ニュース・ワーカー2

組織ジャーナリズムに身を置き40年余

職業としての記者

新幹線 敦賀延伸の「歓喜」と「関西~北陸」から「東京~北陸」へのシフト感

北陸新幹線の金沢~敦賀の延伸区間が3月16日、開業しました。新幹線網に福井県が加わりました。この日はたまたま、所要でJR横浜駅に行く機会がありました。そこかしこで「北陸新幹線」と「福井」をアピール。「新幹線で福井へ行こう!」のモードでした。…

「中立」の壁を越えるジャーナリズムへ~MBS「記者たち~多数になびく社会の中で~」(視聴を推奨します)

大阪市に本社を置く民放準キー局のMBS(毎日放送)は毎月1回、日曜深夜の0時50分から自局制作のドキュメンタリー番組「映像‘24」を放送しています。1980年4月に「映像‘80」で始まって以来、40年以上も続いており、質の高さで知られます。…

正確な情報の共有は「感情の氾濫」を止める~「文章作法」で気付かされた視点

東京近郊の大学で非常勤講師を務めていた「文章作法」の授業が先日、終了しました。2年間の非常勤講師の任期も3月で終了します。 最後の授業で講評した課題は小論文。メディアやコミュニケーションに関心がある学生を対象にした講座ですので、テーマは「ニ…

自身の半生に重ねて振り返る新幹線~続・200系の記憶

一昨年のことになりますが、2022年は、日本で最初の鉄道が1872(明治5)年に新橋~横浜間に開業して150年、1982年に東北・上越新幹線が開業して40年や、山形新幹線30年、秋田新幹線25年などが重ねる年でした。日本の鉄道の歴史の節目…

「最期は本名で」の真意は何だったのか~「狼煙を見よ 東アジア反日武装戦線“狼”部隊」(松下竜一)が描く検事の説得に思うこと

先週1月26日、驚きのニュースに接しました。神奈川県内の病院に入院している男性が、1974年8月の三菱重工爆破事件など、74年から75年にかけて起きたいわゆる「連続企業爆破事件」の一部に関与したとして指名手配されている「桐島聡」を名乗って…

「文章作法」と新聞

東京近郊の大学で非常勤講師を務めている「文章作法」の年明け最初の授業が先日、ありました。「年明け最初」と言っても、次回が最終回。この大学での2年間の任期が間もなく終わります。 授業では、履修生たちに冬休みの宿題として小論文を課していました。…

「安倍チルドレン」池田佳隆議員の逮捕と裏金事件が浮き彫りにするもの~まやかしの上に成り立っていた「安倍一強」

自民党のパーティー券裏金事件の捜査が大きく動きました。松の飾りも取れない1月7日、東京地検特捜部は自民党安倍派に所属していた池田佳隆・衆院議員と政策秘書を政治資金規正法違反の疑いで逮捕しました。2018年から22年の間、派閥からパーティー…

「無言館」館主の「後ろめたさ」への共感と「負い目」の自覚~2024年の年頭に

新年早々の1月1日午後4時過ぎ、石川県・能登地方で震度7の地震があり、大津波警報が発令されました。一夜明けた2日朝の段階で、被害の全容はなお定かではありません。亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表し、被災された方々にお見舞いを申し上げます…

「自己検証」が問われているのはテレビだけではない~「沈黙」を重ねることへの危惧 追記:TBSが特別委の調査結果公表

旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害と「マスメディアの沈黙」に対して、テレビ朝日が11月12日に1時間の自己検証の番組を放送しました。9月11日にNHKが「クローズアップ現代」で、自局を含めてテレビが報じてこなかった経緯を…

ガーシー元議員を巡る情報の公益性とボツ原稿の扱い~新聞記者の働き方と著作権 その3

動画投稿サイトで芸能人らを脅迫したとして、警視庁が、暴力行為法違反(常習的脅迫)などの疑いで逮捕状を取り、国際手配していたガーシー(本名・東谷義和)元参院議員が6月4日、成田空港着の航空機で帰国し、警視庁に逮捕状を執行されました。 アラブ首…

