ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

表現の自由

特定の記者、媒体の選別と排除が可能な参政党「記者会見」登録制~「沈黙」は「承認」と受け取られる

参政党の「記者会見」が、特定の記者、特定の媒体を事実上、選別し排除できる仕組みになっていることは、このブログで触れてきました。会見への参加問題以前に、記者を選別することなく質問を受ける、という姿勢を欠いているのであれば、「記者会見」と呼べ…

一人の記者、一つの新聞社の問題と捉えると「報道統制の発想」が見えなくなる~参政党「記者会見」の発言封じの何が問題か

臨時国会が8月1日に開会しました。7月の参院選で14人を当選させ、所属国会議員が18人になった参政党は同日午後に「記者会見」を開きました。わたしは動画で視聴しました。 7月22日の会見を排除された神奈川新聞の石橋学記者はこの日は参加。しかし…

備忘:「非国民」発言の参政党・初鹿野議員を神谷代表が「ポンコツ」「イエローカード」(「アエラデジタル」インタビュー記事)

備忘を兼ねて書きとめておきます。 朝日新聞出版が運営するサイト「アエラデジタル」に、参政党の神谷宗幣代表のインタビュー記事が掲載されています。▽「参政党・神谷代表に聞いた『日本人ファースト』の“真意” 『初鹿野さんにはめちゃめちゃ注意しています…

「参政の憲法案 ない、ない、ない /人権の保障 思想の自由 戦争放棄」(東京新聞)~参政党が掲げる「創憲」が「改憲」と異なることの意味

参政党は参院選の公約で憲法について、「護憲」でも「改憲」でもなく、全く新しい憲法を作ることを目指すとして、「創憲」を掲げました。公表している「憲法草案」には、現行の日本国憲法が保障している国民の権利がごっそり抜け落ちていることは、このブロ…

「表現の自由」を欠き「報道統制」を志向する参政党の憲法観~記者排除で「非国民」発言もうやむやなのか

一つ前の記事で以下のようなことを書きました。 参政党は7月22日に開いた「記者会見」から神奈川新聞の石橋学記者を排除しました。その本質は、現行の日本国憲法が保障している「表現の自由」および「報道の自由」の否定です。参政党が公表している憲法観…

「記者排除」の本質は現行憲法の否定~参政党の「記者会見」は記者会見ではない、一方的プロパガンダの場

国会議員の地位は日本国憲法で規定され、保障されています。だから国会議員であれば、憲法を順守するのは当然のことなのですが、それでも憲法は国会議員を含めた公務員に対し、憲法を尊重し擁護する義務を明文で課しています。努力目標ではありません。天皇…

「差別は自分に返ってくる」~手塚治虫さん「アドルフに告ぐ」に感じる「差別」の本質と愚かさ ■追記:基本的人権の戒め

差別は他者との違いを認めず、相手より自分の方が優れていると考えることから始まります。自分と他人には、違いはあって当たり前です。生まれも育ちも、性格も特性も、好きになる相手も、家族の形も人それぞれ。でもその違いを巡ってひとたび差別が起これば…

「表現の自由」が失われた社会を想像してみる~参政党の憲法草案の考察

このブログの一つ前の記事で、参政党の「憲法草案」には「言論の自由」も「表現の自由」もないこと、それなのにTBSの報道への抗議の中では「民主主義の根幹である言論の自由と公正な報道の確保を強く求めてまいります」などと「言論の自由」を強調してい…

“違憲”の参政党が「言論の自由」を強調することの違和感~報道業務は「国営または自国の資本」と「憲法草案」に

このブログの一つ前の記事では、参政党が「新しい憲法を創る」ことを参院選の公約に掲げ、「憲法草案」を公表していることをめぐって、国会議員である神谷宗幣代表、さらには計5人の国会議員を擁する参政党が、現行の日本国憲法に違反している疑いがあるこ…

「国家を監視する新聞」から「国家と一体の新聞」への転換 魚住昭さんの渡辺恒雄・読売新聞主筆の評伝

読売新聞グループ本社の渡辺恒雄・代表取締役主筆の訃報が伝えられました。新聞の発行部数が減少の一途とはいえ、618万部余(2023年7月~12月平均、「読売新聞MEDIA GUIDE2024-2025」より)で日本最大の部数の同紙は、12月20日付の…

