ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

憲法

「近現代史160年」の視野でとらえる靖国神社~「非業の死」に差を付ける意味は見いだせない

1945年8月15日正午、昭和天皇が無条件降伏の受け入れを告げる音声がラジオで全国に流れました。9月の降伏文書調印で、第2次世界大戦は日本の敗戦で終結しました。1931年の満州事変にさかのぼれば、15年間にわたって日本は戦争をしていました…

「戦後80年の夏のメッセージ」若い世代の皆さんへ~歴史の教訓を学び、生かすのは今を生きる者の務め

昨年に続き、今年も4月から7月まで成城大学で非常勤講師を務めました。担当したのは文芸学部マスコミ学科の「マスコミ特殊講義」。主眼は文章の書き方、「文章作法」です。通年ではなく前期のみですので、実質的には3カ月間の指導でしたが、昨年同様、文…

一人の記者、一つの新聞社の問題と捉えると「報道統制の発想」が見えなくなる~参政党「記者会見」の発言封じの何が問題か

臨時国会が8月1日に開会しました。7月の参院選で14人を当選させ、所属国会議員が18人になった参政党は同日午後に「記者会見」を開きました。わたしは動画で視聴しました。 7月22日の会見を排除された神奈川新聞の石橋学記者はこの日は参加。しかし…

候補者から「帰化した者」を排除することは日本国憲法と深刻な矛盾~「日本ファースト」とも「国民ファースト」とも違う「日本人ファースト」

参政党は、自党から擁立する衆院選候補者や地方選の候補者の公募の応募条件に、「⽇本国籍を有しており(多重国籍は不可)、帰化した者でないこと」を掲げていることを知りました。日本国籍を持つ日本国民でも、帰化した人は参政党の候補者にはしないという…

備忘:「非国民」発言の参政党・初鹿野議員を神谷代表が「ポンコツ」「イエローカード」(「アエラデジタル」インタビュー記事)

備忘を兼ねて書きとめておきます。 朝日新聞出版が運営するサイト「アエラデジタル」に、参政党の神谷宗幣代表のインタビュー記事が掲載されています。▽「参政党・神谷代表に聞いた『日本人ファースト』の“真意” 『初鹿野さんにはめちゃめちゃ注意しています…

「参政の憲法案 ない、ない、ない /人権の保障 思想の自由 戦争放棄」(東京新聞)~参政党が掲げる「創憲」が「改憲」と異なることの意味

参政党は参院選の公約で憲法について、「護憲」でも「改憲」でもなく、全く新しい憲法を作ることを目指すとして、「創憲」を掲げました。公表している「憲法草案」には、現行の日本国憲法が保障している国民の権利がごっそり抜け落ちていることは、このブロ…

「表現の自由」を欠き「報道統制」を志向する参政党の憲法観~記者排除で「非国民」発言もうやむやなのか

一つ前の記事で以下のようなことを書きました。 参政党は7月22日に開いた「記者会見」から神奈川新聞の石橋学記者を排除しました。その本質は、現行の日本国憲法が保障している「表現の自由」および「報道の自由」の否定です。参政党が公表している憲法観…

「記者排除」の本質は現行憲法の否定~参政党の「記者会見」は記者会見ではない、一方的プロパガンダの場

国会議員の地位は日本国憲法で規定され、保障されています。だから国会議員であれば、憲法を順守するのは当然のことなのですが、それでも憲法は国会議員を含めた公務員に対し、憲法を尊重し擁護する義務を明文で課しています。努力目標ではありません。天皇…

「差別は自分に返ってくる」~手塚治虫さん「アドルフに告ぐ」に感じる「差別」の本質と愚かさ ■追記:基本的人権の戒め

差別は他者との違いを認めず、相手より自分の方が優れていると考えることから始まります。自分と他人には、違いはあって当たり前です。生まれも育ちも、性格も特性も、好きになる相手も、家族の形も人それぞれ。でもその違いを巡ってひとたび差別が起これば…

乙武洋匡さん「『健常者ファースト』のこの国で。」~ニーメラー、ゲーリングとわたしたち 参院選の投票日に

ひとたび始まった差別はどんどん広がる。「日本人ファースト」の「日本人」をほかの言葉に置き換えてみるとどうだろうか。「○○ファースト」-。 参院選の投票日の朝、そんなことを考えているときに、乙武洋匡さんの「『健常者ファースト』のこの国で。」とい…

