ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

後世の歴史家の評価に耐えうる記事を~新人記者の皆さんへ(その5=完)

新聞社や通信社の新人記者の皆さんに伝えたいことを、4回にわたって書いてきました。5回目の今回で、ひとまず区切りとします。 ▽「ニュースは歴史の第一稿」 「ニュースは歴史の第一稿」という言葉があります。 “a first rough draft of history”です。ワ…

日本国憲法を知る~新人記者の皆さんへ(その4)

「新人記者の皆さんに伝えたいこと」の4回目です。 「報道の自由」は憲法21条の「表現の自由」と同じように保障され、「取材の自由」も十分に尊重されるべきであるとの最高裁の判断があることを、最初の記事で書きました。日本国憲法について、もう少し書…

ジャニーズ「性加害」へのマスメディアの当事者性~「沈黙は虐待そのものと同じくらい恐ろしい」(BBC)

2週間も前のことになりますが、マスメディアの報道のありようが問われる事例だと考え、備忘を兼ねて書きとめておきます。 4月12日午前、ジャニーズJr.として活動していた歌手のカウアン・オカモトさんが東京の日本外国特派員協会で記者会見し、ジャニー…

「わが国」や「国益」から距離を保つ~新人記者の皆さんへ(その3)

新人記者の皆さんに読んでほしいと思い、前回と前々回の2回の記事を書きました。「社会の信頼」や「民意を知る」とのテーマは、記者の仕事に就いたばかりの皆さんには、ちょっと大きな、言葉を換えれば、例えば警察回りのような日々のルーチンの仕事からは…

民意を知り、市民の期待に応える~新人記者の皆さんへ(その2)

一つ前の記事の続きです。 通信社の組織ジャーナリズムの上でも、メディア界の労働組合運動の上でも大先輩であった故原寿雄さんからは、さまざまなことを教わりました。そのうちの一つに、絶望するな、悲観するな、ということがありました。わたしが新聞労連…

「表現の自由」「報道の自由」と「社会の信頼」~新人記者の皆さんへ

今年も新聞社や通信社に新人記者が加わりました。配属先も決まって研修を受け、そろそろ実務に入ろうか、という人もいるのではないでしょうか。わたし自身はこの春で、マスメディアでジャーナリズムの仕事をしてきて40年になりました。現役の時間はとうに…

新聞各紙の報道を比較することで分かること

首都圏の大学で非常勤講師として受け持っている「文章作法」の授業は2年目に入りました。1年目後期の最後の授業は1月末でした。それから2カ月余り。ことし最初の授業で久しぶりに訪ねたキャンパスは、イチョウ並木の新緑が目に鮮やかでした。ことしは桜…

朝日新聞は500円の値上げを公表~高齢読者層へのサービス強化が意味すること

朝日新聞は4月5日(水)付の1面に、新聞の購読料を5月1日から値上げするとの社告を掲載しました。朝刊、夕刊セットの月ぎめ購読料を、現在の4400円から500円値上げして4900円にします。1部売りは朝刊180円(現行160円)、夕刊70円…

没になった原稿の公表と著作者人格権~新聞記者の働き方と著作権 その2

前回の記事に続いて、新聞記者、企業内記者と著作権についてです。 朝日新聞社が厳重抗議を表明している元社員が出版した書籍を取り急ぎ、読んでみました。「悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味」(講談社+α新書、伊藤喜之氏著)です。この中に、著者が在職…

新聞記者の働き方と著作権~朝日新聞社の元自社特派員への抗議を契機に考える

朝日新聞社が3月28日、自社サイトに1通の広報文を掲載しました。自社の海外特派員だった元社員が出版した書籍に対して、元社員と出版元に厳重抗議し、相応の対応を求める書面を送付した、との内容です。「本社が著作権を有する原稿や退職者による在職中…