百田尚樹・日本保守党代表「子宮摘出」発言の危うさ~「社会構造を変える」発想に潜むもの

日本保守党の百田尚樹代表が、11月8日に配信したユーチューブ上の番組で、同党の有本香事務総長らと少子化対策を話した際、若い女性に子どもを産んでもらうためには社会構造を変えるしかないと主張し、「女性は18歳から大学に行かさない」「25歳を超…

付記:1985年8月12日夜のこと~事件事故を報じる意義、労働組合の役割など

一つ前の記事(「沈まぬ太陽」山崎豊子さんインタビューの紹介~ジャンボ機事故から39年)への付記として書きとめておきます。39年前の日本航空機墜落事故のことです。 1985年8月12日、羽田から大阪・伊丹に向かっていた日本航空123便のボーイ…

「沈まぬ太陽」山崎豊子さんインタビューの紹介~ジャンボ機事故から39年

■追記(2025年8月12日)■ この記事で紹介した井上伸さんのブログはリンク切れになっています。山崎豊子さんのインタビュー記事は、井上さんのnoteに掲載されています。リンクを張った新しい記事をアップロードしましたので、ご参照ください。 news-wo…

防衛省、自衛隊のずさんな発表とマスメディアの当事者性~「大本営発表」の再来を危惧

自衛隊の不祥事の続きです。 自衛隊には捜査権、逮捕権を備えた警察機関があります。警務隊です。海上自衛隊の潜水手当の不正受給事件では、昨年11月に警務隊が4人を逮捕していたのに、防衛大臣には報告が上がっていませんでした。防衛省は「文民統制の観…

“してやられた”感の防衛省「218人処分」~本質は特定秘密保護法と米軍自衛隊の一体化

「防衛省にしてやられた」の感があります。不祥事の大規模処分の発表と報道のことです。 防衛省は7月12日、特定秘密の違法な運用や手当の不正受給、隊内の「不正喫食」、内局幹部のパワハラの4種の不祥事で自衛隊員計218人を処分したことを発表しまし…

改正規正法、否定的評価が8割にも~政治不信の果ての民主主義の危機を危惧

改正政治資金規正法が6月19日に成立した後の週末に実施された世論調査の結果が3件報じられているのを目にしました。いずれも改正規正法に対する評価を尋ねています。各調査の質問は、それぞれ尋ね方は異なっていますが、肯定的な評価か否定的な評価かを…

ニュースサイトへの家宅捜索に新聞労連、日本ペンクラブが抗議、非難の声明~メディアの積極的な取材が必要

鹿児島県警がネット上のニュースサイト「HUNTER(ハンター)」を家宅捜索していたことに対し6月19日、新聞労連が抗議声明を発表しました。日本ペンクラブも非難の声明を出しました。 新聞労連の声明は「情報提供者のメディアへの信頼を守り、正確な…

もう一つの構図が鮮明に、鹿児島県警の“情報漏洩”~見過ごせない不当な家宅捜索

一つ前の記事の続きです。 在職中に知った秘密を漏洩したとして、国家公務員法違反容疑で鹿児島県警元生活安全部長の元警視正が逮捕された事件について、県警が公に説明している「不正な情報漏洩」とは異なるもう一つの構図が鮮明に浮かんでいます。マスメデ…

政治への社会の関心とマスメディアの政治報道~衆院3補選「自民全敗」の各紙報道を読み解く

衆院の3件の補欠選挙が4月28日に実施され、いずれも立憲民主党の候補が当選しました。自民党は東京15区、長崎3区では候補を擁立せず、与野党一騎打ちとなった島根1区でも大差が付きました。29日付の東京発行の新聞各紙朝刊もそろって1面トップの…

「中立」の壁を越えるジャーナリズムへ~MBS「記者たち~多数になびく社会の中で~」(視聴を推奨します)