差別発言をなぜ笑うのか~ささやかでも「差別はだめ」「だれもが平等で自由」と声に出す

ひどい参院選になってしまいました。「日本人ファースト」の参政党をはじめ、いくつかの政治勢力が差別を競い合うような状況です。街頭で人権侵害の発言がまかり通っています。この状況を傍観し沈黙してしまうと、差別は勢いを増します。だから、黙っている…

「日本国籍=日本人」ではない参政党「憲法草案」の国民要件~「生まれ」「人種」を問うのは差別そのもの

このブログで4回連続の更新になりますが、参院選で「日本人ファースト」を掲げている参政党の「憲法草案」について、もう少し書きとめておきます。 現行の日本国憲法が保障している数々の国民の権利が、この「憲法草案」には見当たらないことは、一つ前の記…

「表現の自由」が失われた社会を想像してみる~参政党の憲法草案の考察

このブログの一つ前の記事で、参政党の「憲法草案」には「言論の自由」も「表現の自由」もないこと、それなのにTBSの報道への抗議の中では「民主主義の根幹である言論の自由と公正な報道の確保を強く求めてまいります」などと「言論の自由」を強調してい…

“違憲”の参政党が「言論の自由」を強調することの違和感~報道業務は「国営または自国の資本」と「憲法草案」に

このブログの一つ前の記事では、参政党が「新しい憲法を創る」ことを参院選の公約に掲げ、「憲法草案」を公表していることをめぐって、国会議員である神谷宗幣代表、さらには計5人の国会議員を擁する参政党が、現行の日本国憲法に違反している疑いがあるこ…

参政党と神谷代表の「自己矛盾」~日本国憲法を否定する国会議員は憲法違反

7月20日に参院選の投開票があります。マスメディアの情勢調査では、「日本人ファースト」を掲げ、極右的な色彩の政策を公約にする参政党が急速に支持を集めていると報じられています。参政党の主張には多々疑問を感じます。選挙運動なら何を言っても許さ…

「国家を監視する新聞」から「国家と一体の新聞」への転換 魚住昭さんの渡辺恒雄・読売新聞主筆の評伝

読売新聞グループ本社の渡辺恒雄・代表取締役主筆の訃報が伝えられました。新聞の発行部数が減少の一途とはいえ、618万部余(2023年7月~12月平均、「読売新聞MEDIA GUIDE2024-2025」より)で日本最大の部数の同紙は、12月20日付の…

堀江貴文氏「住民の危険よりジュゴン」発言の危うさ~「悪意」でなければ「粗雑」 ニューズピックの姿勢に疑問

沖縄への基地の過剰な集中を巡って、また軽視できない出来事が起きました。日本本土のマスメディアではほとんど報道を目にしません。そのことを含めて、日本本土の側の沖縄に対する構造的とも呼ぶほかない無知と無理解を感じます。経緯を書きとめておきます…

「賊軍」戦死者の扱いを伝える清水「壮士墓」~自衛隊員の靖国集団参拝に懸念 ※追記 防衛相の参拝が招く深刻な事態

8月15日は終戦の日です。この日の象徴としてマスメディアでも例年報道される場所の一つに、東京・九段の靖国神社があります。 源流は1869年に創建された東京招魂社です。幕末の倒幕派の志士、戊辰戦争での新政府軍の戦死者を祀りました。比較的よく知…

「核廃絶」巡る深い溝を見せつけたG7大使級ボイコット~被爆国、不戦憲法を持つ国の新聞の記録

広島、長崎への原爆投下から79年の今年、核廃絶を願う世界中の人々と、核兵器を有用とする核保有国やその同盟国の為政側との間には、依然として深い溝があることを痛感させられました。米英など日本を除くG7各国とEUが、8月9日の長崎の平和祈念式典…

“してやられた”感の防衛省「218人処分」~本質は特定秘密保護法と米軍自衛隊の一体化

「防衛省にしてやられた」の感があります。不祥事の大規模処分の発表と報道のことです。 防衛省は7月12日、特定秘密の違法な運用や手当の不正受給、隊内の「不正喫食」、内局幹部のパワハラの4種の不祥事で自衛隊員計218人を処分したことを発表しまし…

