「コロナと五輪」 報道の二極化鮮明~東京五輪・在京紙の報道の記録⑤7月30日付

 東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)が東京五輪をどのように報じたかの記録です。各紙の朝刊1面が中心です。

【7月30日付】
 ■1面トップはコロナ
 新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、7月29日の新規感染者の発表は全国で1万693人に上り、初めて1万人を超えました。東京都は3865人で、3日連続で最多更新です。
 ※東京の30日の新規感染者は3300人。全国では2日連続で1万人超になりました。政府は緊急事態宣言を千葉、埼玉、神奈川、大阪の4府県に出すことを決定。東京、沖縄の宣言延長と合わせて、この6府県の緊急事態宣言は8月31日までとなります。

 東京発行の新聞各紙では、読売新聞と産経新聞は連日、日本選手の金メダル獲得の記事を1面トップに置き続けてきましたが、30日付朝刊はコロナ感染急増になりました。経済ニュースが中心の日経新聞は別として、朝日、毎日、読売、産経、東京の5紙の1面トップが、五輪開会以降、初めて新型コロナウイルス関連ニュースでそろいました。
 ただし、報道の内容を見ていくと、以前の記事で触れた「コロナと五輪」を巡る二極化が、一層鮮明になっているように感じます。
 人の流れが大きく減らない要因に、自粛疲れと並んで東京五輪の開催強行があるとの指摘は、感染症の専門家からも出ています。外出を控えてほしいとのメッセージを政府や自治体が発しても、五輪開催による祝祭感、高揚感がある中では危機感が共有されず、実際に行動の抑制に結びつかせるのは難しい、との指摘です。朝日新聞や毎日新聞、東京新聞はそうした見方も紹介していますが、読売、産経の2紙の報道には見当たりません。
 感染拡大と東京五輪開催との因果関係は、菅首相も東京都の小池百合子知事もかたくなに否定しています。世論の反対を押し切って開催した以上、それが感染の爆発的増加を招いたとは立場上、認めるわけにはいかないのでしょう。確かに現状では、因果関係を直接示す明白なエビデンスはないかもしれません。かといって、感染力が強い変異種の存在と、社会の自粛疲れだけに急拡大の要因を求めるのが適切なのか。あらゆる可能性を想定するのが、危機に当たっての対応の基本であるはずです。
 首相や都知事の政治的な立場はともかく、少なくともマスメディアは異なる立場で多角的な情報を社会に届けるのが役割です。

 ■2週間前
 30日付の各紙の紙面でひときわ目を引くのは産経新聞の社説(「主張))「コロナと五輪 選手の活躍を家で見よう」です。「感染拡大を東京五輪に結びつけるのは間違いである」と言い切っています。理由として、現在の感染者数が五輪開会前の2週間前の状況の反映であることを挙げています。それも一つの主張、考え方だと受け止めたいと思います。
 2週間前の7月15日ごろと言えば、五輪開会を1週間後に控え、海外からの選手団の入国が始まっており、成田空港や羽田空港では混乱が生じていると報じられていました。「安全安心」の建前と実態の乖離が表面化していました。来日中のIOCバッハ会長が、緊急事態宣言下の東京から広島を訪問したのは16日です。また、新型コロナウイルスの潜伏期間は一般的には5、6日です。 

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 一方、地方紙の30日付の社説では「尾身会長は『社会一般の中で危機感が共有されていないこと』を最大の問題として指摘している。東京五輪の開催や首相の楽観姿勢と無関係ではないだろう」(信濃毎日新聞)、「大会の開催そのものが、行動を緩めてもよいという誤ったメッセージとなっているのではないか」(神戸新聞)、「夏休みに入り、五輪競技の熱戦も相まって、警戒心が緩んでいるのが実情だろう」(徳島新聞)といった指摘もあります。
 ※五輪開会後の各紙の社説、論説を以下の記事にまとめています

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 以下は東京発行各紙の1面掲載記事の主な見出しです。

▼朝日新聞
①「東京『爆発的感染拡大』/都の会議 危機感示す」「国内感染1万人超 東京3685人」
②「緊急事態 来月31日まで/きょうにも正式決定 6都府県に拡大」
③「益川敏英さん死去/素粒子論 ノーベル物理学賞 81歳」
④「柔道 ウルフ・浜田『金』」
▼毎日新聞
①「新規感染 初の1万人超/政府 4府県に緊急宣言へ 新型コロナ/東京・沖縄は延長」
②「益川敏英さん死去/08年ノーベル物理学賞 81歳」
③「柔道男子ウルフ『金』/100キロ級 女子78キロ級は浜田」「多様性 新時代を象徴」「卓球女子単で伊藤が初の銅」
▼読売新聞
①「首都圏3県・大阪 追加へ/2日から31日 東京・沖縄延長/緊急事態/まん延防止5道府県に」/「全国感染1万人超え」
②「ウルフ『金』 浜田『金』 柔道/100キロ級21年ぶり」「卓球 伊藤『銅』」
③「益川敏英さん死去/素粒子物理 ノーベル賞 81歳」
▼日経新聞
①「三菱UFJ、業種超え連携/スマホ金融で共通基盤/大和や東京海上参加」
②「感染、全国1万人超す/首都圏3県・大阪 緊急事態きょう諮問」
③「米GDP6.5%増/コロナ前回復 市場予測は下回る 4~6月」
④「ウルフ・浜田が金 柔道」
⑤「益川敏英さん死去/81歳、ノーベル物理学賞」
▼産経新聞
①「国内感染 初の1万人超/緊急事態8月末まで延長/4府県追加きょう決定」/「パラ・衆院選…急増受け一転」
②「ウルフ・浜田『金』/伊藤『銅』卓球女子単」
③「益川敏英さん 死去/素粒子論 ノーベル物理学賞 81歳」
▼東京新聞
①「首都圏3県に緊急宣言/来月2~31日 東京も延長/政府方針、大阪府追加」「全国感染 初の1万人台/3県 病床使用率が急上昇/『従来対応では限界』」/「尾身氏『五輪 感染増やす要素』」「小池氏は異論『自宅観戦で人出減少』」
②「益川敏英さん死去 ノーベル物理学賞」

コロナ感染急増と東京五輪と首相の楽観姿勢~新聞各紙の社説、論説

 新型コロナウイルスの感染者が急増し、7月28日に全国で9500人超に達しました。この問題を取り上げた29日付の新聞各紙の社説、論説を見ると、東京五輪の開催強行が人出の抑制を妨げている可能性を指摘したり、菅義偉首相の対応に危機感が欠けていることを批判したりしている内容のものが少なくありません。一方で、別の記事でも触れていますが、読売新聞と産経新聞は、五輪開催とのかかわりには言及がありません。
 以下に、目に止まった社説、論説の見出しと本文の一部を書きとめておきます。いずれも7月29日付です。

▼朝日新聞「感染者の急増 社会で危機感の共有を」
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14991877.html

 政府・都は外出自粛や移動の抑制を求めながら、五輪という巨大イベントを強行し、祝祭気分を醸し出してきた。この矛盾がさまざまな場面で噴出。繰り返される宣言への慣れや、酒類の提供停止をめぐる失政への反発も重なって、行政の要請に協力しようという意識は極めて希薄になっている。
 自分たちの振る舞いによって、自分たちの言葉が市民に届かない。まずその自覚を持ち、これまでの判断ミスを反省したうえで、状況の改善に当たらねばならない。五輪についても、首相が国会で表明した「国民の命と健康を守っていくのが開催の前提条件」という約束にたがわぬ対応をとる必要がある。

▼毎日新聞「五輪さなかの第5波 首相の楽観姿勢を危ぶむ」
 https://mainichi.jp/articles/20210729/ddm/005/070/126000c

 感染者数を抑えない限り全体の入院患者は増え続け、いずれは医療体制に限界が生じる。
 にもかかわらず、菅義偉首相の対応には危機感が感じられない。
 感染者急増にも「不要不急の外出を避け、オリンピックはテレビで観戦してほしい」と呼び掛けるにとどまっている。
 五輪については、「人流(人出)は減少しており、心配もない」と中止の可能性を排除した。
 だが、人出は前回の宣言時ほどには減っていない。感染力の強い変異株の広がりも懸念材料だ。
 大会組織委員会は感染状況に大きな変化が生じた場合、都や政府などを含めた「5者協議」で対応を議論するとしている。事態の推移を注視して臨機応変に対応する必要がある。

▼読売新聞「コロナ急拡大 局面を見極め対策切り替えよ」
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210728-OYT1T50517/

 感染者数が増加するたびに、宣言の延長や自粛要請の強化を繰り返すだけでは解決にならない。
 店内の感染対策を十分に講じている飲食店には、酒類の提供を認め、資金面でも支援してはどうか。ワクチンの接種や検査を受けた人が優先的に店を利用できるような仕組みの導入など、メリハリの利いた対策が重要になる。

▼産経新聞「コロナ感染急拡大 基本を見直し抑止を図れ」
 https://www.sankei.com/article/20210729-FGV4KNTNGBIVNJMK32RMCB7B2M/

 東京都と政府は「人流の抑制」を都民、国民に要請する一方で、市中感染の拡大につながりかねない自宅療養の解消には、まともに取り組んできたとはいえない。
 お盆を控え、感染拡大の全国への波及も食い止めなければならない。そのために、蔓延防止等重点措置の対象を全道府県に拡大しておくことを提言する。
 道府県内で一律に強いコロナ対策を行う必要はない。たとえば新規感染者が1桁から2桁に増えた段階で、市町村単位で迅速に対応するためである。重点措置を機動的に運用することで、地方のコロナ対策を支えたい。

▼秋田魁新報「コロナ感染急拡大 楽観捨て対策に本腰を」
 https://www.sakigake.jp/news/article/20210729AK0009/

 菅首相と小池百合子都知事が口をそろえて東京五輪のテレビ観戦を呼び掛けている。そんな訴えだけで人出が抑制されるとは到底思えない。
 都内の繁華街の人出は宣言後にやや減少しているとはいうものの、過去の宣言時と比べて減り方は小さいという。夏休みが始まり、無観客とはいえ五輪競技の熱戦が繰り広げられる都内では、高揚した気分の広がりもあって人出の抑制はますます難しくなっているのではないか。

▼山形新聞「コロナ感染最多 対策を総動員する時だ」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/?par1=20210729.inc

 首相は8日、都内への4度目の緊急事態宣言発令に際して「東京を起点とする感染拡大は絶対に避けなければならない。先手先手で予防的措置を講ずる」と強調したが、現時点では果たせなかったと言わざるを得ない。発令2週間後には宣言の効果により感染者は減少傾向になる前例が多い。今回逆ベクトルになってしまったのは、五輪開催によるお祭りムードもあって人流を抑え切れなかったためではないか。

▼信濃毎日新聞「コロナ感染最多 甘く見過ぎていないか」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021072900181

 急拡大の様相が顕著になった27日、菅義偉首相は「強い警戒感を持って感染防止に当たっていく」と応じるだけで具体策を示さなかった。記者団に五輪中止の選択肢を問われると「人流(人出)も減っているので、そこはありません」と否定している。
 都内繁華街の人出は宣言後に減っているが、過去の宣言時より鈍い。五輪の会場周辺は人で混雑する状況も生じている。
 しっかりとした分析もなく安易に言葉を使い、誤ったメッセージとして伝わっていないか。五輪期間中、東京から地方に人が流れ、感染を広げていないか。早急に対策を練るべきだ。

▼新潟日報「全国感染最多 首相の認識甘過ぎないか」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20210729631607.html

 違和感を覚えるのは、宣言の効果が見えず、医療逼迫(ひっぱく)が起き始めているのに、首相の発言が安心を殊更強調しているように聞こえることだ。
 首相は都内の感染者が最多を更新した27日、「強い警戒感を持って感染防止に当たっていく」と述べた。ただ、「人の流れは減っている。心配はない」とも言い切った。
 ワクチン接種により高齢者の感染が著しく減っているとし、重ねて効果を強調した。
 繁華街の人出はやや減少したとはいえ十分ではなく、感染力が強いインド由来の変異株(デルタ株)が広がっている。
 ワクチンが有効だと言っても2度の接種が済んだ国民は25%にすぎず、未接種者が多い若い世代で感染拡大と重症化が顕著だ。ワクチンの配分不足を巡る混乱も収まってはいない。
 そうした状況下でなぜ首相は「心配はない」と言えるのか。
 首相はまた、五輪中止の選択肢を問われ「そこはありません」と断言した。
 「五輪ありき」で現状を顧みないような姿勢では、国民に感染防止を訴えても危機感が伝わるとは到底思えない。

▼中日新聞・東京新聞「コロナ急拡大 対策を練り直さねば」
 https://www.chunichi.co.jp/article/299914?rct=editorial

 菅義偉首相は、感染拡大に伴い東京五輪・パラリンピックを中止する可能性について「人流も減っている」と否定した。
 四度目の宣言発令後、人出は確かに減っているが、以前の発令時に比べれば減り方は鈍い。専門家会議によると、東京の夜間の人出の減りは前回発令後二週間と比べると今回は二分の一以下にとどまる。人出は減っていないというのが国民の実感だろう。
 人々の間で「コロナ疲れ」が広がり、政府の対策に不安が募っているのに、首相の説明は危機感を欠き、五輪優先の姿勢すら透けて見える。あまりにも不誠実だ。

▼福井新聞「コロナ感染急拡大 ワクチン頼みの無策露呈」
 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1367022

 首相はワクチン接種に前のめりだが、接種が進む英国や米国では感染力の強いデルタ株で再拡大に見舞われている。首相は少なくとも1回接種した人が全人口の4割に達すれば感染者が減少傾向になるとの見通しを示しているが、あまりに楽観的すぎる。ここに来ての感染急拡大はワクチン頼みの無策が露呈したと言わざるを得ない。

▼西日本新聞「コロナ急拡大 危機感高め対策練り直せ」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/777163/

 懸念された事態が現実となってきた。新型コロナウイルスの新規感染者が五輪開催中の東京都で連日、過去最多を更新し、地方でも急拡大している。
 専門家は「ワクチン頼みだけでこの危機は乗り越えられない」と警告している。政府は一連の対策が手詰まり状態にあることを直視し、局面打開へ新たな一手の検討を急ぐべきだ。

▼宮崎日日新聞「東京コロナ感染最多 ワクチン頼みの方針見直せ」
 https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_55188.html

▼南日本新聞「[新型コロナ・東京の感染最多] 原点に戻り対策徹底を」
 https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=141025

 全国でもきのう、過去最多を更新。鹿児島県内も23、25日にクラスター(感染者集団)が相次いで確認され、増加傾向にある。ワクチン接種は各地で進んでいるものの、東京五輪の影響もあり人の流れは抑え切れていない。
 夏休みに入り、お盆の帰省シーズンも近づく。不要不急の外出を控えるなど、原点に立ち返った感染対策を徹底させるよりほかない。

