首相官邸の質問妨害に新聞労連が抗議声明~安倍首相インタビューではメディアを選別

 安倍晋三首相が8月6日に訪問先の広島市で行った記者会見の際、質問を続けていた朝日新聞記者に対し、首相官邸報道室の男性職員が「だめだよもう。終わり、終わり」と制止しながら腕をつかんだとして、朝日新聞社が首相官邸に「質問機会を奪う行為になりかねず、容認できない」として抗議しました。この官邸職員の行動に対して、新聞労連が南彰委員長名で抗議声明を7日に公表しました。何が問題なのかがよく分かると感じましたので、全文を紹介します。

労連声明:首相官邸の質問妨害に抗議する
 安倍晋三首相が8月6日に広島市内で行った記者会見で、質問を続けていた朝日新聞記者が、首相官邸報道室の職員から「だめだよもう。終わり、終わり」と制止され、腕をつかまれる事件が起きました。記者の質問を実力行使で封じ、「報道の自由」や「知る権利」を侵害する許しがたい行為です。首相官邸に強く抗議します。

 この日の首相記者会見は、内閣記者会(官邸記者クラブ)が開催を求めてきたにもかかわらず、首相側が会見に応じない状態が続いた末に、毎年恒例の平和記念式典出席に合わせて、49日ぶりに開かれたものでした。記者会から「幹事社以外の質問にも応じるように」と要請されていたにもかかわらず、首相側は事前に準備された幹事社質問にだけ応じて、15分あまりで記者会見を一方的に打ち切ろうとしました。その後、記者が「なぜ50日近く十分に時間を取った正式な会見を開かないんでしょうか」「(今日の会見時間は)十分な時間だとお考えでしょうか」「(国会の)閉会中審査には出られるのでしょうか」と重ねた質問はいずれも国民・市民の疑問を反映したまっとうなものです。首相は「節目節目で会見をさせていただきたい」とその一部にしか答えていないにもかかわらず、官邸の職員が制止に踏み切りました。

 記者が様々な角度から質問をぶつけ、見解を問いただすことは、為政者のプロパガンダや一方的な発信を防ぎ、国民・市民の「知る権利」を保障するための大切な営みです。しかし、官邸の記者会見を巡っては近年、事前に通告された質問だけに答えて終了したり、官邸の意に沿わない記者の質問を妨害したりすることが繰り返されてきました。緊急事態宣言を理由に狭めた「1社1人」という人数制限も宣言解除後も続けており、国内外から批判を浴びています。官邸の権限が増大する一方で、説明の場が失われたままという現状は、民主主義の健全な発展を阻害するゆゆしき状況です。

 官邸側は今回の事件について、「速やかな移動を促すべく職員が注意喚起を行ったが、腕をつかむことはしていない。今後とも、記者会見の円滑な運営を心掛ける所存」と妨害行為を正当化しています。驚くべきことです。自らの行為を真摯に反省し、オープンで公正な記者会見の運営に見直すよう求めます。また、再質問も行える十分な質疑時間を確保し、フリージャーナリストも含めた質問権を保障した首相記者会見を行うよう改めて求めます。

2020年8月7日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南  彰

  http://shimbunroren.or.jp/200807statement/

 安倍首相の記者会見は実に49日ぶりのことでした。広島の原爆の日には毎年、記者会見を行っており、いわば「恒例」の場ですが、時間はわずか15分余り。新型コロナウイルスへの対応一つを取っても、「GO TO トラベル」の迷走や感染者の急増など、首相の口からじかに見解を聞きたいことは山積みです。それは記者個人の関心ではなく、社会全体で共有したい情報です。会見を短時間で打ち切った理由として、官邸側は広島空港に移動する時間が迫っていたことを挙げているようですが、それは本末転倒。広島で十分な会見時間が取れないのであれば、この49日間にいくらでも会見に応じる時間はあったはずでしょう。

 新聞労連委員長の南さんは近著「政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す」(朝日新書)の中で、安倍首相の記者会見への消極姿勢と表裏一体ではないか、と感じるデータも明らかにしています。安倍首相のメディア別の単独インタビューの回数です。第2次安倍政権が発足してから、ことし5月17日までに行われた首相単独インタビューの回数は以下の通りとのことです。

1 産経新聞(夕刊フジ含む) 32回
2 NHK 22回
3 日本テレビ(読売テレビ含む) 11回
4 日本経済新聞 8回
5 読売新聞 7回
6 毎日新聞、TBS、山口新聞 5回
9 月刊Hanada、テレビ東京、テレビ朝日(BS含む)、共同通信、ウォール・ストリート・ジャーナル 4回

 ちなみに朝日新聞は3回。ここまで差が大きいと、安倍首相は取材に応じるメディアを意図的に選別していると言うほかないように思います。

※同書の当該部分はネット上のサイト「AERA dot.」(アエラドット)で読むことができます
「産経新聞32回、NHK22回に朝日新聞は3回…官邸が進める露骨な『メディア選別』の弊害」
https://dot.asahi.com/dot/2020073100012.html

dot.asahi.com 

政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す

政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す

  • 作者:南 彰
  • 発売日: 2020/07/13
  • メディア: Kindle版
 

 

戦争と平和を考える特別の新聞~「ヒロシマ新聞」から「しんけん平和新聞」へ

 8月になりました。この十数年来、わたしにとっては戦争と平和を考える特別な時間です。

 広島市に本社を置く中国新聞社の従業員でつくる中国新聞労働組合は戦後50年の1995年8月、「ヒロシマ新聞」を制作しました。原爆投下によって、中国新聞社は45年8月7日付の新聞を発行できませんでした。その空白の紙面を、中国新聞労組の組合員が、現代の視点で原爆禍を報じるとしたらこんな紙面になるだろうと考えつくった新聞です。

 その紙面が、制作から25年たって、ことし8月1日から広島市中区の平和記念公園内の被爆建物レストハウスで販売されているそうです。中国新聞の記事によると、A4判のバッグ型クリアファイルに説明書とともに入れ、5千セットを作ったとのことです。1セット550円。 

※中国新聞「45年8月7日付の本社労組製作新聞 レストハウスで販売」=2020年7月31日

 https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=667728&comment_sub_id=0&category_id=256

www.chugoku-np.co.jp

 わたしはこの「ヒロシマ新聞」のことを2004年に新聞労連の委員長職に就いて知りました。紙面には被爆地の新聞記者たちの思いがぎっしり詰まっているように思いました。戦後60年を翌年に控え、その年の秋には沖縄の琉球新報社が、沖縄戦を同じように現代の視点で報じる「沖縄戦新聞」の発行を始めていました。沖縄戦を同じ日付で再現して毎週、再現新聞として紙面化する試みでした。新聞労連でも戦後60年の企画を何かやりたいと考えたときに、頭に浮かんだのがヒロシマ新聞であり、沖縄戦新聞でした。「新聞産業の労働組合なのだから、新聞を作ろう」と、2005年に「しんけん平和新聞」創刊号を作りました。

 1945年8月の敗戦を、現代の視点でわたしたちが報じたらこのような記事になる、という紙面でした。新聞労連の活動の一つに、新聞紙面のジャーナリズムや取材・報道の倫理などを対象にした「新聞研究」があり、略して「新研(しんけん)」と呼びます。題号はここから取りました。「真剣に平和を考える、そのための新聞に」という思いも込めていました。1面トップには「日本が無条件降伏」「ポツダム宣言受諾」「15年戦争 2000万人犠牲」の見出しが並びました。中国新聞労組、長崎新聞労組、新聞労連沖縄地連にも参加してもらい、それぞれ2ページずつを作ってもらいました。また、加盟労組のいくつかは、それぞれの地域での戦争を同じように現代の視点でとらえた記事にして送ってくれました。全国の新聞労組が参加してこの紙面を作ること自体が運動であり、作った紙面を社会に広げていくことが第2の運動だと呼びかけました。翌年の第2号は、1947年5月3日の日本国憲法施行をテーマにしました。

