ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

戦争と平和

沖縄のオスプレイ飛行再開、全国メディアに報道を要請~日本本土の主権者に当事者性

米軍オスプレイの飛行再開をめぐる重要なニュースがありました。以前の記事と合わせてお読みください。重要なことだと思い、別記事にしました。 沖縄県の玉城デニー知事は、米軍普天間飛行場の米海兵隊所属のオスプレイが飛行を再開した翌15日の定例会見で…

オスプレイ飛行再開、防衛相発言のグロテスクさ~「日米同盟の犠牲拒否する」(琉球新報)、「住民無視の暴走行為だ」(沖縄タイムス)

鹿児島県屋久島沖で昨年11月29日、米空軍横田基地(東京)所属の輸送機CV22オスプレイが墜落し、乗員8人が死亡しました。その後も沖縄の米海兵隊普天間飛行場所属のMV22オスプレイはしばらくの間、飛び続けていました。米軍が海兵隊、海軍の所…

「敵兵でも人間」(吉川英治) 異国の地で生を閉じたB29搭乗員の若者たちを悼む

第2次世界大戦末期の1945年3月10日未明、東京の下町地区は米軍B29爆撃機の大編隊の空襲を受け、焼夷弾による大火災の中、一夜で10万人以上が犠牲になりました。この「東京大空襲」を皮切りに、B29による各地の都市空襲が続き、8月6日には…

焦土を視察する天皇に土下座でわびた民衆~堀田善衛「優情」と伊丹万作「だまされる罪」

第2次世界大戦末期の1945年(昭和20年)3月10日未明、東京の下町地区は米軍B29爆撃機の大編隊の空襲を受け、焦土と化しました。一夜で10万人以上が犠牲になったとされる東京大空襲から、ことしは79年になります。昨年、このブログで、昭和…

私家版ガイド:二・二六事件の関係地

1936年のクーデター未遂事件「二・二六事件」からことしは88年。別の記事に書きましたが、一部の若い軍人が部下を私兵化して起こした独善的な反乱であるこの事件には、今日的な教訓も少なくないと思います。 非常勤講師を務めた大学の授業では履修生た…

二・二六事件から88年、教訓の今日的な意味~自衛官の靖国神社集団参拝に危惧

88年前の1936年(昭和11年)2月26日、陸軍の青年将校らによる「二・二六事件」が起きました。クーデターを企図して約1500人の下士官、兵を率いて決起。高橋是清蔵相、斎藤実内大臣、陸軍の渡辺錠太郎・教育総監らを殺害し、東京・永田町や霞…

辺野古の工事強行 本質は「地域の自己決定権」~問題意識共有する地方紙の社説、論説

沖縄の米軍普天間飛行場の移設計画をめぐり、米映画監督のオリバー・ストーン氏らが辺野古の新基地建設に反対し、建設の中止を求める声明を1月6日に発表したとのニュースが目にとまりました。琉球新報の報道によると、声明には「沖縄の自己決定権、民主主…

「法治をゆがめたのは政府と司法」(琉球新報)~辺野古代執行、沖縄の地元紙の社説

米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、軟弱地盤の改良工事の設計変更の承認の代執行を岸田文雄政権が強行したことに対し、沖縄の地元紙の琉球新報は12月26日付から29日付まで4日連続で社説で取り上げ、「歴史に刻まれる愚行だ」(29日付)と激しい…

辺野古移設で代執行「苦難の歴史に一層の苦難」(玉城沖縄県知事)~対話拒絶、「普天間の危険性除去」置き去り

暗澹たる気持ちの年の瀬です。 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、斉藤鉄夫国土交通相は12月28日、辺野古沖の埋め立て工事の設計変更を沖縄県に代わって承認する代執行を行いました。これに先立つ代執行訴訟の12月20日の判決では、福岡高裁那覇支…

辺野古の代執行 自治の根幹揺るがす~普天間の危険性除去につながらない可能性も危惧、地方紙の社説、論説

沖縄の普天間飛行場移設を巡り、沖縄県の玉城デニー知事は12月25日、辺野古沖の軟弱地盤改良工事の設計変更を承認しないことを表明しました。代執行訴訟の判決で福岡高裁那覇支部は20日、承認するよう命じ、期限をこの日に指定していました。斉藤鉄夫…

