍元首相に面従腹背で臨むことになります。その胆力があるのかどうか。衆院選を前に、「新しい資本主義」にはいろいろな意味で警戒が必要だと感じています。

 ■抜てきの一方で77歳初入閣が2人
 自民党の役員人事では、麻生太郎氏を副総裁、甘利明氏を幹事長に据え、総裁選で安倍元首相が強力に支援した高市早苗氏を政調会長に就かせるなど、およそ刷新感、清新さは感じられませんでした。「岸田カラー」は組閣で、というつもりなのか、閣僚20人のうち初入閣は13人に上りました。うち3人は衆院当選3回の“若手”です。この点をマスメディアはおおむね好意的に取り上げているようです。
 ただ、少し引いて新内閣の全体を俯瞰して眺めてみると、違った様相が見えてくるように思います。
 一つは女性閣僚がわずか3人という点です。東京五輪組織委員会の森喜朗会長(当時)の女性蔑視、「わきまえる」発言以降、日本社会でもジェンダーバランスに対する意識が高まっています。もっと大胆に女性閣僚を増やしてもいいはずです。
 初入閣組も前述の若手3人に注目が行きがちですが、13人のうち77歳が2人、65歳以上の高齢者は計6人に上ります。民間企業の一般的な定年年齢の60歳で線引きすれば8人。年齢は問題ではなく肝心なのは資質と能力かもしれません。ただ、失礼な言い方かもしれませんが、この年齢になるまで当選回数は積み上げたものの入閣の機会がなかった政治家が、これを機に格段の能力を発揮する、となるのでしょうか。正直なところ疑問です。果たして岸田首相自身の人選なのか。仮に、各派閥の意向が反映された人選なのだとすれば、いつもながらのことで、自民党の変革、改革とはほど遠いと思います。

 ■「不愉快だ」
 党役員人事や組閣の内幕をめぐる各紙のリポートでは、日経新聞総合面の「岸田体制『3A』不協和音/安倍氏 要望通らず不満/麻生氏 甘利氏 人事に影響力」の記事を興味深く読みました。
 「3A」は安倍、麻生、甘利の長老3氏の頭文字を取った表記です。3人それぞれに岸田氏の総裁選勝利に寄与しており、今や「3A」が岸田氏の後ろ盾という党内力学は、新聞各紙もおおむね共通した見方です。麻生氏は副総裁、甘利氏は幹事長と中枢重要ポストに就き、さぞや満足だろうと思います。安倍氏にしても、支援した高市氏が政調会長に就き、安倍氏が影響力を持つ細田派から4人が入閣、うち実弟の岸信夫防衛相は再任と、“陰の実力者”としては十分満足ではないかと思ったら、そうではないとのことです。
 日経新聞の記事によると、安倍氏は側近の萩生田光一氏のポストについて党幹事長か官房長官を求めていたのに、萩生田氏は文部科学相から経済産業相に横滑りでした。安倍氏は周辺に「正直、不愉快だ」とつぶやいたとのこと。一方で岸田派では、無派閥ながら安倍氏に近い高市氏を含めて、党3役のうち2人に加え官房長官まで細田派が占めているとの認識があり「細田派にそこまでの借りはない。譲りすぎだ」との声も出ているとのことです。
 岸田首相がどれだけ自民党の変化を強調しようとも、やはり内情はそう簡単には変われない、ということなのではないかと思います。

※参考過去記事

news-worker.hatenablog.com

 以下に東京発行各紙の5日付朝刊の1面と総合面の主な記事と社説の見出しを書きとめておきます。「新しい資本主義」「分配と成長」に焦点を当てたサイド記事も含みます。
▼朝日新聞
1面トップ「衆院選 31日投票/解散17日後は最短 任期満了初超え/岸田新内閣 派閥と刷新感重視/14日解散 19日公示」
1面「新しい資本主義担当相 新設」
2面「始動 いきなり選挙/『負の遺産』対応 歯切れ悪いまま」「野党『人の話を聞く、どこが』」
3面「コロナ・経済 続く難題/3閣僚一新 第6派の備えは/大型補正予算 問われる中身」
7面(経済)「『分配なくして成長なし』道筋は/岸田内閣 経済立て直しの『最大の柱』」
社説「岸田新内閣が発足 実行問われる『寛容な政治』」/「政高党低」に変化も/コロナ対応猶予なし/選挙を急ぐ党利党略

▼毎日新聞
1面トップ「分配重視 経済再生強調/岸田内閣発足/『新しい資本主義』会議発足」
1面「衆院選31日投開票」
2面「経済底上げ 新味薄く/追加対策に数十兆円」「日米基軸の外交 継承」「脱炭素 問われる手段」
3面・クローズアップ「『ご祝儀』狙い短期決戦/コロナ『収束』うかがい」「若手起用で刷新演出」「不支持冷遇『ノーサイド』どこへ」
社説「岸田新内閣が発足 政策を転換できる布陣か」/拭えぬ「安倍・麻生」色/分配重視の理念実行を

▼読売新聞
1面トップ「岸田内閣 発足/衆院選31日投開票 19日公示/コロナ対策・経済再生 注力」
1面「『期待』を『納得』にできるか」伊藤俊行編集委員
2面「『所得再分配』掲げ」「感染症対応 一元化・経済安保 法整備」「対中国『言うべきこと言う』」
3面・スキャナー「『速攻』首相決断/勢い・コロナ・外交日程考慮」「甘利氏ら 存在感ズシリ/『閣僚 おとなしい人多い』『党高政低』指摘も」
7面(経済)「『アベノミクス』修正/分配 中間層に手厚く」
社説「岸田内閣発足 難問山積に総力で立ち向かえ 国家像と具体策を競う衆院選に」/コロナ克服の道筋を/「成長と分配」両立が鍵/安保戦略改定は急務だ

▼日経新聞
1面トップ「岸田内閣 発足/衆院選31日投開票 戦後最短解散得へ/『コロナ対策急ぐ』」
2面「衆院選 異例の短期決戦/高い支持保ち投開票狙う/選挙日程で主導権」
3面「岸田体制『3A』不協和音/安倍氏 要望通らず不満/麻生氏 甘利氏 人事に影響力」
4面(政治・外交)「個人への現金給付 経済対策の目玉/衆院選公約、週内にも骨格」
5面(経済・政策)「金融所得課税 見直し検討/首相『成長と分配の好循環』掲げ/『新しい資本主義』会議新設」
社説「新政権は日本再生への道筋を示せ」/基礎固めの論功人事/成長戦略の具体化を

▼産経新聞
1面トップ「岸田内閣発足『新時代共創』/衆院選19日公示 31日投開票/『新しい資本主義』目指す/対コロナ、健康危機管理庁」
1面「『無味無臭』で国難に挑めるか」大谷次郎政治部長
2面「岸田人事 安定を優先/後ろ盾は細田・麻生派」「発信力磨き 闘志前面/岸田首相 我慢の連続乗り越え」
3面「政権発足 一気に選挙/自民、公約づくり『3日で』」「所得再分配の政策重視/成長戦略と両輪不可欠」
社説(「主張」)「岸田新内閣 実行力こそ問われている 総裁選の約束を明文化せよ」/若手の登用を歓迎する/エネ基計画の見直しを

▼東京新聞
1面トップ「衆院選31日投開票/岸田政権発足/14日解散 19日公示/安倍・麻生氏の影響 色濃く」
1面・解説「官邸主導から党主導へ」
2面・核心「『ご祝儀相場』狙い 最短日程/衆院選 31日投票の背景は/解散5日後公示『コロナ沈静化のうちに』/予算委見送り反発 野党『政策論争を』」
3面「野党『乱暴な政権』対決鮮明/新内閣の支持率警戒 候補一本化急ぐ」
3面「深夜の負担会費 説明機会に遅れ/閣僚就任会見 異例の見送り」
社説「岸田内閣が発足 民主主義再生こそ急務」/軽視された最高機関/安倍・菅総括に否定的