大阪市に本社を置く民放準キー局のMBS(毎日放送)は毎月1回、日曜深夜の0時50分から自局制作のドキュメンタリー番組「映像‘24」を放送しています。1980年4月に「映像‘80」で始まって以来、40年以上も続いており、質の高さで知られます。…

「自己検証」が問われているのはテレビだけではない~「沈黙」を重ねることへの危惧 追記:TBSが特別委の調査結果公表

旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害と「マスメディアの沈黙」に対して、テレビ朝日が11月12日に1時間の自己検証の番組を放送しました。9月11日にNHKが「クローズアップ現代」で、自局を含めてテレビが報じてこなかった経緯を…

組織の責任を明示した日本テレビの自己検証~マスメディアは等しく「不作為の当事者」

ジャニーズ事務所元社長の性加害と「マスメディアの沈黙」に対して、日本テレビが10月4日午後、ニュース番組「news every.」で、自己検証の結果を公表しました。その内容の約30分の動画がユーチューブの同局のチャンネルにアップされています。遅ればせ…

「不作為の当事者」の自己検証を怠れば、その先に何が来るか~ジャニーズ元社長の性加害とマスメディア

9月13日の岸田改造内閣について、新聞各社の世論調査結果が報じられています。改造は世論にさほど評価されていない、との結果がおおむね共通しているようです。目を引いたのは、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信の4件の調査で、ジャニーズ事務所…

敗戦から78年に感じる節目と危惧~新聞は戦争の教訓の当事者 ※8・15社説・論説の記録

1945年8月の日本の敗戦から78年がたちました。70年、80年、あるいは100年といった切りの良さという意味では、節目ではありません。しかし、時間の比較の軸を少しずらして眺めてみると、日本の現代史の中で極めて大きな節目の時期を過ごしてい…

辺野古新基地への抗議行動に防衛局職員が暴言~市民に向けられる敵意への危惧

沖縄県名護市辺野古の新基地建設への抗議運動を巡って、看過できない出来事が報じられているのが目にとまりました。少し時間が経っていますが、書きとめておきます。 最初に報じたのは6月7日付の琉球新報です。 ◎防衛局職員 市民に暴言/本部塩川 新基地抗…

ガーシー元議員を巡る情報の公益性とボツ原稿の扱い~新聞記者の働き方と著作権 その3

動画投稿サイトで芸能人らを脅迫したとして、警視庁が、暴力行為法違反(常習的脅迫)などの疑いで逮捕状を取り、国際手配していたガーシー(本名・東谷義和)元参院議員が6月4日、成田空港着の航空機で帰国し、警視庁に逮捕状を執行されました。 アラブ首…

「表現の自由」「報道の自由」と「社会の信頼」~新人記者の皆さんへ

今年も新聞社や通信社に新人記者が加わりました。配属先も決まって研修を受け、そろそろ実務に入ろうか、という人もいるのではないでしょうか。わたし自身はこの春で、マスメディアでジャーナリズムの仕事をしてきて40年になりました。現役の時間はとうに…

没になった原稿の公表と著作者人格権~新聞記者の働き方と著作権 その2

前回の記事に続いて、新聞記者、企業内記者と著作権についてです。 朝日新聞社が厳重抗議を表明している元社員が出版した書籍を取り急ぎ、読んでみました。「悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味」(講談社+α新書、伊藤喜之氏著)です。この中に、著者が在職…

新聞記者の働き方と著作権~朝日新聞社の元自社特派員への抗議を契機に考える

朝日新聞社が3月28日、自社サイトに1通の広報文を掲載しました。自社の海外特派員だった元社員が出版した書籍に対して、元社員と出版元に厳重抗議し、相応の対応を求める書面を送付した、との内容です。「本社が著作権を有する原稿や退職者による在職中…

行政文書の「記録」と高市元総務相の「記憶」~放送法の解釈レク「あった可能性高い」と総務省局長

このブログの以前の記事でも触れた放送法の「政治的公平」の解釈を巡る総務省の行政文書について、3月13日の参院予算委員会で、興味深いやり取りがありました。この文書が明らかになって以来、文書作成当時に総務相だった高市早苗氏は文書に記録された解…