 わたしは2年で委員長を退任しましたが、この企画は1年に1号ずつ、10年間続きました。今は労働組合に所属していない働き方の身ですが、労働者の地位と待遇の向上を求める労働運動は、平和のための運動でもある、との考えは変わりません。

 中国新聞労組は戦後60年の2005年、「ヒロシマ新聞」をデジタル化しています。記事がウエッブで読めます。

 http://www.hiroshima-shinbun.com/top.html 

 以下は新聞労連委員長当時に運営していた旧ブログで「しんけん平和新聞」を紹介した記事です。

※ブログ「ニュースワーカー」

 「しんけん平和新聞」=2005年8月3日

 https://newsworker.exblog.jp/2422562/

newsworker.exblog.jp

 「しんけん平和新聞第2号」=2006年4月29日

 https://newsworker.exblog.jp/3845882/

newsworker.exblog.jp

「ジャーナリズム信頼回復のための6つの提言」に賛同

 東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年延長問題は、週刊文春が新聞記者との賭けマージャンを報じ、黒川氏が辞職することで政治的なイシューとしては立ち消えの形になりました。検察庁法改正案も廃案になっています。しかし、黒川氏と繰り返しマージャンをしていたのが新聞社の記者と社員であったことは、新聞記者と公権力の間合い、マスメディアによる公権力の監視のありよう、さらには新聞記者の仕事と働き方を巡って、さまざまな問題が明るみに出されたように思います。
 この問題を巡って先週、「ジャーナリズム信頼回復のための6つの提言」が公表されました。取りまとめたのは現役の取材記者やジャーナリズム研究者たちです。日本新聞協会に加盟する新聞・通信・放送129社の編集局長・報道局長に送付したとのことです。賛同人には現役の記者らたくさんの方が名を連ねています。この提言の中では五つの問題点を指摘した上で、タイトルにあるように六つの提言を行っています。わたし個人の賛同の意を込めて、それぞれを引用して、ここで紹介します。

 提言の全文は、noteの以下のページで読むことができます。
 ※「ジャーナリズム信頼回復のための6つの提言」
 https://note.com/journalism2020/n/n3b4c1e0648e0

▽五つの問題点
●権力との癒着・同質化:水面下の情報を得ようとするあまり、権力と同質化し、ジャーナリズムの健全な権力監視機能を後退させ、民主主義の基盤を揺るがしていないか。 

●記者会見の形骸化:オフレコ取材に過剰に依存し、記者会見で本来質問すべきことを聞かなかったり、予定調和になったりしていないか。また、情報公開制度の活用を軽視していないか。

●組織の多様性の欠如:早朝夜間の自宅訪問、および公人を囲んだ飲食などを共にする「懇談」形式での取材の常態化が、長時間労働やセクシュアルハラスメントの温床となってはいないか。また、日本人男性会社員記者中心のムラ社会的取材体制を固定化し、視点の多様性を阻害していないか。

●市民への説明不足:どういった原則や手法に基づいて取材・編集しているかが読者・視聴者に伝わらず、ジャーナリズムへの信頼を損ねていないか。取材の難しさ、情報源の秘匿の大切さを含め、可能な限り説明を尽くし、一般市民の信頼を得るための努力をしているか。

●社会的に重要なテーマの取りこぼし:発表情報の先取りに人員を割く結果、独自の視点に基づいた調査報道や、市民の生活実感に根差した報道が後回しになっていないか。

 

▽六つの提言
●報道機関は権力と一線を画し、一丸となって、あらゆる公的機関にさらなる情報公開の徹底を求める。具体的には、市民の知る権利の保障の一環として開かれている記者会見など、公の場で責任ある発言をするよう求め、公文書の保存と公開の徹底化を図るよう要請する。市民やフリーランス記者に開かれ、外部によって検証可能な報道を増やすべく、組織の壁を超えて改善を目指す。

●各報道機関は、社会からの信頼を取り戻すため、取材・編集手法に関する報道倫理のガイドラインを制定し、公開する。その際、記者が萎縮して裏取り取材を控えたり、調査報道の企画を躊躇したりしないよう、社会的な信頼と困難な取材を両立できるようにしっかり説明を尽くす。また、組織の不正をただすために声を上げた内部通報者や情報提供者が決して不利益を被らない社会の実現を目指す。

●各報道機関は、社会から真に要請されているジャーナリズムの実現のために、当局取材に集中している現状の人員配置、およびその他取材全般に関わるリソースの配分を見直す。

●記者は、取材源を匿名にする場合は、匿名使用の必要性について上記ガイドラインを参照する。とくに、権力者を安易に匿名化する一方、立場の弱い市民らには実名を求めるような二重基準は認められないことに十分留意する。

●現在批判されている取材慣行は、長時間労働の常態化につながっている。この労働環境は、日本人男性中心の均質的な企業文化から生まれ、女性をはじめ多様な立場の人たちの活躍を妨げてきた。こうした反省の上に立ち、報道機関はもとより、メディア産業全体が、様々な属性や経歴の人を起用し、多様性ある言論・表現空間の実現を目指す。

●これらの施策について、過去の報道の検証も踏まえた記者教育ならびに多様性を尊重する倫理研修を強化すると共に、読者・視聴者や外部識者との意見交換の場を増やすことによって報道機関の説明責任を果たす。

 

河井夫婦から金を受け取った100人をなぜ立件しないか、検察は公に説明すべきだ

 河井案里参院議員が初当選した昨年7月の参院選を巡り、東京地検特捜部が7月8日、河井議員と夫で前法相の河井克行衆院議員を公職選挙法違反の罪で起訴しました。この事件では河井夫婦の地元の広島県内で、首長や地方議員らに広範に現金が配布されていました。受け取った側も被買収の選挙違反に当たる可能性があるのですが、検察当局は訴追しない方針と報じられてきており、河井夫婦の起訴の際に検察がどのような説明をするのか、注目していました。翌9日付の東京発行の新聞各紙の報道を総合すると、被買収の100人は起訴はおろか、起訴するかどうかの判断以前に、刑事事件としては扱わないとの方針のようです。これでは、「検察の判断はおかしい」として検察審査会に持ち込むこともできないようです。