「自民党劇場」が圧倒、野党の動きは紙面で埋没~有権者の政権選択に資する報道への課題

 自民党の岸田文雄・新総裁の選出に伴い、臨時国会が10月4日に召集。岸田氏が首相に選出され、組閣が行われます。既に党役員人事では、麻生太郎副総裁、甘利明幹事長、総裁選で安倍晋三前首相が強力に後押しした高市早苗氏が政調会長など、「安倍・麻生・甘利」の「3A」を手厚く遇しています。10月1日付の新聞各紙の紙面を見ても「岸田人事 安倍カラー」(朝日新聞)、「岸田氏『3A』が後ろ盾」(読売新聞)、「『3A』取り込み基盤強化」(産経新聞)など、“3A支配”をうかがわせる見出しが目立ち、「安倍菅政治」からの変化、改革を感じ取るのは困難です。
 臨時国会会期末の10月14日に衆院解散の見通しとなっており、11月には4年ぶりの衆院選が実施されます。首相は国会議員の中から国会の議決で指名することとなっており、衆院の議決が参院に優越します。そのため衆院選は有権者による政権選択の選挙と位置付けられます。投票に際しての有権者の判断に大きく影響するのがマスメディアの報道です。選挙が公示されれば、新聞も放送も各政党、各候補の扱いについて「公平」「平等」に配慮します。特に放送法の規制を受ける放送メディアは、各党各候補の訴えは秒単位でそろえます。しかし、有権者の判断に資するための報道の観点から考えれば、公平性は公示後だけのことではないはずです。
 自民党総裁選は、直後に衆院選を控えていることから、終始一貫して「自民党の選挙の顔選び」の性格を持っていました。候補が男女2人ずつの同数となり、それぞれが主張する政策にもある程度の違いがあったりして、マスメディアも連日、大きく報じました。一方でこの間、野党の側にも、第一党の立憲民主党が選挙公約を発表したり、安倍政権の経済政策アベノミクスの検証結果を公表したり、といった衆院選に焦点を当てた重要な動きが断続的に続きました。マスメディアも個別に報じてはいましたが、ごく一部のメディアをのぞいては自民党総裁選の報道の影に隠れるような扱いでしかありませんでした。どこまで社会に届いたのかは疑問です。総じて、ここまでのマスメディアの報道は有権者の目には「自民党劇場」一色に映っていたのではないかと感じます。

 一つの試みなのですが、以下に、東京発行の新聞6紙を対象に、自民党総裁選告示翌々日の9月19日付から投開票当日の29日付まで11日分の朝刊紙面で、総裁選と野党の衆院選対策の記事がそれぞれどのように扱われたか、その掲載ページ数をまとめてみました。見出しや記事が占める段数(大きさ、広さ)、1ページに関連記事が1本だけか複数あるかなどの差異は無視して、見出し1段のベタ記事が1本だけでも「1ページ」の報道とカウント。同様に1面トップで関連記事が複数あっても「1ページ」です。ちょっと乱暴な比較かもしれませんが、多くの新聞が「自民党劇場」との比較で、いかに野党のニュースの扱いが小さかったか、ひとつの目安にはなると思います。

・朝日新聞 自民25ページ(うち1面5回)/野党10ページ
・毎日新聞 自民26ページ(うち1面6回、1面トップ2回)/野党8ページ
・読売新聞 自民31ページ(うち1面7回、1面トップ4回)/野党10ページ
・日経新聞 自民30ページ(うち1面8回)/野党8ページ
・産経新聞 自民27ページ(うち1面7回、1面トップ2回)/野党7ページ
・東京新聞 自民13ページ(うち1面3回、1面トップ1回)/野党9ページ
※告示翌日の9月18日付の各紙紙面については、以下の記事にまとめています。
https://news-worker.hatenablog.com/entry/2021/09/19/115830

news-worker.hatenablog.com

 自民党総裁選は計152ページ、野党の衆院選関連記事は計52ページ。これだけでも3倍の開きがありますが、実際には総裁選では記事1本あたりの行数が長いものが多く、1ページに複数の記事が掲載されたこともたびたびで、野党の選挙関連記事と比較すれば、有権者の目には圧倒的な情報量として映ったはずです。

 もちろん、選出される自民党の新総裁は次期首相であり、その選出過程をつぶさに報じていくことの意味が決して小さくないことも、その通りだと思います。しかし、最後の局面でメディアはこれもまた決して小さくはないミスリードをしました。
 世論調査で「次の首相にふさわしい政治家」のトップとして名前が挙がっていた河野太郎氏は、結局は党員票の半分も取れず、議員票は高市氏にも大きく水を開けられて、1回目の投票から1位を取れず、岸田氏に惨敗しました。しかし、東京発行の新聞各紙を例に取ると、総裁選投開票当日の9月29日付朝刊では、以下のような記述が並んでいました。
 ・朝日新聞「党員・党友票(地方票)で優位とみられる河野太郎行政改革相がトップに立つとの見方が強いが、過半数に達せず、上位2人の決選投票となる情勢だ」
 ・毎日新聞「党員票でリードする河野氏は1回目の投票で1位になる可能性が高いとみられるが、勝利に必要な過半数の獲得は難しい状況だ」
 ・読売新聞「党員票を含めると、河野氏がトップで、岸田氏、高市氏が追う展開だ」
 ・産経新聞「河野氏は1回目で最多となる可能性があるが」

 「見方」「可能性」などの表現があるものの、河野氏が1回目でトップに立つことを各紙とも想定していたことは明らかで、結果的にせよミスリードです。事後の検証記事で、実は河野氏が途中から失速していたこと、3Aの思惑が「岸田総裁」へとそろっていったことを描いてはいるのですが、それはそれで「自民党劇場・番外編」ではないかとも感じます。
 確かに結果が読みづらい総裁選だったのでしょう。そうであれば、結果の予想はほどほどにして、別の面に注力する報道のやり方もあるのではないかと思います。
 総裁選を巡っては、安倍晋三前首相の「桜を見る会」の疑惑解明を求める弁護士グループが4候補へ公開質問状を送りました。まともに回答したのは野田聖子氏のみ。岸田、高市両氏は回答なし。河野氏に至っては受け取り拒否でした。まさに「ブロック太郎」の面目躍如ですが、仮にも首相を目指すというのに、この一事でもって不適格と言うべきだと思います。そうした総理総裁候補の「適格性」の報道も、政権選択の判断に意義は小さくありません。弁護士グループは記者会見でこのことを公表しているのに、紙面で報じたのは朝日新聞と東京新聞だけでした(共同通信は配信)。
 この自民党総裁選から有権者の政権選択が始まっているとの意識を強く持てば、総裁選4候補の政策と共に、野党の政策も並べて提示するような報道もあってよかったと思います。東京発行の新聞の中では、東京新聞がその視点で、4候補と共に野党第一党の立憲民主党の政策も併記する報道を続けていたのが目を引きました。
 有権者の政権選択に資するために、どんな情報をどのように提示していくのか。10月4日以降のマスメディアの報道を注視したいと思います。
 

安倍前首相のアシストで岸田氏圧勝~衆院選へ、「自民党劇場」で終わらない報道が必要

 自民党の新総裁に9月29日、岸田文雄氏が選出されました。国会議員票と同数の党員票の獲得を競った1回目の投票で1位。世論調査などでトップの人気があった河野太郎氏を1票差で交わしました。国会議員票の比重が圧倒的に高い決選投票では、河野氏に大差を付けて圧勝しました。30日付の東京発行新聞各紙の検証記事では、高市早苗氏を推した安倍晋三前首相が同党の国会議員に強力に高市氏への投票を働きかけた結果、河野氏に流れるはずだった議員票の相当数が高市氏に回った結果、岸田氏が1回目の投票から首位に立つことになった、との見方がおおむね共通しています。岸田氏の圧勝は安倍前首相のアシストがあってこそでした。

 政策面でも、安倍前首相から菅義偉首相へと続いている路線を、岸田氏も基本的に引き継ぐようです。特に森友学園への国有地払い下げ、「桜を見る会」の疑惑、日本学術会議の会員候補6人の任命拒否などの徹底解明に否定的な姿勢は、安倍菅政治のマイナス面をも継承するとしか評価のしようがありません。岸田氏が、自身が総裁になったことで自民党の変化をいくらアピールしても、どこまで説得力があるか疑問です。
 「『党再生』にはほど遠い」(朝日新聞)、「権力の二重構造に懸念」(毎日新聞)、「党改革の実現が課題だ」(読売新聞)、「派閥に支えられた勝利」(日経新聞)、「結局『永田町の論理』か」(東京新聞)―。各紙の社説の見出しを追うだけでも、岸田自民党が“変化”とはほど遠いことがよく分かるように思います。

