ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

戦争と平和

「島耕作」のデマ掲載 作者と講談社が沖縄の人々にも謝罪~無知の過ちは知る、学ぶことで正す

10月17日に発売された講談社のマンガ誌「モーニング」に掲載された弘兼憲史氏の「社外取締役 島耕作」に、米軍普天間飛行場の移転を巡り名護市辺野古の新基地建設工事に抗議する人たちについて、日当を受け取っているアルバイトがたくさんいる、との内容…

堀江貴文氏「住民の危険よりジュゴン」発言の危うさ~「悪意」でなければ「粗雑」 ニューズピックの姿勢に疑問

沖縄への基地の過剰な集中を巡って、また軽視できない出来事が起きました。日本本土のマスメディアではほとんど報道を目にしません。そのことを含めて、日本本土の側の沖縄に対する構造的とも呼ぶほかない無知と無理解を感じます。経緯を書きとめておきます…

トランプ再登場と民主主義が内包する自己矛盾~歴史に学び、戦争の愚を繰り返さない

米大統領選は日本時間の11月6日午後、共和党のトランプ元大統領が民主党のハリス副大統領を破って当選を決めました。事前の米メディアの世論調査結果を元に、日本メディアも大接戦と報じていましたが、開票の序盤から終始、トランプリードの状況が続き、…

「島耕作」のデマ拡散は沖縄への理不尽の一環~「お詫び」は読者だけでいいのか 【追記】沖縄の人々にも謝罪

沖縄への基地の過剰な集中を巡って、軽視できない出来事が起きました。10月17日に発売された講談社のマンガ誌「モーニング」46号に掲載された弘兼憲史氏の「社外取締役 島耕作」に、米軍普天間飛行場の移転を巡り名護市辺野古の新基地建設工事に抗議す…

「被爆者が立ち上がるまでに11年もの月日」(中国新聞社説)~被団協にノーベル平和賞 地方紙の社説、論説

ことし2024年のノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に贈られることに対して、地方紙も社説、論説で取り上げています。インターネット上の各紙のサイトで確認できた範囲で見てみました。 被爆地広島の地元紙、中国新聞は10月12日付…

「被団協にノーベル平和賞」在京紙の報道の記録~日本の役割強調の一方で、産経は「核抑止」訴え

ことし2024年のノーベル平和賞は、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受賞することが10月11日、ノルウェーのノーベル賞委員会から発表されました。東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京の各紙)は12日付朝刊で、いずれも…

苦痛と絶望の中で、沈黙のまま死んでいったあまたの被爆者を忘れない~日本被団協のノーベル平和賞受賞決定に思う

ことし2024年のノーベル平和賞は、日本全国の被爆者らでつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受賞することが10月11日、ノルウェーのノーベル賞委員会から発表されました。授賞理由は「核兵器のない世界の実現に尽力し、核兵器が二度と使わ…

石破新政権に厳しい新聞各紙~地位協定は沖縄の過重負担是正、解消の試金石

石破茂・自民党総裁が10月1日、国会で首相に指名され、新内閣が発足しました。首相就任前から10月27日の衆院選投開票を表明したことに対し、自民党総裁選では、衆院解散は国会の論戦を経て有権者に選択の判断材料を示してから、と主張していたことと…

石破新総裁「日米地位協定見直し」必ず実現を~沖縄の自己決定権は最優先の課題

自民党の新総裁に9月27日、石破茂・元幹事長が選出されました。候補9人が乱立する中で1回目の投票でトップになったのは高市早苗・経済安全保障担当相でした。閣僚でありながら靖国神社に参拝し、首相就任後の参拝も否定しないなど、ある意味、右派色の…

不祥事続きの海自にさらに負荷の悪循環~護衛艦の台湾海峡通過への危惧

海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が9月25日、台湾海峡を通過したと報じられました。最初に報じたのは読売新聞のようです。※「海自護衛艦『さざなみ』が台湾海峡を初通過、岸田首相が派遣指示…軍事的威圧強める中国をけん制」=9月26日05:00 https:…

