ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

事件事故

慎重姿勢が前面に、兵庫県知事選巡る強制捜査の“異例”感~より本質は「2馬力選挙」とデマ

選挙とSNS、あるいは選挙とデマやフェイク、さらには他候補の当選のために出馬した「2馬力選挙」候補の扱いなど、マスメディアの政治報道、選挙報道にいくつもの課題が突き付けられた昨年11月17日の兵庫県知事選を巡って、新たな展開がありました。…

「検証」の体をなさない最高検の冤罪検証~放送レポート 座談会「司法とメディア」

静岡県の一家4人殺害事件で死刑判決を受けながら、再審無罪が確定した袴田巌さんの冤罪事件に対し、最高検と静岡県警が12月26日に捜査や公判の検証結果を公表しました。報道でそれぞれの要旨を目にした限りのことですが、静岡県警の検証結果には、ある種…

逆転劇から1週間、高まる「選挙違反」の指摘~「SNSに真実」は一面で真実 兵庫県知事選に思うこと・その6 【追記】報酬あってもなくても違法~しんぶん赤旗で上脇教授が指摘

兵庫県知事選挙で斎藤元彦知事が再選されたのは11月17日でした。失職当初は劣勢が伝えられながら、SNSを追い風にした逆転劇に、ネット空間は熱気と高揚感に覆われていたように感じました。あれから24日で1週間。わずかな時間のうちに、潮目はすっ…

「何があったのか」の疑問に応える組織ジャーナリズムを~SNS戦略のnote改変とマスメディア 兵庫県知事選に思うこと・その4

兵庫県知事選で、斎藤元彦知事のSNS戦略を担当していたという方が11月20日午前、インターネット上の「note」に「兵庫県知事選挙における戦略的広報:『#さいとう元知事がんばれ』を『#さいとう元彦知事がんばれ』に」とのタイトルの記事をアップロー…

「申し訳なく思う」の「所感」は謝罪なのか~えん罪の非を認めない「異常」な検事総長談話 ■追記:袴田さん弁護団「謝罪になっていない」

一つ前の記事(「なお『犯人はこの人』と後ろ指を差す検事総長談話」)の続きです。 袴田巌さんの再審無罪判決に対して控訴断念を表明した10月8日の畝本直美検事総長の談話は、本文1300字の大半を、静岡地裁の無罪判決に対する批判と不満に充てていま…

なお「犯人はこの人」と後ろ指を差す検事総長談話

やはり検察の病理は根深い、と思わざるを得ません。 静岡県清水市(現静岡市)で1966年に一家4人が殺害された事件で、強盗殺人罪で死刑が確定していた袴田巌さんに静岡地裁が言い渡した再審無罪判決に対し、畝本直美検事総長が10月8日、談話を公表し…

ゼネコン汚職と「無敗の男」~追想:検察取材と記者

少し時間がたってしまいましたが、思うところが多々ある政治家を巡るニュースです。わたし自身が経験してきた「記者」や「組織ジャーナリズム」への考えも含めて、書きとめておきます。 現職の国会議員では2番目の当選回数という衆院選当選15回の中村喜四…

袴田さん再審無罪への控訴を危惧~検察の危うさとマスメディアの当事者性 ※追記:鎌田慧さん「客観報道の罪」

1966年に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人が殺害された事件の犯人とされ、強盗殺人罪で死刑が確定していた袴田巌さんに9月26日、静岡地裁が再審無罪の判決を言い渡しました。焦点は、検察が控訴するかどうかにほぼ絞られています。この無罪判決を…

メモ:桐島聡「最期は本名で」の真意~東京新聞の報道から

8月29日付の東京新聞朝刊に、興味深い記事が掲載されていました。1974年8月の三菱重工爆破事件など、74年から75年にかけて起きたいわゆる「連続企業爆破事件」を引き起こした「東アジア反日武装戦線」のうち「抗日パルチザン義勇軍 さそり」を名…

「初の女性トップ」だけ伝えればいいのか~危機的状況のさなか、検事総長が交代

法務検察トップの検事総長に7月9日付で畝本直美・東京高検検事長が就く人事が6月28日の閣議で決まりました。マスメディアの報道では「検事総長に初の女性」の一点に注目が集まった観があります。裁判官、検察官、弁護士の「法曹三者」でトップに女性が…

