ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

圧倒的な研究成果の厚みと、対米戦争への連続性の視点~読書:「南京事件 新版」(笠原十九司、岩波新書)

ことしは1945年に日本の無条件降伏で第2次世界大戦が終結して80年です。8月6日、9日の広島、長崎の原爆の日から15日の「敗戦の日」にかけて、マスメディアでも戦争体験の継承をめぐる報道が目に付きました。例年と異なると感じたのは、史実を認…

「共通のアイデンティーは育ちにくい」(沖縄タイムス)、「戦後日本の矛盾が沖縄に集中」「国民の理解不十分」(琉球新報)~敗戦80年、沖縄の新聞の本土への視線

一つ前の記事の続きです。 1945年の敗戦から80年の8月です。地方紙、ブロック紙が8月15日付、16日付で掲載した関連の社説、論説をネット上の各紙のサイトで見てみました。 目を引くのは沖縄の2紙、沖縄タイムスと琉球新報です。 それぞれ、見出…

「歴史を見過ごさないために」(朝日新聞)、「平和つくる行動を今こそ」(毎日新聞)、「80年続いた平和を次の世代に」(読売新聞)~敗戦から80年、在京紙の報道の記録

日本の敗戦から80年のことし8月15日、各地で追悼式典が開かれたと報じられています。東京発行の新聞各紙の16日付朝刊は、東京・日本武道館で開かれた政府主催の全国戦没者追悼式の様子を始め、「敗戦80年」の関連記事を複数のページにまたがって掲…

「近現代史160年」の視野でとらえる靖国神社~「非業の死」に差を付ける意味は見いだせない

1945年8月15日正午、昭和天皇が無条件降伏の受け入れを告げる音声がラジオで全国に流れました。9月の降伏文書調印で、第2次世界大戦は日本の敗戦で終結しました。1931年の満州事変にさかのぼれば、15年間にわたって日本は戦争をしていました…

戦意高揚の一翼を担った新聞~特別企画展「社会を映す、動かす-ポスターにあらわれる国策宣伝の姿-」

1945年8月、日本無条件降伏を受諾して第2次世界大戦は終結しました。それから80年の夏です。関連の企画やイベントが全国各地で開催されています。 東京・九段にある厚労省所管の博物館「昭和館」では、特別企画展「社会を映す、動かす-ポスターにあ…

特別企画展「武良茂(水木しげる)の戦争体験」=東京・しょうけい館

1945年8月、日本無条件降伏を受諾して第2次世界大戦は終結しました。それから80年の夏です。関連の企画やイベントが全国各地で開催されています。 東京・九段にある戦傷病者史料館「しょうけい館」で開催されている特別企画展「武良茂(水木しげる)…

続・「沈まぬ太陽」山崎豊子さんインタビューの紹介~ジャンボ機事故から40年

1985年8月12日、東京・羽田空港から大阪・伊丹空港に向かっていた日本航空123便ジャンボ機が群馬県の山中に墜落し、乗客乗員520人が犠牲になりました。あの事故からことしで40年になります。マスメディアでも、例年にも増して関連の報道が目…

特定の記者、媒体の選別と排除が可能な参政党「記者会見」登録制~「沈黙」は「承認」と受け取られる

参政党の「記者会見」が、特定の記者、特定の媒体を事実上、選別し排除できる仕組みになっていることは、このブログで触れてきました。会見への参加問題以前に、記者を選別することなく質問を受ける、という姿勢を欠いているのであれば、「記者会見」と呼べ…

原爆投下80年の夏に考える「差別」~教訓を継承し人間の「弱さ」を乗り越える ※追記:「地球市民」の視点

ことしは広島に原爆が投下されて80年。8月6日朝、広島市の平和記念式典の様子をテレビで見ました。投下時刻の8時15分、鐘の音とともにわたしも黙とう。続いて松井一実市長の「平和宣言」、小学生2人の「平和への誓い」、石破茂首相や湯崎英彦・広島…

「戦後80年の夏のメッセージ」若い世代の皆さんへ~歴史の教訓を学び、生かすのは今を生きる者の務め

昨年に続き、今年も4月から7月まで成城大学で非常勤講師を務めました。担当したのは文芸学部マスコミ学科の「マスコミ特殊講義」。主眼は文章の書き方、「文章作法」です。通年ではなく前期のみですので、実質的には3カ月間の指導でしたが、昨年同様、文…

