ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

原発

10年前の1枚の写真に思う~東京五輪と福島第1原発事故と処理汚染水放出

10年前の2013年9月、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会(IOC)の総会で、2020年夏の五輪大会の開催地に東京が決定しました。発表は現地時間の7日午後5時20分、日本時間の8日午前5時20分でした。8…

「問われているのは民主主義の在り方」(琉球新報)~処理汚染水放出 地方紙の社説、論説の記録

一つ前の記事の続きです。 東京電力福島第1原発で生じた汚染水を処理した水の海洋放出に対し、多くの地方紙も社説、論説で取り上げています。全国紙各紙と同様に、23日付に掲載した新聞が多いようです。放出の開始日が決まったのが8月22日だったことか…

実現されるべきは地域の「自己決定権」~処理水放出 「将来に禍根残す」(共同通信配信の論説)

東京電力は8月24日、福島第1原発の処理水の海洋への放出を始めました。破損した原子炉を冷却するために注入した水や、原子炉に流れ込んだ地下水、雨水は放射性物質に汚染されています。放射性物質を取り除く処理をし、除去できずに残っているトリチウム…

追悼 大江健三郎さん~平和、護憲、反核、脱原発の視点、視線を共有する

ノーベル文学賞を受賞した作家の大江健三郎さんが3月3日、死去されていたことが報じられました。享年88歳。わたしにとって大江さんは、作品になじんだ作家と言うよりは、平和、護憲、反核、脱原発など、同じ方向を見ていた同時代の羅針盤のような存在で…

「地域」に立脚した確固とした視点~ブロック紙・地方紙39紙の年頭の社説、論説を読む

非常勤講師を務める大学で先日、今年最初の授業がありました。手元にあった東京発行の新聞各紙の元日付け紙面を教室に持ち込み、それぞれの特徴などを解説しました。ロシアのウクライナ侵攻が続く中での新年であり、各紙の紙面を通じたキーワードが「戦争」…

国葬「反対多数」と岸田内閣の支持続落に変わりなく~続く混迷と緊張に岸田首相で大丈夫か

「どんどん反対が増えていったけど、やっぱりやって良かった―」とはならなかったようです。9月27日に行われた安倍晋三元首相の国葬のことです。10月最初の週末、1、2両日に実施された世論調査3件の結果によると、国葬実施に対して、いずれの調査でも…

岸田首相の所信表明に地方から懐疑、批判~「『みんな』に沖縄は含まれるのか」(琉球新報)、「被災者にどう寄り添う」(福島民報)、「被爆地の期待、裏切られた」(中国新聞)

岸田文雄首相が10月8日、国会で就任後初の所信表明演説を行いました。総じて具体性に乏しく、就任以来盛んに強調している「新しい資本主義」「成長と分配の好循環」についても、何がどう新しいのかよく分かりません。実質的には、安倍晋三元首相が進め菅…

「人権侵害の懸念消えず」(沖縄タイムス) 「欠陥法は認められない」(琉球新報)~土地規正法成立、在京各紙はスタンスに違い

自衛隊や米軍基地など安全保障上の「重要施設」周辺や国境に近い離島などの土地利用を規制する法律が16日未明、参院本会議で可決、成立しました。マスメディアの報道では「土地規制法」との呼び方が主流のようです。自民党、公明党に加え日本維新の会、国…

(続)「大震災10年」なのか「発生から10年」なのか~「復興五輪」に触れなかった菅首相

前回の記事(あの日のこと~「東日本大震災10年」なのか「発生から10年」なのか)の続きです。 3月12日付の東京発行の新聞各紙朝刊(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から10年を迎えた前日3…

あの日のこと~「東日本大震災10年」なのか「発生から10年」なのか

東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故は3月11日、発生から10年がたちました。だれもが、あの日のことは鮮明に覚えているのではないでしょうか。 わたしは勤務先の通信社の人事異動で、東京の本社から大阪支社に整理部長として着任して10日…

マスメディアに「準有事」の自覚あるか~北朝鮮ミサイル報道巡るいくつかの懸念

北朝鮮が8月29日早朝、弾道ミサイル1発を発射しました。 備忘として書きとめておくと、午前5時58分に発射され、北海道・襟裳岬付近の上を高度約550キロで通過して、襟裳岬の東約1180キロの太平洋上に午前6時12分に落下したと伝えられていま…

東日本大震災から5年

東日本大震災から5年になりました。 警察庁によると3月10日現在、震災の死者は全国で1万5894人、行方不明者は2561人、厳しい避難生活やストレスが原因となった震災関連死は3410人に上るとのことです。東京電力福島第一原発事故の影響も続き…

立地地元ではない滋賀の住民の問い掛けに正面から向き合った司法判断〜大津地裁の高浜原発差し止め、在京紙の報道の記録

福井県高浜町の関西電力高浜原発3、4号機の運転差し止めを、隣県の滋賀県の住民が申し立てた仮処分申請で、大津地裁の山本善彦裁判長は9日、運転を差し止める仮処分決定を出しました。仮処分は裁判の判決と違ってただちに効力を持つため、運転中だった3…

「想定外」は教訓になっているか〜川内原発再稼働容認の司法判断に対する各紙社説の記録

かなり日がたってしまいましたが、マスメディアの報道、論調の記録として重要だと思いますので、書きとめておきます。 鹿児島県薩摩川内市にある九州電力川内原発の再稼働差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、鹿児島地裁は4月22日、却下する決定を出し…

地方紙・ブロック紙は「警告」「警鐘」と受け止め〜高浜原発の福井地裁仮処分

関西電力高浜原発の運転を差し止める福井地裁の仮処分決定についての記事の続きです。 この決定を取り上げた地方紙・ブロック紙の社説をネットでチェックしたところ、見出しのみの例を含めて27紙(中日新聞と東京新聞は1紙とカウント)を確認できました。…