 金を受け取った側を立件しないこと自体の検察の発想は想像がつきます。検察にとって重要なのは河井夫婦を有罪にすることです。金を受け取った側の供述はこの点の立証を直接、左右します。「案理の選挙の買収だと思っていました」との供述を公判段階でも維持させるための、事実上の司法取引の色彩は否定できないと思います。自分も刑事罰を受けるかもしれないとなれば、「買収とは思いませんでした」と供述を翻すかもしれません。
 また、この事件で検察は「いちばん悪いヤツを罰すれば十分である」と半ば本気で考えているのではないかとも思います。金を受け取った首長や議員らの名前が公判ですべて明らかになるかどうかは分かりませんが、「だれに、いつ、いくら」は公訴事実の一部なので、伏せる理由はありません。そこで社会的制裁が待っている(既に辞職した首長、議員もいる)ので、刑事罰までは必要ないだろうということも考えているでしょう。
 そもそも選挙違反事件の捜査は通常、警察が中心です。検察が自ら、しかも東京から遠く離れた選挙区の選挙違反事件捜査に特捜部を投入するのは異例です。嫌疑の中心は妻の選挙のために衆院議員である夫がせっせと現金を配って歩いていたことです。しかもその後、夫は短期間とはいえ法相の要職に就いていました。妻の出馬自体、自民党中枢の強い意向が働いていたと指摘されています。異例づくめの極めて特殊な事件です。なぜ検察が全力を挙げて河井夫婦を立件したかと言えば、通常の選挙違反とは質も規模も異なる「巨悪」ととらえたからでしょう。その巨悪に比べれば、金を受け取った側の悪質さは相対的に小さい、と考えているのではないかと思います。
 捜査を取り巻く背景事情には検事長の定年延長問題もありました。検察は政治による介入圧力を感じ取っていたはずです。金を受け取った側を刑事手続きの上では不問に付すという判断は、河井夫婦の有罪立証に全力を注ぎたい、ということと表裏一体だろうと思います。

 ただし、これは検察に多少ともカンを持っている人にしか分からないことだろうと思います。そして、被買収側の立件見送りが妥当、適当なのかどうかとなるとまったく別問題です。だから、多くの人が感じるであろう「なぜ被買収側は起訴されないのか」との当然の疑問に対し、まずは検察が公に説明を尽くすべきです。「巨悪」の事件ならなおさらです。検察が自ら説明しようとしないのなら、マスメディアが見える形で説明を要求するべきだろうと思います。昭和や平成までの検察事件ならいざしらず、それが検事長定年延長で浮き彫りになった「検察とメディア」の問題の教訓のはずです。検察も、世論の期待と批判を同時に身に沁みて味わったはずです。
 報道で見る限りですが、検察の態度はまったく不十分だと感じます。検察が説明しなければいけないことをメディアが推測交じりで代弁しています。以前は現職国会議員を起訴する際には、東京地検検事正、次席検事、特捜部長がそろってオンレコの記者会見を行っていました。今回はそれもなかったようです。選挙を経て国民の代表に選ばれている政治家を訴追するのですから、記者会見ぐらいは当然です。
 まもなく検事総長が交代します。新旧総長とも、退任、就任の記者会見を行うはずですので、ぜひその場で「金を受け取った側を立件しないのはなぜか。国民に分かるように説明を尽くせ」と記者たちは頑張って迫ってほしいと思います。

 9日付の東京発行6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)の朝刊では、河井夫婦の起訴は1面が大勢でした(日経のみ第2社会面)。被買収の100人は不起訴(起訴猶予を含む)ではなく、起訴か不起訴かの判断対象にすらならないことは、一般の人には分かりづらいと思います。この点について朝日新聞が社会面で関連記事を載せているのが目を引きました。

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巨大選挙区でたった1人を選ぶ東京都知事選~現職が圧勝 雑感

 東京都知事選は7月5日に投開票が行われ、現職の小池百合子氏が他候補に大差をつけて再選されました。得票は366万1371票で、都知事選では歴代2位とのことです。得票率は59.7%。次点の宇都宮健児氏が84万票余りなので、文字通り他の候補が束になってもかなわなかった圧勝ぶりです。
 以下、今回の選挙に感じたことを書きとめておきます。雑感です。

  • もともと一つの選挙区としては巨大な東京で、たった1人を選ぶ選挙なので、どうしてもイメージ選挙、言葉を変えれば人気投票のようになるのは仕方がないのかもしれません。現職は知名度を持っているので、よほど大きな不祥事でもない限り有利です。加えて今回は新型コロナウイルスへの対策が主要な争点でした。安倍晋三政権のコロナ対応が、「アベノマスク」と揶揄された布製マスクの配布もたつきに象徴されるように、決して高い評価を受けているとは言い難い中で、首都東京の小池氏が存在感を増していたのは確かです。
  • 投票日に在京マスメディア各社が実施した投票所の出口調査によると、小池氏は支援を受けた自民党、公明党の支持層はもちろんのこと、無党派層や野党支持層からも幅広い支持を得たようです。朝日新聞社の調査では、手堅い組織票であるはずの共産党支持層からも17%が小池氏に流れたとのことで、これはちょっと驚きました。宇都宮氏や3位の山本太郎氏が小池氏に対抗する候補として、貫禄が不足していたかと言えばそんなことはなく、公約・政策の面でも違いは明確でした。それでもこの結果になった最大の要因は、コロナ対策による現職・小池氏の知名度と存在感ではないかと感じています。
  • 前回、小池氏が初当選した2016年選挙では、わたしは国政野党4党が支援した候補が惨敗したことについて「人格と識見、身ぎれいさに政策を兼ね備えた、そういう意味での『勝てる候補』を選挙民に提示できなかった4党の責任は極めて大きい」と、このブログに書きました。今回は「勝てる候補」も出馬していました。巨大選挙区の東京都知事選はイメージ選挙になることを免れ得ないのか、という気がしています。 

news-worker.hatenablog.com

  • 出口調査結果によると、小池氏は女性からの支持が高かったようです。「首都東京で女性知事が再選」ということ自体は、積極的な意味を見出してもいい変化なのだろうと思います。
  • 選挙直前に小池氏のカイロ大卒業の学歴にあらためて疑義を呈する出版物が刊行されましたが、カイロ大学が卒業を“証明”する声明を出し、そのタイミングに違和感は覚えたものの、結果的に知事選にはほとんど影響はなかったように思います。この間、小池氏が色をなして反論するといったこともありませんでした。激しく反応することがなければメディアも報じようがない、という考えだったのかもしれません。一方、この出版物は選挙戦さなかの広告によると20万部超ということで、よく売れたようです。

 人口も予算規模も何もかも図抜けて巨大な東京には、たくさんの政策課題があります。小池氏に対する評価は人それぞれだとしても、大事なのは、その一つ一つが2期目の小池都政でどう扱われるかです。それをウオッチするのはマスメディアの役割です。

 東京発行の新聞各紙のうち、投開票日翌日の6日付朝刊で都知事選の結果を1面トップに据えたのは産経新聞と東京新聞でした。朝日、毎日、読売の3紙はいずれも熊本の水害がトップでした。主見出しは単に「再選」としているのが大勢で、「圧勝」を入れたのは産経だけ。ほかは読売が「大差で再選」としたぐらいでした。ちょっと意外な気もしています。選挙戦さなかの情勢報道の段階から、小池氏の優勢が報じられていました。開票結果に今さら驚きはない、という判断でしょうか。ちなみに朝日新聞と日経新聞の1面の写真は、当選後の小池氏の表情ではなく、資料の顔写真でした。

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 今回の選挙では、日本第一党の桜井誠党首が17万8784票を得ました(小池、宇都宮、山本、小野泰輔の各氏に次いで5位の得票)。得票率は2.92%。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)元会長です。前回2016年選挙にも出馬しており、このときは11万4171票(得票率は1.74%)。投票率は下がったのに、得票は大幅に伸びています。これも無視できない社会の変化のように感じていますので、書きとめておきます。

 

国家と地域・住民の関係を問う沖縄「慰霊の日」~地方紙・ブロック紙社説の記録

 6月23日は、1945年の沖縄戦で日本軍の組織的戦闘が終わったとされる「慰霊の日」でした。75年のことし、沖縄タイムスと琉球新報は23日付の社説で、沖縄戦の体験を継承していくことの意義をそれぞれ説いています。
▼沖縄タイムス「[慰霊の日に]知ることから始めよう」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/589353
▼琉球新報「沖縄戦75年 体験継承し平和の構築を」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1143131.html