 来週には菅内閣が総辞職し、国会で岸田氏が首相に選出され、岸田内閣が発足します。その直後には衆院選があります。岸田内閣が実績を積む時間はありません。有権者が自民党をどう評価するかは、この総裁選のありようと岸田氏の立ち居振る舞いが大きな比重を占めます。一方の野党の側で選挙区での候補者一本化の調整が進み、なおかつ目指す社会観、価値観で自民党と明確な違いを有権者に分かりやすく示すことができれば、次の衆院選は、政権選択の大きな意味を持つ選挙になることが期待できます。
 そうした観点からマスメディアの報道に対して思うのは、自民党の総裁選、あるいは今後の組閣を大きく報じるだけでなく、衆院選に向けた野党の公約発表や各党間の共闘の動きも同時に丁寧に報じる必要がある、ということです。そうでなければ、ただ単に「自民党劇場」を報じるだけになってしまいます。
 9月30日付の東京発行新聞各紙では、野党の反応の記事も各紙とも掲載してはいるのですが、衆院選の公約にまでは触れていません。唯一、東京新聞が岸田氏と立憲民主党の政策や個別課題へのスタンスを対比させて一覧表にしているのが目を引きました。
 有権者の投票の判断に資する情報提供ができているのかどうかは、マスメディアの課題だと思います。

 

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 以下は、岸田新総裁選出を報じる9月30日付の東京発行各紙の1面と総合面の主な記事と社説の見出しです。野党に触れた記事も書きとめておきます。
▼朝日新聞
1面トップ「自民総裁に岸田氏/決選投票 河野氏破る/首相に来月4日選出/要職に萩生田・甘利・高市氏 浮上」
1面「『安倍・菅路線』向き合う時」坂尻顕吾政治部長
2面・時時刻刻「岸田氏 議員票で圧倒/安倍・麻生・甘利氏『3A』結束 二階派、特定候補支援できず」「党人事『たたき台つくり、1日かかる』/『傀儡と見られる』不安も」
※野党:4面「『安倍・菅政権の継承だ』/野党、衆院選へ対立軸探る」
社説「自民新総裁に岸田氏 国民の信を取り戻せるか」/『党再生』には程遠い/安倍氏の影拭い去れ/選挙前 国会で論戦を

▼毎日新聞
1面トップ「自民総裁に岸田氏/決戦で河野氏破る/来月4日 第100代首相に」
1面「甘利、萩生田氏が浮上/幹事長・官房長官 3候補処遇も焦点」
1面「党の変化 具体的に示せ」中田卓二政治部長
3面・クローズアップ「岸田氏『長老』の影/高市氏と『1・3位連合』」「河野氏、離反で伸びず」「人事 独自色か均衡か」
※野党:2面「野党『本質変わらず』/『ご祝儀相場』警戒」
社説「自民新総裁に岸田氏 『安倍・菅』路線から脱却を」/権力の二重構造に懸念/国民の審判は衆院選で

▼読売新聞
1面トップ「自民総裁 岸田氏/決選投票 河野氏破る/4日首相就任 年内に数十兆円対策」
1面「幹事長に甘利氏 調整/高市、萩生田氏 要職起用案」
1面「決め手になった『安定感』」村尾新一政治部長
3面・スキャナー「岸田氏 議員票圧倒/決戦『高市票』取り込む/安倍氏が影響力」「河野氏『党員票で勢い』不発」
※野党:4面「野党、対決姿勢強める/衆院選見据え 国会論戦を要求」
社説「岸田自民新総裁 政策を肉付けし安定政権築け/聞く力に実行力と発信力が必要」/スピード感持ち決断を/衆院選にどう臨むか/党改革の実現が課題だ

▼日経新聞
1面トップ「自民総裁に岸田氏/決選投票、河野氏下す/来月4日、首相に指名/甘利氏、四役で調整 高市氏も要職」
1面「今の日本に猶予はない」吉野直也政治部長
3面「勝敗決した2日前の会談/安倍・麻生・甘利氏でシナリオ/自民、支持回復で緩み」
社説「国民の声に耳を傾ける岸田政権に」/派閥に支えられた勝利/菅内閣の教訓に学べ

▼産経新聞
1面トップ「岸田氏 自民新総裁/コロナ対策『全て懸ける』/甘利氏 党四役で起用案/決選投票 河野氏破る」
1面「3度目挑戦 岸田氏覚悟の変身」佐々木美恵編集局次長兼政治部長
2面「河野氏 伸びなかった議員票」「高市氏『次』につながる敗戦」「野田氏 上積みも上位争い絡めず」
3面「岸田氏 保守系と距離感課題/『改憲・皇位継承』難題続々」
※野党:5面「野党『自民変わらない』/予算委での論戦要求」
社説(「主張」)「岸田政権誕生へ 国民を守り抜く首相たれ 信頼獲得へ政策遂行が重要だ」/コロナで実績を挙げよ/中国が50年ぶり論点に

▼東京新聞
1面トップ「自民新総裁 岸田氏/第100代首相へ 4日新内閣/決選投票 河野氏破る」
1面・解説「安倍・菅政治の継続選択/『負の遺産』向き合わず」
2面・核心「路線修正でもアベノミクス評価/しがらみ多く実行力に疑問符/立民、衆院選へ『説明しない政治』に照準」
※野党:3面「野党、政権浮揚を警戒/『中身変わらない』」
社説「岸田氏新総裁に 結局『永田町の論理』か」※中日新聞と共通

コロナ死者1万7千人超、在宅死続出に、総裁選候補者は当事者意識があるだろうか~宝島社が今度は“見殺し”広告

 出版社の宝島社が、9月22日付の朝日新聞、読売新聞、日経新聞の各朝刊に、見開き2ページ前面を使った企業広告を出稿しました。放り出されたようなクマのぬいぐるみと、新型コロナウイルスとおぼしき赤い球体。「国民は、自宅で見殺しにされようとしている。」との大きめの活字の後に、小さな文字列が以下のように続きます。
 「今も、ひとりで亡くなっている人がいる。/涙がでる。/怒りと悲しみでいっぱいになる。/この国はいつから、こんなことになってしまったのか。/命は自分で守るしかないのか。」 ※「/」は改行
 宝島社の公式サイトには、広告意図が掲載されています。

 新型コロナウイルスによる医療逼迫が起きました。
 新規感染者は減少しているとも言われますが、
 いまも十分な治療を受けられないまま、亡くなるかたもいます。
 信じられないことですが、これは現実です。
 こうなる前に、できることはなかったのでしょうか。
 今後、再び感染が拡大した時の対策は、講じられているのでしょうか。
 この広告が、いま一度考えるきっかけになれば幸いです。

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※写真出典・宝島社公式サイト 

https://tkj.jp/company/ad/2021/index5.html

 ブランケット判と呼ばれる大きなサイズの新聞紙全体を使っているだけに、実際に手に取って眺めると、ほかの媒体にはない迫力を感じます。
 宝島社はことし5月11日付の朝日、読売、日経3紙にも、新型コロナウイルスを巡る企業広告を出稿しています。このときは「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」と、直接的な表現で政治を批判していました。
※参考過去記事
「宝島社 タケヤリ広告に改めて思う『だまされることの罪』 ※追記 宝島社のヘイト本」=2021年5月11日
 https://news-worker.hatenablog.com/entry/2021/05/11/230838

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 その続編ということになるのでしょうか。政治の無策の果てに、今や新型コロナウイルスに感染しても入院すらままならず、自宅で死んでいく人が出ていることへの怒りと悲しみを訴えています。

 厚生労働省のまとめによると、前作の広告が掲載された5月11日時点での新型コロナウイルスによる日本国内の死者は11060人でした。9月21日時点では6200人余り増えて17269人に上っています。
※出典 https://www.mhlw.go.jp/stf/covid-19/kokunainohasseijoukyou.html

 在宅死については、以下のような報道がありました。
※NHKオンライン「コロナ感染 自宅で死亡した人 8月は250人 7月の8倍に 警察庁」=2021年9月13日
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210913/k10013257851000.html

 新型コロナウイルスに感染し、自宅などで体調が急に悪化して亡くなった人は、8月は250人に上り、前の月、7月の8倍に急増したことが、警察庁のまとめで分かりました。50代までの比較的若い世代がおよそ半数を占めていて、専門家が注意を呼びかけています。
 (略)
 去年3月から先月までの合計では、新型コロナに感染して自宅などで亡くなった人は、警察が把握しているだけで817人に上っています。