▼沖縄タイムス「[感染者が過去最多]若者に届く言葉 必要だ」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/794610

 心したいのは、今回の急拡大は、友人や知人など県民同士の会食による感染パターンが多いと分析されている点だ。
 緊急事態が5月23日から2カ月以上の長期にわたり、県民の自粛疲れが行動に表れているのだろう。
 初期の緊張感を保ち続けるのは難しい。ただ、気の緩みが健康リスクや医療逼迫(ひっぱく)を招きかねない。玉城知事は、特に若者に危機感が伝わる言葉の発信が必要だ。

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感染の爆発的拡大と五輪開催の関連を疑う視点~東京五輪・在京紙の報道の記録④7月29日付

 東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)が東京五輪をどのように報じたかの記録です。各紙の朝刊1面が中心です。

【7月29日付】
 ■「五輪とコロナ」報道が二極化
 東京の新型コロナウイルスの新規感染者は7月28日、過去最多を2日連続で更新し、3177人になりました。全国では計9583人でこちらも過去最多を更新。首都圏の4都県で6割近くを占めます。
 ※29日の東京の新規感染者はさらに増えて3865人、全国では1万人を超えました。東京都のモニタリング会議では感染症専門家が「経験したことがない爆発的な感染拡大に向かっている」と指摘しています。

 政府や東京都は、ワクチン接種が進み、重症化しやすい高齢者の感染が減っており、冬の第3波のときとは事情が異なることを強調しているようです。しかし、政府の新型コロナ分科会の尾身茂会長は28日の衆院内閣委員会で、医療の逼迫が既に起き始めていることや、人々に危機感が十分に伝わっていないことを指摘したと報じられています。危機感が薄れ、自重できなくなっている要因の一つとして、東京五輪の開催強行も指摘されています。外出を控えなければいけないことは頭では理解していても、これまでの自粛疲れに加えて、五輪開催に伴う祝祭感が危機意識を薄めてしまっていることは否定できないように思います。また、そのことは事前に、尾身会長が強く指摘していたことでした。
 29日付の朝刊各紙では、朝日、毎日、東京の3紙は新型コロナウイルスの感染者数を1面トップに置きました。一方で、一貫して日本選手の金メダルを1面トップに据えている読売、産経両紙はこの日の朝刊も変わりありませんでした。
 ここにきて、読売、産経両紙には、1面の作りのほかにも顕著な共通点が出てきているように思います。感染者の爆発的な増加と五輪開催との関連を疑う視点が、社説を含めて記事の中に見当たらないことです。他紙では、例えば東京新聞は総合面で、五輪の開催が感染防止と矛盾したメッセージになり、人の流れを抑えられない要因になっている疑いを指摘する長文の記事を載せています。朝日新聞も同趣旨のことを社説で指摘しています。東京発行各紙の「五輪とコロナ」報道は二極化してきているように感じます。

 ■「お答えする内容がない」
 東京でも全国でも28日は感染者数が過去最多になったのに、菅義偉首相の記者会見やぶら下がり取材の機会はありませんでした。東京新聞は同日夜、「『本日はお答えする内容がない』(首相秘書官)」ことが理由だとする記事を同紙のサイトにアップしました。29日付朝刊でも総合面に掲載しています。
 ※「菅首相、東京で最多更新の3000人感染にも『お答えする内容がない』と取材拒否」
  https://www.tokyo-np.co.jp/article/120085

 首相が答えるべきは、どうやって感染拡大を止めるのか、その具体的な方策です。「お答えすることがない」とは、打つ手がないことをある意味、正直に表している可能性があります。重要な情報だと思います。
 
 ■「五輪と同じスポーツなら」
 五輪開催が危機感を薄れさせていることを示しているように感じる実例が報じられました。毎日新聞は28日夜、以下の記事をサイトにアップしました。紙面では29日付朝刊の社会面に掲載されています。
 ※「山梨県教委幹部ら約12人がゴルフ・会食『五輪もやっているので』」
 https://mainichi.jp/articles/20210728/k00/00m/040/336000c

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため長崎幸太郎知事は県民に、大人数での会食などを控えるよう要請しているが、参加した幹部は「東京オリンピックが感染対策を徹底して実施されている。対策すれば、同じスポーツのゴルフも開催していいのではと判断した」と釈明した。
 県教委によると、保健体育課長や中北教育事務所の副所長ら職員3人と教員OBらは25日に県内のゴルフ場で午前8時半から約1時間の昼食を挟んで、午後2時半ごろまでプレーした。マスクや手指消毒、検温をし、食事も会話中はマスクを着用する「マスク会食」を徹底させたという。

 来日したIOCのバッハ会長は広島を訪ねたり、野球の第1戦では福島に出掛け、大会組織委員会の橋本聖子会長や丸川珠代五輪相が同行したりと、都県境をまたぐ移動をまったく自重していません。こうしたことの一つひとつがどんなメッセージとして日本の社会で受け止められるか。日本政府も組織委員会もIOCも、よく考えるべきです。

 ■NHKに変化?
 28日夜から、NHKの7時の全国ニュースに変化が見られるように思います。コロナ感染拡大に関するニュースを最初に、それもかなり長い時間を取って詳しく伝えています。29日はこの時間帯に五輪で日本選手の金メダル獲得が複数ありましたが、テロップで速報しただけで、コロナ関連のニュースの中断はありませんでした。
 大災害並みの惨事を想定してモードが切り替わり、相対的に五輪大会のニュースバリューが下がったようにも感じます。

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▼朝日新聞
①「感染 全国最多9583人/東京3177人 神奈川1051人」/「宣言効果 薄い都内/デルタ株 首都圏推定75%/専門家組織」/「埼玉・千葉・神奈川・大阪に緊急事態 検討」
②「橋本『金』体操 新井『金』柔道」/「大橋2冠 遅咲きの25歳」
▼毎日新聞
①「全国感染 最多9583人/首都圏3県 政府、宣言調整」/「『これまでにない拡大』専門家」
②「大橋2冠 夏季の女子で初/体操・橋本 柔道・新井が金」/「科学的練習 20代でも成長」
③「三菱電機新社長 漆間専務が昇格」
▼読売新聞
①「橋本『金』/体操総合 日本勢3連覇/バド桃田 敗退」「大橋メドレー2冠」「新井『金』柔道70キロ」
②「コロナ 全国感染 最多9582人/緊急事態 首都圏3県追加も」
▼日経新聞
①「追跡広告 見直し機運/サッポロビール予算7割減/個人情報使わぬ新技術も」
②「半導体正常化 来年以降に/不足、iPhoneにも波及/実需超す発注影響も」
③「19歳橋本『金』体操/競泳・大橋2冠 柔道・新井も金」
④「スカイマーク資本増強/40億円 政投銀・ANAなど支援」
⑤「東京感染 最多3177人/全国は初の9000人超」
▼産経新聞
①「橋本『金』体操男子個人総合 最年少 大橋2冠 競泳女子200メートル個人メ」「新井『金』柔道女子70キロ級」
②「都内感染最多3177人/政府 首都圏3県、緊急事態へ/国内初9500人超」
③「安倍前首相 訪台に意欲/『李登輝氏の墓参りしたい』 死去1年」
▼東京新聞
①「4都県 5675人/尾身会長『医療逼迫 既に』/全国感染 初の9000人超/神奈川 埼玉 千葉 緊急宣言の発令 政府検討」
②「満床間近 綱渡りの現場/立川の病院『限界』 急患断念も」ルポ コロナ禍のオリンピック
③「19歳橋本 最年少で金」

感染者は過去最多 五輪中止の選択肢「ありません」(菅首相)~東京五輪・在京紙の報道の記録③7月27、28日付

 東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)が東京五輪をどのように報じたかの記録です。各紙の1面が中心です。

【7月28日付】
 ■中止の選択肢ないと明言
 東京都で7月27日に新たに確認された新型コロナウイルスの感染者が、過去最多の2848人に上りました。1週間前から倍増。東京都は2週間前の7月12日から緊急事態宣言下にありますが、感染は縮小に向かうどころか、拡大する一方です。ワクチン接種が進み、重症化しやすい高齢者の感染は減っているようですが、それでも感染者が増えれば医療が逼迫することに変わりはありません。
 ※ちなみに28日の東京の新たな感染者は、さらに増えて3177人でした。千葉、埼玉、神奈川各県も最多を更新し、全国の合計は9000人を超えました。

 こうした状況で五輪を継続しても大丈夫なのか、不安を抱くのは当然です。しかし、菅義偉首相は27日の記者団とのぶら下がり取材で、五輪の中止の選択肢はあるのかを問われると「人流も減っていますし、そこはありません」と明言しました。何をもって「人流が減っている」と判断しているのか、説明はありません。東京で生活しているわたしの実感でも、通勤時の電車の混雑は増していることはあっても、減ってはいません。
 何より、現に東京の感染者数はかつてない勢いで増加しています。緊急事態宣言は効果がないことが明らかで、ほかに何か政府や東京都が対策を取っている様子はありません。五輪関係者の感染も連日、報告されている中で、首相がかねて強調していた「安全、安心」は確保できていると言えるのでしょうか。根拠も示さないまま、五輪中止が選択肢にないことをいとも簡単に言い切ってしまうのは無責任です。
 五輪、さらには8月下旬から予定されているパラリンピックの行く末にもかかわる大きなニュースです。東京発行新聞各紙の28日付朝刊では、朝日新聞と東京新聞が1面トップで扱いました。
 一方で五輪の競技では、27日も日本選手が柔道とソフトボールで金メダルを取りました。特にソフトボールは、北京大会での日本の金メダル後、五輪競技からは外れており、今回は13年越しの連覇。そして次回のパリ大会ではまたも外れます。そうした濃いストーリーがあり、従来通りの五輪報道なら間違いなく全紙そろって1面トップではなかったかと思います。こちらは毎日新聞、読売新聞、産経新聞が1面トップでした。読売、産経の両紙は連日、日本選手のメダル獲得を1面トップにしています。
 
 ■新聞は地域性が強いメディア
 28日付朝刊で興味深いのは毎日新聞です。全国紙のうち朝日新聞、毎日新聞、読売新聞は東京、大阪、福岡に編集・発行拠点を持ち、それぞれに紙面を編集しています。新聞は地域性が強いメディアですので、全国紙も全国で同一の紙面というわけではないのです。
 毎日新聞の28日付朝刊では、東京本社の発行紙面では前述の通り、五輪の日本選手のメダルが1面トップでしたが、大阪本社、西部本社の発行紙面は東京のコロナ感染状況が1面トップでした。
 ※毎日新聞のサイトでは、以下のページで各地域の1面のサムネイル画像を見ることができます。
 https://mainichi.jp/viewer/

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▼朝日新聞
①「東京 感染最多2848人/首都圏3県 緊急事態要請へ/大阪・沖縄も急増」/「首相、五輪中止を否定/『人流は減少、心配ない』」
②「永瀬『金』 柔道81キロ級」/「ソフト『金』未来へつなぐリレー/上野から後藤 区切りの東京で快投」
▼毎日新聞
①「ソフト13年越し連覇/柔道男子81キロ級 永瀬が金」/「『冬の時代』を越えて」
②「東京 最多の2848人感染/首都圏3県 緊急事態要請検討」/「五輪 中止ない 首相」
▼読売新聞
①「ソフト連覇/北京以来 米破る」「永瀬『金』柔道」「五十嵐『銀』サーフィン」
②「コロナ 都内感染 最多2848人/先週の倍 若年層目立つ」/「首相『強い警戒感』」
▼日経新聞
①「雇用保険料引き上げへ/雇調金増、財源が不足/22年度にも/安全網の再構築急務」
②「勝者は中銀か民間か/揺らぐ国家の通貨主権」キャッシュレス新世紀(下)
③「ソフト 日本『金』/柔道男子・永瀬も」
④「東京、最多2848人感染/首都圏3県 緊急事態要請へ調整」
▼産経新聞
①「上野締めた ソフト『金』/永瀬『金』柔道81キロ級/サーフィン男子 五十嵐『銀』」/「米撃破 耐えた13年」/「台風接近備え 一部日程順延」
②「都内感染最多2848人/首相『五輪中止はない』」
▼東京新聞
①「都感染最多 2800人超/緊急宣言 歯止めならず/20~30代で5割超」/「4連休で満床の病院も」「今後1、2週間増え続ける恐れ」
②「首相、五輪中止『ない』/記者団に明言『人流減っている』」

【7月27日付朝刊】
 ■「黒い雨」訴訟で上告見送り
 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」を巡り、「被爆者」の認定範囲の拡大が争われた「黒い雨訴訟」で、菅義偉首相が7月26日、原告全員を被爆者と認定した14日の広島高裁判決を受け入れ、上告しないことを表明しました。広島市や広島県も国に受け入れを強く求めており、最後は菅首相の政治判断だったと報じられています。原爆禍から76年。国家の行為による戦争被害の現実的な救済と言えそうですが、もっと早期にできなかったのかと思います。
 “平和の祭典”である五輪期間中の、戦争と平和を巡る大きなニュースです。27日付朝刊では、朝日、毎日、東京の3紙は1面トップの扱いでした。一方で26日の五輪競技では、日本選手は3種目で金メダルを取りました。読売新聞、産経新聞はこちらが1面トップ。産経は「黒い雨」訴訟の本記は2面でした。

 ■開会式視聴率
 7月23日夜に行われた東京五輪開会式のテレビ視聴率が26日、報じられました。ビデオリサーチの調査によると、平均世帯視聴率(関東地方、視聴率)は56.4%、瞬間最高は61.0%、個人視聴率は40%(同)とのことです。1964年の東京大会は61.2%でした。開催には今も賛否がありますが、関心も高いようです。

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▼朝日新聞
①「『黒い雨』上告見送り/首相『直ちに手帳交付』/『受け入れ難い部分もある』」
②「遊ぶ10代 これがスケボー/技見せ合い 磨き合い」/「卓球混合 初の『金』」
③「高速道『変動料金』 国交省が導入検討」
▼毎日新聞
①「『黒い雨』訴訟 上告断念/原告以外にも救済拡大 政府」
②「卓球 混合で悲願の金/柔道・大野、スケボー・13歳西矢も」
③「温室ガス 家庭排出66%減/政府計画素案 目標大幅引き上げ」
▼読売新聞
①「水谷・伊藤組『金』/卓球日本勢初 中国破る/大野連覇 柔道/13歳西矢『金』スケボー」
②「『黒い雨』国が上告断念/首相表明 原告勝訴確定へ」
▼日経新聞
①「温暖化リスク算定 新手法/企業の情報開示基盤に 三井住友銀/衛星やAI駆使」
②「グーグル参入の衝撃/勝者なき消耗戦」キャッシュレス新世紀(中)
③「水谷・伊藤組『金』卓球/大野連覇 柔道/13歳西矢も金 スケボー」
④「黒い雨訴訟 上告断念/首相『被爆者手帳を交付』」
▼産経新聞
①「日本卓球 初の『金』/混合ダブルス 水谷・伊藤組/『王国』中国を破る」「最年少13歳 西矢『金』 スケートボード女子ストリート」「大野連覇 柔道 男子73キロ級」
▼東京新聞
①「黒い雨訴訟 国、上告せず/首相表明 被爆者手帳交付へ/広島原爆76年 高齢原告救済に道」
②「水谷と伊藤 金の絆/混合ダブルス 日本卓球初の頂点」
③「相模原殺傷5年」写真