 ことしの沖縄全戦没者追悼式について沖縄県は当初、新型コロナウイルスへの対応として、例年より規模を縮小して国立沖縄戦没者墓苑で開催すると発表。異論が相次いだことから、例年と同じ平和祈念公園の広場へ変更した経緯がありました。
 沖縄タイムスの社説は「沖縄全戦没者追悼式の場所や形式が問題になるのは、それが沖縄戦の実相に深く関わっているからだ」と指摘し、①20万人以上の沖縄戦戦没者のうち、県出身者は12万2千人を超え、兵士よりも非戦闘員である住民の犠牲者が多い②兵士だけでなく一般住民も軍の方針によって戦場に駆り出され、戦闘に動員された③日本兵によって壕を追い出されたり、食料を奪われ、スパイの疑いをかけられて殺害されるなどの事例も県内各地で相次いだ―などを列挙しています。
 琉球新報の社説も国立墓苑での開催への異論を「住民の犠牲を天皇や国家のための『殉国死』として追認することにつながりかねないと懸念したのである」と説明。「私たちは平和創造のために沖縄戦を学ぶ。悲惨な体験から得た『軍隊は住民を守らない』という教訓を踏まえ、県民は戦争につながることを否定してきた」「沖縄戦は過去の出来事ではない。現在を生きる私たちの糧となる。平和を築くための指標が沖縄戦体験にあることを忘れてはならない」と記しています。

 沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設計画では、国家と地域・住民の関係が問われ続けています。先日は、陸上配備型イージス・システム計画で、国が秋田県と山口県の自衛隊用地への配備を撤回する出来事もありました。「戦争と平和」にかかわる問題を巡って、国と地域の関係が問われているのは沖縄だけではありません。沖縄県外でも「慰霊の日」に関連の社説を掲載した地方紙・ブロック紙がいくつも目に付きました。陸上イージスを踏まえて、辺野古移設の見直しを主張しているものもあります。日米安全保障条約の改定から60年でもあり、日米同盟と日本国内の基地負担を重層的に考える機会でもあるように思います。
 以下にネットで目にした範囲ですが、書きとめておきます。

【6月23日付】
▼北海道新聞「沖縄慰霊の日 寄り添う姿勢 国にない」
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/433360?rct=c_editorial

 今月の県議選では移設に反対する玉城デニー知事を支持する勢力が過半数を維持したが、政府は新型コロナの影響で中断していた工事を先週再開した。この態度のどこが沖縄に寄り添っているのか。
 予定地に軟弱地盤が見つかったことで、総工費は最低でも1兆円近くに膨らむ。地盤改良の方法も説得力を欠き、移設はもはや非現実的とも言える状況だ。
 政府は今月、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止した。辺野古移設も見直すべきである。

▼河北新報「日米安保改定60年/転換期に「質」高める議論を」
 https://www.kahoku.co.jp/editorial/20200623_01.html

 両国の関係を深化させる一方で、内在する課題を踏まえてこれからの安全保障を捉えなければならない。
  沖縄県に米軍基地が集中する現実に目を背けていては、真に深化した関係とは言えまい。事故の危険と騒音にさらされる沖縄の人々をどう守るか、国民全体で考えたい。
  米軍の特権を認めている日米地位協定の抜本的な見直しをはじめ、外交のすべを尽くしての堅固な戦略も求められよう。

▼東奥日報「歴史に学び戦略再構築を/安保60年と沖縄の負担」
 https://www.toonippo.co.jp/articles/-/369049

▼山形新聞「日米安保60年と沖縄 歴史に学ぶ戦略構築を」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/index.php?par1=20200623.inc

▼山梨日日新聞「[戦後75年 沖縄慰霊の日]日米安保の在り方も問う日」

▼中日新聞・東京新聞「少年兵の体験伝えねば 沖縄戦終結75年」/ゲリラ部隊「護郷隊」/口を閉ざした元隊員ら/亡き戦友を弔う寒緋桜
 https://www.chunichi.co.jp/article/76893?rct=editorial

 沖縄在住の映画監督三上智恵さん(55)は、二〇一八年公開のドキュメンタリー「沖縄スパイ戦史」で護郷隊の実態を掘り起こし、反響を呼んだ。三上さんは言う。
 「有事に軍は住民を守らない。逆に、戦闘や諜報(ちょうほう)に利用して見捨てることを描きたかった」。映画には、スパイ容疑をかけられた住民が軍により虐殺されるのを住民が手助けした、軍の陣地構築に協力した少女が秘密を知ったと殺されかけた、などの証言も登場する。共同監督の大矢英代(はなよ)さん(33)は、同作品で波照間島に潜入した中野学校出身者が島民を西表島(いりおもてじま)のマラリア地帯に疎開させ約五百人が死んだ史実を描いた。
 三上さんによれば、当時の軍部は本土の各地にも中野学校出身者を送り秘密戦の準備をしていた。終戦が遅れたなら沖縄の惨劇が本土で繰り返された可能性がある。
 映画は過去を告発するだけではない。中国の海洋進出をにらみ、与那国島や宮古島など、沖縄の先島諸島には陸上自衛隊の配備が進む。防衛情報を集め住民を監視する情報保全隊も配置される。作品は「戦争は軍隊が駐留した時点で始まる」(三上さん)との視点から、現代でも自衛隊は本当に住民を守るのか―と鋭く問い掛ける。

▼神戸新聞「沖縄慰霊の日/75年でも変わらない重荷」
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202006/0013446700.shtml

 基地の整理縮小に加え、沖縄県が求めているのが日米地位協定の抜本的な見直しである。
 協定は、公務中の米兵らによる事件事故で米国の裁判権が優先されるなど、米軍の特権的地位を定めている。これは日米安保条約とともに、きょうで発効60年となる。その間、一度も改定されていないことは政府の怠慢であるというしかない。
 沖縄大学長を務めた故新崎盛暉(あらさきもりてる)さんは、対米従属的な日米関係の矛盾が沖縄にしわ寄せされていると指摘し、それを「構造的沖縄差別」と呼んだ。平和を脅かす米軍基地の押しつけは、人権を侵害する行為であることを、本土の人間としてあらためて胸に刻んでおきたい。

▼中国新聞「沖縄慰霊の日 今に続く痛み忘れまい」
 https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=655003&comment_sub_id=0&category_id=142 

冷戦が終わり、国際秩序が変容する中で日本はどんな役割を果たすのか。政府は安保の60年を検証し、米国との関係も見直していくべきではないか。
 その一つが、名護市辺野古で進める新基地建設だろう。今月7日に投開票された県議選でも反対派が過半数を維持した。繰り返し民意が示されているにもかかわらず、政府はそれを押し切って普天間飛行場(宜野湾市)の移設先として、建設工事を強行している。

 埋め立て予定海域にある軟弱地盤を改良する工事のため、当初想定した以上の巨額の工費と工期がかかる見込みだ。しかもそれで本当に完成するのか見通せない。
 県が設置した有識者会議は、最新のアジア太平洋地域の安保環境を分析した上で、日米両政府に、変化を踏まえた基地の分散や整理縮小を提言している。政府は山口、秋田両県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」について、安全面の問題を理由に、配備計画を停止した。辺野古の計画も中止すべきだ。
 玉城デニー知事は対話による解決を政府に求めている。基地問題解決の糸口を探るためにも政府には、早急にテーブルに着いてもらいたい。75年前の悲惨とその後の沖縄の歩みに謙虚に向き合ってほしい。本土に暮らす私たちも、沖縄の歴史と、今も続く「痛み」をわがこととして捉えなくてはならない。