一人の記者、一つの新聞社の問題と捉えると「報道統制の発想」が見えなくなる~参政党「記者会見」の発言封じの何が問題か

臨時国会が8月1日に開会しました。7月の参院選で14人を当選させ、所属国会議員が18人になった参政党は同日午後に「記者会見」を開きました。わたしは動画で視聴しました。 7月22日の会見を排除された神奈川新聞の石橋学記者はこの日は参加。しかし…

候補者から「帰化した者」を排除することは日本国憲法と深刻な矛盾~「日本ファースト」とも「国民ファースト」とも違う「日本人ファースト」

参政党は、自党から擁立する衆院選候補者や地方選の候補者の公募の応募条件に、「⽇本国籍を有しており(多重国籍は不可)、帰化した者でないこと」を掲げていることを知りました。日本国籍を持つ日本国民でも、帰化した人は参政党の候補者にはしないという…

備忘:「非国民」発言の参政党・初鹿野議員を神谷代表が「ポンコツ」「イエローカード」(「アエラデジタル」インタビュー記事)

備忘を兼ねて書きとめておきます。 朝日新聞出版が運営するサイト「アエラデジタル」に、参政党の神谷宗幣代表のインタビュー記事が掲載されています。▽「参政党・神谷代表に聞いた『日本人ファースト』の“真意” 『初鹿野さんにはめちゃめちゃ注意しています…

「参政の憲法案 ない、ない、ない /人権の保障 思想の自由 戦争放棄」(東京新聞)~参政党が掲げる「創憲」が「改憲」と異なることの意味

参政党は参院選の公約で憲法について、「護憲」でも「改憲」でもなく、全く新しい憲法を作ることを目指すとして、「創憲」を掲げました。公表している「憲法草案」には、現行の日本国憲法が保障している国民の権利がごっそり抜け落ちていることは、このブロ…

「表現の自由」を欠き「報道統制」を志向する参政党の憲法観~記者排除で「非国民」発言もうやむやなのか

一つ前の記事で以下のようなことを書きました。 参政党は7月22日に開いた「記者会見」から神奈川新聞の石橋学記者を排除しました。その本質は、現行の日本国憲法が保障している「表現の自由」および「報道の自由」の否定です。参政党が公表している憲法観…

「記者排除」の本質は現行憲法の否定~参政党の「記者会見」は記者会見ではない、一方的プロパガンダの場

国会議員の地位は日本国憲法で規定され、保障されています。だから国会議員であれば、憲法を順守するのは当然のことなのですが、それでも憲法は国会議員を含めた公務員に対し、憲法を尊重し擁護する義務を明文で課しています。努力目標ではありません。天皇…

「差別は自分に返ってくる」~手塚治虫さん「アドルフに告ぐ」に感じる「差別」の本質と愚かさ ■追記:基本的人権の戒め

差別は他者との違いを認めず、相手より自分の方が優れていると考えることから始まります。自分と他人には、違いはあって当たり前です。生まれも育ちも、性格も特性も、好きになる相手も、家族の形も人それぞれ。でもその違いを巡ってひとたび差別が起これば…

乙武洋匡さん「『健常者ファースト』のこの国で。」~ニーメラー、ゲーリングとわたしたち 参院選の投票日に

ひとたび始まった差別はどんどん広がる。「日本人ファースト」の「日本人」をほかの言葉に置き換えてみるとどうだろうか。「○○ファースト」-。 参院選の投票日の朝、そんなことを考えているときに、乙武洋匡さんの「『健常者ファースト』のこの国で。」とい…

差別発言をなぜ笑うのか~ささやかでも「差別はだめ」「だれもが平等で自由」と声に出す

ひどい参院選になってしまいました。「日本人ファースト」の参政党をはじめ、いくつかの政治勢力が差別を競い合うような状況です。街頭で人権侵害の発言がまかり通っています。この状況を傍観し沈黙してしまうと、差別は勢いを増します。だから、黙っている…

「日本国籍=日本人」ではない参政党「憲法草案」の国民要件~「生まれ」「人種」を問うのは差別そのもの

このブログで4回連続の更新になりますが、参院選で「日本人ファースト」を掲げている参政党の「憲法草案」について、もう少し書きとめておきます。 現行の日本国憲法が保障している数々の国民の権利が、この「憲法草案」には見当たらないことは、一つ前の記…

