ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

2024-01-01から1年間の記事一覧

「検証」の体をなさない最高検の冤罪検証~放送レポート 座談会「司法とメディア」

静岡県の一家4人殺害事件で死刑判決を受けながら、再審無罪が確定した袴田巌さんの冤罪事件に対し、最高検と静岡県警が12月26日に捜査や公判の検証結果を公表しました。報道でそれぞれの要旨を目にした限りのことですが、静岡県警の検証結果には、ある種…

「国家を監視する新聞」から「国家と一体の新聞」への転換 魚住昭さんの渡辺恒雄・読売新聞主筆の評伝

読売新聞グループ本社の渡辺恒雄・代表取締役主筆の訃報が伝えられました。新聞の発行部数が減少の一途とはいえ、618万部余(2023年7月~12月平均、「読売新聞MEDIA GUIDE2024-2025」より)で日本最大の部数の同紙は、12月20日付の…

選挙とSNS、「新聞」はどうネット空間に分け入っていくのか~世論調査の記録:国民民主の支持率 野党トップに

先週末に実施された4件の世論調査(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信)の結果を目にしました。特徴的なのは、政党支持率ではいずれの調査でも国民民主党が立憲民主党を上回り、野党でトップになっていることです。 国民民主党は10月の衆院選では「…

被爆者の過酷な10年を決して忘れない~ノーベル平和賞スピーチに改めて思うこと

ノルウェーのオスロで日本時間の12月10日夜、ノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に授与されました。被団協代表委員の田中熙巳さん(92)の受賞スピーチ全文は、毎日新聞のサイト上で全文を読むことができます。 ▽毎日新聞「『核と人…

備忘メモ:本質は公益通報者保護のありよう~兵庫県の混迷、TBS「報道特集」見逃し配信12月8日まで

備忘のメモを兼ねて書きとめておきます。 TBS系列で11月30日(土)に放映された報道特集の「兵庫県知事選“斎藤現象”を考える」を、インターネト上の見逃し配信サービスTVerで見ました。事の発端から、兵庫県知事選を経て斎藤元彦知事が再選され、…

備忘メモ:年配層も新聞、テレビとネットをシームレスに行き来~メディアの主役の本格的な交代期か

備忘のメモを兼ねて、書きとめておきます(精緻な論考ではありません)。 この週末に参加した内輪の勉強会で、テレビに詳しい方から、斎藤元彦知事が再選された11月17日の兵庫県知事選とテレビについて、お話を伺う機会がありました。同感のことが少なく…

何も真相は明らかになっていない斎藤知事代理人の会見~「N国は反社会的カルト集団」に名誉棄損認めず

何も真相は明らかになっていない、と感じた記者会見でした。やはり知事本人の説明が必要なのではないでしょうか。 兵庫県知事選で再選された斎藤元彦知事のSNS運用に、公職選挙法違反ではないかとの指摘が続いていることに対して、斎藤知事の代理人の奥見…

「公選法抵触の認識ない」「弁護士が対応」繰り返す斎藤知事~SNSから現実社会の「疑惑」へ 兵庫県知事選に思うこと・その7

兵庫県知事選で再選された斎藤元彦知事陣営のSNS戦略を巡って、公職選挙法違反との指摘が出ている問題は、新たな段階に進みました。斎藤知事は11月25日午後、東京で開かれた全国知事会議の終了後に記者団に囲まれ、いくつか重要なことを自ら口にしま…

逆転劇から1週間、高まる「選挙違反」の指摘~「SNSに真実」は一面で真実 兵庫県知事選に思うこと・その6 【追記】報酬あってもなくても違法~しんぶん赤旗で上脇教授が指摘

兵庫県知事選挙で斎藤元彦知事が再選されたのは11月17日でした。失職当初は劣勢が伝えられながら、SNSを追い風にした逆転劇に、ネット空間は熱気と高揚感に覆われていたように感じました。あれから24日で1週間。わずかな時間のうちに、潮目はすっ…

斎藤知事「法に抵触することしていない」、でもSNSで“炎上”やまず~潮目変わり新たな展開 兵庫県知事選に思うこと・その5

兵庫県知事選とSNSを巡って、新たな展開が始まっていると感じます。 再選された斎藤元彦知事の広報全般を任されていたとして、PR会社「merchu」代表取締役の折田楓氏が、斎藤知事との打ち合わせなどとする写真や提案資料のスライドなどとともに経…