 ▼西日本新聞「沖縄慰霊の日 今こそ体験を継承したい」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/619452/

 沖縄県民にとって沖縄戦は単なる過去ではない。沖縄には現在、日本国内の米軍専用施設の約7割が集中する。その原点が沖縄戦による米軍の占領だ。沖縄戦を知らなければ沖縄の現状を理解することはできない。
 安倍政権は今月12日、直前の県議選で米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対派が過半数を占めたにもかかわらず、コロナ禍で中断していた辺野古の埋め立て工事を再開した。
 秋田、山口両県に配備予定だった地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の計画停止とは好対照の、かたくなな姿勢だ。本土側の沖縄への無理解に乗じてはいないか。

▼佐賀新聞「日米安保60年と沖縄 歴史に学ぶ戦略構築を」=共同通信
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/537872

 日米両国の「対等性」を目指して60年に改定された現条約の下、日米同盟は日本の外交・安保政策の基軸とされてきた。だが、その同盟関係は今、重大な岐路にある。
 「米国第一主義」を掲げるトランプ米政権と中国の大国化、新型コロナウイルスが問い掛ける分断と協調の在り方―。変容する国際秩序の中で日米同盟をどう位置付け、日本はどういう役割を果たすのか。根本からの見直しが迫られている。
 その際、忘れてならないのは歴史に学ぶ謙虚な姿勢だろう。75年前、沖縄は本土防衛の「捨て石」とされ、県民の4人に1人が犠牲になる悲惨な戦闘が繰り広げられた。そして、72年の本土復帰後も過重な基地負担を強いられている。
 軍備を増強し、緊張を高める戦略を机上の論理だけで進めてはならない。安全保障には必ず現場があり、そこには人が暮らしているのだ。沖縄戦のような歴史を繰り返さぬよう、外交を基盤とし、地域の安定と国際協調に貢献する同盟戦略の再構築を求めたい。

▼熊本日日新聞「沖縄戦終結75年 恒久平和へ見えない道筋」
 https://kumanichi.com/column/syasetsu/1501051/

 太平洋戦争末期の沖縄戦終結から23日で75年。最大の激戦地だった糸満市摩文仁[まぶに]に立つ石碑「平和の礎」には、今年も30人の氏名を刻んだ銘板が新たに設置された。石碑の除幕から25年が過ぎたが、刻銘者の追加は毎年続いている。沖縄の「戦後」が終わっていないことは、そのこと一つをとっても明白だ。
 さらに今日は、日本と米国の相互協力をうたった現行の日米安全保障条約の発効から60年の節目でもある。対等な関係となることを目指す現条約の下、日本は日米同盟を外交・安保政策の基軸としてきた。しかし、その同盟関係は「米国第一主義」を掲げるトランプ米政権と中国の大国化や、新型コロナ禍による社会の変容によって重大な岐路に立っている。
 今のままでは、国民の願いである恒久平和は実現の道筋が見えない。悲惨な歴史を繰り返さないためにも、本土防衛の「捨て石」とされ、1972年の本土復帰後も過重な基地負担を強いられている沖縄の現実をいま一度見つめ直したい。

【6月24日付】
▼秋田魁新報「沖縄慰霊の日 安保政策に民意反映を」
 https://www.sakigake.jp/news/article/20200624AK0010/

 昨年の追悼式には安倍晋三首相が出席。辺野古については一切触れず「基地負担の軽減に向けて確実に結果を出す」と述べ会場から激しいやじが飛んだ。
 今年は新型コロナウイルスの影響で規模を縮小、安倍首相の招待は見送られた。首相はビデオ映像を通じてメッセージを送った。その言葉は沖縄県民の胸に響いたのだろうか。
 本県と山口県が配備候補地となった地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画も地元の反対の中、強引に進められたのは沖縄と同じ。結果的に技術上の問題と改修コストなどを理由に停止となったが、諦めず声を上げ続けることが大切と再認識させられた。
 辺野古移設計画の総工費は軟弱地盤改良工事で膨れ上がる。改めて移設見直しを求める声が起きているのは当然だ。

▼新潟日報「沖縄戦終結75年 不戦の決意を共有せねば」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20200624551385.html

 一方、沖縄には今も「基地の島」の現実がある。玉城知事は平和宣言で在日米軍専用施設の7割が県内に集中し、米軍人らの事件や事故が多大な影響を与えていることに言及した。
 こうした中で、沖縄県民は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡って繰り返し「ノー」の民意を示してきたが、政府は「辺野古ありき」で計画を進めている。
 地方の民意に国が背を向け続ける。こんなことが許されれば民主主義の土台が崩れる。沖縄の歴史とともに現状にも、本土の側から目を凝らしたい。

▼福井新聞「戦後75年『慰霊の日』 沖縄の民意に耳澄ます時」
 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1110620

 政府は、新型コロナ感染防止として中断していた、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事を12日再開した。沖縄県議選(7日投開票)からわずか5日後だ。中断も、辺野古移設工事を選挙の争点にしない意味合いがあったとの見方がある。
 4月下旬には、政府は移設計画を巡る設計変更を沖縄県に申請している。感染が県内で拡大し、玉城デニー知事が県独自の緊急事態宣言を出した翌日というタイミングだった。
 どちらも、沖縄や県民を思い、「全力を尽くす」行動とはかけ離れている。
 先の県議選は、玉城知事を支える共産、社民、無所属などの県政与党が過半数を確保したものの、自民、公明などの県政野党も3議席伸ばした。この結果を受け、菅義偉官房長官は「地元では(移設に)かなり理解が進んできているのではないか」と述べている。
 そうなのだろうか。玉城知事が初当選した2018年の知事選、辺野古沖の埋め立てに7割が反対した19年の県民投票、反対派が圧勝した同年4月の衆院補選、そして県政与党が過半数を維持した今月の県議選。一連の結果は辺野古移設に対し「ノー」という県民の変わらぬ意志を示している。これが沖縄の民意でなければ何が民意だろう。

▼京都新聞「沖縄慰霊の日 現状と教訓学ぶ契機に」
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/290039

 全戦没者追悼式の平和宣言で、玉城デニー沖縄県知事は、米軍人らによる事件・事故や航空機騒音に触れ、戦後75年を経た今も基地負担が県民生活に多大な影響を及ぼしていると訴えた。
 安倍晋三首相もビデオメッセージで、沖縄に米軍基地が集中する現状は是認できないとして「基地負担の軽減に向け、確実に結果を出す決意だ」と述べた。
 だが、県民の思いと政府の対応が一致しているとは言えない状況が続いている。不合理な負担を強いられている沖縄の現状と将来について、あらためて国民全体で考える契機としなければならない。
 戦争時、沖縄は本土防衛の「捨て石」にされ、日本兵による避難壕(ごう)からの追い出しや自死の強制などが各地で起きた。住民の保護を無視した軍の作戦が、県民の大きな犠牲につながった。
 戦後も沖縄は重い基地負担にあえいできた。国土面積の0・6%しかない県内に、現在も米軍専用施設の7割が集中している。県民には、今も身代わりにされているとの思いが根強くある。

▼山陽新聞「沖縄戦から75年 不戦の誓いを共有したい」
 https://www.sanyonews.jp/article/1024370?rct=shasetsu

