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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

仮説メモ:投票率上昇なら政権交代に現実味?~「自民と立民 支持率並ぶ」の読み解きを試みる

 先週末に実施された毎日新聞の世論調査の結果が目を引きました。岸田文雄内閣の支持率は14%、不支持率は82%に達しました。政党支持率でも、自民党と立憲民主党が16%で並びました。仮に今、衆院選が実施されれば、政権交代は必至と思えるような結果です。
 ただし、同時期に実施された読売新聞の調査と朝日新聞の調査とは、かなり趣が異なります。この3件の調査の結果を一覧にまとめると、以下の通りです。

 読売新聞の調査結果と朝日新聞の調査結果は、おおむね一致しているようです。これに対して、毎日新聞の調査結果は明確に異なっています。読売、朝日の調査でも岸田内閣、自民党とも支持は低い水準ですが、自民党が野党に並ばれてしまう、という状況ではありません。この違いは何を意味するのか。推測交じりのわたし個人の仮説ですが、報じられている内容を元に考えてみました。
 各紙とも調査方法は一定程度、記事の中で開示しています。それによると、3件の調査とも対面の聞き取りではなく、電話を介した調査です。コンピューターで無作為に電話番号を作成していること、携帯電話と固定電話を組み合わせていることは3件とも共通です。読売新聞、朝日新聞の調査が電話で直接、質問をしているのに対し、毎日新聞の調査では、携帯電話の場合、調査を承諾した人にSMS(ショートメッセージ)で回答画面へのリンク情報を送付している点が、読売、朝日とは異なるようです。記事から判断できる明確な差異はほかに見当たりません。SMSを使うかどうかの違いで、調査結果にここまで開きが生じるのかどうか。なお、回答率は読売新聞調査は固定電話62%、携帯電話39%で回答数は1083、朝日新聞調査では固定電話50%、携帯電話39%で回答数は1113です。毎日新聞は目標サンプル数を1000件とし携帯453件、固定571件(計1024)の回答を得たとしていますが、回答率は記載していません。
 わたしの主観ですが、スマホに世論調査の電話がかかってきたとして、そのまま質問に答えるのならともかく、あらためてSMSでリンクを受け取り、そこから回答画面にアクセスして回答を入力するのだとしたら、ちょっと面倒だな、と感じるように思います。面倒だと感じて調査への協力を断る人も少なくないのでは、と想像します。毎日新聞の調査に回答している人は、その面倒を乗り越えて調査に協力している人たちであり、そこが他社の調査と異なる点ではないかと思います。適切な言い方かどうか分かりませんが、毎日新聞の調査には他社調査にはないこうしたバイアスがかかっている、という言い方が可能かもしれません。

 では、多少の面倒をいとわず調査に協力するのはどのような人たちでしょうか。これもわたしの主観ですが、日ごろから政治へ関心を持ち、内閣への評価や支持政党についても明確な答えを持っている人ではないかと思います。もし政治に関心がなければ、SMSを介した面倒な調査に協力しようという気にならない方が自然だろうと感じます。実際に、内閣支持率をめぐっては、毎日新聞の調査では支持と不支持の合計は96%もあります。政権への態度を明示しない人はわずか4%。読売新聞調査の15%(支持と不支持の合計85%)、朝日新聞調査の14%(同86%)との間に有為の差があります。
 岸田政権や政治に明確な意見を持つ人たちの回答が相対的に多く反映された調査で、もはや政権交代ではないか、と思わせる結果が出たことは何を意味しているか。政治への関心が高い層は今、岸田政権や自民党に批判的になっている、ということが可能性の一つではないかと思います。政治への関心が高まれば、岸田政権や自民党への批判が増し、政権交代の受け皿としての期待から野党の支持が増える、と予測することもできそうな気がします。選挙で投票率が上がることは、それだけ政治に関心を持つ人が増えたということを意味します。そういう人の票は野党に向かうのではないか。仮に今選挙が実施され、投票率が上がれば政権交代が現実味を帯びてくる―。そんなことを感じます。

 以上は、あくまでもわたしの推測交じりの仮説です。世論調査や統計に専門的な知見を持った方が、今回の毎日新聞の調査結果をどのように見ているか、知りたいと思います。