読売「偏った判断」産経「奇矯感濃厚」朝日・毎日「司法の警告」〜高浜原発・福井地裁決定の在京紙報道の記録

福井地裁で15日、原子力発電所をめぐる大きな司法判断が示されました。 ※「福井地裁、高浜原発再稼働認めず 初の仮処分決定、『合理性欠く』」(47news=共同通信) http://www.47news.jp/CN/201504/CN2015041401001499.html 関西電力高浜原発3、4号機…

東日本大震災から4年

東日本大震災から3月11日で4年がたちました。いまだ約22万9千人が避難生活を送り、行方不明者は岩手、宮城、福島の被災3県を中心に今なお計2584人、震災の直接の死者や関連死を含めて、犠牲者は2万人を超えると報じられています。東京電力福島…

67年目の「長崎原爆の日」の報道

8月9日は長崎への原爆投下から67年の日でした。投下時刻の午前11時2分をはさんで、長崎市の平和公園では平和祈念式典が開かれました。田上富久市長は平和宣言で核兵器廃絶を訴え、また東京電力福島第一原発事故に触れて「日本政府は被災地の復興を急…

物事の進め方、決め方の正統性が問われる〜大飯原発再稼働が決まって感じること

関西電力大飯原発3、4号機の再稼働が、先週末の16日に最終的に決まりました。福井県の西川一誠知事が同日、野田佳彦首相に再稼働に同意することを伝え、これを受けて首相は関係閣僚会合で正式に決めました。関連のニュースは16日土曜日から翌17日日…

日隅一雄さん、安らかに ※追記:憲法メディアフォーラムに追悼文

弁護士でありニュースサイトNPJ編集長、そしてジャーナリストでもある日隅一雄さんが6月12日午後8時28分、がん性腹膜炎のため永眠されました。 ※NPJ http://www.news-pj.net/ わたしが新聞労連委員長だった当時に面識をいただき、以来、さまざま…

続・大飯再稼働と首相会見 ※追記あり

関西電力大飯原発の再稼働問題をめぐって野田佳彦首相が8日に行った記者会見と、それを報じた新聞各紙に触れた前回のエントリーの続きです。 ※参考過去エントリー 「大飯再稼働を超える首相会見の意味〜社会の意思はどう代表されればいいのか」=2012年…

大飯再稼働を超える首相会見の意味〜社会の意思はどう代表されればいいのか

関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題をめぐり、野田佳彦首相は8日に記者会見し「国民生活を守るため、再稼働すべきだというのが私の判断だ」「今原発を止めてしまっては日本の社会は立ち行かない」と表明しました。5月30日に関西広域連合が事実上、…

大飯再稼働「決断」へ〜関西の意思、広域連合に負わせ

関西電力の大飯原子力発電所3、4号機の再稼働問題で5月30日、大きな動きがありました。電力消費地である「関西」の意思を負う立場として、関西広域連合が事実上、再稼働を容認する姿勢を打ち出しました。同日に鳥取県で開かれた関西広域連合の会合で、…

橋下市長と「脱原発」の一つの仮説〜勉強会「原発再稼働の波紋」で報告

以前のエントリー(「原発ゼロ」と関西のマスメディア・新聞)でもお知らせしていましたが、この週末26日の土曜日、日帰りで上京し、日比谷のプレスセンタービルで開かれた勉強会に参加しました。新聞・通信や放送のOBら10人の方々が幹事役になってい…

大飯原発「臨時稼働」の橋下市長発言の報じ方

前回のエントリー(「原発ゼロ」の中で決まった「節電の夏」〜再稼働問題の推移に注目)の続きになります。週末の19日土曜日に、関西の府県などでつくる関西広域連合の会合が大阪市でありました。新聞各紙の20日付朝刊(全国紙は大阪本社発行の最終版)…

「原発ゼロ」の中で決まった「節電の夏」〜再稼働問題の推移に注目

「原発ゼロ」の中で、今夏の政府の電力対策が18日、決まりました。関西電力管内については、2010年比で約15%の供給不足になることを前提に15%の節電目標を設定。期間は7月2日〜9月7日です。計画停電の準備を進めますが、電力使用制限令は回…

「大飯再稼働シミュレーション」の報じ方

先週の10日(木)、夏の電力需給に関する政府の検証委員会が開かれました。その場で、関西電力の大飯原発3、4号機が再稼働した場合、関西電力管内では8月、ほぼ最大需要に見合う供給が可能との試算が明らかにされたことを、大阪では10日の夕刊各紙は…

「原発ゼロ」と関西のマスメディア・新聞

少し日がたってしまいましたが、備忘も兼ねて書き留めておきます。 昨年3月11日の東日本大震災と、東京電力福島第一原発事故の後、全国各地で定期点検入りした原発がそのまま再稼働していない中で、最後の1基になっていた北海道電力泊原発3号機が5月5…

3・10から3・11へ、「大本営発表」の教訓

3月11日は東日本大震災から1年。警察庁のまとめによると、9日現在で死者は15854人、なお3167人もの方々が行方不明です。あらためて、犠牲になった方々のご冥福をお祈りいたします。東京電力福島第一原発事故は、いまだ収束を実感できる状況で…

「検証 福島原発事故・記者会見」(日隅一雄 木野龍逸 岩波書店)

検証 福島原発事故・記者会見――東電・政府は何を隠したのか作者:日隅 一雄,木野 龍逸発売日: 2012/01/21メディア: 単行本(ソフトカバー)※岩波書店サイトの紹介ページ http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/0246690/top.html 共著者の日隅一雄さんから贈って…