軍拡の中で自衛隊に何が起きているのか~中国領海航行の護衛艦、正確な位置を艦長把握せず

海上自衛隊を巡って共同通信が配信したニュースを見て驚きました。 ことし7月4日、中国東部浙江省の沖合を航行していた護衛艦「すずつき」が一時、中国の領海内に入ったという出来事がありました。当時、中国軍の訓練の監視任務に当たっていました。中国側…

石破元幹事長「日米地位協定見直す」発言のニュースバリュー ※追記:本土メディアに役割と責任

自民党総裁選で9月17日、「おやっ」と思うニュースがありました。那覇市で開かれた候補者9人の演説会で、石破茂元幹事長が、日米地位協定の見直しに着手することを表明しました。 共同通信の速報がネット上に流れたのは午後4時半ごろ。見出しは「日米地…

自由主義者の戦没学生、上原良司の「所感」のこと

大学の非常勤講師として、文章の書き方(文書作法)を大学生に教えるようになって3年です。この夏はその延長というか、課外活動というか、学生有志の勉強会でも指導しました。学生の1人は終戦の日に靖国神社の資料館「遊就館」を訪ねた経験を作文に書きま…

「賊軍」が置かれた苛烈な立場を今に伝える「碧血碑」~靖国「差別の源流」が可視化された函館の史跡

この夏の休暇は北海道・函館を訪ねました。幕末から明治初頭にかけての内戦の戊辰戦争で、最後の戦いがあった土地です。戊辰戦争では、旧幕府軍の戦死者は遺体の収容や埋葬が禁じられるなど、死んでなお「賊軍」として苛烈な差別を受けた事例がありました。…

「賊軍」戦死者の扱いを伝える清水「壮士墓」~自衛隊員の靖国集団参拝に懸念 ※追記 防衛相の参拝が招く深刻な事態

8月15日は終戦の日です。この日の象徴としてマスメディアでも例年報道される場所の一つに、東京・九段の靖国神社があります。 源流は1869年に創建された東京招魂社です。幕末の倒幕派の志士、戊辰戦争での新政府軍の戦死者を祀りました。比較的よく知…

「核廃絶」巡る深い溝を見せつけたG7大使級ボイコット~被爆国、不戦憲法を持つ国の新聞の記録

広島、長崎への原爆投下から79年の今年、核廃絶を願う世界中の人々と、核兵器を有用とする核保有国やその同盟国の為政側との間には、依然として深い溝があることを痛感させられました。米英など日本を除くG7各国とEUが、8月9日の長崎の平和祈念式典…

防衛省、自衛隊のずさんな発表とマスメディアの当事者性~「大本営発表」の再来を危惧

自衛隊の不祥事の続きです。 自衛隊には捜査権、逮捕権を備えた警察機関があります。警務隊です。海上自衛隊の潜水手当の不正受給事件では、昨年11月に警務隊が4人を逮捕していたのに、防衛大臣には報告が上がっていませんでした。防衛省は「文民統制の観…

“してやられた”感の防衛省「218人処分」~本質は特定秘密保護法と米軍自衛隊の一体化

「防衛省にしてやられた」の感があります。不祥事の大規模処分の発表と報道のことです。 防衛省は7月12日、特定秘密の違法な運用や手当の不正受給、隊内の「不正喫食」、内局幹部のパワハラの4種の不祥事で自衛隊員計218人を処分したことを発表しまし…

米兵の性犯罪を本土メディアが報じる意味~沖縄の基地被害を不可視化させない

6月23日は沖縄の「慰霊の日」でした。79年前のこの日、第2次世界大戦末期の沖縄戦で、日本軍の守備隊司令官が自決し、組織的戦闘が終結したとされます。沖縄戦の住民の死者は約9万4千人、沖縄出身の軍人軍属2万8千人余りを含めて、県民の約4分の…

改憲の機運は高まっていないし、民意も拙速な改憲を求めていない

ことしの5月3日、憲法記念日の報道の記録です。 例年、いくつかのマスメディアは憲法記念日に合わせて、憲法に絞った世論調査を郵送方式で実施しています。月例の電話調査と比べ、時間をかけてじっくり考えて回答することが可能です。一般論として、その分…