 玉城知事が宣言の中で言及した、沖縄の基地負担の重さを私たちはあらためて考える必要がある。国土面積の約0・6%の沖縄に在日米軍専用施設の7割が集中し、米軍が絡む事件や事故、航空機の騒音や環境汚染などが相次ぐ。
 きのうは改定日米安全保障条約が発効して60年の節目でもあった。その最前線に置かれてきた沖縄が求めてきたのが、米軍側に日本の国内法が適用されない日米地位協定の改定だ。危機感は、米軍輸送機オスプレイの配備などで本土側の自治体にも広がっている。2年前には全国知事会が協定の抜本的な見直しを求める提言をまとめ、政府に提出した。改定を求める国民の声に、政府は向き合うべきだ。
 (中略)
 政府が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止したのを受け、与党の自民党からも工事期間やコストの面から辺野古移設計画の再検討を求める声が出ている。中国の軍事力向上、米軍の戦略変化も指摘されている。政府は移設計画の妥当性を検証し、国民に説明すべきである。

▼山陰中央新報「日米安保60年と沖縄/歴史に学ぶ戦略構築を」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/www/contents/1592964908482/index.html

▼南日本新聞「[沖縄慰霊の日] 教訓を引き継がねば」
 https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=121431

 あなたがあの時、生き延びたおかげで今がある-。
 太平洋戦争末期の沖縄戦で組織的戦闘が終結してから75年の「慰霊の日」のきのう、沖縄県糸満市摩文仁の平和祈念公園であった追悼式で、首里高3年の高良朱香音さんは平和をつなぐ決意を込めた詩を朗読した。
 戦争体験者が減少する中、悲惨な戦争の記憶を引き継ごうとする若い世代の決意は尊い。
 沖縄戦では住民を巻き込む地上戦が展開され、県民の4人に1人が犠牲になった。戦後、日本に復帰し48年たった今も、過重な基地負担を強いている。
 戦後日本の平和は、こうした沖縄の負担によるところが大きい。節目の今こそ全国民が歴史を謙虚に受け止め、非戦の誓いを新たにする必要がある。

【6月27日付】
▼宮崎日日新聞「日米安保60年 『捨て石』つくらない戦略を」
 https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_45543.html
 

長期政権のゆがみ、腐敗が詰まった河井前法相夫妻の買収事件

 新型コロナウイルス感染拡大の第2派への備えが必要と指摘されながら、通常国会は6月17日、会期を延長することなく閉会しました。それを待っていたように、東京地検特捜部は18日、昨年の参議院選での公職選挙法違反(買収)容疑で、自民党衆院議員だった河井克行・前法相と妻の案里参院議員(ともに離党)を逮捕しました。
 前法相は首相補佐官なども務めており、安倍晋三首相に近いと指摘されています。事件の舞台になった参院選広島選挙区では、案里議員擁立を自民党本部が主導し、もう一人の党公認の横手顕正候補との間には、支援態勢にも露骨な差がありました。党本部からは河井陣営に1億5千万円もの資金が支出されていたと報じられています。そして広島地検と東京地検が進めてきた捜査の現場では、黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長問題が一貫して「圧」のように感じられたはずです。
 河井夫妻の行為が犯罪に当たるかどうか、刑事手続きは始まったばかりですが、夫妻が地方議員に自ら現金を配って回っていたことは、マスメディアの取材からも明らかです。夫妻は一切の説明を拒否したままであり、少なくともこの点に対しての政治的、道義的な責任は免れません。
 以上のもろもろのことを考え合わせると、この事件には安倍長期政権のゆがみと腐敗がぎっしり詰まっているように思います。選挙違反事件は多くの場合、その地域固有の選挙事情を反映しており、地域的にも政治的にもあまり広がりはありません。しかし河井夫妻の事件は、安倍政権と自民党本部の関与が最大の焦点です。

 夫妻の逮捕翌日の19日付東京発行各紙の朝刊(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)はいずれも1面の扱いでした。ただ、トップで横見出しにした朝日、毎日、読売の3紙と、他の3紙とで大きく二分された印象があります。東京都知事選の告示と重なった事情があるにせよ、各紙1面トップでそろわなかったのはちょっと意外な気がしました。

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 黒川前検事長を巡っては、産経新聞社の記者2人と朝日新聞社の社員1人との賭けマージャンが常態化していたことが明らかになっています。記者たちにとって検察幹部は「取材対象」ではあっても「報道対象」ではなかったのだとすれば、仮に賭けマージャンのような違法行為ではなくても、マスメディアの記者が高位の公権力者と深い関係を作ることに、社会の理解は得られないのではないかと感じます。河井夫妻の事件の報道では、マスメディアの検察取材にも厳しい視線が向けられています。

国と地域の関係を問う辺野古埋め立て工事の再開~控え目な在京各紙の報道

 沖縄県議選の投開票から5日後の6月12日、日本政府は沖縄県名護市辺野古の新基地予定地の埋め立て工事を再開しました。工事関係者1人が新型コロナウイルスに感染したことから、4月17日から工事は中断していました。県議選では、玉城デニー知事の県政与党が過半数の議席を確保しており、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する民意が繰り返し示されたと受け取るのが妥当だと思いますが、一方では自民党は議席数を伸ばしており、安倍政権からは「善戦できたことは大きな成果だ」(安倍晋三首相)、「かなり(移設容認の)理解が進んできている」(菅官房長官)などの評価がありました。
 経緯を見ると、工事を早期に再開せずに県議選終了まで待っていたようにも思え、2カ月に及ぶ工事中断は県議選での争点隠しだったのではないのか、との疑問が浮かびます。河野太郎防衛相は12日の会見で「(指摘は)当たらない」(朝日新聞)と否定したとのことです。
 別の観点から考えても、コロナ禍によって世界が変化を迫られることは、おそらく安全保障の面でも例外ではないはずなのですが、何ら見直しのないまま、一国の政府が地域の自己決定権を認めず、強圧的に基地建設を進めることが妥当なのかどうか。コロナ禍の特別措置法の運用で明らかになっている論点の一つは、国と自治体の役割分担であり、つまりは国と地域の関係のありようです。その意味でも、辺野古の工事強行は日本全国、どこの住民にとっても他人事ではないと思います。
 辺野古の埋め立て工事再開はそういう論点をはらんでいるのですが、東京発行の新聞各紙の扱いはかなり控え目でした。沖縄県の玉城知事は「大変遺憾だ」と反発を示していますが、読売新聞の記事にはそのことすら入っていません。

 以下は13日付朝刊の各紙の扱いと主な見出しです。
・朝日新聞
1面「辺野古工事再開」写真
4面(総合)「防衛相『争点隠し』否定」※短信
・毎日新聞
1面「辺野古工事再開 沖縄知事『遺憾』」写真
・読売新聞
4面(政治)「首相『普天間移設 早く』」※短信12行
・日経新聞
※記事見当たらず
・産経新聞
5面(総合)「首相、辺野古移設の早期実現に意欲」※短信
第2社会面「辺野古移設工事 57日ぶりに再開」写真
・東京新聞
2面「辺野古 反発多き工事再開/軟弱地盤巡る攻防 今後の焦点」写真
※1面にインデックス
※12日付夕刊は1面トップ

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[写真説明]6月13日付の毎日新聞(上)、東京新聞(下右)、朝日新聞の各1面

 沖縄タイムス、琉球新報は13日付の社説で工事再開を批判しています。一部を引用して書きとめておきます。

▼沖縄タイムス社説「[辺野古埋め立て再開]工事停止し再アセスを」2020年6月13日
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/585091