「相互理解に向けて対話を重ね、抜本的解決が図られること」こそ結論ではないのか~辺野古設計変更、信を失った政権の下で代執行へ ※追記・地方自治法の規定

地域の住民の総意と言いうる民意を「公益」と認めず、国策の強行にお墨付きを与える司法判断が示されました。沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、軟弱地盤改良工事の設計変更を玉城デニー沖縄県知事が承認しないことを不服として国が争い、代執行に…

軍事最優先の下で人命は軽視される~オスプレイ墜落と82年前の日本の戦争の底流に共通すること

昨年の春から2年間の予定で、東京近郊の大学で「文章作法」の講座の非常勤講師を務めています。いい文章を書くには、日ごろから社会とのかかわりを意識しておくことが大事だとアドバイスしており、その一助として授業では毎回、時々のニュースを1件取り上…

飛行停止、日本政府は明確に要求したのか~オスプレイ墜落から1週間余、ようやく米軍が決定  ※追記 “あいまい要請”官房長官も

一つ前の記事の続きです。米軍は12月6日、輸送機V22オスプレイ全機の飛行を停止することを発表しました。日本では翌7日午前中に報じられました。鹿児島県・屋久島沖に11月29日、東京・横田基地所属の米空軍CV22が墜落してから1週間以上も経…

危険は沖縄も東京も変わらない~オスプレイ墜落、焦点は配備撤回と日本の主権

開発段階からトラブル続きで安全性に疑念がある軍用機が、運用段階に入っても各地で墜落事故を起こし、とうとう日本国内でも墜落して死者が出た。日本中いつ、どこで市街地に墜落するか分からない。そんな事態ではないのか―。 11月29日午後、鹿児島県・…

「日本本土の国民に伝えたい」(琉球新報) 安全保障の負担は日本全体の問題~辺野古埋め立て・代執行と本土メディアの報道

米軍普天間飛行場の辺野古移設計画をめぐって先週来、重要な動きが続いています。 埋め立て予定地にマヨネーズ状とも指摘される軟弱地盤があるために、防衛省は当初の設計を変更せざるをえなくなりました。その変更の申請を沖縄県の玉城デニー知事が承認しな…

続・沖縄県知事はなぜ国連で訴えざるを得ないのか~「ゆがみ際立つ政府の反論」(信濃毎日)「日本の知事の資格疑う」(産経)

一つ前の記事の続きです。 沖縄県の玉城デニー知事が、国連欧州本部で開かれた人権理事会に出席し、基地負担の現状などを訴えたことに対し、日本本土の新聞では信濃毎日新聞と産経新聞が社説で取り上げているのが目に止まりました。 信濃毎日新聞の社説は9…

沖縄県知事はなぜ国連で訴えざるを得ないのか

沖縄県の玉城デニー知事が9月18日(日本時間19日未明)、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人権理事会に出席し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設への反対などを訴えました。人権理事会で都道府県知事として初めて演説したのは同じ沖縄県…

敗戦から78年に感じる節目と危惧~新聞は戦争の教訓の当事者 ※8・15社説・論説の記録

1945年8月の日本の敗戦から78年がたちました。70年、80年、あるいは100年といった切りの良さという意味では、節目ではありません。しかし、時間の比較の軸を少しずらして眺めてみると、日本の現代史の中で極めて大きな節目の時期を過ごしてい…

軍需工場やインフラへのすさまじい攻撃~旧日立航空機変電所とJR高尾駅の銃撃痕

78年前の1945年8月、アジア全域でおびただしい犠牲を出した果てに、日本の敗戦で第二次世界大戦は終結しました。戦争の末期は日本国内で生活の場が戦場と化しました。米軍のB29爆撃機による主要都市への無差別爆撃、沖縄の地上戦、広島と長崎への…

「核抑止」を否定する新聞、肯定する新聞~G7後の広島原爆の日 「被爆国の新聞」の報道の記録

1945年8月6日に広島に原爆が投下されてから78年。広島市のことしの平和記念式典では、「核抑止論」が焦点になりました。松井一実市長は「平和宣言」で、核抑止論が破綻していることを直視するよう各国の指導者に対し求め、為政者に核抑止論から脱却…