東京五輪 期間中の社説、論説の記録 7月23日付~ ※随時追加

 東京五輪期間中に、五輪をテーマに取り上げた新聞各紙の社説、論説を記録していきます。随時、追記します。

 五輪開会までの2カ月間の社説、論説は以下の別記事にまとめています。その続編になります。原則として、ネット上の各紙サイトで読めるものが対象です。

news-worker.hatenablog.com

news-worker.hatenablog.com

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【写真】3×3バスケットボールなどの会場となった青海アーバンスポーツパーク(お台場地区)。6月中旬に訪ねた際には工事中でした。無観客開催となってスタンドは有効利用されないままです。

【7月30日付】

▼産経新聞「コロナと五輪 選手の活躍を家で観よう」
 https://www.sankei.com/article/20210730-X6CTZ5RFCVNCNOW2EUKU5T2E6E/?outputType=theme_tokyo2020

 街には人があふれ、頼みのワクチン接種は遅滞が目立っている。新型コロナウイルスの新規感染者が増えるのも当然だろう。ただ感染拡大を東京五輪に結びつけるのは間違いである。
 今、新たに目にする感染者数の数字は、2週間前の状況を反映するものだ。そのころ五輪は、まだ開幕していない。
 ワクチン接種済みの選手らの15分間の外出に目くじらを立てて五輪を悪者に仕立てる一方で、堂々深夜まで満席の居酒屋の喧騒(けんそう)が共存する、大いなる矛盾に気づくべきである。

▼信濃毎日新聞「感染1万人突破 首相は現実を見据えよ」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021073000143

 きのうの参院内閣委員会の閉会中審査で「今の感染を下げる要素があまりない」一方で、「上げる要素はたくさんある」と強調。人々のコロナ慣れやインド由来の変異株(デルタ株)、五輪開催や夏休みによる人出増を列挙した。
 従来のウイルスより感染力が強いデルタ株への置き換わりが進んでいる中、人の流れが以前の緊急事態宣言時より大幅に減らなければ、感染拡大は止まらない。
 尾身会長は「社会一般の中で危機感が共有されていないこと」を最大の問題として指摘している。東京五輪の開催や首相の楽観姿勢と無関係ではないだろう。
 (中略)
 政府に必要なのは、国民に対する明確で説得力のあるメッセージである。菅首相は国会や記者会見で感染状況の客観的、科学的な分析を説明し、店舗への補償などの対策を示すべきだ。
 その上で、外出の抑制や営業の自粛などを要請しなければ、国民の理解は得られない。

▼中日新聞・東京新聞「真夏の五輪 拝金主義を見直さねば」
 https://www.chunichi.co.jp/article/300651

 真夏の野外競技は危険が伴うにもかかわらず、東京都は招致活動時、この時期を「晴れる日が多く温暖」「アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」とPRしていた。
 無責任極まりない虚言だ。無観客でなければ、観戦中や入場時の行列で何人が倒れただろう。
 真夏の開催は、IOCの収入の約七割を負担する米テレビ局の意向とされる。米国では秋に、大リーグのワールドシリーズやプロバスケットボールNBAの開幕などがある。時期が重なるのを避けるため、五輪を真夏にしか開催できないとしたら「アスリート・ファースト」ではなく「テレビ・ファースト」。本末転倒だ。

▼神戸新聞「コロナ急拡大/楽観論脱し対策に全力を」
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202107/0014546811.shtml

 政府の対策分科会の尾身茂会長は「大変な危機感を感じている。今の感染を下げる要素があまりない」と参院内閣委員会で訴え、政府に対して、「自粛疲れ」にある国民に向けた強いメッセージ発信を求めた。
 ところが菅義偉首相は、ワクチン接種の効果を強調し「人の流れは減っている」と繰り返すのみだ。感染拡大と五輪との関係も否定するが、大会の開催そのものが、行動を緩めてもよいという誤ったメッセージとなっているのではないか。これでは感染対策への協力を得るのは難しいと言うしかない。
 尾身氏も五輪を巡り「期間中に感染拡大を防ぐためにすべきことを全力で行うのが政府、大会組織委員会の当然の責任」とした。これに対する政府の対応は十分とは言い難い。

▼徳島新聞「コロナ感染急拡大 危機感を共有しなければ」
 https://www.topics.or.jp/articles/-/566696

 繰り返される宣言への慣れ、自粛疲れから政府の要請に協力しようという意識が希薄になっている。加えて、夏休みに入り、五輪競技の熱戦も相まって、警戒心が緩んでいるのが実情だろう。
 驚くのは、首相の危機意識の低さだ。五輪への影響を問われ、「人流は減少している。心配はない」と述べている。過去の宣言時に比べ、人出の減少幅は小さく、場所によっては増加していることを踏まえれば、楽観的すぎる。
 その一方で、五輪のテレビ観戦や不要不急の外出自粛を呼び掛けても、心に響かないのは明らかだ。
 ワクチンへの過信も気になる。首相は、7月中にワクチンを少なくとも1回接種した人が全人口の4割に達し、感染者は減少するとの見通しを示していた。これも甘い認識だ。

▼佐賀新聞「東京五輪前半戦 佐賀県勢の活躍に元気もらう」
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/715090

 もちろん、日本勢が躍進しているからといって楽観できるような状況ではない。東京の新型コロナ感染は「第5波」の様相を呈し、ソフトボールの決勝があった27日は2848人の感染確認が発表された。28日以降は3千人を上回り、都民からは不安の声も上がっている。政府は不要不急の外出自粛、テレビでの五輪観戦を呼び掛けているが、若者を中心に自粛疲れとも呼べそうな行動の広がりが見てとれる現状だ。感染を封じ込める対策強化が欠かせない。
 (中略)佐賀新聞社はコロナ感染の重大さを認識しつつ、県勢の活躍を全力で伝えていく。

【7月29日付】
▼朝日新聞「感染者の急増 社会で危機感の共有を」
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14991877.html

 政府・都は外出自粛や移動の抑制を求めながら、五輪という巨大イベントを強行し、祝祭気分を醸し出してきた。この矛盾がさまざまな場面で噴出。繰り返される宣言への慣れや、酒類の提供停止をめぐる失政への反発も重なって、行政の要請に協力しようという意識は極めて希薄になっている。
 自分たちの振る舞いによって、自分たちの言葉が市民に届かない。まずその自覚を持ち、これまでの判断ミスを反省したうえで、状況の改善に当たらねばならない。五輪についても、首相が国会で表明した「国民の命と健康を守っていくのが開催の前提条件」という約束にたがわぬ対応をとる必要がある。

▼毎日新聞「五輪さなかの第5波 首相の楽観姿勢を危ぶむ」
 https://mainichi.jp/articles/20210729/ddm/005/070/126000c

 感染者数を抑えない限り全体の入院患者は増え続け、いずれは医療体制に限界が生じる。
 にもかかわらず、菅義偉首相の対応には危機感が感じられない。
 感染者急増にも「不要不急の外出を避け、オリンピックはテレビで観戦してほしい」と呼び掛けるにとどまっている。
 五輪については、「人流(人出)は減少しており、心配もない」と中止の可能性を排除した。
 だが、人出は前回の宣言時ほどには減っていない。感染力の強い変異株の広がりも懸念材料だ。
 大会組織委員会は感染状況に大きな変化が生じた場合、都や政府などを含めた「5者協議」で対応を議論するとしている。事態の推移を注視して臨機応変に対応する必要がある。

▼読売新聞「コロナ急拡大 局面を見極め対策切り替えよ」
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210728-OYT1T50517/

 感染者数が増加するたびに、宣言の延長や自粛要請の強化を繰り返すだけでは解決にならない。
 店内の感染対策を十分に講じている飲食店には、酒類の提供を認め、資金面でも支援してはどうか。ワクチンの接種や検査を受けた人が優先的に店を利用できるような仕組みの導入など、メリハリの利いた対策が重要になる。

▼日経新聞「五輪を女性の力伸ばす契機に」

 熱戦が続く東京五輪は、参加する選手の女性の割合が48.8%と、史上最も高い大会だ。1896年の第1回アテネ大会は男性のみ。1964年の東京大会は13.2%だった。
 多くの人が親しむスポーツは、ジェンダー平等と多様性を目に見えるかたちで示す。こうした動きを歓迎したい。

▼産経新聞「コロナ感染急拡大 基本を見直し抑止を図れ」
 https://www.sankei.com/article/20210729-FGV4KNTNGBIVNJMK32RMCB7B2M/

 東京都と政府は「人流の抑制」を都民、国民に要請する一方で、市中感染の拡大につながりかねない自宅療養の解消には、まともに取り組んできたとはいえない。
 お盆を控え、感染拡大の全国への波及も食い止めなければならない。そのために、蔓延防止等重点措置の対象を全道府県に拡大しておくことを提言する。
 道府県内で一律に強いコロナ対策を行う必要はない。たとえば新規感染者が1桁から2桁に増えた段階で、市町村単位で迅速に対応するためである。重点措置を機動的に運用することで、地方のコロナ対策を支えたい。

▼秋田魁新報「コロナ感染急拡大 楽観捨て対策に本腰を」
 https://www.sakigake.jp/news/article/20210729AK0009/

 菅首相と小池百合子都知事が口をそろえて東京五輪のテレビ観戦を呼び掛けている。そんな訴えだけで人出が抑制されるとは到底思えない。
 都内の繁華街の人出は宣言後にやや減少しているとはいうものの、過去の宣言時と比べて減り方は小さいという。夏休みが始まり、無観客とはいえ五輪競技の熱戦が繰り広げられる都内では、高揚した気分の広がりもあって人出の抑制はますます難しくなっているのではないか。

▼山形新聞「コロナ感染最多 対策を総動員する時だ」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/?par1=20210729.inc

 首相は8日、都内への4度目の緊急事態宣言発令に際して「東京を起点とする感染拡大は絶対に避けなければならない。先手先手で予防的措置を講ずる」と強調したが、現時点では果たせなかったと言わざるを得ない。発令2週間後には宣言の効果により感染者は減少傾向になる前例が多い。今回逆ベクトルになってしまったのは、五輪開催によるお祭りムードもあって人流を抑え切れなかったためではないか。

▼福島民報「【東京五輪 県内開催】記録と記憶、次世代に」
 https://www.minpo.jp/news/detail/2021072988872

 日の丸を背負う選手が真剣勝負を演じたグラウンドは、子どもたちにとって夢の舞台だ。小中学生を対象に、五輪を記念した大会や、出場選手を招いての教室を開催できないか。福島から将来の代表選手を誕生させたい。球場に限らず、あづま総合運動公園全体で伝承事業を進めれば、他競技の機運の盛り上げにもつながる。
 スポーツの力は大きい。復興五輪の看板は色あせても、選手たちはグラウンドで輝きを放ち、被災地の期待に応えてくれた。この感動も、伝承事業を通じて末永く心にとどめたい。

▼福島民友新聞「東京五輪・ソフト『金』/県民に感動と力ありがとう」
 https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20210729-641876.php

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興は、10年たってまだ道半ばだ。決勝の会場こそ、横浜スタジアムに変わったものの、世界一をつかんだ熱いプレーは私たちの心に間違いなく届き、感動と、困難を乗り越えていく力を与えてくれた。心から「ありがとう」と言いたい。
 新型コロナウイルスの感染状況などから、あづま球場での試合は当初の有観客から一転、無観客で行われることになった。会場で声援を送ることはできなかったものの、選手が万全の環境で戦えるよう、関係者は大舞台の準備に力を尽くした。児童生徒らが育てた歓迎の花々も球場を彩った。
 1点を争う張り詰めた戦いが続いた選手たちの支え手として、県民がその一翼を担ったことは誇りとしていい。

▼信濃毎日新聞「コロナ感染最多 甘く見過ぎていないか」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021072900181

 急拡大の様相が顕著になった27日、菅義偉首相は「強い警戒感を持って感染防止に当たっていく」と応じるだけで具体策を示さなかった。記者団に五輪中止の選択肢を問われると「人流(人出)も減っているので、そこはありません」と否定している。
 都内繁華街の人出は宣言後に減っているが、過去の宣言時より鈍い。五輪の会場周辺は人で混雑する状況も生じている。
 しっかりとした分析もなく安易に言葉を使い、誤ったメッセージとして伝わっていないか。五輪期間中、東京から地方に人が流れ、感染を広げていないか。早急に対策を練るべきだ。

▼新潟日報「全国感染最多 首相の認識甘過ぎないか」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20210729631607.html

 違和感を覚えるのは、宣言の効果が見えず、医療逼迫(ひっぱく)が起き始めているのに、首相の発言が安心を殊更強調しているように聞こえることだ。
 首相は都内の感染者が最多を更新した27日、「強い警戒感を持って感染防止に当たっていく」と述べた。ただ、「人の流れは減っている。心配はない」とも言い切った。
 ワクチン接種により高齢者の感染が著しく減っているとし、重ねて効果を強調した。
 繁華街の人出はやや減少したとはいえ十分ではなく、感染力が強いインド由来の変異株(デルタ株)が広がっている。
 ワクチンが有効だと言っても2度の接種が済んだ国民は25%にすぎず、未接種者が多い若い世代で感染拡大と重症化が顕著だ。ワクチンの配分不足を巡る混乱も収まってはいない。
 そうした状況下でなぜ首相は「心配はない」と言えるのか。
 首相はまた、五輪中止の選択肢を問われ「そこはありません」と断言した。
 「五輪ありき」で現状を顧みないような姿勢では、国民に感染防止を訴えても危機感が伝わるとは到底思えない。

▼中日新聞・東京新聞「コロナ急拡大 対策を練り直さねば」
 https://www.chunichi.co.jp/article/299914?rct=editorial