 許容できないのは、普段は「選挙は結果が全て」という菅義偉官房長官が、自民党が議席を伸ばした一面だけを切り取って、新基地建設への「地元の理解が進んだ」と語ったことだ。
 県議選が示した結果は、新基地反対の変わらぬ民意である。にもかかわらず建設ありきの一方的な解釈だ。
 工事がジュゴンに与える影響も懸念されている。
 沖縄防衛局が周辺海域で実施した調査で、2月から3月にかけてジュゴンのものとみられる鳴き声が42回も確認されたことが明らかになったばかりだ。
 土砂運搬船が航行を始めれば、絶滅の恐れが高いジュゴンにさらに深刻な影響を与えかねない。
 今進めるべきは、工事ではなくジュゴンの生息環境などの調査だ。

▼琉球新報社説「辺野古で工事再開 民意いつまで踏みにじる」2020年6月13日
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1137943.html 

 沖縄の民意を無視して、いつ終わるとも知れず、いくらかかるかも分からない工事に着手し、貴重な自然環境を破壊する。政府の所業は常軌を逸している。とても民主国家の振る舞いとは思えない。
 沖縄に対し強硬な態度を取り続ける一方で、米国には常に弱腰だ。米軍の特権を認める日米地位協定の改定さえ言い出すことができない。強い者に媚(こ)び、弱い者には高飛車に出る。そのような国の在りようはいびつであり、一刻も早く改めるべきだ。
 新基地に反対する民意は知事選や国政選挙で繰り返し示されてきた。7日投開票の県議選にもそのような県民の意向が反映されている。
 政府が新基地建設の根拠にしているのが13年の仲井真弘多知事(当時、14年落選)による埋め立ての承認だ。しかし同氏は10年の知事選では「県外移設を求める」と公約していた。大多数の民意に逆行する決定を盾に、強権を振るっているのが現在の安倍政権なのである。
 このようなやり方が許されるのなら、許認可権限を持った首長を説得することで、地元の同意なしにどんな迷惑施設でも自在に建設できることになる。沖縄だけでなく全国民に関わる重大な問題だ。

 

辺野古新基地反対の民意変わらず~沖縄県議選で玉城知事与党が過半数

 沖縄県議選が6月7日、投開票されました。定数48のうち、玉城デニー知事を支持する県政与党は25議席を獲得し、改選前(26議席)に続き、過半数を維持しました。県政野党では、自民党が4議席増の17議席を獲得しています。与野党の色分けとは別に、宜野湾市の米軍普天間飛行場の移転先として、名護市辺野古へ新基地を建設することに対しては、反対の当選が沖縄タイムスの集計では27人、琉球新報の集計では29人と報じられています。
 地方議員選挙にはその地域の固有の争点があり、国政と比べても地域により密着した課題が焦点になります。それでも沖縄全県での選挙となると、やはり基地の過剰な集中の問題に対して、どのような民意が示されたのかは、沖縄県外の住民にとっても大きな意味があります。基地の集中は沖縄の人たちが望んだ結果ではなく、民主的な手続きで成立している日本国政府の政策だからです。
 この点について、琉球新報の8日付社説は「新基地反対の民意表れた」との見出しで、以下のように説いています。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に対しては、新たな議会でも反対が大勢を占める。改めて多くの県民が「ノー」の意思を突き付けた格好だ。
 政府はこの結果を重く受け止め、辺野古新基地の建設を断念すべきだ。これ以上の民意の無視は許されない。
 新基地建設を巡っては2018年9月の県知事選で玉城氏、19年4月の衆院3区補欠選挙で屋良朝博氏、同年7月の参院選で高良鉄美氏と、反対を掲げた候補者が立て続けに当選している。昨年2月の県民投票では投票者の7割超が埋め立てに反対した。
 今県議選では、新基地反対を訴える与党側に対し、野党の自民党が、一日も早い普天間飛行場の危険性除去のため唯一実現性のある方策だとして「容認」の姿勢を明確に打ち出した。対立軸は鮮明で、最大の争点となった。
 このほか、新型コロナウイルス感染症対策、医療・福祉政策、経済振興策などが争点となり、2年前に発足した玉城県政への中間評価が問われた。現県政は一定程度の信任を得たと言えよう。
 玉城知事は繰り返し示されてきた辺野古新基地反対の民意をてこにして、政府との交渉に臨んでほしい。

 ※琉球新報:社説「県議選・与党過半数 新基地反対の民意表れた」2020年6月8日
  https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1135162.html

 また沖縄タイムスの社説も以下のように指摘しています。

 今回の選挙で自民党県連は普天間飛行場の辺野古移設容認を打ち出し争点を明確にした。辺野古の新基地建設に反対する知事支持派が過半数を得たことは、民意の基調が変わっていないことを示すものである。
 新基地は当初計画から工期も工費も大きく膨らみ、「普天間の一日も早い危険性の除去」は実態の伴わない誇大広告になっている。
 危険性除去の見通しをどうつけるのか。県議会には状況を変える行動を求めたい。

 ※沖縄タイムス:社説「[県議選 与党過半数]知事は成果示すときだ」2020年6月8日
  https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/582506

 東京では8日、安倍晋三首相が自民党役員会で「議席数を大きく伸ばし、善戦できたことは大きな成果だ」(読売新聞)と話し、菅義偉官房長官も記者会見で「辺野古への移設容認を掲げた自民党が議席を伸ばすことができた。かなり(移設容認の)理解が進んできている」(読売新聞)と述べています。分析は自由かもしれませんが、辺野古への新基地建設への賛否ということでは、選挙結果が歴然と示している、と言うべきだろうと思います。
 沖縄の過剰な基地集中の問題を巡っては、ずっと国と地域との関係、あるいは地域の自己決定権が問われ続けてきました。住民の意思は選挙や県民投票を通じて明確に示されているのに、安倍政権は一顧だにしていません。日本でほかにそのような地域がないのだとしたら、沖縄に対する差別と言うほかありません。折しも新型コロナウイルスへの対応を巡って、国と自治体の関係に関心が高まっています。沖縄県外の住民にとっても、他人事ではない、自分事ととらえるべき、あるいは自分事ととらえることができる時機が巡ってきているように思います。今回の選挙結果を含めて、沖縄で何が起きているかが県外(日本本土)で広く知られることには大きな意味があります。

 以下に、東京発行の新聞各紙が、沖縄県議選の結果をどう伝えたか、主な記事の見出しを書きとめておきます。

▼朝日新聞
・9日付朝刊
3面(総合)「県議選 辛勝でも『辺野古ノー』/沖縄・知事与党 過半数を維持」「玉城氏側『民意揺らがず』/移設阻止への姿勢強める」「政権は工事早期再開方針」
社説「沖縄県議選 一貫した民意に応えよ」
・8日付朝刊
社会面準トップ「玉城知事与党が過半数/沖縄県議選 辺野古反対 訴え/県政運営に一定の信任」

▼毎日新聞
・9日付朝刊
1面「沖縄県政与党が辛勝/県議選 知事『一定の評価得た』」
2面(総合)「辺野古工事 週内再開も/沖縄県議選 議席増に自民手応え」
・8日付朝刊
1面「県政与党 過半数維持/沖縄県議選 投票率過去最低」
社会面準トップ「辺野古阻止 父の遺志/翁長前知事次男が初当選」

▼読売新聞
・9日付朝刊
4面(政治)「沖縄県議選 首相『善戦』/議席伸長 自民 知事選に照準」
・8日付朝刊
2面「玉城知事派 過半数維持/沖縄県議選 辺野古で政府と対峙」