 5月11日から9月22日までをあらためて振り返ってみます。まず思うのは、東京五輪・パラリンピックの強行です。終わった後でこそ、マスメディア各社の世論調査では「開催して良かった」との積極評価の回答が消極評価を上回りましたが、事前の民意は今夏の開催には反対の意見が多数でした。にもかかわらず、またなぜパンデミックの最中に無理を押して開催しなければならないのか、菅義偉政権からも大会組織委員会からも納得性が共有できるような説明がないまま、両大会は強行されました。挙げ句の果てに、五輪大会の期間中に東京のコロナ感染者は急増し、専門家が制御不能と評するほどの惨状を呈しました。
 五輪とパラリンピック自体は世論に好意的に受け止められましたが、菅首相がもっとも期待していたはずの政権浮揚には結びつかず、最終的には退陣を表明するに至りました。そして今は、事実上の後任首相選びである自民党総裁選が繰り広げられています。安倍晋三前首相以来の9年近くに及ぶ「安倍・菅政治」の検証と総括が不可欠なはずですが、実情はイメージと人気を競う「自民党劇場」とも呼ぶべき状況です。

 総裁選への関心は、どうしても誰が優位かに収れんしがちです。事実上の次期首相選びであることから、それも仕方がない面はあるのですが、それにしてもコロナ禍で死者が1万7千人を超え、うち自宅などで亡くなった人が800人超に上っていることに対して、総裁選の各候補者にどこまで当事者意識があるのか疑問です。それをどう問い報じていくかは、マスメディアの課題でもあるように思います。宝島社の広告を見ながら、そんなことを考えています。

「自民党劇場の人気投票」の伝え方と課題~有権者の政権選択を見据えた報道が必要

 菅義偉首相の自民党総裁職の任期満了に伴う党総裁選が9月17日、告示されました。かねて立候補を表明していた河野太郎、岸田文雄、高市早苗の3氏に、直前になって推薦人20人の確保に至った野田聖子氏の4人の争いになりました。世論調査などで不人気ぶりが鮮明だった菅首相が続投を断念したこと、今秋に衆院選が控えていることから、「選挙の顔」を選ぶ色彩が強く、既に「自民党劇場の人気投票」に陥っている様相です。
 本来は、安倍晋三前首相、菅首相と続いた2012年12月以来の自公政権の政治を検証、総括する視点が必要なはずです。この間、日本社会では分断が深まり、官僚機構は政治への忖度ばかりが目立ち、残すべき公文書を廃棄したり、改ざんしたりするまでに堕しました。国会でも記者会見でも、首相は聞かれたことに答えず、「説明しない政治」が続いています。安倍前首相、菅首相と2代続いての“政権放り出し”というのに、河野、岸田両氏はそれぞれに安倍氏の顔色をうかがうかのような言動が目立ち、高市氏は安倍氏以上に安倍カラー全開の右派ぶりです。とりわけ森友学園、「桜を見る会」、河井元法相夫妻の各疑惑、日本学術会議の任命拒否などを巡っては、3氏いずれが総裁になっても、進展は期待できそうもありません。野田氏が加わったことで、ようやくほかの3氏とは異なる主張もみられるようになりましたが、その野田氏は劣勢が報じられています。
 新聞の深い読み手であるプチ鹿島さんは文春オンラインのコラムで、河野、岸田両氏が森友問題で露骨に安倍氏への配慮を見せたことを評し「かつて安倍氏は『日本を取り戻す』と言ったが今回の総裁選は『安倍を取り戻す』選挙のようにみえる」と指摘しています。言い得て妙です。
 ※文春オンライン(9月14日)「『森友問題を蒸し返すな』総裁選に“安倍の黒い影”が…『異端児』河野太郎が“安倍後継の本命”だと思うワケ」
 https://bunshun.jp/articles/-/48583

bunshun.jp

 東京発行の新聞各紙は総裁選告示を翌18日付朝刊で、そろって1面で扱いました。紙面の主見出しを並べてみます。
 朝日新聞:1面トップ「自民総裁選 4氏立候補」
 毎日新聞:1面トップ「衆院選の『顔』争い」
 読売新聞:1面トップ「コロナ・経済 4氏論戦」
 日経新聞:1面トップ「総裁選 派閥色薄く混沌」
 産経新聞:1面トップ「『安保』『皇位継承』で温度差」
 東京新聞:1面準トップ「『森友再調査』野田氏が明言」

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 毎日新聞の「『顔』争い」が端的にこの総裁選の様相を言い表しているように感じます。一方で、東京新聞の野田氏の主張の主見出しは、9年に及ぶ安倍・菅政治の検証や総括がおろそかにされていないか、と問いかけています。
 東京新聞は1面トップにしなかった点だけでなく、もう一つ、他紙とは際立った特徴があります。3面に、森友問題解明に対する各候補のスタンスを詳述したサイド記事が載っているのですが、4人と並んで野党第一党の立憲民主党にも言及していることです。「総裁選で問われる政策に関し、四候補と衆院選で政権を争う立憲民主党の立場を分析する」としており、今後も随時、テーマごとに4氏と立憲民主党の主張を対比していくようです。
 自民党総裁選を経て菅氏の後継首相が決まりますが、その直後に衆院選が控えています。有権者の立場では、自民党員しか参加できない総裁選ではなく、衆院選にこそ当事者性があります。ましてや、衆院選は政権選択の意味を持っています。総裁選の報道に際しても衆院選を見据えて、論点ごとに野党はどのような主張を持っているのかを合わせて報じていくことが必要です。そうでなければ、総裁選自体が「自民党劇場の人気投票」に終わるだけでなく、報道までもが劇場型で終わってしまうことを危惧します。

 ■自民党劇場に比べ野党公約への冷淡さが顕著

 試みに、告示前までの各紙の一端の記録として、9月8日付から告示日当日の17日付朝刊までの9回(13日付は休刊日のため発行なし)を対象に、総裁選の関連記事を1面に掲載した回数を調べてみました。以下の通りです。
 朝日新聞7回 うち1面トップ2回
 毎日新聞4回 うち1面トップ1回
 読売新聞9回 うち1面トップ2回
 日経新聞8回 1面トップゼロ
 産経新聞9回 うち1面トップ3回
 東京新聞1回 1面トップ1回

 新聞の1面はその日の紙面に収容されている幾多のニュースの中でも、その新聞が特に優先順位が高いと判断した重要ニュースが並んでいます。1面トップのニュースが最重要ニュースということになります。総裁選の告示前に、立候補の動きや党内の各派閥の動向、誰が誰を支援するのかといったことがこれだけ頻繁に、東京新聞以外の各紙で1面に掲載されたことは、やはり劇場型報道の側面が強いと言わざるを得ません。
 しかもこの間、野党の側でも動きがあったのに、自民党総裁選と比べれば冷淡とも言える扱いでした。各紙の掲載面と見出しの大きさ、主見出しを並べてみます。
▼9月8日付 立憲民主党が衆院選公約第1弾を発表
・朝日:1面トップ5段「立憲 疑惑解明の争点化狙う」
・毎日:5面(総合)2段「立憲 政権公約第1弾」
・読売:4面(政治)3段「立民『ゼロコロナ』触れず」
・日経:4面(政治・外交)3段「コロナ対策 司令塔組織」
・産経:5面(総合)2段「『枝野内閣』初閣議で7政策」
・東京:2面(総合)3段「対コロナ 司令組織創設」

▼9月9日付 野党4党と市民連合の政策合意
・朝日:3面(総合)3段「野党4党 共通政策に合意」/4面「野党候補一本化焦点に」・視点「『選挙互助会』にとどまるな」
・毎日:5面(総合)3段「衆院選へ4野党が政策」 ※高市表明は2面3段
・読売:4面(政治)3段「4野党 衆院選へ政策協定」
・日経:4面(政治・外交)3段「野党4党、共通政策合意」
・産経:4面(総合)3段「4野党 共通政策を締結」/「候補一本化急ぎ妥協」
・東京:1面トップ・ヨコ1段「共通政策 自公と対立軸」 ※高市表明は3面(総合)2段

