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敗戦81年、歴史の教訓をどう生かすのか~元日付、東京発行新聞各紙の記録

 今年も元日付の東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)を手元に買い揃えました。例年、この日の紙面の1面トップからは、その新聞の個性を感じ取ることができます。
 各紙を見比べてまず目を引いたのは毎日新聞です。「ロッキード5億円『配布先』入手」の大きな見出し。1976年に東京地検特捜部が田中角栄元首相を逮捕した「ロッキード事件」をめぐる新事実です。ロッキード社の旅客機売り込みに絡み、大手商社丸紅から田中元首相側に渡ったとされる5億円について、74年の参院選の候補26人に2000万円ずつ渡っていたと、元首相の元秘書官が供述していたとの内容。検察当局が公判に提出せず「門外不出」としてきたその一覧表を、毎日新聞は入手したとのことです。
 田中元首相は起訴された後も「闇将軍」として政界に君臨。今日に至る自民党の「政治とカネ」の源流にいました。5億円もの資金がどう使われていたのかは、今日の政治を考える上でも意味があります。記者が情報源、つまり「人」に深くアクセスして行かなければ出てこない、新聞らしい骨太の特ダネだと感じました。
 朝日新聞と日経新聞はともにAIをめぐる連載企画が1面トップです。AIは2026年も大きなニュースになることは間違いありません。わたしたちの社会を、世界をAIがどう変えて行くのか。両紙の切り口は異なりますが、新しい年の始まりに、これからの1年を展望する視点の企画記事です。

 読売新聞は1面トップに「中国、台湾上陸訓練か」の大きな見出し。高市早苗首相の台湾有事発言に中国が激しく反発し、年末には台湾周辺の海域で軍事演習を実施したとも伝えられました。そのさなかのこの見出しから、台湾への直接的な軍事行動、台湾有事が近づいている、との印象を受ける人も少なくないのではないかと感じます。
 読売新聞は昨2025年の元日付紙面でも、1面トップに中国の軍事的な動向を据えていました。 

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 読売新聞とある意味、呼応しているように感じたのは産経新聞です。1面の2番手に社説(「主張」)の特別編として、「『台湾有事の前年』にしないために」との見出しで、論説委員長の署名の論説記事を掲載しました。台湾有事は日本の有事、日米同盟の有事であり、その有事を抑止する努力が必要との内容です。「抑止」とは、言葉を換えれば、情報収集能力を含めて日本の軍事的な能力を増強し、中国に対して台湾への武力行使を思いとどまらせることだと受け止めました。目を引くのは結びの段落です。

 今月下旬に日本からパンダがいなくなるのは象徴的である。ソ連の脅威下ならいざ知らず、その後の惰性の日中友好は終わるということだ。あらゆる分野で対中関係の仕組みの大幅な見直しが求められる。脅威を見据え、平和と安全を守る方策を講じる年にしたい。

 「惰性の」との条件付きながら「日中友好は終わる」とまで言い切ってしまうことに驚きました。

 産経新聞の1面トップは外国人をめぐる自治体アンケートでした。
 東京新聞は東京のマンション転売を巡る連載企画が1面トップ。初回は中国人による転売の動きを追った内容です。

 「中国」や「外国人」は今年もマスメディアの報道でも頻繫に取り上げられるのだろうと思います。排外主義的な風潮や、広い視野を欠いたナショナリズムをマスメディアがあおるようなことになってはならないと思います。
 特に、中国に対して「敵」として攻撃的な姿勢になる風潮が社会で目に付くことに危うさを感じます。「抑止力」を大義名分に中国に対抗して軍拡を進めるとしても、日本の食料の自給率と中国との経済的な結びつきの深さを考えれば、軍事力で国を守れるとの考えが現実的かどうかは疑問です。そのことは、石油の輸入を頼っていた米国を相手に開戦し、やがて主要都市が焦土と化し、軍事力も壊滅して敗北した教訓をどう受け止めるのか、ということでもあると思います。
 そもそも対米戦に先立って、中国との戦争がありました。そうした戦争をめぐる歴史の時間軸を長く、視野を広くして、どんな教訓を見出すのか、その教訓をどう生かすのかを、敗戦から81年の今年も考えていきたいと思います。

 以下に各紙の1面に掲載された記事の見出しを書きとめておきます。「1」はトップの記事、以下は扱いの大きさの順です。

【朝日新聞】
1「あなたは人間ですか/AIではない証明 虹彩を見極める『目玉』」AIの時代 何を託すのか
2「おとう 見とってね/能登半島地震2年」

【毎日新聞】
1「ロッキード5億円『配布先』入手/74年参院選候補26人/田中元首相の元秘書官作成/事件発覚50年/派閥横断 2000万円ずつ」
2「能登地震きょう2年 死者698人」

【読売新聞】
1「中国、台湾上陸訓練か/桟橋搭載の船団 複数展開/衛星画像分析/民間大型貨物船も参加」
2「郵便集配500拠点 統廃合/日本郵政検討 都市部は再開発」
3「能登地震2年 復興半ば」

【日経新聞】
1「頂を創れ/分断・格差 突破託す」α20億人の未来①16歳以下の世代 AIネーティブ
2「AIがシステム開発/NTTデータ IT人材不足を解消」

【産経新聞】
1「外国人『地域に影響』70%/全1741市区町村長アンケート 存在不可欠 54%」日本を守れるか/「北の大地 出現した『自治区』/摩擦の現場」
2「『台湾有事の前年』にしないために」榊原智・論説委員長 年のはじめに 主張 特別編
3「地震から2年 能登を駆ける」

【東京新聞】
1「『物件当たった』即売り出し/中国SNSで億ション広告」転売のリアル① 東京変貌
2「能登半島地震 きょう2年」/「43都道府県が耐震支援拡充」