▼日経新聞
・9日付朝刊
4面(政治)「辺野古移設『前に進める』 菅官房長官」※短信
・8日付夕刊
3面「沖縄、知事派が過半維持/県議選 辺野古移設、対立続く」
・8日付朝刊
2面「沖縄県議選で開票作業進む/辺野古の進捗左右」

▼産経新聞
・9日付朝刊
5面(総合)「玉城氏 求心力陰り/自民『次の知事選に弾み』/沖縄県議選 知事支持派が議席減」
・8日付朝刊
2面「沖縄県議選 与党勝利/投票率46・96% 前回下回る」
2面「現地入り断念・集会自粛/コロナ禍 異例の選挙戦」

▼東京新聞
・9日付朝刊
3面(総合)「政府、辺野古方針変えず/沖縄県議選 知事支持派過半数」
社説「沖縄県議選 『反辺野古』の民意再び」
・8日付朝刊
1面「辺野古反対 過半数維持 沖縄県議選」
2面・解説「民意 新基地へ疑念強く」

新型コロナ禍と政治への関心、安倍内閣支持率の低下~5月の世論調査結果から

 マスメディア各社が5月に実施した世論調査の結果で目にとまったもののうち、安倍晋三内閣の支持率について書きとめておきます。
 5月上旬実施の調査では、前回3月下旬ないし4月実施の調査と比べて支持が下がったのは毎日新聞調査(5月6日実施)だけで、ほかは横ばいか、4~5ポイントの増加でした。不支持率も毎日新聞調査以外は横ばいないしは微減でした。
 一転して傾向が大きく変わってくるのは、15日以降に実施された調査です。NHK調査(15~17日実施)では支持率は前月比微減(2ポイント減)の37%でしたが、不支持率は7ポイント増の45%に上り、不支持が支持を上回りました。朝日新聞調査(16、17日実施)では支持は8ポイント減の33%、不支持は6ポイント増の47%でした。その1週間後、毎日新聞が23日に実施した調査では支持率は3割を切って27%。約半月で13ポイントもの急落でした。不支持の増加の勢いはそれ以上で、19ポイント増の64%に上りました。朝日新聞の23、24日の調査でも、わずか1週間のうちに支持は4ポイント減の29%、不支持は5ポイント増の52%です。

 そのさらに1週間後の29~31日に実施された共同通信の調査では、支持率は39.4%、不支持率は45.5%でした。支持率の水準は前週の毎日新聞や朝日新聞調査より10ポイント以上高いのですが、共同通信の調査としては前回(5月8~10日実施)に続き不支持が支持を上回り、その差も開いています。支持率の低下、不支持率の上昇の傾向は毎日や朝日の調査と変わりません。

 海外を見てもそうなのですが、新型コロナ禍のような社会の危機の場合には、結束して危機を乗り越えることを訴える自国の政治指導者への支持は、多くの場合は一時的にせよ高まる傾向が指摘されています。しかし、安倍政権の新型コロナウイルスを巡る対応への評価は、例えば朝日新聞の23、24日の調査では「評価する」30%に対して「評価しない」が57%に上っています。毎日新聞の23日の調査でも「評価する」20%に対して「評価しない」59%でした。新型コロナウイルスへの対応の評価が低いことが、内閣支持率の低下の底流にあるようです。 

 以下はわたしなりの仮説ですが、もう一つ、支持率低下との関連性が考えられる要因に黒川弘務・前東京高検検事長の定年延長と検察庁法改正案を挙げることができるように思います。検察官の定年を一律65歳にするとともに、一部の幹部検察官については内閣や法相の判断で職務を延長できる特例を盛り込んだ検察庁法改正案は5月8日、他の国家公務員の定年延長法案と一緒に衆院内閣委で審議入りしました。新型コロナ禍の緊急事態宣言が続く中で、採決の強行が危惧される状況でした。このことに対して、ツイッター上で「#検察庁法改正案に抗議します」のハッシュタグを付けた投稿が9日午後から10日にかけてぐんぐん伸びました。著名人が次々にツイートに加わったこともあり、新聞や放送のマスメディアも追随して報道。5月18日の月曜日になって、政府・与党は法案の今国会での採決見送りを決めました。
 その後、週刊文春が黒川氏と産経新聞社の記者2人、朝日新聞社の元記者の社員との賭けマージャンをネット版で20日に速報。黒川氏は21日に辞職しましたが、懲戒処分にはならず、訓告処分どまりでした。この軽い処分は首相官邸の意向だったとの報道があります。 
 ツイッター上で「#検察庁法改正案に抗議します」の投稿が急増した際、わたしはこのブログに以下のように書きました。

 ツイッターへのおびただしい投稿を見ていると、「これまで政治的な話題はつぶやかなかったが、今回は黙っていられない」との趣旨のツイートが、いくつもありました。タレントやミュージシャンも少なくない数の方が投稿しています。これまで、そうした立場の人が政治的な意見を表明することには批判がありました。今回も批判はあるようですが、意見表明を当然のことと受け止める声も多く目にします。コロナ禍によって政治への関心が高まり、「政治への意見の表明」に対する社会の視線が変わりつつあるのかもしれないと感じます。

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 安倍政権への厳しい視線が急増したことの背景には、政治に対する意識の変化があるのではないか、と感じています。新型コロナ禍によって、私権の制限を伴う緊急事態宣言が出され、また行動の制限によってテレビで国会での政府と野党のやり取りに接したりして、政治への関心を高めた人が増えている可能性があります。もしその通りだとすると、時間がたてば安倍政権の支持率はこれまでのように上昇傾向に転じるのかどうかは分かりません。後続の調査を注視したいと思います。

 以下に各調査の結果のうち、内閣支持率を書きとめておきます。
【安倍晋三内閣の支持率】 

・共同通信 5月29~31日
  支持  39.4%(2.3P減) ※前回は5月8~10日
  不支持 45.5%(1.5P増)

・朝日新聞 5月23、24日実施
  支持  29%(4P減) ※前回は5月16、17日
  不支持 52%(5P増)
・毎日新聞 5月23日実施
  支持  27%(13P減) ※前回は5月6日
  不支持 64%(19P増)

・朝日新聞 5月16、17日実施
  支持  33%(8P減) ※前回は4月18、19日
  不支持 47%(6P増)
・NHK 5月15~17日実施
  支持  37%(2P減) ※前回は4月10~12日
  不支持 45%(7P増)
 
・産経新聞・FNN 5月9、10日実施
  支持  44.1%(5.1P増) ※前回は4月11、12日
  不支持 41.9%(2.4P減)
・TBS 5月9、10日実施
  支持  47.3%(4.1P増) ※前回は4月4、5日
  不支持 50.8%(1.9P減)
・共同通信 5月8~10日実施
  支持  41.7%(1.3P増) ※前回は4月10~13日
  不支持 43.0%(±0)
・日経新聞・テレビ東京 5月8~10日
  支持  49%(1P増) ※前回は3月27~29日
  不支持 42%(±0)
・読売新聞 5月8~10日実施
  支持  42%(±0) ※前回は4月11~12日
  不支持 48%(1P増)
・毎日新聞 5月6日実施 社会調査研究センターと共同
  支持  40%(4P減) ※前回は4月8日
  不支持 45%(3P増)

【追記】2020年6月3日8時20分
 産経新聞とFNNの合同調査の結果も報じられました。
 内閣支持率は以下の通りです。

・産経新聞・FNN 5月30、31日実施
  支持  36.4%(7.7P減) ※前回は5月9、10日実施
  不支持 52.5%(10.6P増)