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安倍晋三内閣の支持率は回復基調か?~「次の総理」石破茂氏25・4%、安倍晋三氏19・6%(NNN調査)の結果に驚き

 9月に実施された世論調査の結果がいくつか報じられています。安倍晋三内閣の支持率は以下の通りです。

▼朝日新聞 9月9、10日実施
 「支持」38%(前回比3ポイント増)
 「不支持」38%(前回比7ポイント増)
▼読売新聞 9月9、10日実施
 「支持」50%(前回比8ポイント増)
 「不支持」39%(前回比9ポイント減)
▼NHK 9月8~10日実施
 「支持」44%(前回比5ポイント増)
 「不支持」36%(前回比7ポイント減)
▼NNN(日本テレビ系列) 9月8~10日実施
 「支持」42・1%(前回比6・5ポイント増)
 「不支持」41・0%(前回比6・3ポイント減)
▼毎日新聞 9月2、3日実施
 「支持」39%
 「不支持」36%
 「関心がない」22%
 ※今回から携帯電話も対象に含めているため、前回とは比較できません
▼共同通信 9月2、3日実施
 「支持」44・5%(前回比0・1ポイント増)
 「不支持」46・1%(前回比2・9ポイント増)

 支持が20%台の調査結果まであった7月当時と比べると、支持率は回復基調のようにも思えます。しかし、読売新聞は記事では「前月比で12ポイント下落した6月調査の49%とほぼ同水準にとどまっている」との慎重な評価です。また朝日新聞は「回復傾向にはあるものの、無党派層の支持率は17%と依然低い」と指摘しています。「回復」とはいえ、さらに勢いを増して再び広範な層の支持を得るのは、現状では厳しいかもしれません。

 各調査結果の個別の質問と回答をチェックしていて、少なからず驚いたことがあります。NNNの最後の質問と回答結果です。

※日本テレビ世論調査のサイト 

http://www.ntv.co.jp/yoron/201709/soku-index.html

 【問13】あなたは、次の総理大臣には、誰が最もふさわしいと思いますか?
(1)安倍晋三 19・6%
(2)石破 茂 25・4%
(3)岸田文雄 7・8%
(4)野田聖子 5・4%
(5)前原誠司 2・1%
(6)その他 3・3%
(7)わからない、答えない 36・4%

 選択肢には「安倍晋三」もあるので、普通に受け止めれば、この問いは安倍氏の後任の首相についてではない、つまり安倍氏以外ではだれがふさわしいかを尋ねているのではない、ということになります。その上で、石破茂氏が安倍氏に6ポイント近くの差をつけているのですから、仮に内閣支持率は回復基調にあるとしても、必ずしも首相である安倍氏への支持を反映した結果ではないのかもしれません。1件の調査だけでは何とも判断できませんが、世論はこれ以上の安倍政権の長期化を拒み、新しい次の首相を求め始めている可能性があるように思います。

 ちなみに他社の調査を通じても、民進党や、同党の代表に就いた前原誠司氏への期待は、朝日新聞調査では28%、読売新聞調査も33%にとどまり、「期待しない」は朝日58%、読売60%にも上っています。

 もう一つ、話題になっている東京都の小池百合子知事に近い若狭勝・衆院議員が国政政党を目指して作った「日本ファーストの会」に対しては、朝日調査では「期待する」49%、「期待しない」39%、読売調査では「期待する」41%、「期待しない」46%で、民進党よりは期待が高いようです。ただ、小池氏は都知事に就任して日が浅く、将来はともかく、NNN調査の質問が想定している意味での次の首相候補にはなりえないでしょう。

 政党支持率では朝日、読売調査とも自民党は4~2ポイントとわずかですが回復しており、こうしたことも考えあわせれば、現状の民意を大雑把にとらえると、民進党や前原代表への支持は限られており、小池氏も首相候補には入っていない中で、消去法では大勢はやっぱり自民党支持になるが、さすがに安倍氏はもういい、誰かほかの人を。そうなると、ここでもまたも消去法で石破茂氏―。あくまでも仮説ですので、後続の調査でどんな結果が出るかを待ちたいと思います。
 それにしても、NNNのこの調査結果は、憲法改正を悲願にする安倍氏が、自民党総裁3選=首相続投を目指している中では、相当にインパクトが大きいはずですが、あまり話題になっていないようです。日本テレビはニュースで報じたのでしょうか。サイト上の記事、映像では、この質問と回答には触れていません。 

www.news24.jp

【追記1】2017年9月12日9時55分

 アップして間もなく、サブタイトルの一部を「、衝撃の結果も」から「の結果に驚き」に差し替えました。

【追記2】2017年9月13日1時

 NHKの世論調査結果も報じられています。内閣支持率を本文に挿入しました。「支持」が「不支持」を上回っており、回復基調とみていいのでしょう。

 民進党の前原代表への期待では、「大いに期待する」7%、「ある程度期待する」29%、「あまり期待しない」36%、「まったく期待しない」22%でした。大まかに言えば「期待する」36%、「期待しない」65%。他の調査結果と同じ傾向です。
 ちなみにNHKは、前原代表が山尾志桜里氏の党幹事長への起用を断念し、山尾氏は「既婚男性との交際疑惑」をめぐる報道を受けて離党したことについて、民進党に影響があると思うかを聞いています。回答は「大いに影響がある」24%、「ある程度影響がある」42%、「あまり影響はない」20%、「まったく影響はない」6%でした。

 東京都の小池百合子知事に近い若狭衆議院議員らの新党結成の動きへ期待するかどうかを聞いたところ、「大いに期待する」10%、「ある程度期待する」27%、「あまり期待しない」38%、「全く期待しない」16%でした。「期待しない」が54%、「期待する」は37%で、他調査に比べると「期待しない」が強く出ています。
 いずれにせよ、自民党にとって代わるほどの勢いを持った勢力は見当たりません。内閣支持率は回復基調ながら、民意は決して安倍晋三氏の続投を求めてはいない、との仮説に変更の必要はないように思います。