▼9月14日付 立憲民主党が衆院選公約第2弾を発表
・朝日:3面(総合)3段「夫婦別姓・LGBT法 公約」
・毎日:5面(総合)2段「立憲『多様性推進』」
・読売:4面(政治)2段「LGBT法制定 公約」
・日経:4面(政治・外交)3段「立民、多様性実現へ政策」
・産経:5面(総合)3段「結党1年 浸透が課題」
・東京:3面(総合)3段「夫婦別姓・LGBT法 明示」

 朝日新聞や東京新聞には時折、重要ニュースとして扱うスタンスがうかがえますが、全体としては自民党総裁選の影に隠れている感は否めません。
 自民党劇場のような派手な動きを野党が作り出せていない、との一面もありますが、少なくとも報道は「民意の選択」の観点を忘れることなく、総裁選の人気投票だけではない、衆院選を見据えた広く奥深い視点が必要だと思います。

 以下に、総裁選告示を伝える各紙の18日付朝刊の主な記事と社説の見出しを書きとめておきます。
【朝日新聞】
・1面トップ「自民総裁選 4氏立候補」/「3氏『決選投票の公算大』/新首相 来月4日に選出へ」
・2面「表争奪 重なる戦略」「河野氏・野田氏 地方票獲得狙い『国民重視』」「岸田氏・高市氏 決選投票にらみ議員票固め」
・3面 ※各候補の目玉政策
・4面 ※各候補の素顔/「野党『なぜ国会開かぬ』/総裁選巡り 主張重なり危機感も」
・社会面トップ「総裁誰に 党員見極め」
・社説「総裁選告示 『負の遺産』にけじめを」

【毎日新聞】
・1面トップ「衆院選の『顔』争い/自民総裁選告示 4氏立候補/29日投開票」
・3面:クローズアップ「票固め 4氏駆け引き」「河野氏『人気者連合』で攻勢/岸田氏 議員票で『逆転』狙い/高市氏 安倍氏加勢 保守前面/野田氏 多様性軸 差別化図る」
・4面「期待と不安 論戦開始」/「『職場放棄』野党批判/コロナ審議を要求」
・社会面トップ「響いた?4候補の演説」※識者が採点
・社説「自民党総裁選が告示 脱『安倍・菅』が問われる」

【読売新聞】
・1面トップ「コロナ・経済 4氏論戦/自民総裁選告示/29日投票」/「臨時国会来月4日召集 新首相選出」
・2面「北の脅威 対応論点」「『敵基地攻撃能力』温度差」「党改革や若手登用 提案」
・3面:スキャナー「コロナ 独自色競う/アベノミクス『加速』『修正』」「政策作り ブレーン多様」※各候補の主な主張
・4面「推薦人 陣営の思惑反映」/※各候補「こんな人」/ドキュメント・ポスト菅/「野党、国会論戦を要求/『本来の仕事を』総裁選批判」
・社会面トップ「コロナ下 4候補に注文」※医療機関や飲食店の受け止め、反応
・社説「自民総裁選告示 国家観に基づき政策を論じよ」

【日経新聞】
・1面トップ「総裁選 派閥色薄く混沌」
・3面「日本の統治 立て直せるか/コロナ・経済 政策論争」※主な政策/「危機意識を問う総裁選」吉野直也政治・外交グループ長
・4面「推薦人が映す党内基盤」/「4候補 語る言葉は」 ※ワードクラウド/短信「枝野氏、コロナ軽視批判」
・第2社会面 ※医師や旅館の受け止め、反応
・社説「コロナ後をにらんだ議論深める総裁選に」

【産経新聞】
・1面トップ「『安保』『皇位継承』で温度差/自民総裁選告示 4氏の争い」/「女性2人 訴え幅広く」
・3面「自民2大勢力 代理戦争/菅&二階氏 岸田氏と遺恨残る 3A 宿敵連携の河野氏不信」/「株価上昇『河野氏に期待』/改革姿勢好感 4氏の制作 市場注視」/※各候補の横顔
・4面「改革派は誰か 乱戦開幕」※ドキュメント/「推薦人 陣営戦略映す」/※各候補の所見発表要旨
・社会面トップ「次のリーダー 我が街から」
・社説(「主張」)「自民総裁選告示 『日本の舵取り』力量競え コロナ禍克服への具体論を」/イメージ先行に陥るな/皇位の男系継承を守れ

【東京新聞】
・1面準トップ「『森友再調査』野田氏が明言/河野・岸田・高市氏は消極的/共同会見で本紙質問/4氏届け出」
・2面:核心「4氏 目指す社会像は」※各候補の所見分析/「『コロナ対応の軽視』『議員の仕事は国会』/野党各党、一斉に批判」/「森友解明 3氏後ろ向き」※政策について4候補と立憲民主党の比較・随時掲載
・社説「自民党総裁選 安倍・菅政治の総括から」

ジャーナリズムの役割は戦争を起こさせないこと~米中枢同時テロから20年、後続世代へ

 9月11日は2001年の米中枢同時テロから20年の日です。新聞やテレビのマスメディアでも、様々にこの20年間を振り返る報道が目に付きます。「テロとの戦い」がいつ終わるとも知れない中で、それぞれの人がそれぞれにこの20年と、これからに思いをはせていることと思います。わたしはこの20年間で、長く仕事として携わってきたジャーナリズムに対して、その役割を突き詰めるなら「戦争を起させないこと」「一度起きた戦争は一刻も早く終わらせること」だと考えるに至りました。戦争をはじめとする軍事的な発想は、自由な表現活動、自由な情報発信とは相いれないことも、身に沁みて感じました。
 先行世代の一人として、後続世代への継承の願いを込めて、20年前のこと、その後のイラク戦争のことを少し書きとめておきます。

 ▼同時テロ

 20年前の9月11日、わたしは箱根にいました。前月、所属する通信社の企業内労働組合の定期大会で執行委員長に選出され、9月1日から職場を休職して労組専従の生活に入っていました。発足したばかりの執行部のメンバーと一緒に旅館に泊まりこみ、労組の課題や当面の対応を討議する合宿でした。
 11日夜も夕食後、いくつかのグループに分かれて学習会を続けていました。わたしの部屋には5、6人おり、わたしはテレビを背に座っていました。テレビはつけっぱなしにしていましたが、音量は絞っていました。資料を見ながら話していて、ふと、皆の視線がわたしを飛び越えて、後ろのテレビにクギ付けになっていることに気付きました。振り返ると、画面には、ツインタワーの一つから黒煙が上がるニューヨークの世界貿易センタービルが映し出されていました。
 何が起きているのか、最初は分かりませんでした。テレビの音量を上げると、アナウンサーが、航空機が突っ込んだと告げていました。もう学習会どころではありませんでした。他の部屋でも同様でした。やがて、2機目がもう一つのタワーに突っ込みました。記憶では、その瞬間、テレビの中継画面は別のシーンを映していたように覚えています。しかし、直後から2機目が突っ込むシーンの録画が何度も再生されました。あるいは記憶違いがあるかもしれません。
 別の航空機がワシントンの国防総省ビルにも突っ込んだこと、これらの航空機がハイジャックされたことも伝えられました。状況から見て、米国の中枢を狙った同時多発のテロであることは疑いようがありませんでした。外信部で国際報道を担当している執行部メンバーが、テレビを見ながら攻撃を仕掛けた反米組織について、考え得る可能性を解説してくれました。アルカイダやタリバンの名前も挙がっていたと思います。
 わたしはその年の春まで、横浜支局のデスクでした。社会部に異動後は、折しも巻き起こっていた「小泉純一郎旋風」の取材班のデスクの一人として、自民党総裁選、東京都議選、参院選と続く報道の中で慌ただしい日々を過ごしていました。アフガニスタンや中東で米国が何をしていたか、反米組織が何をしていたか、時折、報道でその断片に接することはありましたが、詳しい知識もなく、自分の日常からは遠い出来事だと感じていました。
 それでもこの夜、ツインビルが崩落する映像に衝撃を受けながら、これで世界は一変する、日本も無関係ではいられなくなる、ということははっきり分かりました。

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【写真】炎上する世界貿易センタービル(米国立公園局撮影のパブリックドメイン)