 菅義偉首相は、感染拡大に伴い東京五輪・パラリンピックを中止する可能性について「人流も減っている」と否定した。
 四度目の宣言発令後、人出は確かに減っているが、以前の発令時に比べれば減り方は鈍い。専門家会議によると、東京の夜間の人出の減りは前回発令後二週間と比べると今回は二分の一以下にとどまる。人出は減っていないというのが国民の実感だろう。
 人々の間で「コロナ疲れ」が広がり、政府の対策に不安が募っているのに、首相の説明は危機感を欠き、五輪優先の姿勢すら透けて見える。あまりにも不誠実だ。

▼福井新聞「コロナ感染急拡大 ワクチン頼みの無策露呈」
 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1367022

 首相はワクチン接種に前のめりだが、接種が進む英国や米国では感染力の強いデルタ株で再拡大に見舞われている。首相は少なくとも1回接種した人が全人口の4割に達すれば感染者が減少傾向になるとの見通しを示しているが、あまりに楽観的すぎる。ここに来ての感染急拡大はワクチン頼みの無策が露呈したと言わざるを得ない。

▼西日本新聞「コロナ急拡大 危機感高め対策練り直せ」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/777163/

 懸念された事態が現実となってきた。新型コロナウイルスの新規感染者が五輪開催中の東京都で連日、過去最多を更新し、地方でも急拡大している。
 専門家は「ワクチン頼みだけでこの危機は乗り越えられない」と警告している。政府は一連の対策が手詰まり状態にあることを直視し、局面打開へ新たな一手の検討を急ぐべきだ。

▼宮崎日日新聞「東京コロナ感染最多 ワクチン頼みの方針見直せ」
 https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_55188.html

▼南日本新聞「[新型コロナ・東京の感染最多] 原点に戻り対策徹底を」
 https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=141025

 全国でもきのう、過去最多を更新。鹿児島県内も23、25日にクラスター(感染者集団)が相次いで確認され、増加傾向にある。ワクチン接種は各地で進んでいるものの、東京五輪の影響もあり人の流れは抑え切れていない。
 夏休みに入り、お盆の帰省シーズンも近づく。不要不急の外出を控えるなど、原点に立ち返った感染対策を徹底させるよりほかない。

▼沖縄タイムス「[感染者が過去最多]若者に届く言葉 必要だ」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/794610

 心したいのは、今回の急拡大は、友人や知人など県民同士の会食による感染パターンが多いと分析されている点だ。
 緊急事態が5月23日から2カ月以上の長期にわたり、県民の自粛疲れが行動に表れているのだろう。
 初期の緊張感を保ち続けるのは難しい。ただ、気の緩みが健康リスクや医療逼迫(ひっぱく)を招きかねない。玉城知事は、特に若者に危機感が伝わる言葉の発信が必要だ。

【7月28日付】
▼産経新聞「卓球の金メダル お家芸の復活を喜びたい」
 https://www.sankei.com/article/20210728-OYIQKHY7IJLX7E466QGI34YPFE/?outputType=theme_tokyo2020

 水谷は「今までメダルをたくさん取ってきたが銀メダルや銅メダルで、日の丸をてっぺんに揚げることができなくて、きょう日本の国旗が一番上に揚がり、君が代を聞いているときはアスリートとして誇りに思った最高の瞬間でした」と話した。これがオリンピックである。

▼神戸新聞「国会召集要求/首相は議論から逃げるな」
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202107/0014539872.shtml

 首都圏では変異株が猛威を振るい「第5波」とも言われる。緊急事態宣言下で開催に踏み切った五輪を機に感染がさらに拡大すれば、医療が逼迫(ひっぱく)する恐れがある。開幕目前に開会式の演出担当がユダヤ人大量虐殺をコントの題材にしたとして解任されるなど、人権上重大な問題も相次いだ。大会組織委員会による人選の経緯など検証が必要だ。国会で議論すべき問題は山積している。

▼山陰中央新報「東京コロナ感染最多 ワクチン頼み見直しを」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/69559

 東京は五輪が開幕してまだ5日目。このまま感染の拡大が続けば、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)し、ワクチン接種要員の確保や、五輪選手団らのケアにも影響が出て運営の基盤が揺らぎかねない。事態は深刻と言うべきだ。

【7月27日付】
▼北海道新聞「序盤の東京五輪 浮かんだ課題に対応を」
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/571297

 東京都に緊急事態宣言が発令されて2週間がたったが、都内の新規感染者数は増加ペースが加速し宣言の効果が見られない。きのうは月曜として過去最多だった。
 働き盛りの50代以下の年代の感染が目立つ。重症者が増え、重症病床の使用率も上昇している。医療の逼迫(ひっぱく)が懸念される。
 五輪が祝祭ムードをもたらし、人出の増加や感染対策の緩みにつながっている可能性がある。
 不要不急の外出は自粛し、混雑している場所や時間を避けて行動する―。
 こういった感染防止の基本を改めて徹底する必要がある。

▼福島民友新聞「東京五輪・県産食材への反応/偏見広めないための発信を」
 https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20210727-640924.php

 誤った主張をしっかりと打ち消していかなければ、既成事実化が進んでしまう。偏見に基づく風評が広まらないよう、正しい情報を伝えていくことが不可欠だ。
 韓国のオリンピック委員会を兼ねる大韓体育会が選手団のための給食センターを設置した。選手が最高の状態で試合に臨めるよう、国際大会で各国が食事を手配することはある。ただ、設置の理由として五輪選手村の食事に本県産食材が使われることへの懸念を挙げたのは看過できない。

▼新潟日報「五輪日本躍動 目を見張る新世代の台頭」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20210727630990.html

 東京五輪は序盤戦から日本のメダルラッシュに沸いている。
 新種目のスケートボードや日本のお家芸である柔道などでは、新世代の躍動がまぶしい。新鮮な感動と勇気をもらっている国民も多いだろう。

▼中日新聞・東京新聞「臨時国会 五輪中も開き議論せよ」
 https://www.chunichi.co.jp/article/298406

 東京五輪が開幕したが、国会は閉会したままだ。新型コロナウイルスの感染が拡大に転じているにもかかわらず、国権の最高機関が無策でいいはずがない。野党は憲法五三条に基づいて臨時国会の召集を要求した。菅義偉政権は、直ちに開会に応じるべきだ。
 新型コロナの感染再拡大で、感染症や経済の対策練り直しと、新たな対策の実行が喫緊の課題にもかかわらず、政権はなぜ国会を召集しないのか、不思議で仕方がない。責任放棄ではないのか。

【7月26日付】
▼読売新聞「五輪日本好発進 険しい道のりを示す選手の涙」
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210725-OYT1T50280/

 東京五輪は、新型コロナウイルスの世界的な流行で開催が1年延期された。選手たちは、気持ちのコントロールや体調の管理に苦しんできた。選手の涙には、夢舞台に立つまでの苦難と、周囲の支援への感謝が表れている。
 会場は感染症対策で無観客となったが、テレビの画面を通じても、感動は十分に伝わってきた。これからの観戦も楽しみだ。

▼産経新聞「日本勢の躍進 五輪開催がくれた感動だ」
 https://www.sankei.com/article/20210726-IHPDYWF75JJARPJCTT4QEA4X5E/

 これもスポーツの力である。われわれがテレビ観戦を通じて喜びや感動を共有できたのは、五輪開催という決断があったからだ。
 競泳女子400メートルリレーでは、オーストラリアが世界記録で金メダルを獲得した。この1年、スポーツは危機的な状況に追いこまれながらも、選手たちは前進を続けた。少なくとも、彼らはコロナを見事に克服したといえる。
 この興奮が8月8日の閉幕まで続くように、大会組織委員会にはコロナ対策を含む安全な運営に引き続き努めてほしい。スポーツを通じた人間の強さと可能性を、東京から世界に発信し続けたい。

▼神戸新聞「柔道阿部兄妹/信念でつかんだ二つの金」
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202107/0014533633.shtml

 五輪での日本の「兄妹金メダル」は史上初で、日本勢の女子52キロ級の金も初めてだ。新型コロナウイルスの影響で無観客試合となる中、23歳と21歳の2人が努力と信念でつかんだ栄冠である。兵庫県出身選手の快挙を心からたたえたい。

▼山陽新聞「五輪とジェンダー 差別解消の起点にしたい」
 https://www.sanyonews.jp/article/1155587

 こうした五輪をめぐる潮流の中で、突きつけられたのが五輪が掲げる理念とはかけ離れた開催国・日本の現状だった。2月には大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性蔑視発言をし、国内外から批判を浴びて辞任に追い込まれた。その後も、人権意識の低さを露呈する大会関係者の不祥事が相次いでいる。
 五輪はスポーツの祭典だが、「差別を容認しない」などの五輪精神の浸透もまた開催意義の一つであろう。森氏の辞任後、大会組織委は女性理事の比率を20%から一気に42%へ引き上げるなど前進もあった。あらゆる差別解消へと日本社会が変わる起点になったと、後世に評される大会にしなければならない。

▼徳島新聞「東京五輪、熱戦続く 躍動する選手に声援を」
 https://www.topics.or.jp/articles/-/564069

 過去の五輪で獲得した日本の金メダル数は、前回の東京、2004年アテネ両大会の16個が最多だ。日本オリンピック委員会(JOC)は当初、2度目の東京では倍近い30個を目標に掲げていた。
 しかし、コロナ禍で状況が一変し、数を重んじない考えを表明している。感染拡大を封じ込め、無事に大会を終えることが最重視されている中で当然だ。
 とはいえ、多くの選手はメダルを目標に掲げ、その色にもこだわり、鍛錬を積んできた。トップ選手が躍動する姿は、見る者を感動させる。多くの選手が後に続いてほしい。

▼琉球新報「東京五輪で県勢活躍 県民に勇気と誇り与えた」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1361826.html

【7月25日付】
▼毎日新聞「東京五輪とコロナ対策 感染拡大防止を最優先に」/「安全・安心」にほころび/新しい観戦スタイルを
 https://mainichi.jp/articles/20210725/ddm/005/070/030000c

 感染者数が急増して医療体制の逼迫(ひっぱく)が生じるようなことがあれば、政府や組織委は競技の打ち切りを含め適切な対応を取るべきだ。その際の判断基準を早急に示さなければならない。
 (中略)
 専門家は感染防止の観点から、自宅で家族らとテレビなどで観戦するよう呼び掛けている。スポーツバーなどに大勢が集まって応援するようなことは控えたい。
 自宅ならではの楽しみ方もあるはずだ。選手の詳しいデータを画面に表示しながら競技を見たり、オンラインで応援メッセージを送ったりするなど、新しい観戦スタイルが生まれるきっかけになるかもしれない。

▼産経新聞「五輪競技本格化 偉大な敗者に拍手を送る」
 https://www.sankei.com/article/20210725-5POESKRJ6JOOZAEZTUP6JNOXYY/

 観戦の基本は「勝者には祝福を、敗者にはいたわりを」だ。内村のような偉大な敗者には盛大な拍手を送りたい。
 新型コロナウイルスの感染拡大をめぐって開催への賛否が渦巻いた東京五輪について、「できないではなくて、どうしたらできるかを考えてほしい」と話して心ない非難を浴びたこともあった。
 それはアスリートを代表して述べた言葉であり、批判の対象となるべきではなかった。
 (中略)
 改めて大会1年延期の難しさを思う。度重なる故障で満身創痍(そうい)の32歳に、1年の延期がどれだけ負担だったか。
 選手の事情などお構いなしに、2年、あるいは4年の延期を主張した識者、政治家らには、自身の発言がどれだけ無神経なものだったかを知ってほしい。

▼琉球新報「森氏『最高顧問』案 五輪の理念を問い直せ」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1361286.html

 過去の言動などが差別に当たるとして辞任した人物が相次ぎ、組織委への国民の信頼はないに等しい。今こそ「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進」という五輪の理念を問い直すときだ。
 (中略)
 そもそも東京五輪には重大な疑惑がくすぶり続けたままだ。日本オリンピック委員会(JOC)前会長の竹田恒和氏にかけられた贈賄疑惑だ。
 招致のため国際オリンピック委員会(IOC)委員を務めたアフリカの有力者に2億円超が渡ったとされる。
 フランス当局の捜査着手から5年がたつが、竹田氏やJOCの明確な説明はない。

【7月24日付】
▼毎日新聞「コロナ下の東京五輪 大会の意義問い直す場に」/巨大イベント化の弊害/多様性を再認識したい
 https://mainichi.jp/articles/20210724/ddm/005/070/098000c

 東京五輪の大会ビジョンは「多様性と調和」だ。人種や肌の色、性別、性的指向、出自、宗教など、あらゆる違いを超え、競技を通じて相互理解を深める。
 前回大会に続いて編成された「難民選手団」はその象徴でもある。内戦などで母国を離れざるを得なかった11カ国出身の29人の選手たちだ。
 (中略)
 組織委では人権意識を欠いた振る舞いで関係者の辞任や解任が続き、世界から厳しい目が向けられた。多様性を尊ぶ社会の大切さを改めて認識することが求められている。
 無観客の競技場から見えてくるものがあるはずだ。今こそ原点に立ち返り、五輪の意義を問い直す機会にしたい。

▼読売新聞「東京五輪開幕 苦境でも輝く選手に声援を」
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210723-OYT1T50237/

 選手を取り巻く環境は大きく変わり、現在は、金メダルの獲得数は重視しない考えを示している。選手たちには、重ねてきた努力の成果を存分に発揮してほしい。その姿に、テレビ画面などを通じて大きな声援を送りたい。
 日本勢の躍進が期待される競技は多い。今回復活した野球やソフトボールは、過去の五輪でメダルを獲得している。白血病に打ち勝った競泳の池江璃花子選手の力強い泳ぎも楽しみだ。
 選手たちの活躍は、世界に彩りを与えてくれるはずだ。

▼産経新聞「東京五輪開会式 世界を変える大会に育て 選手に静かな声援を送ろう」/コロナとの戦いに勝つ/大空に描く「五つの輪」
 https://www.sankei.com/article/20210724-S64FLLXXKJLVJIQCGMOG47JH7Q/?outputType=theme_tokyo2020

 逆境の中にあっても、国立競技場の聖火台に灯(とも)る火を守らなくてはならない。それは大会を招致した東京都と、五輪の成功を保証した政府の国際公約である。閉会時には五輪が東京で開催されてよかったと、世界に思われたい。
 同じ責任を、われわれ国民も負うと考えたい。原則無観客による五輪の開催に至ったことは残念でならないが、世界から東京に集まり、人類の限界に挑戦する選手らの奮闘や妙技に、遠く自宅からでも、惜しみない拍手を送ってほしい。
 (中略)
 コロナ禍の中での大会の開催については世論も二分されてきた。例えば朝日新聞は社説で、菅義偉首相に「大会中止」の決断を求めた。産経新聞は主張で、「開催への努力をあきらめるな」と書き続けた。五輪開催への努力とは、ウイルス封じ込めへの施策と同義であると信じるからだ。
 それは開会後も変わらない。聖火を消さないための努力とはウイルスとの戦いそのものである。克服のためには、政府や自治体、医療界、そして国民の協力が不可欠である。世界各国の選手らは、必ずその競技力で努力に応えてくれるはずである。