公益通報か、違法な漏洩か、なお留保が必要~鹿児島県警本部長と起訴の元部長は対等の構図

鹿児島県警の本田尚志・元生活安全部長が内部資料を漏洩させたとして国家公務員法違反の疑いで逮捕された事件で、鹿児島県警は6月21日午後、野川明輝本部長らが記者会見し、本田元部長に対する捜査の結果や、野川本部長が警察官の犯罪を隠蔽しようとした…

ニュースサイトへの家宅捜索に新聞労連、日本ペンクラブが抗議、非難の声明~メディアの積極的な取材が必要

鹿児島県警がネット上のニュースサイト「HUNTER(ハンター)」を家宅捜索していたことに対し6月19日、新聞労連が抗議声明を発表しました。日本ペンクラブも非難の声明を出しました。 新聞労連の声明は「情報提供者のメディアへの信頼を守り、正確な…

もう一つの構図が鮮明に、鹿児島県警の“情報漏洩”~見過ごせない不当な家宅捜索

一つ前の記事の続きです。 在職中に知った秘密を漏洩したとして、国家公務員法違反容疑で鹿児島県警元生活安全部長の元警視正が逮捕された事件について、県警が公に説明している「不正な情報漏洩」とは異なるもう一つの構図が鮮明に浮かんでいます。マスメデ…

鹿児島県警元生安部長の行為は不正な情報漏洩か、腐敗を正す告発か~マスメディアが端緒を暴いた「県警本部長の犯罪」の実例

不正な情報漏洩か、それとも組織の腐敗を正そうとする告発か-。 鹿児島県警は5月31日、職務上知り得た秘密を退職後に外部に漏らしたとして、3月まで県警本部生活安全部長だった元警視正を逮捕しました。守秘義務に反したとの国家公務員法違反の容疑です…

政倫審開催までの曲折と検察の捜査

自民党のパーティー券裏金事件を巡って、衆議院の政治倫理審査会(政倫審)が2月29日、開催されました。中継のテレビカメラが入った完全公開で、この日は岸田文雄首相と二階派の武田良太事務総長の二人が出席しました。安倍派の事務総長経験者ら同派の衆…

裏金巡る虚偽記載 「派閥の指示」と弁明~検察の捜査に改めて疑問

自民党のパーティー券裏金事件で、自民党は2月15日、安倍派、二階派の議員らに対する聞き取り調査の結果を公表しました。報道によると、調査の対象は現職国会議員82人と選挙区支部長3人の計85人で、内訳は安倍派79人、二階派6人。85人中32人…

「安倍派幹部『不問』」になお8割超が疑義~民意の検察不信と新聞

自民党のパーティー券裏金事件で、自民党安倍派の政治資金収支報告書の虚偽記載に対し、東京地検は会計責任者を起訴しただけで、事務総長経験者ら派閥幹部の国会議員については不問としました。1月に実施された2件の世論調査では、「納得できない」「適切…

「安倍派幹部『不問』」に8割が疑義

自民党のパーティー券裏金事件で、自民党安倍派の政治資金収支報告書の虚偽記載に対し、東京地検は会計責任者を起訴しただけで、事務総長経験者ら派閥幹部の国会議員については不問としました。そのことへの疑問は、このブログでも触れました。東京地検が刑…

「最期は本名で」の真意は何だったのか~「狼煙を見よ 東アジア反日武装戦線“狼”部隊」(松下竜一)が描く検事の説得に思うこと

先週1月26日、驚きのニュースに接しました。神奈川県内の病院に入院している男性が、1974年8月の三菱重工爆破事件など、74年から75年にかけて起きたいわゆる「連続企業爆破事件」の一部に関与したとして指名手配されている「桐島聡」を名乗って…

「派閥幹部は不問」に疑義を示す地方紙の社説、論説~続・検察は捜査を尽くしたか

自民党のパーティー券裏金事件をめぐり、安倍派の政治資金収支報告書への虚偽記載に対して、検察が会計責任者を起訴しただけで、事務総長経験者ら派閥幹部の政治家は不問としたことをめぐり、東京地検特捜部が捜査を尽くしたと言えるのか疑問を感じているこ…