「表現の自由」が失われた社会を想像してみる~参政党の憲法草案の考察

このブログの一つ前の記事で、参政党の「憲法草案」には「言論の自由」も「表現の自由」もないこと、それなのにTBSの報道への抗議の中では「民主主義の根幹である言論の自由と公正な報道の確保を強く求めてまいります」などと「言論の自由」を強調してい…

“違憲”の参政党が「言論の自由」を強調することの違和感~報道業務は「国営または自国の資本」と「憲法草案」に

このブログの一つ前の記事では、参政党が「新しい憲法を創る」ことを参院選の公約に掲げ、「憲法草案」を公表していることをめぐって、国会議員である神谷宗幣代表、さらには計5人の国会議員を擁する参政党が、現行の日本国憲法に違反している疑いがあるこ…

参政党と神谷代表の「自己矛盾」~日本国憲法を否定する国会議員は憲法違反

7月20日に参院選の投開票があります。マスメディアの情勢調査では、「日本人ファースト」を掲げ、極右的な色彩の政策を公約にする参政党が急速に支持を集めていると報じられています。参政党の主張には多々疑問を感じます。選挙運動なら何を言っても許さ…

歴史の歪曲許さず、惨禍の記録を次世代へ~地域の目線で「自分ごと」ととらえる姿勢も 「沖縄戦80年」本土紙の社説、論説の記録

ことしは1945年に日本の敗戦で第2次世界大戦が終結して80年の節目の年です。地上戦でおびただしい住民が犠牲になった沖縄戦からも80年。6月23日の沖縄の「慰霊の日」前後に、日本本土の新聞がどのような社説、論説を掲載したか、ネット上の各紙…

「広島、長崎と本質的に同じ」発言の意味と被爆国のメディアの報道

思わず耳を疑いました。米国のトランプ大統領が、イランの核施設への攻撃を広島、長崎への原爆投下になぞらえて「戦争を終結させた」と正当化した、とのニュースです。 【ハーグ共同】トランプ米大統領は25日、米軍によるイランの核施設攻撃が「戦争を終結さ…

訃報の異例の扱いを説明した東京新聞「ぎろんの森」~「かつてのようなマス」はもうない

一つ前の記事(「戦後史のアイコン『長嶋茂雄』~訃報を伝える視点と在京紙の報道の記録」)の続きです。 元プロ野球選手、元監督の長嶋茂雄さんの訃報を、東京発行の新聞各紙が大きく掲載したことを巡って、東京新聞が6月7日付朝刊に掲載した「ぎろんの森…

戦後史のアイコン「長嶋茂雄」~訃報を伝える視点と在京紙の報道の記録

プロ野球の元巨人選手、監督の長嶋茂雄さんが6月3日、89歳で亡くなりました。つつしんで哀悼の意を表します。 立教大から巨人に入団したのは1958年、昭和33年でした。1960年生まれのわたしは福岡県で過ごしていた小学生のころ、プロ野球にはさ…

沖縄戦80年の5・15「復帰の日」、新聞各紙の報道の記録

ことしの5月15日は、1972年に沖縄の施政権が米国から返還されて53年の日でした。「沖縄の日本復帰」の日です。1945年に日本の敗戦で第2次世界大戦が終結して80年の年にも当たります。米軍による沖縄の軍事占領も1945年に始まりました。…

トランプの米国の暴走と国際協調の道義~敗戦から80年の憲法記念日 新聞各紙の社説、論説の記録

第2次世界大戦が日本の敗戦で終結してから80年の今年の憲法記念日。新聞各紙も例年と同様に5月3日付の社説、論説で憲法を取り上げました。昨年の衆院選で、いわゆる「改憲勢力」は国会発議に必要な3分の2を割り、「改正の機運はしぼむ」(日経新聞社…

「メディア全体、社会全体の問題」の視点~フジテレビ・中居性暴力問題の地方紙の社説、論説

フジテレビの第三者委員会が3月31日に公表した中居正広・性暴力問題の報告書を、地方紙やブロック紙が社説、論説でどのように取り上げたか、ネット上の各紙のサイトで分かる範囲で見てみました。4月11日付までに関連の社説、論説を掲載したのは20紙…