▼秋田魁新報「東京五輪開幕 2度目開催、何を残すか」
 https://www.sakigake.jp/news/article/20210724AK0009/

 さまざまなトラブルが続いた。国立競技場の建設計画、エンブレムの白紙撤回、マラソンと競歩の突然の札幌開催決定、大会組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言など挙げればきりがない。開幕直前に開閉会式の演出統括役が解任、開会式の楽曲制作担当が辞任という異常事態になった。
 政治が五輪へ関わり過ぎたのが、迷走が終わらない一因ではないだろうか。コロナ禍での開催は政治的な都合だ。祭典とは程遠い、「国民不在」の世界最大のスポーツ大会が始まったと言わざるを得ない。

▼山形新聞「薄れる『復興五輪』 大事な理念語り継ごう」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/index.php?par1=20210724.inc

 コロナの他に、実はもう一つの緊急事態宣言が現在も解除されないままとなっている。「原子力緊急事態宣言」だ。福島の原発周辺自治体では、今なお住民が戻れない帰還困難区域が広がり、道路脇にはバリケードで隔てられた無人の家々が並ぶ。約3万5千人が県内外で避難生活を送っている。
 原発では、数十年に及ぶ廃炉作業が続く。五輪招致のプレゼンテーションで、当時の安倍晋三首相が「状況は統御(アンダーコントロール)されている」とアピールしたものの、現実は異なる。
 (中略)
 復興五輪の目的は、大震災当時の各国の支援に感謝の気持ちを込めて、壊滅的な被害をここまで克服した力を訴え、同時に原発事故の過酷さを伝えていくことではないか。3.11を語り継ぐ営みは、開催国の大切な役割でもある。

▼福島民友新聞「東京五輪・幕開け/困難克服し希望につなげよ」
 https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20210724-639988.php

 五輪の理念が、これほどまで問われた大会もないのではないか。女性蔑視発言で当時の森喜朗組織委会長が辞任し、五輪が掲げる平和や平等の理念とは相いれない過去の言動などで、関係者の辞任、解任が開会式直前まで続いた。
 半世紀前に開催された東京五輪は、焼け野原となった日本が復興を世界に印象付ける大会となった。近年は、肥大化が指摘されている五輪の在り方についてさまざまな意見が出ている。
 レガシー(遺産)として何を残すことができるか。今大会に問われている大きな課題だ。
 本県では開幕に先立ち、福島市のあづま球場で全競技のトップを切りソフトボールが行われた。28日は、野球の日本代表が同球場での試合に臨む。躍動感あふれる全力プレーを期待したい。
 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興に向け、県民が思いをひとつにする大会になることを願う。

▼信濃毎日新聞
「混乱続く組織委 大会を担う自覚が足りぬ」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021072400082

 五輪相だった橋本聖子氏が会長に就いて以降、組織委は「国の出先機関」の印象を濃くした。有観客か無観客かを決める際は、国に従うと主体的な判断を放棄し、官邸が主導している。
 行き過ぎた政治介入が、政権の意向を考慮し「一部で相談なく決定」する、組織委の風通しの悪さを助長していないか。
 コロナ禍の開催に対する批判は収まらない。選手第一なら、感染状況次第で中断も考えなければならないだろう。パラリンピックの判断もこれからになる。
 組織委は運営の透明性を高めて内部の意思疎通を円滑にし、主体性を取り戻す必要がある。多額の税金を投じている以上、業務委託の詳細を含め、事後の十全な検証を可能にする情報開示が必須であるのも忘れてはならない。

「五輪関連の感染 バブルは機能しているか」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021072400081

 何重もの検査を経て入国しても、感染を厳密に把握できないことは明らかだ。大会組織委員会が採用した「バブル方式」が機能しているのかも疑問だ。
 避けるべきは、選手村でのクラスター(感染者集団)の発生だ。国内に感染がさらに広がることも懸念される。
 東京都に緊急事態宣言が出される中での開催強行である。徹底した対策抜きに大会は成り立たない。政府と組織委は現状を絶えず検証し、万全を期す責任がある。

▼中日新聞・東京新聞「『民』はどこへ行った 五輪開幕に考える」/万事知らしむべからず/忘れるわけにはいかぬ
 https://www.chunichi.co.jp/article/296691

 それにしてもこの政治と「民」を分断する壁の厚さはどうか。
 ひとたび選挙を経て権力を手にすれば、あとは民意との信頼関係を遮断。批判の声は虚偽、隠蔽(いんぺい)でかわし、国民が忘れるのを待てばいい。五輪に限らず、ここ何年も私たちが目の当たりにする「民」なき政治の不条理です。もはや真の民主主義ではありません。
 政界では、今秋の衆院総選挙に向け五輪成功を浮揚力にしたい、との政権の思惑が語られます。それ故か、五輪優先でコロナ対策のちぐはぐが続き、陰で幾多の人々の命や店や職が失われました。ただこの失策も、五輪選手の活躍に熱狂する裏で、国民は忘れてくれるとの読みがあるようです。
 しかし大会の熱狂は別として、私たちは忘れるわけにはいきません。何も知らしめられず政治の犠牲となった「民」の無念を。忘れたら、また「知らしむべからず」の闇夜が続くからです。

▼山陽新聞「五輪とジェンダー 差別解消の起点にしたい」
 https://www.sanyonews.jp/article/1155587

 こうした五輪をめぐる潮流の中で、突きつけられたのが五輪が掲げる理念とはかけ離れた開催国・日本の現状だった。2月には大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性蔑視発言をし、国内外から批判を浴びて辞任に追い込まれた。その後も、人権意識の低さを露呈する大会関係者の不祥事が相次いでいる。
 五輪はスポーツの祭典だが、「差別を容認しない」などの五輪精神の浸透もまた開催意義の一つであろう。森氏の辞任後、大会組織委は女性理事の比率を20%から一気に42%へ引き上げるなど前進もあった。あらゆる差別解消へと日本社会が変わる起点になったと、後世に評される大会にしなければならない。

▼宮崎日日新聞「東京五輪開幕 共生の理念 社会も問われる」
 https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_55054.html

▼沖縄タイムス「[東京五輪開会式] 式典は何を伝えたのか」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/791694

 「平和の祭典」の自国開催は、競技だけにとどまらず、選手との交流活動などが実現したときに大きな意味を持つ。自国代表の競技観戦を通じ、人々が一体感と団結を強める効果もある。
 今回の東京五輪では、多くの競技が無観客での開催となった。交流や一体感を感じる機会はほとんどないことになる。
 緊急事態下でも開催にこだわった政府がもたらした、異常な状況だ。歓声に力を得て栄冠を目指す選手にふさわしい、最高の舞台を日本は用意できなかった。

【7月23日付】
▼朝日新聞「五輪きょう開会式 分断と不信、漂流する祭典」/理念と説明欠くまま/感染防止を最優先で/選手にエール等しく
 https://www.asahi.com/articles/DA3S14985368.html

 競技を観戦することは、戦争と平和、差別の根絶、両性の平等、そして幾つもの不祥事によって痛感させられた、この国の人権意識の遅れについて、思いを巡らせる機会ともなろう。
 躍動する選手の姿を通じてスポーツのもつ力と人間の可能性を認識し、より良い世界をともに築く決意を新たにする。主催者側が具体性をもって示すことのできなかった大会の意義を、私たち一人ひとりが独自の視点で見いだすようにしたい。

▼毎日新聞「開会式演出者の解任 五輪の理念踏みにじった」
 https://mainichi.jp/articles/20210723/ddm/005/070/128000c

 相次ぐ不祥事で、開幕前から東京五輪の価値は損なわれた。世界中の視聴者は今夜の開会式をどんな思いで見るだろうか。組織委はこのような事態を招いた経緯を明らかにしなければならない。

▼読売新聞「東京五輪開幕へ コロナ禍に希望と力届けたい 安全な大会へ万全の感染対策を」/幾多の困難に見舞われ/露呈した欠陥改めよ/選手の活躍を記憶に
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210722-OYT1T50301/

 どの選手も、この1年、競技に集中しづらい環境だったに違いない。しかし、様々な制約の中で努力を続けてきた選手が躍動する姿は、前回と同様、人々の記憶に深く刻まれるはずだ。
 各地で計画していた交流行事は中止が相次いだ。思い描いていた五輪とすっかり様相が変わったことは、残念というほかない。
 それでも、スポーツには人の心を動かす「力」がある。苦難に直面した時、奮闘する選手の姿に勇気づけられた人は多いだろう。今大会でも、コロナ禍に苦しむ世界の人々に希望が届くといい。

▼産経新聞「東京五輪開幕 明日につながる熱戦望む 歴史的大会へ悪い流れを断て」/何十億の人々見ている/スポーツの底力示そう
 https://www.sankei.com/article/20210723-6WL4WKARWJLQXKOST6BXGOTUPA/?outputType=theme_tokyo2020

 わが国は新型コロナウイルス禍の中でも聖火を消すことなく、熱戦の舞台を整えた。「五輪開催」という最後の一線を守り抜いたことは、日本のみならず世界と五輪史にとって大きな意義がある。
 (中略)
 「こんな時にスポーツなんて」との批判を今も聞くが、間違っている。こんな時期だからこそ、必要なのだ。スポーツの底力を選手は見せてほしい。
 私たちも開催意義を自らに問い、答えを探す17日間にしたい。必ず、意義のある東京五輪にできるはずである。

▼北海道新聞「コロナ下で五輪開幕 人間の尊厳を大会の礎に」/不公平な開催反省を/感染拡大回避が必要/「分断」が懸念される
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/570197

 解任された演出担当者は過去にユダヤ人大量虐殺をコントの題材にしていた。
 森喜朗前組織委会長の女性蔑視発言や、楽曲担当者のいじめ問題と合わせ、日本の人権感覚を疑わせる深刻な事態だ。
 IOCのバッハ会長は、広域移動の自粛が求められている中で東京から被爆地の広島を訪問し、国民感覚とのずれをあらわにした。
 IOCを巡っては、施設整備の巨額負担にとどまらず、命と健康に関わるリスクまでも開催国に押しつける独善的な姿勢が浮き彫りになっている。
 開催を進める立場の人々に、友情、連帯、フェアプレーといった五輪の精神を度外視するような言動が目に余る。
 このままでは分断を象徴する五輪となりはしないか。
 「人類が新型コロナに打ち勝った証し」といったにわか仕立ての大義を追い求める前に、人が人として尊重される当たり前の姿を示す大会を目指すべきだろう。

▼河北新報「東京五輪きょう開幕/新たな大会の姿、示せるか」
 https://kahoku.news/articles/20210723khn000004.html

 ただ、大会の「成功」は、日本勢のメダルの数などでは決められない。まずは感染拡大を招かず、無事に終えることだ。
 従来の五輪が抱える限界や矛盾に、今回、多くの人が気付いた。組織委の橋本聖子会長は、延期に伴い簡素化された新しい大会を「東京モデル」としている。大会を通して新たな五輪の在り方を提示し、理解を広げられるのか。
 復興五輪の理念も、両大会を終えた後、その先に、どうつなげていくかが問われる。

▼東奥日報「あるべき姿を追求したい/東京五輪開幕」
 https://www.toonippo.co.jp/articles/-/601533

 世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする-。東京五輪が掲げた基本コンセプトの中核である。テニスの大坂なおみ、バスケットボールの八村塁、ゴルフの笹生優花ら各選手の存在、パラリンピック選手の奮闘とボランティアの献身はその表れだろう。
 しかし、今の日本は多様性と調和を尊重していると胸を張れる状況にあるか。開会式担当者の人権感覚の欠如を個人の問題に押し込めず、われわれの社会のありようも問わねばならない。

▼山形新聞「東京五輪きょう開幕 あるべき姿追求したい」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/index.php?par1=20210723.inc

 装いを新たにした国立競技場できょう開幕する東京五輪についても、感慨を覚えずにはいられない。新型コロナウイルス感染症について、世界保健機関(WHO)が「パンデミック(世界的大流行)」と表明した1年半ほど前と現在とでは、受け止め方が変わったからだ。この大会は、世界のアスリートが一堂に会して鍛錬の成果を競うことの意義や今後のあるべき姿を、県民一人一人がじっくり考える機会にしたい。

▼福島民報「【東京五輪きょう開幕】逆境乗り越え活躍を」
 https://www.minpo.jp/news/moredetail/2021072388696

 コロナ禍で本県でも無観客開催となり、海外選手との交流や関連イベントは次々と中止となった。県内の復興を発信する機会は失われたが、「3・11」の苦難を乗り越え、県民に元気と感動を届けようと五輪の舞台に立つ選手たちにとって「復興五輪」に変わりはない。
 双葉郡から巣立った五輪選手を応援する「双葉オリンピック選手を支援する会」は、桃田選手らにエールを送る動画を作成し、動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿した。会長の青木淑子元富岡高校長は「可能な限り応援の思いを届けていきたい」と話す。会場で直接、声援を送れないもどかしさがある中、こうした取り組みは選手にとって大きな励みになるはずだ。

▼福島民友新聞「東京五輪・コロナへの対応/感染広げぬ対策を徹底せよ」
 https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20210723-639662.php

 内堀雅雄知事が野球・ソフトボール競技を無観客とする方針を示した際には、理由の一つに県内の感染が再び増加傾向にあることを挙げた。今月に入ってからクラスターや、感染力が強いインドに由来する変異株(デルタ株)の感染が相次いで確認されている。おとといの感染者は14人だった。
 五輪の開催期間は、新型コロナの再拡大を食い止める大切な時期でもあるとの意識を一人一人が持つことが大切だ。

▼信濃毎日新聞「東京五輪開幕 虚構の舞台に成功はない」/始まりは「起爆剤」/国民との溝は深く/選手も道具立てに
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021072300096

 選手村に向かうボランティアに周囲の人々が罵声を浴びせたという。更衣室がなく、スポンサーの意向もあって、ロゴ入りのユニホームを着て通わざるを得ない理不尽な事情も影響した。
 6万人に上るボランティアの中には、無観客となって活動の場を失った人が多い。組織委のぞんざいな対応は「国民みんなの五輪」を掲げてきた大会がさらけ出した実相の一つだ。
 制約の多い環境で、鍛錬の成果を発揮する選手の姿は、東京大会にわずかに残された「実」のある意義だろう。ボランティアは裏方でこれを支える。強行開催の不満をぶつけるのは間違いだ。
 経済をけん引する首都再生に五輪を用いる―。招致への支持は広がらず、国や都は、環境五輪、多様性と調和といった美辞麗句で開催の意義を取り繕ってきた。虚飾はとうにはがれ落ちている。
 大会が盛り上がっても、その功績は選手たち、裏方の人たちにある。政府の描く“成功物語”にはだまされまい。菅政権は、国内はもとより、海外の人々の命と健康をも政略に利用した。責任を厳しく問わなければならない。

