ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

政治・選挙

圧倒的な研究成果の厚みと、対米戦争への連続性の視点~読書:「南京事件 新版」(笠原十九司、岩波新書)

ことしは1945年に日本の無条件降伏で第2次世界大戦が終結して80年です。8月6日、9日の広島、長崎の原爆の日から15日の「敗戦の日」にかけて、マスメディアでも戦争体験の継承をめぐる報道が目に付きました。例年と異なると感じたのは、史実を認…

特定の記者、媒体の選別と排除が可能な参政党「記者会見」登録制~「沈黙」は「承認」と受け取られる

参政党の「記者会見」が、特定の記者、特定の媒体を事実上、選別し排除できる仕組みになっていることは、このブログで触れてきました。会見への参加問題以前に、記者を選別することなく質問を受ける、という姿勢を欠いているのであれば、「記者会見」と呼べ…

原爆投下80年の夏に考える「差別」~教訓を継承し人間の「弱さ」を乗り越える ※追記:「地球市民」の視点

ことしは広島に原爆が投下されて80年。8月6日朝、広島市の平和記念式典の様子をテレビで見ました。投下時刻の8時15分、鐘の音とともにわたしも黙とう。続いて松井一実市長の「平和宣言」、小学生2人の「平和への誓い」、石破茂首相や湯崎英彦・広島…

一人の記者、一つの新聞社の問題と捉えると「報道統制の発想」が見えなくなる~参政党「記者会見」の発言封じの何が問題か

臨時国会が8月1日に開会しました。7月の参院選で14人を当選させ、所属国会議員が18人になった参政党は同日午後に「記者会見」を開きました。わたしは動画で視聴しました。 7月22日の会見を排除された神奈川新聞の石橋学記者はこの日は参加。しかし…

候補者から「帰化した者」を排除することは日本国憲法と深刻な矛盾~「日本ファースト」とも「国民ファースト」とも違う「日本人ファースト」

参政党は、自党から擁立する衆院選候補者や地方選の候補者の公募の応募条件に、「⽇本国籍を有しており(多重国籍は不可)、帰化した者でないこと」を掲げていることを知りました。日本国籍を持つ日本国民でも、帰化した人は参政党の候補者にはしないという…

備忘:「非国民」発言の参政党・初鹿野議員を神谷代表が「ポンコツ」「イエローカード」(「アエラデジタル」インタビュー記事)

備忘を兼ねて書きとめておきます。 朝日新聞出版が運営するサイト「アエラデジタル」に、参政党の神谷宗幣代表のインタビュー記事が掲載されています。▽「参政党・神谷代表に聞いた『日本人ファースト』の“真意” 『初鹿野さんにはめちゃめちゃ注意しています…

「参政の憲法案 ない、ない、ない /人権の保障 思想の自由 戦争放棄」(東京新聞)~参政党が掲げる「創憲」が「改憲」と異なることの意味

参政党は参院選の公約で憲法について、「護憲」でも「改憲」でもなく、全く新しい憲法を作ることを目指すとして、「創憲」を掲げました。公表している「憲法草案」には、現行の日本国憲法が保障している国民の権利がごっそり抜け落ちていることは、このブロ…

「表現の自由」を欠き「報道統制」を志向する参政党の憲法観~記者排除で「非国民」発言もうやむやなのか

一つ前の記事で以下のようなことを書きました。 参政党は7月22日に開いた「記者会見」から神奈川新聞の石橋学記者を排除しました。その本質は、現行の日本国憲法が保障している「表現の自由」および「報道の自由」の否定です。参政党が公表している憲法観…

「記者排除」の本質は現行憲法の否定~参政党の「記者会見」は記者会見ではない、一方的プロパガンダの場

国会議員の地位は日本国憲法で規定され、保障されています。だから国会議員であれば、憲法を順守するのは当然のことなのですが、それでも憲法は国会議員を含めた公務員に対し、憲法を尊重し擁護する義務を明文で課しています。努力目標ではありません。天皇…

「差別は自分に返ってくる」~手塚治虫さん「アドルフに告ぐ」に感じる「差別」の本質と愚かさ ■追記:基本的人権の戒め

差別は他者との違いを認めず、相手より自分の方が優れていると考えることから始まります。自分と他人には、違いはあって当たり前です。生まれも育ちも、性格も特性も、好きになる相手も、家族の形も人それぞれ。でもその違いを巡ってひとたび差別が起これば…