津波で100人が犠牲になった40年前の「日本海中部地震」~新人記者の記憶と災害報道の役割

40年前の1983(昭和58)年5月26日午前11時59分、秋田県沖の日本海を震源とするマグニチュード7.7の地震が発生しました。秋田県と青森県で震度5を観測。直後から日本海岸に津波が押し寄せました。気象庁の記録によると104人が犠牲にな…

「唯一の被爆国のメディア」の報道が問われる~核抑止を正当化したG7「広島ビジョン」

G7サミット(主要7カ国首脳会議)が広島市で5月19日、開幕しました。被爆地での開催であり、核兵器廃絶に向けて具体的な前進が見られるかどうか、人類史的な意義が問われます。19日には広島市を選挙区にしている岸田文雄首相が、各国の首脳を案内する…

後世の歴史家の評価に耐えうる記事を~新人記者の皆さんへ(その5=完)

新聞社や通信社の新人記者の皆さんに伝えたいことを、4回にわたって書いてきました。5回目の今回で、ひとまず区切りとします。 ▽「ニュースは歴史の第一稿」 「ニュースは歴史の第一稿」という言葉があります。 “a first rough draft of history”です。ワ…

日本国憲法を知る~新人記者の皆さんへ(その4)

「新人記者の皆さんに伝えたいこと」の4回目です。 「報道の自由」は憲法21条の「表現の自由」と同じように保障され、「取材の自由」も十分に尊重されるべきであるとの最高裁の判断があることを、最初の記事で書きました。日本国憲法について、もう少し書…

「わが国」や「国益」から距離を保つ~新人記者の皆さんへ(その3)

新人記者の皆さんに読んでほしいと思い、前回と前々回の2回の記事を書きました。「社会の信頼」や「民意を知る」とのテーマは、記者の仕事に就いたばかりの皆さんには、ちょっと大きな、言葉を換えれば、例えば警察回りのような日々のルーチンの仕事からは…

民意を知り、市民の期待に応える~新人記者の皆さんへ(その2)

一つ前の記事の続きです。 通信社の組織ジャーナリズムの上でも、メディア界の労働組合運動の上でも大先輩であった故原寿雄さんからは、さまざまなことを教わりました。そのうちの一つに、絶望するな、悲観するな、ということがありました。わたしが新聞労連…

「表現の自由」「報道の自由」と「社会の信頼」~新人記者の皆さんへ

今年も新聞社や通信社に新人記者が加わりました。配属先も決まって研修を受け、そろそろ実務に入ろうか、という人もいるのではないでしょうか。わたし自身はこの春で、マスメディアでジャーナリズムの仕事をしてきて40年になりました。現役の時間はとうに…

没になった原稿の公表と著作者人格権~新聞記者の働き方と著作権 その2

前回の記事に続いて、新聞記者、企業内記者と著作権についてです。 朝日新聞社が厳重抗議を表明している元社員が出版した書籍を取り急ぎ、読んでみました。「悪党 潜入300日 ドバイ・ガーシー一味」(講談社+α新書、伊藤喜之氏著)です。この中に、著者が在職…

新聞記者の働き方と著作権~朝日新聞社の元自社特派員への抗議を契機に考える

朝日新聞社が3月28日、自社サイトに1通の広報文を掲載しました。自社の海外特派員だった元社員が出版した書籍に対して、元社員と出版元に厳重抗議し、相応の対応を求める書面を送付した、との内容です。「本社が著作権を有する原稿や退職者による在職中…

「ニュース離れ」と組織ジャーナリズムの持続可能性

新しい年、2023年になりました。 昨年、英国のロイタージャーナリズム研究所が公表した「デジタルニュースリポート2022」が、ニュースそのものに触れることを意図的に避けようとする人たちが世界的に増加しているとの分析を示し、メディア関係者の間…