▼新潟日報「東京五輪開幕 『何のため』問い続けねば」/感染抑止を最優先に/楽しんでも忘れない/参加選手はベストを
 https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20210723630127.html

 「平和の祭典」と呼ばれる五輪の祝祭ムードからは程遠く、開催理念はかすんでいる。
 選手たちの活躍で、大会は一時的に盛り上がるかもしれない。そうした中でも私たち国民一人一人は、何のため、誰のための五輪かを問い続けねばならない。
 でなければ「五輪ありき」で開催国の国民が置き去りにされる構図を容認することになるからだ。
 (中略)
 五輪は自国選手のメダルの色や数が重視されてきた。
 だが、海外勢の中には感染禍で十分な練習ができなかった選手もいるはずだ。日本選手には地の利を生かしたメダルラッシュの期待も出ているが、これまでと同じような発想でいいのか。
 日本勢や本県勢に対すると同様に、各国選手のパフォーマンスに熱い応援を送りたい。

▼中日新聞・東京新聞「対立と分断を憂える 東京五輪きょう開会」/国民的な挫折の経験/互いの差異認め合う
 https://www.chunichi.co.jp/article/296176

 混乱の最大の責任は、感染を収束できないまま開催を強行した日本の政界、スポーツ界のリーダーらと国際オリンピック委員会(IOC)にあります。
 抜本的な解決策ではなく、その場しのぎの対応を重ねたり、結論を先送りしたり。観客数を巡る迷走や大会予算の膨張、関係者の相次ぐ辞任・解任と、統治機能の不全を思い知らされました。
 今大会は、国民的な挫折の経験ではないか。私たちは主権者として、国を根本から変えなければと肝に銘じなければなりません。
 大会は本来、対立や分断ではなく、連帯と共感を示す場となるはずでした。五輪憲章の冒頭に理想が掲げられています。
 平和を目指し、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てる。人種や性別、宗教や政治的意見など全ての差別を禁じる―。

▼福井新聞「東京五輪きょう開幕 県勢初の個人『金』なるか」
 https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1362832

 新型コロナ感染拡大防止に向け、検査を受けたり、行動に制限が掛かったりと、選手は通常と異なるストレスを抱える。自らの身を守って大会を安全に進めるためととらえてほしい。
 コロナ下は視聴する側にも変化を迫る。インターネット中継などを通じた新しい観戦方法が模索されている。今大会はできる限り、身近な人と映像を見ることで選手の背を押したい。
 東京大会のモットーは「United by Emotion(感動で、私たちは一つになる)」だ。感動も、一つになれるのも、皆が健康であってこそ。国際オリンピック委員会(IOC)や政府、東京都は忘れないでもらいたい。感染状況によっては、大会期間中であっても中断・中止の判断が必要なことを。

▼京都新聞「東京五輪開幕 何のための大会、問い続けて」/根拠なき「安全安心」/憲章の精神かけ離れ/選手の純粋さに価値
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/604186

 五輪への賛否が感情的となり、国民が「分断」されているかのようだ。五輪スポンサーの大手企業トップらが開会式欠席を表明したのも、世論が割れる中で消費者の反発を考慮したためだろう。
 五輪憲章はオリンピック精神として「友情、連帯、相互理解」などを掲げている。開催国の状況がこうした精神とかけ離れてしまったことは残念だ。
 今大会の理念は、誘致段階から揺れ動いた。当初は東日本大震災からの「復興」を掲げ、安倍晋三首相(当時)は東京電力福島第1原発の汚染水を万全に管理できると大見えをきった。
 だが、事故処理も復興もなお途上にある。その後、五輪の趣旨は「コロナに打ち勝った証し」「世界の団結」に次々と変わった。
 被災地を尻目に、東京エリアの開発ばかりが目に付く。復興が誘致の踏み台にされたかのようだ。

▼神戸新聞「東京五輪開幕/今こそ開催意義を問い直さねば」/「打ち勝つ証し」遠く/選手の命と健康守れ
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202107/0014525835.shtml

 組織委は可能な限りの感染対策を尽くし、選手の命と健康を守ってほしい。猛暑も続き、熱中症対策にも工夫が要る。今は大会が無事に終わることを祈るほかない。
 噴出する全ての問題に共通するのは、政治が深く関与してきた弊害が垣間見えることだ。五輪の商業主義や国際オリンピック委員会(IOC)役員などの厚遇にも厳しい視線が注がれている。政府やIOCは真摯(しんし)に受け止めなければならない。
 紆余(うよ)曲折を経た東京大会が、「平和でよりよい世界の実現に貢献する」という五輪の原点に立ち返る契機になることを痛切に望む。

▼山陽新聞「東京五輪が開幕 安全対策に万全尽くして」
 https://www.sanyonews.jp/article/1155246

 共同通信社の最新の世論調査では、五輪の競技実施を「楽しみにしている」「どちらかといえば楽しみにしている」と答えた人は、あわせて71%に達した。コロナへの不安は消えてはいないものの、競技そのものへの関心が失せたわけではなさそうだ。
 だからこそ、大会関係者は感染対策を徹底しなければならない。来日した海外選手の感染が次々と判明している。感染の拡大により大会が混乱すれば、国民の期待は失望に変わると心すべきだ。
 「東日本大震災からの復興の証し」「コロナに打ち勝った証し」と、大会の意義は時とともに変遷した。もはや開催にこぎつけた以外に大義は見いだしにくい。だとすれば、高額な運営費を削減することや、開催国の気候に応じて日程を設定することなど、大会の見直しを働きかけてはどうか。実現すれば大きな開催意義になるはずだ。

▼中国新聞「五輪きょう開幕 負のレガシー残すまい」
 https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=775670&comment_sub_id=0&category_id=142

 菅義偉首相は「安全・安心な大会」と繰り返し強調するが、国民の納得を得られたとは言い難い。大会の中止や再延期について問われてもはぐらかし、誰のための、何のための五輪かについて語ろうとはしなかった。もはや開催自体が目的になったと言われても仕方あるまい。
 東京など首都圏では新規感染者が再び急増している。海外から来日した選手や大会関係者の感染も相次ぐ。「五輪発」の感染拡大が起きれば、負のレガシー(遺産)になりかねない。政府と組織委はそうした事態を絶対に防がなければならない。感染がまん延すれば、競技の中断や中止という判断もあり得る。

▼山陰中央新報「東京五輪開幕 あるべき姿の追求を」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/67030

▼徳島新聞「コロナ下の開幕 選手が全力出せる五輪に」
 https://www.topics.or.jp/articles/-/562828

 ここに至って東京五輪に意義を見いだすとすれば、スポーツの力を実感することだろう。
 大会には世界から約1万1千人のアスリートが集い、日本選手団は580人を超えて過去最多となる。
 中でも、徳島ゆかりの体操女子の畠田瞳選手と陸上男子走り幅跳びの津波響樹(つは・ひびき)選手には、鍛錬の成果を存分に発揮してほしい。徳島からもエールを送りたい。
 徳島を事前合宿地に選んだネパールの競泳、ドイツのハンドボールとカヌーの選手がどんな活躍を見せるかも気になるところだ。
 逆境を乗り越えて舞台に立つ選手たちの躍動する姿が、コロナ禍の閉塞(へいそく)感を振り払ってくれる大会になることを願う。

▼高知新聞「【東京五輪開幕】選手は存分に実力発揮を」
 https://www.kochinews.co.jp/article/473494/

 選手団や大会関係者、一般の国民の感染防止対策の徹底を求めるとともに、国民の厳しい視線が向けられる五輪になった経緯は検証されなければなるまい。
 一方、世界中から集まって競技に臨むアスリートには、それらとは異なる目を向けたい。大会の1年延期や、さらには中止の可能性にも翻弄(ほんろう)され、動機付けやコンディションの調整には苦しんだに違いない。
 選手たちには思い切り実力を発揮してほしい。世論調査では、五輪による感染拡大に対する強い不安の一方で、競技を楽しみにしている人は7割を超えている。
 各国の選手たちが人間の限界に挑戦する姿や、積み重ねた努力を無駄にせず最善を尽くそうとするプレーを通じて、スポーツの力を感じたい国民も多いだろう。

▼西日本新聞「異例の五輪開幕 東京は歴史に何を残すか」/「社会ファースト」で/開催意義は示されず/
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/774443/

 残念ながら、政府や大会組織委員会、IOCは、国民が共感する言葉で開催意義を語ることはできなかった。世論を二分したまま開会式を迎えることになったのは、その結果である。
 それでも開催される以上、競技場の内外で感染対策が十分に機能し、選手が存分に力を発揮できることを望むしかない。1年延期に伴う心身の調整は容易でなかったはずだ。全ての競技の選手にエールを送りたい。
 この東京五輪はコロナ下に開催された大会として歴史に刻まれるだろう。負の側面から目をそらさず、今後の五輪へ教訓となるものを残す。そこに開催の意義を見いだしたい。

▼宮崎日日新聞「かすむ復興五輪 原点戻り『光と影』見直そう」
 https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_55026.html

 「復興五輪」の目的は、大震災当時の各国の支援に感謝の気持ちを込めて、壊滅的な被害をここまで克服した力を訴え、同時に原発事故の過酷さを伝えていくことではないか。3・11を語り継ぐ営みは開催国の役割でもある。「復興」というひとくくりの言葉で片付けられない、光と影、明と暗を見つめ直すきっかけとしたい。単なる競技実施だけで終わらせては、五輪招致の名目に被災地を利用したとのそしりは免れないだろう。

▼佐賀新聞「東京五輪開幕 あるべき姿を追求したい」※共同通信
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/711116

 世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする―。東京五輪が掲げた基本コンセプトの中核である。
 テニスの大坂なおみ、バスケットボールの八村塁、ゴルフの笹生優花ら各選手の存在、パラリンピック選手の奮闘とボランティアの献身は、その表れでもあろう。
 しかし、今の日本は多様性と調和を尊重していると胸を張れる状況にあるか。開会式担当者の人権感覚の欠如を個人の問題に押し込めず、われわれの社会のありようも問わねばならない。

▼沖縄タイムス「東京五輪きょう開幕 広がる混乱 揺らぐ意義」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/791225

 そもそも五輪の開催意義が見えなくなっている。招致段階の「復興五輪」の理念はかすんだ。「安心、安全な大会」と公約しながら、日本は選手たちが不安なく競技に臨める環境をつくり上げることができなかった。このような状況で開幕を迎えざるを得ない現実に対する責任は限りなく重い。
 4度目の緊急事態宣言期間中の東京で、22日の新規感染者数は2千人近くに迫り、感染状況が深刻化している。首都圏3県でも増加が著しい。
 世論調査では五輪開催による感染再拡大に不安を感じている人が87%もいる。終わりの見えない自粛生活を求められる中で開かれる五輪は、団結どころか社会に分断を生んでいる。
 五輪開催中に国内の感染が悪化し、競技にも大きく影響するような事態になれば菅首相は責任を取らなければならない。

▼琉球新報「コロナ下の五輪開幕 一人一人の命を最優先に」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1360058.html

入院すべき患者が入院できず必要な医療が受けられない状態に陥れば、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会は大会期間中であっても重大な決断を下さなければならない。
 五輪が国民の感染拡大に拍車を掛けるようなことがあってはならないからだ。その見極めが厳しく問われる。
 政府の新型コロナ対応を巡り開催の賛否が分かれた。「復興」やコロナに「打ち勝った証し」という意義付けは空虚に響き「開催する」ことだけが目的となった感がある。
 オリンピックの精神は「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治」など、いかなる種類の差別も受けないことである。しかし、女性を蔑視するような発言で組織委員会の森喜朗会長が辞任した。さらに五輪が掲げる「平和」や「人権」に反する事態が開幕直前に噴出している。
 開閉会式の制作、演出担当の小林賢太郎氏が過去にホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)に触れたコントを発表していたことが批判され解任。楽曲を手掛けた小山田圭吾氏も過去のいじめ告白で辞任した。
 東京五輪が、五輪本来の理念や目的とは何かを見つめ直す機会になってほしい。

 

「脱・金メダル」の報道~東京五輪・在京紙の報道の記録②7月25、26日付

 東京五輪を巡る東京発行の新聞各6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)の報道の記録です。
 24日に競技が本格的に始まり、日本は金メダルを24日に1種目、25日には4種目で獲得しました。今までの五輪報道なら、「序盤から好調の日本勢」として、新聞各紙は1面に大きな見出しを競って立てていただろうと思います。しかし、今回の大会では様相が異なっています。

 ■日本社会のリアル

 読売、産経の両紙はおおむね従来通りの紙面作りだと感じるのですが、毎日、東京は25日付朝刊、26日付朝刊とも、1面トップはメダル以外の記事。特に26日付では、毎日新聞は新型コロナウイルスの感染拡大が止まらないのに人出が減らない東京・渋谷の様子(「『我慢しても変わらない』」)、東京新聞は生活困窮者や支援に当たる人たち(「近くで五輪 遠い話」)と、それぞれ五輪の競技とは直接関係ない長文のルポ風記事をトップに据えています。この東京五輪は、新型コロナウイルス感染拡大の危険性を始めとしてごたごた続きで、今も打ち切り論があります。“祝祭”の五輪だけに目を向けていては視界に入ってこない、日本社会のリアルを伝える試みだと感じました。
 朝日も25日付の1面トップはメダル獲得ではなく、予選で敗退した体操の内村航平選手のストーリーでした。26日付は金メダル4個がトップでしたが、読売、産経と比べると、紙面の見た目は控えめです。
 大会の開催に対しては、数々の制約を甘受しなければならない海外からの選手と比べて、日本の選手が断然有利になるとの指摘もあります。そうした中で、この五輪をどう報じるのか、マスメディアは自らに問い掛けているはずです。「金メダルが最高のニュースバリュー」の発想から離れた報道は、その一つの答えだと感じています。

 ■選手への応援と大会の検証 

 25日付では、産経新聞が作家江上剛さん、東京新聞が作家中村文則さんの寄稿をそれぞれ掲載しました。印象に残ったくだりを書きとめておきます。
 この大会の開催に賛成であれ反対であれ、選手たちに声援を送ることは別の問題であり、この大会のありようを検証する必要があることも同様だろうと感じます。
 