改正規正法、否定的評価が8割にも~政治不信の果ての民主主義の危機を危惧

改正政治資金規正法が6月19日に成立した後の週末に実施された世論調査の結果が3件報じられているのを目にしました。いずれも改正規正法に対する評価を尋ねています。各調査の質問は、それぞれ尋ね方は異なっていますが、肯定的な評価か否定的な評価かを…

ニュースサイトへの家宅捜索に新聞労連、日本ペンクラブが抗議、非難の声明~メディアの積極的な取材が必要

鹿児島県警がネット上のニュースサイト「HUNTER(ハンター)」を家宅捜索していたことに対し6月19日、新聞労連が抗議声明を発表しました。日本ペンクラブも非難の声明を出しました。 新聞労連の声明は「情報提供者のメディアへの信頼を守り、正確な…

もう一つの構図が鮮明に、鹿児島県警の“情報漏洩”~見過ごせない不当な家宅捜索

一つ前の記事の続きです。 在職中に知った秘密を漏洩したとして、国家公務員法違反容疑で鹿児島県警元生活安全部長の元警視正が逮捕された事件について、県警が公に説明している「不正な情報漏洩」とは異なるもう一つの構図が鮮明に浮かんでいます。マスメデ…

「主権者の責任」を説く地方紙の社説、論説~中日・東京新聞は「内閣の暴政」を批判

少し時間がたちましたが、5月3日の憲法記念日の紙面に新聞各紙が掲載した社説、論説の記録です。インターネット上の各紙のサイトで読めるものをチェックしました。 安倍晋三政権以降、憲法解釈を閣議決定で変更するなど、重要なことを国会を通さずに内閣が…

改憲の機運は高まっていないし、民意も拙速な改憲を求めていない

ことしの5月3日、憲法記念日の報道の記録です。 例年、いくつかのマスメディアは憲法記念日に合わせて、憲法に絞った世論調査を郵送方式で実施しています。月例の電話調査と比べ、時間をかけてじっくり考えて回答することが可能です。一般論として、その分…

政治への社会の関心とマスメディアの政治報道~衆院3補選「自民全敗」の各紙報道を読み解く

衆院の3件の補欠選挙が4月28日に実施され、いずれも立憲民主党の候補が当選しました。自民党は東京15区、長崎3区では候補を擁立せず、与野党一騎打ちとなった島根1区でも大差が付きました。29日付の東京発行の新聞各紙朝刊もそろって1面トップの…

プロのプロたるゆえん~新人記者の皆さんへ伝えたいこと

新年度を迎えました。今年も新聞社・通信社各社に新しい顔ぶれが加わりました。どんなに社会環境が変わっても、これまで新聞が培ってきた組織ジャーナリズムは、社会にとってなお不可欠です。現役の時間を終えたわたしにとって、若い皆さんは将来への希望で…

信を失った岸田政権が戦闘機の輸出解禁を進める危うさ~民意は依然、賛否拮抗

TBS系列のJNNが3月30~31日に実施した世論調査の結果が報じられています。日本が英伊と共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出を解禁するとの政府方針に対しては、賛成42%、反対40%でした。このブログの以前の記事で書いた通り、3月15日…

沖縄のオスプレイ飛行再開、全国メディアに報道を要請~日本本土の主権者に当事者性

米軍オスプレイの飛行再開をめぐる重要なニュースがありました。以前の記事と合わせてお読みください。重要なことだと思い、別記事にしました。 沖縄県の玉城デニー知事は、米軍普天間飛行場の米海兵隊所属のオスプレイが飛行を再開した翌15日の定例会見で…

焦土を視察する天皇に土下座でわびた民衆~堀田善衛「優情」と伊丹万作「だまされる罪」

第2次世界大戦末期の1945年(昭和20年)3月10日未明、東京の下町地区は米軍B29爆撃機の大編隊の空襲を受け、焦土と化しました。一夜で10万人以上が犠牲になったとされる東京大空襲から、ことしは79年になります。昨年、このブログで、昭和…