 米国はあっという間に戦争態勢を整え、翌10月には英国などの有志連合とともに、テロを実行したと断定したアルカイダが拠点を置いていたアフガニスタンへの攻撃を開始しました。以後、03年のイラク戦争を経て、アフガニスタンやイラクでは戦火と混乱が続きます。
 アフガニスタンへの軍事行動に対して、日本の小泉政権はいち早く支持を表明しました。01年10月にテロ対策特別措置法を成立させ、海上自衛隊の補給艦がインド洋で米軍艦艇などに給油を続けました。

 ▼憲法の曲解

 03年3月20日、イラク戦争が始まりました。1年間の労働組合専従を終えて前年9月に社会部デスクに復職していたわたしは、この戦争に関連する取材報道の担当デスクの一人でした。報道の主体は外信部で、社会部の主要な取材テーマはこの戦争と日本社会とのかかわりです。日本に住むイラク人や、逆にイラクにゆかりの日本人の取材など、先輩や同僚たちとあれやこれやと議論しながら記事を出していく日々でした。日本人が直接、戦場で戦闘に加わっているわけではない、だがしかし…。頭の中では、米国の要請で自衛隊がいつか戦地に向かうのではないか、ということを漠然と考えていました。
 正規軍同士の地上戦は米軍がイラク軍を圧倒しました。03年5月には米国によって一方的に大規模戦闘の終結が宣言され、米国の占領政策が始まりました。しかし反米勢力の抵抗はやまず、混乱は増す一方。その中で、やはり米国は自衛隊をイラク現地に派遣するよう求めてきました。海上自衛隊による洋上補給だけではない、陸上自衛隊地上部隊の派遣要求の象徴として、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」という言葉が報道でも飛び交いました。

 イラクの復興支援を掲げて、03年12月から04年1月にかけて始まった陸上自衛隊と航空自衛隊のイラク派遣で、今も忘れられない、忘れてはいけないと自らを戒めている出来事が二つあります。
 一つは03年12月、自衛隊派遣が最終的に決まった際に、当時の小泉純一郎首相が恣意的としか言いようがない憲法解釈を主張したことです。
 イラク人道復興支援特措法によって、自衛隊が活動できるのは戦闘が終結した場所に限られていました。しかし、実際には反米勢力の抵抗は止まず、自衛隊派遣への世論の賛否は割れて日本社会を二分していました。自衛隊員が戦火に倒れる危惧と共に、自衛隊員が海外でだれかを殺傷するかもしれない、その怖れをわたし自身、感じていました。
 そんな中で小泉首相は03年12月9日の記者会見で、自衛隊は戦争に行くのではない、人道復興支援に行くのだと強調し、日本国憲法の前文を持ち出して次のように主張しました。長くなりますが、首相官邸の公式サイトに残っている記録から引用します。

 私は、このイラク復興人道支援に対して、多くの国民からも不安なり、あるいは自衛隊を派遣することに対して反対の意見があることは承知しております。ここで自衛隊派遣は憲法に違反するという声があるのも聞いております。
 しかし、憲法をよく読んでいただきたい。憲法の前文、全部の文章ではありません。最初に述べられた、前の文、前文の一部を再度読み上げます。
 「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」

 まさに日本国として、日本国民として、この憲法の理念に沿った活動が国際社会から求められているんだと私は思っております。
 この憲法の精神、理念に合致する行動に自衛隊の諸君も活躍してもらいたい。これは大義名分にかなうし、我が国が自分のことだけ考えているのではない、イラクの安定、平和的な発展というのはイラク自身にとって最も必要だし、日本国にとっても必要であります。世界の安全のためにも必要であります。
 (中略)
 まさに今、日本がどのようなイラク復興支援に取り組むか、それは憲法の前文にあるように、日本国の理念、国家としての意思が問われているんだと思います。日本国民の精神が試されているんだと思います。危険だからといって人的な貢献をしない、金だけ出せばいいという状況にはないと思います。
 日本としてできるだけのことを支援すると。そういうことによって、多くの外交官も、あるいはNGOで活躍している一市民も、そして自衛隊の諸君の活動も、イラク国民から評価されれば、一番恩恵を受けるのは日本の国民だと私は思っております。

 ※首相官邸「小泉内閣総理大臣記者会見 [イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置に関する基本計画について]=2003年12月9日」
 http://www.kantei.go.jp/jp//koizumispeech/2003/12/09press.html

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【写真】首相官邸ホームページより

 同僚たちと職場のテレビでこの記者会見を見ながら、強烈な違和感を覚えました。憲法の前文全体の文脈、憲法の全条文を踏まえての平和主義に即してではなく、ごく一部の文章の表現だけを切り取って、こうも恣意的に自分の都合に合わせた解釈を首相が公然と言い放つことに驚きました。小泉首相が切り取った「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」との部分は、端的に言えば自国の利益のために他国の主権を侵害してはならないということであって、イラク戦争で言えば、大義を欠いていた米国の先制攻撃こそが問われるべきでした。日本が果たすべき貢献ということで言えば、軍事組織の自衛隊派遣よりも、NGOを通じた支援の方が効果も高い、との指摘もありました。
 この小泉首相の憲法を曲解した主張に対しては、マスメディアの報道でも異論や疑問、批判が紹介されましたが、発言自体は取り消しも修正もなく、そのままになっています。ほかにマスメディアに何かできることはなかったか。マスメディアもまた、憲法に向き合う姿勢が問われていたのだと思います。

 ▼防衛庁との「申し合わせ」

 忘れてはいけないと考えているもう一つのことは、マスメディアが直接の当事者になった防衛庁(当時)とのイラク現地取材をめぐる協議です。マスメディアの側が検閲、ないしは報道内容の自己規制を一致して跳ね返すことができなかったと言われても仕方がない前例が残りました。記憶をたどって、経緯を順に記します。
 04年1月に陸上自衛隊の先遣隊がイラクに入りました。活動するのはイラク南部の都市サマワ。前後して、日本のマスメディア各社も取材陣を現地に派遣しました。わたしは現地に送り出した同僚が送ってくる記事のキャッチャー役のデスクの1人でした。ほどなく、現地では憂慮すべき状況が起きました。
 陸自部隊が車両で移動する、その後を日本のマスメディアの取材陣が車列をなして追尾する光景が繰り広げられました。仮に陸自部隊が攻撃を受ければ、報道陣も巻き添えになり大きな被害が出かねない状況でした。復興支援の本隊の派遣を前に、現地取材について何らかのルール決めが必要になり、防衛庁と新聞協会、民放連が協議に入りました。
 同年3月11日付で成立した合意は「申し合わせ」として文書化され①自衛隊の活動に政府は説明責任を負う②憲法の表現・報道の自由を政府は最大限尊重する③自衛隊員と報道関係者の安全確保は自己責任を原則に最大限配慮する④メディアは自衛隊の円滑な任務遂行に留意する―の4項目にまとめられました。共同通信の当時の配信記事は「今後の現地報道で、メディアと自衛隊側の間で『知る権利』と『安全確保』が衝突した場合は、今回の『申し合わせ』に照らして解決を図ることになる」としています。
 合わせてサマワに建設される陸自部隊の宿営地など、派遣部隊の管理する施設に立ち入っての取材は、記者やスタッフが事前に登録することとなりました。その際の遵守事項に問題が残りました。共同通信の配信記事は以下のように伝えています。

 立ち入り取材の条件も新聞協会、民放連と防衛庁の協議対象となった。「安全確保などに悪影響を与えるおそれのある情報」の扱いについて「防衛庁または現地部隊による公表または同意を得てから報道」との、防衛庁側の意向を反映した項目が残った。
 基本原則の「表現、報道の自由の尊重」と相反するケースも危ぐされ、「安全確保」と「知る権利」のバランスが取れた運用ができるかが最大の課題になる。