 ※産経新聞1面、作家江上剛さん「開催してくれてありがとう」

 今、当時を振り返ってみると、前回の東京五輪はまさに『陽上る国』での開催だった。しかし今回は、長引くデフレや少子高齢化など多くの課題を抱える『陽沈む国』での開催である。沈む太陽を扇子で扇いでもう一度昇らせようとした昔話のように、過去の価値観のままで開催しようとしたのが、多くのすったもんだを引き起こした真の原因ではないだろうか。

 (中略)開催された以上は、池江璃花子さんや桃田賢斗さんに代表される苦難を克服した選手たちを心から応援したい。そして東京五輪・パラリンピックが問題なく終わったとしてもそれで『良し』としてはならない。どこが成功したのか。どこが失敗したのか、そしてなぜころほどまで世論が分断されたのかを検証、総括すべきだ。それが本当のレガシーになるだろう。これからも五輪はいろいろな危難に直面するだろうから。

  ※東京新聞2面、作家中村文則さん「国民の命 賭けた政府」

 僕は今でも五輪は中止・延期と考え、同時に内外の選手達の努力の結果を称えるつもりでいる。政治に毒されたスポーツを、自分の中だけでも取り戻したいと願う。この時期の開催に意義をつくっても欺瞞に過ぎない。選手達には自分達の競技に、つまりもうスポーツそのものと向き合ってほしいと思う。

 (中略)既に五輪は失敗と書いたが、そもそも、家族の預金を勝手に全て賭けた父親がその賭けに勝ったとして、父さん凄い!と褒めるのは愚行。国民の命は賭けるものではない。未来のためにも、政府とIOCは一度解体した方がいい。

  ■内閣支持最低

 26日付の日経新聞には、23~25日に実施した世論調査の結果が掲載されています。菅義偉内閣の支持率は前回調査から9ポイント低下し34%。政権発足後、最低とのことです。不支持率は57%でした。
 調査期間が五輪の開会式当日以降であることを考えると、五輪を成功させて政権浮揚を図りたい菅首相には、極めて厳しい状況です。仮に今後、五輪自体への評価は好意的になり「開催してよかった」との声が増えることがあるとしても、それが内閣支持率の上昇につながるかは疑わしいと思います。
 無観客となったことをどう思うかについては「無観客は妥当だ」37%、「再延期または中止すべきだった」31%、「人数を制限して観客を入れるべきだった」25%でした。

 ■やまゆり園事件から5年

 26日は相模原市の「津久井やまゆり園」で障害者19人が殺害され、入居者・職員計26人が重軽傷を負った事件から5年の日でした。朝日新聞が26日付朝刊の社会面トップで、妹が重傷を負った男性(56歳)に取材した記事を掲載しているのが目を引きました。当事者が匿名となっていることに、日本社会で知的障害者が置かれている立場の厳しさを感じます。五輪に続いて、来月にはパラリンピックも予定されています。日本で開催することの意味をどう伝えるか。やはりマスメディアの課題だと思います。

 以下は各紙の1面に掲載された記事の見出しです。
【7月26日付朝刊】
▼朝日新聞
①「兄妹で『金』家族とともに/金 大橋 堀米 阿部一 阿部詩」/「アフガン難民挑んだ/ベルギーに歩いて逃れた 祖国の母はコロナに奪われた それでも」
②「底つく在庫 ワクチンはどこに」
▼毎日新聞
①「『我慢しても変わらない』/渋谷の夜 人減らず/カラオケ店に列/路上で飲酒」
②「柔道・阿部兄妹 金/競泳女子・大橋も/堀米 スケボー初代王者」/「『自由さ』で新風 若者魅了」
▼読売新聞
①「阿部兄妹『金』/一二三と詩 同日に 柔道」「堀米『金』スケボー」「大橋『金』400メドレー」
②「予算繰越金30兆円超/昨年度 補正続き過去最大」
▼日経新聞
①「塗り替わる世界金融地図/フィンテック、決済席巻/低所得層 恩恵大きく」キャッシュレス新世紀(上)
②「内閣支持、最低の34%/接種計画『順調でない』65%/本社世論調査」
③「開示を義務付けへ/企業の気候変動リスク 金融庁検討」
④「柔道・阿部兄妹が金/金ラッシュ スケボー堀米 競泳大橋」
▼産経新聞
①「阿部兄妹『金』/初快挙『2人で優勝』夢実現/ソフト『銀』以上確定 卓球混合ダブルスも」「大橋『金』競泳女子400メートル個人メドレー」「堀米『金』スケートボード男子ストリート」戒厳下の祭典で
▼東京新聞
①「近くで五輪 遠い話/都内の食料配布会 困窮者400人が列/住まい失った人の接種進まず」ルポ・コロナ禍のオリンピック
②「堀米 故郷で金/スケボー 夢追い渡米 磨いた滑り」
③「スマートフォンから1票」民主主義のあした

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【7月25日付朝刊】
▼朝日新聞
①「王者内村、挑戦に幕/鉄棒一本の夢舞台 失敗でも体操は『面白さしかない』」/「高藤『金』1号」
②「『残土追跡システム』検討/国交省、近く実証実験」
③「『郡民半導体』米の反転攻勢」
▼毎日新聞
①「銀メダルの『苦しみ』越え/『田島寧子』の名 重荷」迫る 五輪が変えた人生
②「高藤 日本勢初の金/柔道男子60キロ級/女子48キロ級 渡名喜は銀」
▼読売新聞
①「高藤『金』/渡名喜『銀』 柔道/400メドレー 瀬戸予選落ち」「ここ一番 抜群の粘り」/「内村落下 敗退 鉄棒」
②「温室ガス 家庭66%削減/政府30年度目標 計画案」
▼日経新聞
①「越境リモート労働3割増/コロナ受け世界で拡大 6億円」チャートは語る
②「高藤が金1号 柔道男子/渡名喜は銀」
③「インド太平洋で協力深化/日仏首脳 香港など『深刻な懸念』」
④「全ゲノム解析 病気予測/筑波大 がんなどリスク検査」
▼産経新聞
①「高藤『金』渡名喜『銀』/柔道男女 メダル先陣/体操・内村 予選落ち」/「リオ雪辱 戦術磨き延期は糧に」
②「開催してくれてありがとう」作家 江上剛さん
▼東京新聞
①「内村 夢の終わり/鉄棒落下 早すぎる敗退/キング『ここまで』後輩に主役託す」
②「主要国 透ける政治判断/五輪開会式 海外はどう見た」/中国 思惑/欧州 同情/米国 皮肉

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読売:1面と最終面で祝祭感、産経:「希望の聖火」、朝日:緊迫の救急外来、毎日:「異形の祭典」~東京五輪・在京紙の報道の記録①

 7月23日の東京五輪開会式を、東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)は、翌24日付朝刊でそろって1面トップで報じました。
 目を引いたのは読売新聞です。全国紙では異例の1面と最終面をぶち抜いて日本選手団の入場行進の写真を大きく掲載しました。二つ折りの写真では分からないのですが、紙面の下3分の1は大会ゴールドパートナー(公式スポンサー)アシックスの真っ赤な広告が入っており、全体として白と赤、つまり日の丸を色覚として想起する紙面だと感じました。祝祭感が前面です。産経新聞の「希望の聖火 東京五輪開幕」の見出しも、他紙にはないポジティブな表現です。
 対して朝日新聞は1面左肩に病院の救急外来の緊迫のルポを、毎日新聞は「異形の祭典」を見出しに取った同紙主筆の署名評論を掲載し、ともに全体として抑制基調だと感じます。日経新聞を含めて、全国紙5紙は発行新聞社が大会公式スポンサーに名を連ねているのですが、紙面のトーンは二分の印象を受けました。
 各紙の記事に目を通して疑問に思ったことがあります。23日午後に実施された航空自衛隊・ブルーインパルスの曲技飛行です。東京新聞は「東京都内は緊急事態宣言中だが、見物人で密集状態の場所も生まれた」と伝えています。テレビニュースでも、国立競技場周辺の「密」状態が分かりました。
 わざわざ、家の外に出ることを促すようなイベントです。緊急事態宣言発出を決めた政府は自重し、また東京都は中止を主張するべき立場ではなかったでしょうか。同じことは国立競技場での開会式の花火演出にも言えます。競技場周辺に大勢の見物人が集まって混雑した様子がSNSなどでもうかがえます。
 新聞各紙も、「取りやめるべきだった」との主張は見当たりません。紙面の中には感動仕立ての記事も目に付きました。緊急事態宣言の実効性がさらに失われることを危惧します。

 この東京五輪期間中、マスメディアは競技の進行や結果、とりわけ日本選手の成績と、東京や周辺のコロナ禍の状況の双方を重要ニュースとして報じていくことになります。もともとパンデミック下での五輪のような大規模国際イベントの開催は、普通はないはずです。この異例の事態を東京発行の新聞各紙がどう伝えたのか、後世への記録の意味も兼ねて、各紙の朝刊1面の掲載記事を随時、記録していきたいと思います。

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 以下は7月24日付朝刊です。
▼朝日新聞
①「東京五輪 コロナ下の開幕/1年延期し無観客 1万1000人出場」
②「熱戦の隣 鳴りやまぬ救急電話/横浜の五輪指定病院では」
③「『祝い』表現使わず/天皇陛下が開会宣言」
④「アスリートに託す希望」稲垣康介編集委員
▼毎日新聞
①「東京五輪開幕/1964年以来2度目 コロナ下 無観客/205カ国・地域 1万1000人参加」
②「『異形の祭典』を心に刻む」前田浩智主筆
▼読売新聞
①「東京五輪開幕/コロナ戒厳下 57年ぶり開催」
※最終面
②「無観客 悲劇ではない」特別寄稿・作家 浅田次郎さん
③「日本 金30個目標」
④「聖火点火 大坂なおみ」
▼日経新聞
①「東京五輪 開幕/コロナ下 大半無観客/57年ぶり2度目」
②連載企画「取捨選択、欧州が主導 ルールが決する競争力」第4の革命カーボンゼロ GXの衝撃5
③「EV部品生産6倍/日立、日米中に新工場」
▼産経新聞
①「希望の聖火 東京五輪開幕/57年ぶり コロナ禍無観客/最終走者 大坂なおみ」
②「令和の東京五輪に幸あれ」別府育郎特別記者
③「都内感染1359人」
▼東京新聞
①「東京五輪 歓声なき開幕/犠牲者に黙とう」ルポ コロナ禍のオリンピック
②「聖火の輝き どこへ」

※追記 2021年7月25日9時15分

 読売新聞の1面~最終面です。

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この失敗の共有を出発点に、違いを認め合い、だれも取り残さない社会へ~東京五輪開会の日に

 東京五輪が始まりました。7月23日夜、開会式のテレビ中継を日本選手団の入場行進まで見た後、この記事を書き始めました。
 新型コロナウイルスのパンデミックの中での開催強行に対して、日本の民意は控え目にみても賛否が割れています。調査によっては、例えば1週間前の朝日新聞の世論調査が、2者択一で尋ねた結果は反対55%、賛成33%と差が付きました。
 開会式の楽曲担当の一人、小山田圭吾さんが、少年時のいじめや障害者への暴力への加担と、それを雑誌に反省なく語っていたことを問われて19日に辞任。開会式前日の22日には、開閉会式の制作・演出チームで「ショーディレクター」を務める小林賢太郎さんが、過去のコントで「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」と口にしていたことを問われ、大会組織委員会に解任されました。
 組織委の橋本聖子委員長は22日、開会式の内容をどうするか検討していると述べていましたが、夜になって予定通りに実施することが決まりました。開会式のプログラムの中で、小林さんが一人で担当した部分がないことを確認したとのことですが、なぜ開会式に変更の必要はないと判断した理由になるのか、違和感があります。一方の小山田さんが作曲した曲は、開会式から削除されました。対応がちぐはぐです。ここにも組織委のガバナンスの危うさと、東京五輪の意義の揺らぎを感じざるを得ません。

 森喜朗・前組織委会長の女性蔑視・「わきまえる」発言、開閉会式演出の総合統括に就いていた電通出身のクリエーティブディレクター、佐々木宏さんの女性タレントの容姿侮辱と、東京大会の運営内部にある人権意識の低さが相次いで露呈していました。さらに、いじめや暴力的な障害者差別、ホロコーストをコントのネタにする倫理の欠如と、その当事者がけじめをつけることなく、有能なアーチスト、クリエイターとして長年もてはやされていたことが浮き彫りになりました。組織委員会にこの五輪を無事に運営できるだけの能力が備わっているか、極めて疑問ですが、問題はそこにとどまりません。日本社会ではジェンダーバランスや多様性の確保を始めとする人権尊重の規範意識がまだまだ根付いていない、共有されていないことが明らかになりました。
 もともと招致段階から様々な疑問がありましたが、開会式当日に明確になったのは、日本社会で今、五輪憲章の理念を実現するのは困難だということです。その意味で、この東京五輪は既に開催の大義を失ったようなものだと考えています。23日付の朝日新聞朝刊に、組織委員会が森喜朗氏を「名誉最高顧問」に就けることを検討している、との記事が載っていました。「恥知らず」という言葉が頭に浮かびます。そのような検討が行われているというだけで、この大会は五輪の名に値しないとも感じます。
 それでも、この東京大会の失敗は無意味ではない、意義を見出すことができる、とわたしは考えています。この失敗の体験を共有することは、わたしたちがこれから何に取り組まなければいけないかを考える上で、とても大切だと思っています。
 目標は、それぞれが違いを認め合い、多様性を確保し、一人も取り残さない社会です。その取り組みの出発点に、この東京五輪を置き、日本社会で共有することができれば、未来に絶望する必要はないと思っています。そこにマスメディアの役割もあるはずです。
 そんなことを思いながら、けさ23日付の朝刊各紙をめくっていて、東京新聞(中日新聞)の社説の一節が目に止まりました。
 ※「東京五輪きょう開会 対立と分断を憂える」
  https://www.chunichi.co.jp/article/296176

 混乱の最大の責任は、感染を収束できないまま開催を強行した日本の政界、スポーツ界のリーダーらと国際オリンピック委員会(IOC)にあります。

 抜本的な解決策ではなく、その場しのぎの対応を重ねたり、結論を先送りしたり。観客数を巡る迷走や大会予算の膨張、関係者の相次ぐ辞任・解任と、統治機能の不全を思い知らされました。

 今大会は、国民的な挫折の経験ではないか。私たちは主権者として、国を根本から変えなければと肝に銘じなければなりません。

  「国民的な挫折の経験」「主権者として、国を根本から変えなければ」―。同感です。

 申し訳なく思うのは、海外からの選手の皆さんに対してです。多様性と調和とか、平和の祭典とか、今の日本社会では実現は無理です。ジェンダーバランスの意味が分からず退場したはずの前組織委会長を名誉最高顧問に、などと冗談でもあってはならないことが画策されるような、無残なありさまです。
 その無残さに、この国の主権者である限りは無関係ではいられません。わたしも主権者の一人として責任を負っています。開会式の中継をテレビで見ながら、選手たちに心の中で「申し訳ない」とわびました。