この夏 「現場」のススメ~関東大震災100年、敗戦から78年、 私家版 史跡ガイド

東京近郊の大学で昨年春から週に1回、非常勤講師として「文章作法」の講座を受け持っています。本年度前期の授業が先日、無事に終了しました。履修生たちの文章力はそれぞれに上がっており、講師としてうれしい限りです。 前期は作文の指導が中心でした。自…

夏に処刑された二・二六事件の反乱将校たち~渋谷のビル街にたたずむ慰霊像

87年前の1936(昭和11)年2月26日、陸軍の若手将校らがクーデターを企図して約1500人の下士官、兵を率いて決起し、高橋是清蔵相、斎藤実内大臣、陸軍の渡辺錠太郎・教育総監らを殺害し、永田町や霞ヶ関などの一帯を占拠しました。しかし4日…

海員組合の前組合長 6億円未申告の際立つ悪質さ~外国人船員のための基金流用、フィリピンでリベート

日本では労働組合の形態は、企業別に組織され、その企業の従業員をメンバーとしているのが一般的です。産業ごとに組織される「産業別労働組合」(産別)も、そうした企業内労組(単組)の連合体の形態が主流です。連合(日本労働組合総連合会)は、そうした…

「政府の意図と県民の思いに大きな開き」(琉球新報社説)~沖縄戦から78年、軍拡の中で迎えた「慰霊の日」

第2次世界大戦末期の1945年6月23日、日米両軍の間で激しい地上戦がたたかわれた沖縄戦は、日本軍守備隊の司令官、参謀長の自死により、日本軍の組織的な戦闘が終結したとされます。沖縄県はこの日を「慰霊の日」と定めています。沖縄戦から78年の…

岸田軍拡と自衛隊組織の本質を深く広く洞察する地方紙~候補生が上官3人殺傷 各紙の社説

自衛官候補生が訓練中、小銃で上官を撃ち3人が殺傷された事件は、原因究明は当然のこととして、自衛隊という軍事組織の疲弊を疑い、これ以上の負荷を避けることが必要だと感じていることを、一つ前の記事に書きました。上官に銃口を向けることは、指示命令…

辺野古新基地への抗議行動に防衛局職員が暴言~市民に向けられる敵意への危惧

沖縄県名護市辺野古の新基地建設への抗議運動を巡って、看過できない出来事が報じられているのが目にとまりました。少し時間が経っていますが、書きとめておきます。 最初に報じたのは6月7日付の琉球新報です。 ◎防衛局職員 市民に暴言/本部塩川 新基地抗…

「殺傷武器の供与」「負傷兵受け入れ」「軍拡」へ疑問投げ掛ける地方紙

このブログの以前の記事でも触れた通り、5月に広島市で行われたG7サミットは、ロシアの侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領が広島を訪問し対面で討議に参加したこともあって、準軍事同盟の色彩が強まったと感じています。議長国の日本が、G…

米軍基地、NATOへの接近、負傷兵受け入れ、原爆投下の責任と謝罪~広島G7サミット報道の追記

非常勤講師を務めている大学の授業で先日、広島市で開催されたG7サミットを巡る新聞各紙の報道について話をしました。一貫して「核廃絶」を焦点に報じた地元紙の中国新聞から、ウクライナ支援の強化などを通じてG7の結束の固さを証明していくべきだとして…

沖縄復帰「51」年と「50」年の報道量の落差は何を意味するか~変わらない「『基地なき島』遠く」の見出し

ことし5月15日で沖縄の施政権返還、日本復帰から51年でした。15日当日は新聞休刊日のため、沖縄の地元紙2紙(沖縄タイムス、琉球新報)のほかには、新聞発行がありませんでした。休刊日明けの16日付朝刊で、東京発行の各紙が「復帰51年」をどの…

「抑止論肯定は許されない」「『広島ビジョン』と言えるのか」(中国新聞)~被爆地のサミット開催の意義を問う地元紙

G7広島サミットをめぐる日本メディアの報道についての続きです。 5月19日に発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」(「広島ビジョン」)が、米英仏3カ国が保有する核兵器について、事実上、抑止力として有用であることを認め正当化したこと…