「何があったのか」の疑問に応える組織ジャーナリズムを~SNS戦略のnote改変とマスメディア 兵庫県知事選に思うこと・その4

兵庫県知事選で、斎藤元彦知事のSNS戦略を担当していたという方が11月20日午前、インターネット上の「note」に「兵庫県知事選挙における戦略的広報:『#さいとう元知事がんばれ』を『#さいとう元彦知事がんばれ』に」とのタイトルの記事をアップロー…

「公益通報者の保護」の論点と、首長、議会の二元代表制の意義~兵庫県知事選に思うこと・その3

兵庫県知事選の経緯をあらためて振り返ると、このままないがしろにはできないことが一つあると感じます。斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを告発していた文書の扱いです。公益通報者の保護の問題の根幹にかかわるからです。 文書は兵庫県の元西播磨県民局長が…

なぜ有権者はネットを開いたか~キーワードは「立花孝志」 続・兵庫県知事選に思うこと ※追記「テレビや新聞が、SNSに選挙報道の主役の座を譲った転換点」 ※追記2「NHK会長が選挙報道の検討表明」

斎藤元彦元知事が再選された兵庫県知事選について、全国紙の中で興味深く読んだ記事がいくつかあります。 このブログの一つ前の記事で触れた「マスメディアの敗北」については、朝日新聞のいくつかの記事が参考になると感じました。特に西田亮介・日大教授へ…

都知事選でマスメディアは既に敗北していたのではなかったか~兵庫県知事選に思うこと

斎藤元彦前知事の失職に伴う兵庫県知事選は11月17日に投開票があり、斎藤氏が再選されました。県議会が全会派一致で斎藤前知事の不信任決議を可決。選挙戦の当初は稲村和美・元尼崎市長のリードが伝えられていましたが、逆転しました。 東京にいて、マス…

「島耕作」のデマ掲載 作者と講談社が沖縄の人々にも謝罪~無知の過ちは知る、学ぶことで正す

10月17日に発売された講談社のマンガ誌「モーニング」に掲載された弘兼憲史氏の「社外取締役 島耕作」に、米軍普天間飛行場の移転を巡り名護市辺野古の新基地建設工事に抗議する人たちについて、日当を受け取っているアルバイトがたくさんいる、との内容…

堀江貴文氏「住民の危険よりジュゴン」発言の危うさ~「悪意」でなければ「粗雑」 ニューズピックの姿勢に疑問

沖縄への基地の過剰な集中を巡って、また軽視できない出来事が起きました。日本本土のマスメディアではほとんど報道を目にしません。そのことを含めて、日本本土の側の沖縄に対する構造的とも呼ぶほかない無知と無理解を感じます。経緯を書きとめておきます…

市長22人の異例の表明をマスメディアが報じる意義~混迷、混乱の兵庫県知事選

11月17日に投開票の兵庫県知事選を巡って、異例の出来事がありました。県内の29人の市長でつくる市長会の有志22人が14日、無所属で立候補している稲村和美・前尼崎市長を支持することを表明しました。うち7人が記者会見して明らかにしました。地…

百田尚樹・日本保守党代表「子宮摘出」発言の危うさ~「社会構造を変える」発想に潜むもの

日本保守党の百田尚樹代表が、11月8日に配信したユーチューブ上の番組で、同党の有本香事務総長らと少子化対策を話した際、若い女性に子どもを産んでもらうためには社会構造を変えるしかないと主張し、「女性は18歳から大学に行かさない」「25歳を超…

トランプ再登場と民主主義が内包する自己矛盾~歴史に学び、戦争の愚を繰り返さない

米大統領選は日本時間の11月6日午後、共和党のトランプ元大統領が民主党のハリス副大統領を破って当選を決めました。事前の米メディアの世論調査結果を元に、日本メディアも大接戦と報じていましたが、開票の序盤から終始、トランプリードの状況が続き、…

石破内閣の支持急落、続投は容認の傾向変わらず~国民民主の「部分連合」には理解か 世論調査の記録

衆院選から1週間となる先前週の読売新聞、共同通信の両調査では、「辞めるべき」とする回答は3割を切っていました。1週間たって、2割台の前半とさらに水準が下がっています。 自民党総裁の交代と衆院解散・総選挙は、自民党の派閥パーティー券裏金事件が…

