ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

職業としての記者

続・「沈まぬ太陽」山崎豊子さんインタビューの紹介~ジャンボ機事故から40年

1985年8月12日、東京・羽田空港から大阪・伊丹空港に向かっていた日本航空123便ジャンボ機が群馬県の山中に墜落し、乗客乗員520人が犠牲になりました。あの事故からことしで40年になります。マスメディアでも、例年にも増して関連の報道が目…

特定の記者、媒体の選別と排除が可能な参政党「記者会見」登録制~「沈黙」は「承認」と受け取られる

参政党の「記者会見」が、特定の記者、特定の媒体を事実上、選別し排除できる仕組みになっていることは、このブログで触れてきました。会見への参加問題以前に、記者を選別することなく質問を受ける、という姿勢を欠いているのであれば、「記者会見」と呼べ…

原爆投下80年の夏に考える「差別」~教訓を継承し人間の「弱さ」を乗り越える ※追記:「地球市民」の視点

ことしは広島に原爆が投下されて80年。8月6日朝、広島市の平和記念式典の様子をテレビで見ました。投下時刻の8時15分、鐘の音とともにわたしも黙とう。続いて松井一実市長の「平和宣言」、小学生2人の「平和への誓い」、石破茂首相や湯崎英彦・広島…

「戦後80年の夏のメッセージ」若い世代の皆さんへ~歴史の教訓を学び、生かすのは今を生きる者の務め

昨年に続き、今年も4月から7月まで成城大学で非常勤講師を務めました。担当したのは文芸学部マスコミ学科の「マスコミ特殊講義」。主眼は文章の書き方、「文章作法」です。通年ではなく前期のみですので、実質的には3カ月間の指導でしたが、昨年同様、文…

一人の記者、一つの新聞社の問題と捉えると「報道統制の発想」が見えなくなる~参政党「記者会見」の発言封じの何が問題か

臨時国会が8月1日に開会しました。7月の参院選で14人を当選させ、所属国会議員が18人になった参政党は同日午後に「記者会見」を開きました。わたしは動画で視聴しました。 7月22日の会見を排除された神奈川新聞の石橋学記者はこの日は参加。しかし…

「表現の自由」を欠き「報道統制」を志向する参政党の憲法観~記者排除で「非国民」発言もうやむやなのか

一つ前の記事で以下のようなことを書きました。 参政党は7月22日に開いた「記者会見」から神奈川新聞の石橋学記者を排除しました。その本質は、現行の日本国憲法が保障している「表現の自由」および「報道の自由」の否定です。参政党が公表している憲法観…

「記者排除」の本質は現行憲法の否定~参政党の「記者会見」は記者会見ではない、一方的プロパガンダの場

国会議員の地位は日本国憲法で規定され、保障されています。だから国会議員であれば、憲法を順守するのは当然のことなのですが、それでも憲法は国会議員を含めた公務員に対し、憲法を尊重し擁護する義務を明文で課しています。努力目標ではありません。天皇…

「表現の自由」が失われた社会を想像してみる~参政党の憲法草案の考察

このブログの一つ前の記事で、参政党の「憲法草案」には「言論の自由」も「表現の自由」もないこと、それなのにTBSの報道への抗議の中では「民主主義の根幹である言論の自由と公正な報道の確保を強く求めてまいります」などと「言論の自由」を強調してい…

訃報の異例の扱いを説明した東京新聞「ぎろんの森」~「かつてのようなマス」はもうない

一つ前の記事(「戦後史のアイコン『長嶋茂雄』~訃報を伝える視点と在京紙の報道の記録」)の続きです。 元プロ野球選手、元監督の長嶋茂雄さんの訃報を、東京発行の新聞各紙が大きく掲載したことを巡って、東京新聞が6月7日付朝刊に掲載した「ぎろんの森…

戦後史のアイコン「長嶋茂雄」~訃報を伝える視点と在京紙の報道の記録

プロ野球の元巨人選手、監督の長嶋茂雄さんが6月3日、89歳で亡くなりました。つつしんで哀悼の意を表します。 立教大から巨人に入団したのは1958年、昭和33年でした。1960年生まれのわたしは福岡県で過ごしていた小学生のころ、プロ野球にはさ…