乙武洋匡さん「『健常者ファースト』のこの国で。」~ニーメラー、ゲーリングとわたしたち 参院選の投票日に

ひとたび始まった差別はどんどん広がる。「日本人ファースト」の「日本人」をほかの言葉に置き換えてみるとどうだろうか。「○○ファースト」-。 参院選の投票日の朝、そんなことを考えているときに、乙武洋匡さんの「『健常者ファースト』のこの国で。」とい…

差別発言をなぜ笑うのか~ささやかでも「差別はだめ」「だれもが平等で自由」と声に出す

ひどい参院選になってしまいました。「日本人ファースト」の参政党をはじめ、いくつかの政治勢力が差別を競い合うような状況です。街頭で人権侵害の発言がまかり通っています。この状況を傍観し沈黙してしまうと、差別は勢いを増します。だから、黙っている…

「日本国籍=日本人」ではない参政党「憲法草案」の国民要件~「生まれ」「人種」を問うのは差別そのもの

このブログで4回連続の更新になりますが、参院選で「日本人ファースト」を掲げている参政党の「憲法草案」について、もう少し書きとめておきます。 現行の日本国憲法が保障している数々の国民の権利が、この「憲法草案」には見当たらないことは、一つ前の記…

「表現の自由」が失われた社会を想像してみる~参政党の憲法草案の考察

このブログの一つ前の記事で、参政党の「憲法草案」には「言論の自由」も「表現の自由」もないこと、それなのにTBSの報道への抗議の中では「民主主義の根幹である言論の自由と公正な報道の確保を強く求めてまいります」などと「言論の自由」を強調してい…

“違憲”の参政党が「言論の自由」を強調することの違和感~報道業務は「国営または自国の資本」と「憲法草案」に

このブログの一つ前の記事では、参政党が「新しい憲法を創る」ことを参院選の公約に掲げ、「憲法草案」を公表していることをめぐって、国会議員である神谷宗幣代表、さらには計5人の国会議員を擁する参政党が、現行の日本国憲法に違反している疑いがあるこ…

参政党と神谷代表の「自己矛盾」~日本国憲法を否定する国会議員は憲法違反

7月20日に参院選の投開票があります。マスメディアの情勢調査では、「日本人ファースト」を掲げ、極右的な色彩の政策を公約にする参政党が急速に支持を集めていると報じられています。参政党の主張には多々疑問を感じます。選挙運動なら何を言っても許さ…

「広島、長崎と本質的に同じ」発言の意味と被爆国のメディアの報道

思わず耳を疑いました。米国のトランプ大統領が、イランの核施設への攻撃を広島、長崎への原爆投下になぞらえて「戦争を終結させた」と正当化した、とのニュースです。 【ハーグ共同】トランプ米大統領は25日、米軍によるイランの核施設攻撃が「戦争を終結さ…

商品券の配布は問題だが首相を辞める必要はない、が多数派か~世論調査に見る石破首相への民意

先週末に実施した新聞3社の定例世論調査の結果が報じられています。 石破茂首相が自民党の衆院議員1期生に1人10万円の商品券を配布した問題を、民意は厳しく見ていることがうかがえます。石破内閣の支持率は前回、2月の調査から14~7ポイント低下し…

石破首相の「10万円商品券」情報の報道と背景(備忘メモ)

少なからず驚きがあるニュースです。 石破茂首相が3月3日に公邸で自民党の当選1回の衆院議員15人と会食。石破氏の個人事務所が土産の名目で1人当たり10万円分の商品券を配っていたことが3月13日夜、報じられました。石破首相は深夜になって報道陣…

兵庫と千葉、二つの「2馬力選挙」の思惑と報じ方~マスメディアに問われているデジタル、SNSへの視点と知見

一つ前の記事(「立花孝志『2馬力』選挙」と報じることで見えにくくなること)の続きです。 千葉県知事選に出馬を表明している立花孝志・「NHKから国民を守る党」党首が2月14日の定例会見で、「2馬力選挙」の撤回を表明しました。出馬自体は維持する…