 「安全確保などに悪影響を与えるおそれのある情報」は具体的に例示されており、例えば派遣部隊が攻撃を受けた際の死者数や負傷者数など詳しい被害状況も対象に含まれていました。大きなニュースバリューを持つ要素の報道に制限がかかっていました。こうしたことが報道を通じて攻撃した側に明らかになれば、攻撃が有効だったかどうかを判断する手掛かりを与えることになり、さらに部隊を危険にさらす、ということのようでした。
 そもそも、そうした発想が政府や防衛庁にあったこと自体、自衛隊の派遣先が危険な地域だったことの証左の一つです。前年11月、国会での党首討論で小泉首相はイラク人道復興支援特措法が定める「非戦闘地域」について、「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」と開き直っていました。「派遣ありき」の欺瞞に満ちた政府方針でした。
 この立ち入り取材の条件に対して、わたしも同僚たちも反対でした。一方で、取材ルールの取り決めを一刻も早く成立させる必要がありました。跳ね返すことができないのなら、検閲を受けないために、自衛隊の宿営地へは立ち入らない、自衛隊の便宜は受けない―。そんなことも考えました。しかしそれには、仮に現地が戦闘状態に陥っても、自衛隊の保護下には入らないとの覚悟が必要でした。
 その後、自衛隊派遣の全期間を通じて、この検閲や自己規制が現実になることはなかったと記憶していますが、それは結果論です。やはり、マスメディアは二度と「検閲容認」の轍を踏んではならないと思います。そのためには、この出来事がマスメディア内部で引き継がれていく必要があります。この一件を通じて「戦争をはじめとする軍事的な発想は、自由な情報発信や自由な表現活動とは相いれない」ということも痛切に感じました。
 ※自衛隊派遣の終了後もしばらくは、防衛庁と新聞協会、民放連が交わした関係文書は防衛省の公式サイトからダウンロード可能でした。今はもうアップされていないようです。
 参考過去記事

news-worker.hatenablog.com

 自衛隊がイラクに派遣されて間もなくの04年7月、わたしは新聞労連(日本新聞労働組合連合)の中央執行委員長に選出され、再び職場を休職しました。2年間の任期中に、あらためて戦争とマスメディア、戦争とジャーナリズムを考える様々な機会に恵まれました。
 自分が仕事として携わってきた組織ジャーナリズムを、職場の外から見つめる得難い経験を重ねながら、その中で「ジャーナリズムの役割は、突き詰めれば戦争を起させないこと。一度起きてしまった戦争を一刻も早く終わらせること」との確信を持つに至りました。
 ジャーナリズムは日々の出来事を伝え、記録します。そのことが「イズム」「主義」としてはどんな意味を見いだせるのか。わたし自身が長くジャーナリズムを仕事にしてきて思うのは、人が皆、人として尊重され幸福であってほしいということです。その対極にあるのが戦争です。戦争が人間の営みである以上、それを止めることも決して不可能ではないはずです。そこにジャーナリズムの意義と役割があると思います。

共感の中でパラリンピック閉会~パラ・在京紙1面の報道の記録9月1日付~6日付

 東京パラリンピック大会が9月5日、閉会しました。東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)は6日付朝刊でそろって1面トップで報じました。選手たちのにこやかな顔の写真がちりばめられた各紙の紙面からは、その活躍や多様性と共生の理念への共感が伝わってくるように感じます。

 その共感は社会で広く共有されているようです。9月4~5日に実施された共同通信とJNNの2件の世論調査では、東京パラリンピックの評価を尋ねる質問に対して、開催して良かったとの回答がそれぞれ69%、66%に上りました。

 五輪大会の開催前、新型コロナウイルス禍の下での大規模イベントの開催には、世論の大勢も批判的・懐疑的でした。そして五輪の会期中に、爆発的な感染者増が起きました。そうではあっても、選手たちの活躍は見る者の心に響いたということなのか。五輪閉会後の世論調査でも「開催して良かった」との回答が過半数を超えました。パラリンピックは、五輪のIOC(国際オリンピック委員会)が体現したような拝金体質を感じさせることもなく、その分、理念がよりピュアに届いたのかもしれないと感じます。

 これを機会に「多様性」「共生」の理念が、一過性ではなく日本社会に根を下ろして定着していくのなら、やはりパラリンピックは開催して良かったと言えるのだろうと思います。ただそれでも、民意の反対を押し切って五輪開催を強行した乱暴さはやはり疑問です。五輪を政権浮揚に使おうとした菅義偉首相は結局、パラ大会の閉会を待たず退陣を表明するに至りましたが、目に余るような五輪パラリンピックの政治利用でした。「五輪ありき」のためにコロナ対策もちぐはぐさが目立ちました。失政としか言いようがありません。
 五輪閉会後の世論調査では、五輪開催の強行とコロナの感染者急増に関連性があると思うとの回答が6割に上っています。五輪やパラリンピックの理念への共感、選手たちへの敬意と、開催強行への疑問は相反するものではなく、民意に併存しているのだとわたしは受け止めています。

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 五輪の開会・閉会時、パラリンピックの開会時には読売新聞は1面と最終面をつないだ特別紙面でしたが、6日付朝刊は通常の形式でした。大会公式スポンサーの広告がつかなかったのかな、と考えています。
※参考過去記事

news-worker.hatenablog.com

 

 以下は9月1日付~6日付の東京発行各紙1面に掲載された記事の記録です。
 ※8月26日付~31日付紙面については、以下の記事にまとめています。
  https://news-worker.hatenablog.com/entry/2021/09/01/090723

news-worker.hatenablog.com

【9月6日付】
▼朝日新聞
①パラ「東京パラ 閉幕/日本メダル51■学校観戦1.5万人」/「想像力と対話  気づきの先に」隅田佳孝東京本社社会部長
②「『選挙の顔』意識 発信力競い合い/総裁選 立候補予定者ら」
▼毎日新聞
①パラ「多様性問い パラ閉幕/コロナ下 メダル51個」/「理念広め 遺産に」藤野智成
東京本社運動部長
②「アフガン女性デモ/タリバン催涙ガス 負傷者も 就業求める」
▼読売新聞
①パラ「東京パラ閉幕/コロナ 異例の大会完結/メダル51個/最終日『金』ラッシュ」
②「『次の首相』河野氏23%/石破氏21% 岸田氏12% 本社世論調査」
▼日経新聞
①パラ「コロナ下 歴史つなぐ/多様性 選手が体現/逆境の開催、評価も/東京五輪・パラ閉幕」/「道下『金』マラソン/里見・山崎組、梶原も バドミントン」
②「高市氏が出馬意向/自民総裁選 河野氏、週内にも表明」
③「緊急事態延長 週内に判断/首都圏・関西・中部 医療体制厳しく」
▼産経新聞
①パラ「東京パラ閉幕 多様性示す/五輪から続く祭典集結」/「絆と感謝のバトン 未来へ」金子昌世運動部長
②「アフガン失態 憲法の束縛」櫻井よしこ
③「岸田氏、政策アピール/自民総裁選 コロナ対策『法改正も』」
▼東京新聞
①パラ「アスリートが、輝いた/コロナ禍の東京パラ 閉幕/純粋にスポーツとして」

【9月5日付】
▼朝日新聞
①「総裁選 はや駆け引き/安倍前首相 高市氏支援/石破氏は二階氏と面会」
②「『爆発が…』105階から非常階段へ」9・11から20年
③パラ「妊婦でも諦めなくていい」
▼毎日新聞
①「『割り屋検事』背負った十字架/法曹復帰 人の縁」迫る 元特捜部長・大坪弘道さん ※3面へ
②「菅氏後任争い 始動/安倍前首相、高市氏支援へ」
▼読売新聞
①「総裁選 週明け本格化/自民 安倍氏、高市氏を支援/河野氏出馬表明へ」
②「緊急事態延長へ/政府 首都圏4都県など」
③「英空母 横須賀に寄港 日米と訓練」
④パラ「里見『金』バドミントン 国枝『金』車いすテニス/きょう閉会式」
▼日経新聞
①「世代と派閥 自民の岐路/衆院選へ『勝ち馬』見定め/総裁選でせめぎ合い」
②「ワクチン証明 スマホで/政府 12月発行、申請も電子化へ」
③「創薬データ 相互開放/開発力上げ欧米に対抗/アステラスなど国内8社」
④パラ「テニス国枝・バド里見「『金』
▼産経新聞
①「安倍前首相、高市氏支持へ/二階氏は石破氏と会談/自民総裁選 始動」
②「教員研修履歴を一元管理/データベース化 都道府県単位で/新制度、受講実態把握し育成」
③「緊急事態 東京など延長/政府 2週間程度で調整」
④「英空母クイーン・エリザベス初寄港/対中『防衛協力、新段階に』」
⑤パラ「国枝『金』2大会ぶり3度目 車いすテニス」
▼東京新聞
①「沖縄の声 無視したまま/辺野古埋め立てに『遺骨土砂』/政権 2代続け説明放棄」民なくして 2021年夏
②「抗体カクテルで75%が症状改善/都まとめ 即時投与の体制整備へ」