フジテレビだけの問題なのか~「中居正広・性暴力問題」とマスメディア

フジテレビが設置した第三者委員会が3月31日、「中居正広・性加害問題」を巡る調査報告書を公表しました。当時フジテレビに在籍していたアナウンサーの女性が受けた被害を明確に「性暴力」と表現し、被害は業務の延長線上だったこと、フジテレビによる女…

慎重姿勢が前面に、兵庫県知事選巡る強制捜査の“異例”感~より本質は「2馬力選挙」とデマ

選挙とSNS、あるいは選挙とデマやフェイク、さらには他候補の当選のために出馬した「2馬力選挙」候補の扱いなど、マスメディアの政治報道、選挙報道にいくつもの課題が突き付けられた昨年11月17日の兵庫県知事選を巡って、新たな展開がありました。…

追悼 桂敬一さん~自国が海外でどう見られているかの視点

メディア研究者の桂敬一さんが1月19日、89歳で逝去されました。つつしんで哀悼の意を表します。新聞協会事務局勤務から転じて、東大新聞研究所教授や立命館大教授を務められました。新聞のありようについても、社会で積極的に発言されていました。 わた…

「人権」の教訓が問われるのはフジテレビだけか~10時間超“やり直し”会見の在京紙報道

「中居正広・性加害問題」への対応や「性接待疑惑」を巡って、フジテレビは1月27日の臨時取締役会で、港浩一社長と嘉納修治会長が同日付で辞任することを決定しました。その後、午後4時から行われたやり直しの記者会見は、翌28日午前2時24分に終了…

「沈黙」の教訓化が見えないままの新聞~フジテレビの「性加害問題」対応を巡る報道に感じる危うさ

このブログの以前の記事で触れた「中居正広・性加害問題」と、フジテレビに指摘されている「性接待疑惑」は、その後も展開が続いています。1月23日は「中居引退表明」とフジテレビの第三者委設置・記者会見のやり直しの決定の、二つの大きな動きがありま…

「沈黙」の反省と教訓が組織ジャーナリズムに問われている~フジテレビ「性加害問題」会見の本質を考える

フジテレビの港浩一社長が1月17日、記者会見し、タレント中居正広さんと女性の「トラブル」について、弁護士ら第三者が加わった委員会を設け調査することを明らかにしました。東京発行の新聞各紙も18日付朝刊で、社会面を中心に比較的大きな見出しで報…

寄稿「『フェイク対ファクト』の視点を/問われる旧態依然の選挙報道」(新聞通信調査会「メディア展望」)

昨年の東京都知事選、衆院選、兵庫県知事選ではSNSが注目を集めました。兵庫県知事選では、新聞、テレビが当初劣勢だと報じていた斎藤元彦知事が当選したことで、SNS上に「マスメディアの敗北」との言説が飛び交いました。勝ち負けの問題ではないので…

「戦後80年」「昭和100年」の年明け~デジタル化社会30年と「一方通行」の組織ジャーナリズム

新しい年、2025年になりました。 いろいろな節目に当たる年です。 一つは「戦後80年」。1945年8月の日本の敗戦から80年です。もう少し時間軸をさかのぼれば「昭和100年」です。 子どものころの記憶をたどれば、1968年(昭和43年)は「…

「検証」の体をなさない最高検の冤罪検証~放送レポート 座談会「司法とメディア」

静岡県の一家4人殺害事件で死刑判決を受けながら、再審無罪が確定した袴田巌さんの冤罪事件に対し、最高検と静岡県警が12月26日に捜査や公判の検証結果を公表しました。報道でそれぞれの要旨を目にした限りのことですが、静岡県警の検証結果には、ある種…

「国家を監視する新聞」から「国家と一体の新聞」への転換 魚住昭さんの渡辺恒雄・読売新聞主筆の評伝

読売新聞グループ本社の渡辺恒雄・代表取締役主筆の訃報が伝えられました。新聞の発行部数が減少の一途とはいえ、618万部余(2023年7月~12月平均、「読売新聞MEDIA GUIDE2024-2025」より)で日本最大の部数の同紙は、12月20日付の…