公約実現へ、野党にも党利党略なのか~国民民主との「部分連合」で自公政権継続の方向

衆院選後の政権のありようの輪郭が見えてきたように感じます。 自民党の森山裕幹事長と、国民民主党の榛葉賀津也幹事長が10月31日に会談し、榛葉幹事長は、首相指名選挙では決選投票も含めて国民民主党の議員は玉木雄一郎代表に投票することを伝えたと報…

民意が求めたのは「熟議」~「自民1強」のおごりが問われた衆院選、地方紙の社説・論説の記録

自民、公明両党の与党が大敗した衆院選の結果を、地方紙はどんなふうに見ているか、10月28日付、29日付の社説、論説を各紙のサイトでチェックしてみました。 全文を読めたものに限ってのことですが、自公の大敗の直接の要因は自民党派閥パーティー券裏…

石破政権の支持急落、しかし「続投容認」が多数派~産経、読売は辞任を求める

衆院選は自民党、公明党の与党が大敗した一方で、野党の間にも議席の過半数を占める多数派を形成できる枠組みは見えず、当面は国会での首相の指名と、どのように政権が構成されるのかが焦点のようです。自民党に対しては、石破茂首相・党総裁の責任論も指摘…

政治不信が極論の一層の台頭を招くことを危惧~衆院選 低投票率と与党大敗の意味を考える

衆院選は10月27日、投票が行われ、28日早朝に全議席、当選者が確定しました。備忘を兼ねて、主な結果を書きとめておきます。 ・自民党は公示前から56議席減らして191議席、公明党も8議席減の24議席。与党は計215議席と、石破首相が勝敗ライ…

元検事正の性暴力 被害女性が明らかにした情報漏洩やセカンドレイプ~検察の腐敗を表現する言葉が見つからない

検察という組織の腐敗ぶりは想像以上です。腐臭が漂っています。 酒に酔った状態の部下の女性に性的暴行をしたとして、準強制性交の罪に問われた北川健太郎・元大阪地検検事正の初公判が10月25日、大阪地裁で開かれました。元検事正は「争うことはしませ…

「島耕作」のデマ拡散は沖縄への理不尽の一環~「お詫び」は読者だけでいいのか 【追記】沖縄の人々にも謝罪

沖縄への基地の過剰な集中を巡って、軽視できない出来事が起きました。10月17日に発売された講談社のマンガ誌「モーニング」46号に掲載された弘兼憲史氏の「社外取締役 島耕作」に、米軍普天間飛行場の移転を巡り名護市辺野古の新基地建設工事に抗議す…

「政治とカネ」の直接当事者になった石破首相~非公認候補支部への2000万円、後手の対応

一つ前の記事の続きです。 共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が10月23日、自民党の派閥パーティー券裏金事件で自民党を非公認となった候補に関して、候補が代表となっている自民党支部に選挙の公示直後、党本部から政党助成金2000万円が振り込まれてい…

しんぶん赤旗「自民党が非公認候補支部へ2000万」の衝撃~衆院選終盤、新聞各紙も報道

10月27日に投開票の衆院選を巡り、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が10月23日、自民党の派閥パーティー券裏金事件で自民党を非公認となった候補に関して、候補が代表となっている自民党支部に選挙の公示直後、党本部から政党助成金2000万円が振…

「沈黙」の自己検証がなければ教訓も残せない~「ジャニーズ」出演解禁とNHKスペシャル「ジャニー喜多川  “アイドル帝国”の実像」

旧ジャニーズ事務所元社長の性加害と「マスメディアの沈黙」を巡って、NHKに重要な動きが二つありました。 一つは10月16日の稲葉延雄NHK会長の定例記者会見です。旧ジャニーズ事務所の所属タレントが移籍した「スタート・エンターテイメント」社に…

追悼・西田敏行さん~池中玄太と通信社、会津も薩長も

俳優の西田敏行さんの訃報が10月17日、報じられました。同日朝、自宅で病死されたとのことです。76歳。慎んで哀悼の意を表します。 長いキャリアで多彩な役を演じた方でした。わたしにとっての代表作は、テレビドラマ「池中玄太80キロ」です。最初に…