【9月4日付】
▼朝日新聞
①「菅首相 退陣へ/総裁選立候補を断念/コロナで支持低迷 党内混乱」/「河野氏、立候補へ 石破氏も検討」「衆院選 任期満了後の想定」/「説明を尽くさぬ姿勢 限界に」坂尻顕吾政治部長
▼毎日新聞
①「菅首相 退陣/総裁選 一転不出馬/コロナ対応、批判招く/発足1年で幕」/「河野氏、出馬の意向」/「安倍政権からの総括を」前田浩智主筆
▼読売新聞
①「菅首相退陣表明/コロナ対応に批判/後任 岸田・河野・石破氏軸か/衆院選 11月の公算/総裁選不出馬」/「説明尽くす姿勢 見えず」村尾新一政治部長
②パラ「木村『金』100バタ 杉浦2冠 自転車」写真
▼日経新聞
①「菅首相 退陣へ/総裁選不出馬『コロナ対策専念』/河野氏、出馬の意向/石破氏も検討」/「衆院選、任期満了後の公算/投開票日 11月中が軸」
②「テレワーク 地方に磁力/家広く拠点多彩 滋賀・彦根が首位/通信速度・働く空間 本社調査」データで読む 地域再生
③パラ「杉浦2冠 木村『金』」
▼産経新聞
①「菅首相 退陣へ/自民総裁選出馬せず/就任1年 衆院選目前 コロナ引責/河野氏出馬の意向」/「『二階切り』『9月解散』全て裏目」/「ワクチン頼み 『言葉』足りぬまま」佐々木美恵政治部長
▼東京新聞
①「菅首相 退陣へ/自民総裁選 不出馬を表明/就任1年、求心力落ち/『コロナ対策に専念』」/「国民向かぬ『一強』信失う」高山晶一政治部長
②「緊急事態地域も酒提供/緩和案 ワクチン接種前提に」

【9月3日付】
▼朝日新聞
①「菅首相、二階氏に出馬伝達/総裁選 岸田氏は政策発表」
②「アプリ課金 アップル改善策/外部サイトで支払い 誘導容認 公取委と合意」
③パラ「アルビノ 迷信が生む悲劇/偏見と闘う ザンビア唯一のパラ選手」
▼毎日新聞
①「宣言下の酒提供容認/政府 制限緩和行程案 10~11月想定/ワクチン普及前提」
②「『菅降ろし』収まらず/『総裁選 何があるか…』/人事刷新策 不評」
③「池袋暴走 禁錮5年/90歳被告の『過失重大』 地裁判決」
▼読売新聞
①「34都府県『市町村に伝えず』/個人情報保護 壁に コロナ自宅療養者/健康確認など難航 本社調査」
②「首相、6日に党四役刷新/総裁選に出馬へ」
③「池袋暴走 実刑判決/禁錮5年『踏み間違い』認定 東京地裁」
④パラ「山田2個目『銀』50背/鈴木5個目メダル 50自」写真
▼日経新聞
①「基金の支出計画、需要無視/30事業で実績3割未満 15~19年度/港湾再開発支援 14年で1件」国費解剖
②「高額寄付、中国富豪走る/小米など『共同富裕』警戒/民間活力そぐ恐れ」
③「オーケー、対抗買収提案/関西スーパー H2Oと争奪戦」
④「東京、病床上積みできず/国・都の要請、計7000目標遠く」
▼産経新聞
①「首相、二階氏に出馬伝達/きょう総務会 人事一任紛糾も 自民総裁選」/「幹事長 石破・河野・小泉氏の名」
②「池袋暴走 禁錮5年/東京地裁 被告の踏み間違い認定」
③「アフガン失敗 中国封じ込めに生かせ」世界を解く E・ルトワック氏
④「鈴木『銀』競泳5個目メダル/最年少・山田も『銀』」
▼東京新聞
①「池袋暴走 元院長に実刑/禁錮5年 踏み間違え認定 東京地裁判決」/「高齢者事故 割合なお高く/運転能力 過信しないで」
②「コロナ病床 150床増へ/医療機関回答  都目安に900床不足」
③「コロナ影響 飲食業83%が『深刻』 城南信金・本紙アンケート」

【9月2日付】
▼朝日新聞
①「首相、月内解散を否定/党内の反発強く一転/総裁選 予定通り」
②「眞子さま 年内結婚で調整/儀式なし・一時金辞退意向/小室さんと米で生活」
③パラ「事故16年 なりたい私に/アーチェリー・岡崎 JR宝塚線脱線で負傷」
▼毎日新聞
①「眞子さま 年内結婚/儀式行わず 一時金辞退か」
②パラ「ボッチャ個人 杉村 金/競泳男子100平 木村が銀/つながるきっかけに」
③「首相『今は解散厳しい』/総裁選先送りも否定」/「河野氏 要職に起用へ/党役員人事 石破氏処遇も浮上」
▼読売新聞
①「アフガン民主化 泥沼に/『置き去りか』協力者怒り」
②「首相、総裁選先送り否定/党四役刷新6日にも」
③「一時金辞退 19年に意向/眞子さま 結婚の形式模索」
④パラ「杉村『金』ボッチャ/木村『銀』100平」写真
▼日経新聞
①「トヨタ、EV特許に競争力/技術の重要度調査で首位/日本勢 販売拡大に課題」
②「米、海外関与の縮小鮮明/中ロ、影響力拡大狙う/アフガン戦争 終結宣言」
③「眞子さま、年内結婚へ/小室さんと 一時金辞退の意向」
④パラ「杉村『金』ボッチャで初」
▼産経新聞
①「首相、総裁選前の解散否定/6日にも党人事・内閣改造」
②「眞子さま 年内ご結婚へ/小室さんと 儀式せず 一時金ご辞退」
③「アフガン撤収『最善』/バイデン氏 正当性を強調」
④パラ「杉村『金』ボッチャ」
▼東京新聞
①「感染ピーク越え まだ/首都圏減少傾向でも専門家警戒」
②「米撤退『正しい判断』/他国を立て直すための軍事作戦の時代に終止符/バイデン氏 アフガン戦争終結の意義強調」
③「モデルナ異物はステンレス/製造機器の破片、3ロット回収へ」

【9月1日付】
▼朝日新聞
①「米軍 アフガン撤退/最長の戦争20年 終結/米死者2461人 タリバン復権」「自衛隊 撤収命令」/解説「対テロ戦争 混乱と憎悪を残し」
②「首相『月内解散も選択肢』/二階氏に伝える 党4役交代 調整」
▼毎日新聞
①「20年戦争 米幕引き/アフガン撤収完了」/「日本人退避 誤算続き/銃撃戦・空港混乱で足止め/大使館職員12人」
②「首相 今月中旬解散意向/来週党役員人事 総裁選先送り」
▼読売新聞
①「眞子さま年内結婚/婚約内定・小室さんと/秋篠宮家長女 儀式 行わぬ方向/皇籍離脱 米で新生活か」
②「米『最長の戦争』終結/駐留20年 アフガン撤収完了 テロ温暖化懸念」/「自衛隊の撤収命令 防衛相」
③「首相、9月中旬解散意向/衆院選10月17日投開票」
④パラ「50歳杉浦 最年長『金』自転車」
▼日経新聞
①「20年戦争 米国『敗北』/米軍、アフガン撤収完了/対テロ、試される結果」
②「背水の行政DX/デジタル庁きょう発足/縦割り・閉鎖性 崩せるか」
③「下村政調会長 交代へ/自民役員人事『9月中旬解散』観測も」
④パラ「杉浦、最年長『金』自転車で女子初」
▼産経新聞
①「首相、月内解散も視野/来週前半に党人事 内閣改造検討」
②「米軍アフガン撤収完了 『最長の戦争』終結 駐留20年 大統領声明」/「自国守る意思 同盟国の教訓」黒瀬悦成ワシントン支局長
③パラ「杉浦『金』日本勢最年長、自転車女子」
▼東京新聞
①「兵器ローン過去最大/米国などから購入止まらず/防衛省概算要求で2.7兆円」
②「米軍、アフガン撤退完了/退避半ば『最長の戦争』幕切れ」/「日本よ、米国を信用するな」米国の20年戦争 アフガンの教訓

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