「立花孝志『2馬力』選挙」と報じることで見えにくくなること

少し時間がたちましたが、興味深いことに気が付きました。備忘を兼ねて書きとめておきます。 昨年11月の兵庫県知事選で、自身の当選ではなく、斎藤元彦知事の再選を目指して出馬した「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が2月7日、千葉県知事選(2…

慎重姿勢が前面に、兵庫県知事選巡る強制捜査の“異例”感~より本質は「2馬力選挙」とデマ

選挙とSNS、あるいは選挙とデマやフェイク、さらには他候補の当選のために出馬した「2馬力選挙」候補の扱いなど、マスメディアの政治報道、選挙報道にいくつもの課題が突き付けられた昨年11月17日の兵庫県知事選を巡って、新たな展開がありました。…

寄稿「『フェイク対ファクト』の視点を/問われる旧態依然の選挙報道」(新聞通信調査会「メディア展望」)

昨年の東京都知事選、衆院選、兵庫県知事選ではSNSが注目を集めました。兵庫県知事選では、新聞、テレビが当初劣勢だと報じていた斎藤元彦知事が当選したことで、SNS上に「マスメディアの敗北」との言説が飛び交いました。勝ち負けの問題ではないので…

「国家を監視する新聞」から「国家と一体の新聞」への転換 魚住昭さんの渡辺恒雄・読売新聞主筆の評伝

読売新聞グループ本社の渡辺恒雄・代表取締役主筆の訃報が伝えられました。新聞の発行部数が減少の一途とはいえ、618万部余(2023年7月~12月平均、「読売新聞MEDIA GUIDE2024-2025」より)で日本最大の部数の同紙は、12月20日付の…

選挙とSNS、「新聞」はどうネット空間に分け入っていくのか~世論調査の記録:国民民主の支持率 野党トップに

先週末に実施された4件の世論調査(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信)の結果を目にしました。特徴的なのは、政党支持率ではいずれの調査でも国民民主党が立憲民主党を上回り、野党でトップになっていることです。 国民民主党は10月の衆院選では「…

備忘メモ:本質は公益通報者保護のありよう~兵庫県の混迷、TBS「報道特集」見逃し配信12月8日まで

備忘のメモを兼ねて書きとめておきます。 TBS系列で11月30日(土)に放映された報道特集の「兵庫県知事選“斎藤現象”を考える」を、インターネト上の見逃し配信サービスTVerで見ました。事の発端から、兵庫県知事選を経て斎藤元彦知事が再選され、…

備忘メモ:年配層も新聞、テレビとネットをシームレスに行き来~メディアの主役の本格的な交代期か

備忘のメモを兼ねて、書きとめておきます(精緻な論考ではありません)。 この週末に参加した内輪の勉強会で、テレビに詳しい方から、斎藤元彦知事が再選された11月17日の兵庫県知事選とテレビについて、お話を伺う機会がありました。同感のことが少なく…

何も真相は明らかになっていない斎藤知事代理人の会見~「N国は反社会的カルト集団」に名誉棄損認めず

何も真相は明らかになっていない、と感じた記者会見でした。やはり知事本人の説明が必要なのではないでしょうか。 兵庫県知事選で再選された斎藤元彦知事のSNS運用に、公職選挙法違反ではないかとの指摘が続いていることに対して、斎藤知事の代理人の奥見…

「公選法抵触の認識ない」「弁護士が対応」繰り返す斎藤知事~SNSから現実社会の「疑惑」へ 兵庫県知事選に思うこと・その7

兵庫県知事選で再選された斎藤元彦知事陣営のSNS戦略を巡って、公職選挙法違反との指摘が出ている問題は、新たな段階に進みました。斎藤知事は11月25日午後、東京で開かれた全国知事会議の終了後に記者団に囲まれ、いくつか重要なことを自ら口にしま…

逆転劇から1週間、高まる「選挙違反」の指摘~「SNSに真実」は一面で真実 兵庫県知事選に思うこと・その6 【追記】報酬あってもなくても違法~しんぶん赤旗で上脇教授が指摘

兵庫県知事選挙で斎藤元彦知事が再選されたのは11月17日でした。失職当初は劣勢が伝えられながら、SNSを追い風にした逆転劇に、ネット空間は熱気と高揚感に覆われていたように感じました。あれから24日で1週間。わずかな時間のうちに、潮目はすっ…