選挙とSNS、「新聞」はどうネット空間に分け入っていくのか~世論調査の記録:国民民主の支持率 野党トップに

先週末に実施された4件の世論調査(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、共同通信)の結果を目にしました。特徴的なのは、政党支持率ではいずれの調査でも国民民主党が立憲民主党を上回り、野党でトップになっていることです。 国民民主党は10月の衆院選では「…

被爆者の過酷な10年を決して忘れない~ノーベル平和賞スピーチに改めて思うこと

ノルウェーのオスロで日本時間の12月10日夜、ノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に授与されました。被団協代表委員の田中熙巳さん(92)の受賞スピーチ全文は、毎日新聞のサイト上で全文を読むことができます。 ▽毎日新聞「『核と人…

追悼・西田敏行さん~池中玄太と通信社、会津も薩長も

俳優の西田敏行さんの訃報が10月17日、報じられました。同日朝、自宅で病死されたとのことです。76歳。慎んで哀悼の意を表します。 長いキャリアで多彩な役を演じた方でした。わたしにとっての代表作は、テレビドラマ「池中玄太80キロ」です。最初に…

苦痛と絶望の中で、沈黙のまま死んでいったあまたの被爆者を忘れない~日本被団協のノーベル平和賞受賞決定に思う

ことし2024年のノーベル平和賞は、日本全国の被爆者らでつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受賞することが10月11日、ノルウェーのノーベル賞委員会から発表されました。授賞理由は「核兵器のない世界の実現に尽力し、核兵器が二度と使わ…

ゼネコン汚職と「無敗の男」~追想:検察取材と記者

少し時間がたってしまいましたが、思うところが多々ある政治家を巡るニュースです。わたし自身が経験してきた「記者」や「組織ジャーナリズム」への考えも含めて、書きとめておきます。 現職の国会議員では2番目の当選回数という衆院選当選15回の中村喜四…

袴田さん再審無罪への控訴を危惧~検察の危うさとマスメディアの当事者性 ※追記:鎌田慧さん「客観報道の罪」

1966年に静岡県清水市(現静岡市)で一家4人が殺害された事件の犯人とされ、強盗殺人罪で死刑が確定していた袴田巌さんに9月26日、静岡地裁が再審無罪の判決を言い渡しました。焦点は、検察が控訴するかどうかにほぼ絞られています。この無罪判決を…

報道の評価

新聞記者の仕事には「抜いた、抜かれた」の競争が付き物と言われてきました。確かに、複数の新聞社、通信社やテレビ局の記者たちは、同じ持ち場、例えば警察なら警察担当の記者の間で日々、取材にしのぎを削っています。他社を出し抜く独自のニュースを書け…

付記:1985年8月12日夜のこと~事件事故を報じる意義、労働組合の役割など

一つ前の記事(「沈まぬ太陽」山崎豊子さんインタビューの紹介~ジャンボ機事故から39年)への付記として書きとめておきます。39年前の日本航空機墜落事故のことです。 1985年8月12日、羽田から大阪・伊丹に向かっていた日本航空123便のボーイ…

「沈まぬ太陽」山崎豊子さんインタビューの紹介~ジャンボ機事故から39年

■追記(2025年8月12日)■ この記事で紹介した井上伸さんのブログはリンク切れになっています。山崎豊子さんのインタビュー記事は、井上さんのnoteに掲載されています。リンクを張った新しい記事をアップロードしましたので、ご参照ください。 news-wo…

“してやられた”感の防衛省「218人処分」~本質は特定秘密保護法と米軍自衛隊の一体化

「防衛省にしてやられた」の感があります。不祥事の大規模処分の発表と報道のことです。 防衛省は7月12日、特定秘密の違法な運用や手当の不正受給、隊内の「不正喫食」、内局幹部のパワハラの4種の不祥事で自衛隊員計218人を処分したことを発表しまし…