 「祝祭」ムードとはおよそかけ離れた状況下で、東京発行の新聞各紙は五輪開会直前の日々をどのように伝えたのか。開会式に先立ち競技が始まった21日付朝刊までさかのぼって、各紙1面掲載の主な記事の見出しを書きとめておきます。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞、産経新聞の5紙は、発行会社が大会公式スポンサーに名を連ねています。
 23日付朝刊では、朝日、毎日、東京の3紙が小林賢太郎氏の解任をトップに置いたのに対し、読売、産経両紙は「きょう開幕」をトップにして小林氏解任は左肩でした。

【7月23日付朝刊】
▼朝日新聞
「開会式演出 小林氏を解任/過去にユダヤ人虐殺揶揄/組織委『式は予定通り』」
「組織委 森氏復帰を検討/『名誉最高顧問』政府内に反対論」
「きょう開幕/濃厚接触次々 苦悩の南ア」
▼毎日新聞
「開会式演出 小林氏解任/ユダヤ人大虐殺やゆ/五輪組織委/式典内容 変更せず」
「商業色濃く 遠い平和理念」
「無観客五輪きょう開幕/コロナ拡大 緊急事態下」
▼読売新聞
「東京五輪きょう開幕/サッカー男子 白星/ソフト連勝」/「久保 決勝弾」
「選手の勇気に敬意」結城和香子編集委員
「開会式演出 小林氏解任/過去にユダヤ人虐殺やゆ/組織委/式典変更せず」
▼日経新聞
「コロナ下五輪 安全優先/経費2940億円増 成功、重い責務/きょう開会式」
「原点見つめる契機に」藤井彰夫論説委員長
▼産経新聞
「東京五輪 きょう開幕/コロナ禍 205カ国・地域参加」/「サッカー男子 初陣飾る/ソフト連勝」
「開閉会式の演出統括 解任/小林賢太郎氏 過去にユダヤ虐殺揶揄」
「『スポーツの価値』を信じて」
▼東京新聞
「開会式演出の小林氏解任/過去『ユダヤ虐殺』コント/開幕目前また」/「識者ら『差別に危機感薄い』」/「開会式プログラム発売中止」
「有力者から来る『○○案件』に翻弄/開会式関係者が証言」

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【7月22日付朝刊】
▼朝日新聞「無観客 競技スタート」
▼毎日新聞「歓声なき五輪号砲/ソフトボール 日本白星発進」
▼読売新聞「ソフト 先陣 白星/東京五輪 競技スタート/コロナ影響 無観客 あす開会式/なでしこ ドロー」
▼日経新聞「東京五輪あす開幕/一部競技はスタート」
▼産経新聞「1年待った 逆境越え祭典/コロナで無観客 五輪競技開始/ソフト快勝 なでしこドロー」
▼東京新聞「都、ボランティア3万人放置/新規活動 連絡なし/五輪開幕2日前/道案内など役割失い」/「異例ずくめ日本初陣」長めの写真説明

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【7月21日夕刊】
▼朝日新聞「五輪競技 静かに開始/『できることを精一杯』あの時の上野選手の色紙、力に」
▼毎日新聞「五輪 火種抱え号砲/感染拡大下 割れる賛否/無観客 復興理念薄れ/ソフトボール 福島で開始」
▼読売新聞「日本 初陣飾る/東京五輪 競技スタート/コロナ下 無観客/ソフト 豪に8-1」
▼日経新聞「五輪競技、福島でスタート/ソフトボール 日本初戦白星/無観客、周辺は静寂」
▼東京新聞「異例ずくめ五輪/感染対策で風景一変/競技中除き表彰式もマスク◆道具共有回避」/「無観客の中 競技始まる」

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【7月21日付朝刊】
▼朝日新聞
トップ「東京五輪 きょう競技スタート/ソフトボールやサッカー女子」
「前例なき五輪 光も影も報じます」坂尻信義・ゼネラルエディター兼東京本社編集局長
▼毎日新聞
トップ「五輪 無観客で競技開始/コロナ拡大 不安の中/バッハ氏『日本 輝くべき時』/きょうソフト・女子サッカー初戦」
「被災地復興 忘れるな」
▼読売新聞
「五輪きょう競技開始/ソフト 福島で先陣」
▼日経新聞
※インデックス「熱戦きょう火ぶた」
▼産経新聞
トップ「試される コロナ禍の五輪/ソフト・サッカーきょう開始」/「陛下ご臨席 正式発表/開会宣言 文言調整も/開会式」
「南ア感染 試合どうなる/サッカーあす日本戦 濃厚接触の対応課題」
▼東京新聞
トップ「復興五輪と言われても/苦しみ続く被災者『取り残されている』」
「五輪きょう競技開始/ソフトボール 福島で無観客」

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「港人雨中痛別」 新聞が失なわれた日~横浜・新聞博物館でミニ展示「言論弾圧と新聞」

 過日、横浜市にある日本新聞博物館(愛称・ニュースパーク)を訪ねました。香港の民主化運動の側に一貫して立ち、香港国家安全維持法(国安法)に基づく合法的弾圧で6月24日に廃刊に至った蘋果(ひんか)日報(りんご日報)の最終号の実物が展示されているのを知って、ぜひ見ておきたいと思いました。
 日本新聞協会が運営する同博物館は、蘋果日報の廃刊を契機に「言論弾圧と新聞」の「ミニ展示を企画。同紙の廃刊を報じる日本の新聞各紙の紙面や、かつて日本で行われた言論弾圧を示す資料を紹介しています。
 蘋果日報の最終号1面は、雨の中、最後の編集作業を応援する香港市民の写真と「港人雨中痛別」の大きな見出し。記事の内容は分からなくても、同紙が民衆の支持を得ていたことの強烈な自負と、中国政府によって廃刊に追い込まれる理不尽さへの抗議の意思が伝わってきました。
 日本でも戦前までは、政府や軍による露骨な新聞への弾圧がありました。新聞博物館のミニ展示ではその一端を知ることもできます。また常設展示の中にも、関連する資料があります。
 民主主義社会では、自由な情報流通が不可欠であり、新聞は社会の人々の「知る権利」に奉仕する存在です。その役割を全うするために、新聞は今ある「表現の自由」「言論の自由」を最大限に行使しなければなりません。そうすることでしか、それらの自由を守り切ることもできない―。そんなことを改めて考えた新聞博物館訪問でした。

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 ミニ展示「言論弾圧と新聞」については、新聞博物館のフェイスブックページに展示物の紹介があります。現在も開催中です。
 https://www.facebook.com/newspark.yokohama/
 ※公式サイト https://newspark.jp/

 新聞博物館では展示物の撮影許可など、ご配慮をいただきました。ありがとうございました。

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 日本の新聞弾圧に対する抵抗の例として、明治期の高知の「新聞の葬式」があります。3年前のことですが、高知市立自由民権記念館を訪ね、「新聞の葬式」のことを詳しく知る機会がありました。以下は、その際の記事です。

news-worker.hatenablog.com

小山田さん「排除」の先に何を考えるか~五輪組織委はいよいよ危うい

 東京五輪開会式の楽曲担当の一人、小山田圭吾さんが7月19日夜、辞任を表明しました。23日の開会式当日のわずか4日前です。以前の記事でも触れましたが、小山田さんを巡っては、少年期に障害者の同級生へのいじめに加わり、その加害行為を25年前に雑誌のインタビューでとくとくと語っていたことに、ネット上で激しい批判が起きていました。小山田さんは16日夜にツイッターで謝罪文を公表。大会組織委員会は「反省している」などとして、楽曲担当を継続させることを表明しました。しかしSNS上などでは批判が止まず、週明け19日午前には加藤勝信官房長官が記者会見で、「政府として共生社会の実現に向けた取り組みを進めており、こうしたことに照らしても全く許されるものではない」「大会組織委員会において適切に対応していただきたい」(朝日新聞)と、人選に“介入”するに至りました。
 結局、組織委は辞任を受け入れた上で、いったんは楽曲担当を続けさせようとした判断は誤りであったと認めました。
 この一件に思うことをいくつか書きとめておきます。

 ■組織委の危うさ
 小山田さんが楽曲担当にとどまるかどうかは組織委員会の判断と権限、責任のはずですが、目立ったのはその組織委のガバナンスのまずさです。16日の段階で小山田さんの起用を取り消すつもりがなかったのなら、小山田さんとも相談の上で、続投しても差し支えないと考える理由を丁寧に説明しなければなりませんでした。もしもその説明の中に、五輪精神と呼ばれるものに照らして「なるほど、それもそうだ」と思えるものがあれば、わたしはそれでいいのではないか、とも思っていました。しかし、組織委の実際の対応は、当事者であることの自覚を欠いていました。まるで他人事でした。無残としか言いようがありません。
 組織委のそのありさまを見るにつけ、このまま五輪開催を強行して大丈夫なのか、との疑念と不安が増します。仮に新たな想定外の事態が起きた時に、組織委は対処できるのか。今からでも中止や打ち切りを選択肢に入れ、準備を進めた方がいいように思います。

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【写真】大会組織委がようやく公式サイトに説明を掲載したのは、小山田さんが辞任を申し出た後でした

 ■知的障害者への差別
 この小山田さんの一件は「いじめ」という言葉で語られることが多いようですが、それだけでは見えないことがあります。少年期の小山田さんの行為には、知的障害者への暴力を伴った差別の側面がうかがえます。SNSなどでの批判は、小山田さんの起用は五輪パラリンピックにはふさわしくなくいないとして、排除を求めるものが圧倒していました。そして、小山田さんの辞任の申し出が受理されました。
 5年前の7月26日、相模原市のやまゆり園で入所していた知的障害者19人が元職員に刺殺され、職員・入所者計26人が重軽傷を負う事件がありました。犠牲者はいまだに実名フルネームでは報道されません。この一事にも、わたしたちの社会にある知的障害者への差別の根深さが示されています。奇しくも20日は、改築されたやまゆり園で慰霊行事がありました。多くの人が関心を持った小山田さんの一件は、ふだんは見えにくい知的障害者と差別の問題をあらためて考える契機になりうるはずであり、そこにはマスメディアが果たせる役割があるはずです。小山田さんの排除で「決着」となるなら、極めて残念です。

 ■謝罪と今後
 知的障害者の権利擁護と政策提言に取り組む「全国手をつなぐ育成会連合会」が18日、「小山田圭吾氏に関する一連の報道に対する声明」を公表しました。多くのマスメディアも紹介していますが、以下のように明記していることは、あまり紹介されていません。

 本会としては、すでにオリンピックの開催が直前に迫っており、小山田氏も公式に事実を認め謝罪していることも勘案して、東京2020オリンピック・パラリンピック大会における楽曲制作への参加取りやめまでを求めるものではありません。

 小山田氏が露悪的であったことも含め心からの謝罪をしたのか、それとも楽曲提供に参画したい一心でその場しのぎで謝罪をしたのか、本会としては小山田氏の言動や東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の動向について、今後も注視してまいります。

 人はだれでも最初は無知です。小山田さんに問われるのは今後だと思います。16日に公表した謝罪文に記載されているように真摯に反省しているのなら、今後の生涯を通じて、音楽の才能を知的障害者の権利擁護に生かしていく、といった選択肢もあるでしょう。断罪と排除で終わることなく、今後を見守ることも大事だと思います。

 ※「全国手をつなぐ育成会連合会」 http://zen-iku.jp/

 ※声明 http://zen-iku.jp/wp-content/uploads/2021/07/210718s.pdf

 ■抑制が目立つ読売新聞
 あらためて東京発行の新聞各紙がこの問題をどう報じたかを見てみました。朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、日経新聞、産経新聞、東京新聞の6紙のうち、東京を除く5紙は発行新聞社が五輪東京大会の公式スポンサーに名前を連ねています。
 最初に報じたのは16日付の毎日新聞朝刊でした。過去の雑誌記事のことがネットで炎上していることのリポートでした。次いで、16日に小山田さんが謝罪文を公表したものの、大会組織委が続投を容認したことを、朝日、産経、東京が17日付朝刊で報じました。そして小山田氏の辞任は20日付の朝刊で6紙全紙が報じています。
 おや、と思ったのは、読売新聞が小山田氏の辞任に至るまで、この問題を報じていなかったことです。しかも第2社会面に抑制トーンの記事1本だけでした。経済紙の日経はともかく、他紙がそろって1面で扱ったことと比較しても、控え目さが際立ちます。東京五輪の問題ではあるのですが、同時に著名ミュージシャンと「いじめ」や「障害者差別」の問題でもあるのです。社会的な事象としても、ニュースバリューは小さくないと思うのですが。

 

 以下に、東京発行6紙の扱いと主な見出しを書きとめておきます。

【7月20日付】
▼朝日新聞
1面トップ「五輪開会式の曲 一部削除/過去にいじめ 小山田氏が辞任」
社会面トップ「いじめ発言 批判やまず/小山田さん辞任 組織委、対応後手」/「『起用 理解に苦しむ』障害者団体」/「相次ぐトラブル」/「世論から浮いてしまった」社会学者の大澤真幸さんの話

▼毎日新聞
1面「小山田氏 辞任/『いじめ』騒動 開会式楽曲使わず」
社会面トップ「『この大会呪われている』/五輪組織委関係者嘆く/小山田氏辞任」/「『自業自得だ』小田嶋氏」/「組織委代表も責任取って/選手かわいそう」

▼読売新聞
第2社会面「小山田氏 楽曲担当辞任/『いじめ』批判受け 作品は使用せず」

▼日経新聞
2面「小山田圭吾さん辞任/いじめ問題 開会式で楽曲使わず」
社会面「開会式直前、批判やまず/小山田さん辞任、組織委対応一転」

▼産経新聞
1面「開会式 小山田さん辞任/いじめ問題 楽曲使用取りやめ」

▼東京新聞
1面トップ「いじめ告白 小山田さん辞任/五輪開会式 楽曲使用せず」
24面(特報面)「虐待・差別容認五輪なのか/『貢献』と擁護の組織委 重い任命責任」
第2社会面「小山田氏起用『理解に苦しむ』/知的障害者らの団体 抗議」

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【7月17日付】
▼朝日新聞:第2社会面「同級生や障害者いじめ 開会式作曲者、過去の発言謝罪/90年代の書籍めぐり小山田さん」
▼産経新聞:社会面「小山田さん、学生時代のいじめ謝罪/五輪開会式の楽曲制作」
▼東京新聞;第2社会面「学生時代のいじめ謝罪/開会式楽曲担当の小山田さん」