海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が9月25日、台湾海峡を通過したと報じられました。最初に報じたのは読売新聞のようです。
※「海自護衛艦『さざなみ』が台湾海峡を初通過、岸田首相が派遣指示…軍事的威圧強める中国をけん制」=9月26日05:00
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20240925-OYT1T50170/
海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が25日、自衛隊発足以来、初めて台湾海峡を通過したことがわかった。中国は8月の情報収集機による日本領空侵犯などで軍事的な威圧を強めており、それらの対抗措置として中国をけん制する狙いがある。岸田首相が政府内で検討を進めた結果、護衛艦の派遣を指示した。
読売新聞は解説記事も掲載しています。見出しは「日本の安全保障環境に危機感」。前半は以下の通りです。
海上自衛隊の護衛艦が台湾海峡の通過に初めて踏み切ったのは、日本の主権を脅かす中国軍の活動に対し、 毅然とした態度を示すためだ。
中国の 習近平国家主席は2027年までに台湾侵攻の準備を整えるように命じているとされ、中国軍の最近の活発な動きはその一環とみる向きもある。
日本政府は軍事的緊張を高めるべきではないとして、海自艦艇の台湾海峡通過に慎重な立場を取ってきたが、岸田首相は日本の安全保障環境に危機感を強め、そうした姿勢では平和を守れないと決断したようだ。
日本政府の軍拡方針などを読売新聞は社論として支持しています。中国に対して、軍事面で強硬姿勢に転換したことについても、同紙としては当然と言えば当然なのでしょうが、好意的なトーンです。
わたしは危うさを感じます。中国との軍事的緊張を高めてしまって、今の自衛隊がその緊張に適切に対応できるのか疑問です。読売新聞は触れていませんが、「護衛艦」と「中国」という二つのキーワードを巡っては、7月に護衛艦「すずつき」が中国領海に入り込む出来事がありました。艦長が正確な位置を認識していなかったこと、事実上更迭されたことが、共同通信の報道で明らかになったばかりです。このニュースのことは、このブログの一つ前の記事で紹介しました。
特定秘密の違法な運用や、訓練中のヘリ同士の衝突事故など、海上自衛隊ではさまざまなレベルで不祥事が頻発しています。任務や運用が能力の限界を超え、組織が疲弊していることを疑った方がいい状況です。「すずつき」の件は、適材適所の人員配置がままならなくなっていることを示している可能性があります。
護衛艦の台湾海峡通過に中国は反発を強めており、対抗措置に出て来ることは容易に予想されます。その対応のために、海上自衛隊にますます負荷がかかる悪循環に陥ります。緊張が高まる一方ということになれば、偶発的なアクシデントを引き起こしてしまう危険も高まります。そんな状況では、組織の立て直しもままなりません。精神力で乗り切れ、とでも言うのでしょうか。
岸田文雄首相は裏金問題では何らリーダーシップを示すこともなく、優柔不断さだけが目立ちました。それなのに、あと1週間もすれば首相を退任するというこのタイミングで、何をいきり立って、護衛艦の台湾海峡通過を命じたのでしょうか。政治の都合で、自衛隊をいいように振り回しているようにも思えます。
読売以外の新聞各紙がどのようなスタンスを示すのか、注視したいと思います。ナショナリズムを揺さぶってしまう問題で、メディアが向く方向が一つにまとまってしまうのは危ういです。歴史の教訓です。

[写真]護衛艦「さざなみ」(出典:海上自衛隊HP)