信を失った岸田政権が戦闘機の輸出解禁を進める危うさ~民意は依然、賛否拮抗

TBS系列のJNNが3月30~31日に実施した世論調査の結果が報じられています。日本が英伊と共同開発する次期戦闘機の第三国への輸出を解禁するとの政府方針に対しては、賛成42%、反対40%でした。このブログの以前の記事で書いた通り、3月15日…

沖縄のオスプレイ飛行再開、全国メディアに報道を要請~日本本土の主権者に当事者性

米軍オスプレイの飛行再開をめぐる重要なニュースがありました。以前の記事と合わせてお読みください。重要なことだと思い、別記事にしました。 沖縄県の玉城デニー知事は、米軍普天間飛行場の米海兵隊所属のオスプレイが飛行を再開した翌15日の定例会見で…

オスプレイ飛行再開、防衛相発言のグロテスクさ~「日米同盟の犠牲拒否する」(琉球新報)、「住民無視の暴走行為だ」(沖縄タイムス)

鹿児島県屋久島沖で昨年11月29日、米空軍横田基地(東京)所属の輸送機CV22オスプレイが墜落し、乗員8人が死亡しました。その後も沖縄の米海兵隊普天間飛行場所属のMV22オスプレイはしばらくの間、飛び続けていました。米軍が海兵隊、海軍の所…

「敵兵でも人間」(吉川英治) 異国の地で生を閉じたB29搭乗員の若者たちを悼む

第2次世界大戦末期の1945年3月10日未明、東京の下町地区は米軍B29爆撃機の大編隊の空襲を受け、焼夷弾による大火災の中、一夜で10万人以上が犠牲になりました。この「東京大空襲」を皮切りに、B29による各地の都市空襲が続き、8月6日には…

焦土を視察する天皇に土下座でわびた民衆~堀田善衛「優情」と伊丹万作「だまされる罪」

第2次世界大戦末期の1945年(昭和20年)3月10日未明、東京の下町地区は米軍B29爆撃機の大編隊の空襲を受け、焦土と化しました。一夜で10万人以上が犠牲になったとされる東京大空襲から、ことしは79年になります。昨年、このブログで、昭和…

私家版ガイド:二・二六事件の関係地

1936年のクーデター未遂事件「二・二六事件」からことしは88年。別の記事に書きましたが、一部の若い軍人が部下を私兵化して起こした独善的な反乱であるこの事件には、今日的な教訓も少なくないと思います。 非常勤講師を務めた大学の授業では履修生た…

二・二六事件から88年、教訓の今日的な意味~自衛官の靖国神社集団参拝に危惧

88年前の1936年(昭和11年)2月26日、陸軍の青年将校らによる「二・二六事件」が起きました。クーデターを企図して約1500人の下士官、兵を率いて決起。高橋是清蔵相、斎藤実内大臣、陸軍の渡辺錠太郎・教育総監らを殺害し、東京・永田町や霞…

辺野古の工事強行 本質は「地域の自己決定権」~問題意識共有する地方紙の社説、論説

沖縄の米軍普天間飛行場の移設計画をめぐり、米映画監督のオリバー・ストーン氏らが辺野古の新基地建設に反対し、建設の中止を求める声明を1月6日に発表したとのニュースが目にとまりました。琉球新報の報道によると、声明には「沖縄の自己決定権、民主主…

「法治をゆがめたのは政府と司法」(琉球新報)~辺野古代執行、沖縄の地元紙の社説

米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、軟弱地盤の改良工事の設計変更の承認の代執行を岸田文雄政権が強行したことに対し、沖縄の地元紙の琉球新報は12月26日付から29日付まで4日連続で社説で取り上げ、「歴史に刻まれる愚行だ」(29日付)と激しい…

辺野古移設で代執行「苦難の歴史に一層の苦難」(玉城沖縄県知事)~対話拒絶、「普天間の危険性除去」置き去り

暗澹たる気持ちの年の瀬です。 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、斉藤鉄夫国土交通相は12月28日、辺野古沖の埋め立て工事の設計変更を沖縄県に代わって承認する代執行を行いました。これに先立つ代執行訴訟の12月20日の判決では、福岡高裁那覇支…