検察は捜査を尽くしたか~裏金事件、安倍派幹部議員「不問」への疑問

自民党のパーティー券裏金事件は1月19日、東京地検特捜部が在宅捜査分について刑事処分を発表し、区切りを迎えました。派閥の政治資金収支報告書をめぐる政治資金規正法違反罪(虚偽記入)では、自民党安倍派の会計責任者、二階派の元会計責任者を在宅起…

「安倍チルドレン」池田佳隆議員の逮捕と裏金事件が浮き彫りにするもの~まやかしの上に成り立っていた「安倍一強」

自民党のパーティー券裏金事件の捜査が大きく動きました。松の飾りも取れない1月7日、東京地検特捜部は自民党安倍派に所属していた池田佳隆・衆院議員と政策秘書を政治資金規正法違反の疑いで逮捕しました。2018年から22年の間、派閥からパーティー…

新聞労連が委員長見解を公表「読者の信頼に応える災害・事故報道を続けるために」

1月1日に発生した能登半島地震は、6日朝の段階の報道で、94人の方が亡くなられたと報じられています。道路の被害の大きさなどから、安否不明の方々の確認が進まないとも伝えられています。無事が確認されることを願っています。犠牲になった方々に哀悼…

パーティー券裏金の疑惑を掘り起こしたのは特捜検察ではない~在京メディアの端緒の報じ方に危惧すること

自民党のパーティー券裏金事件の捜査に大きな動きがありました。東京地検特捜部は12月19日、政治資金規正法違反容疑で、自民党の安倍派と二階派の事務所を家宅捜索しました。裁判所から令状(捜索差押許可状)を取っての強制捜査です。引き続き、国会議…

「検察礼賛」に陥ることなく権力監視を~なぜ元首相存命中に挑まなかったのか、その検証も組織ジャーナリズムの役割

自民党の安倍派(清和会)の所属国会議員を中心に、パーティー券の売り上げの一部が裏金化していた問題の報道が連日続いています。12月13日に臨時国会が閉会したことから、いくつかの新聞では14日付の朝刊1面に「本格捜査へ」の大きな見出しとともに…

海員組合有志が、6億円未申告の前組合長を横領と脱税容疑で告発~自浄能力を欠く現執行部、当事者意識なぜ持てないのか

船員ら海事関係の労働者で組織する個人加盟の産業別労働組合「全日本海員組合」の森田保己・前組合長が、6年間で約6億円もの所得を申告していなかったことを東京国税局に指摘され、追徴課税の処分を受けていたことが今年6月、明らかになりました。海員組…

安倍元首相と「安倍政治」の評価に差異~銃撃、殺害から1年、在京各紙の報道の記録

安倍晋三元首相が奈良市で参院選の応援演説中に撃たれ、死亡したのは昨年、2022年の7月8日でした。選挙演説の安全の確保と要人警護のありよう、旧統一教会と政治、中でも自民党との関係、教団の詐欺的商法や「宗教2世」の救済、国葬のありよう、そし…

海員組合の前組合長 6億円未申告の際立つ悪質さ~外国人船員のための基金流用、フィリピンでリベート

日本では労働組合の形態は、企業別に組織され、その企業の従業員をメンバーとしているのが一般的です。産業ごとに組織される「産業別労働組合」(産別)も、そうした企業内労組(単組)の連合体の形態が主流です。連合(日本労働組合総連合会)は、そうした…

岸田軍拡と自衛隊組織の本質を深く広く洞察する地方紙~候補生が上官3人殺傷 各紙の社説

自衛官候補生が訓練中、小銃で上官を撃ち3人が殺傷された事件は、原因究明は当然のこととして、自衛隊という軍事組織の疲弊を疑い、これ以上の負荷を避けることが必要だと感じていることを、一つ前の記事に書きました。上官に銃口を向けることは、指示命令…

この自衛隊の現状で軍拡を進めるのは危うい~候補生が上官銃撃2人死亡 在京紙の報道の記録

一つ前の記事で、日本の軍事組織の危うさについて書いたばかりでした。その直後、考えもしなかった惨事が起きました。 岐阜市にある陸上自衛隊の射撃場で6月14日午前、実弾を使った射撃訓練に来ていた18歳の自衛官候補生の男性が、射撃の指導を担当する…