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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

改正規正法、否定的評価が8割にも~政治不信の果ての民主主義の危機を危惧

 改正政治資金規正法が6月19日に成立した後の週末に実施された世論調査の結果が3件報じられているのを目にしました。いずれも改正規正法に対する評価を尋ねています。各調査の質問は、それぞれ尋ね方は異なっていますが、肯定的な評価か否定的な評価かを探っている点では同じです。毎日新聞は、裏金事件の再発防止につながると思うかどうか、読売新聞は一連の「政治とカネ」の問題の解決につながるかどうか、共同通信は「政治とカネ」の問題の解決に効果があるかどうかを聞いています。結果を一覧にまとめてみました。岸田文雄内閣への支持、不支持の割合も組み合わせました。

 改正規正法に対して、世論は極めて厳しい評価です。肯定的な評価はよくても3分の1程度しかなく、毎日新聞と共同通信の調査では否定的な評価がおおむね8割に上っています。このブログの以前の記事で、抜け穴はそのままで「ザル法の改正もザルだった」と言わざるを得ない内容であること、それは意外な結果ではなく、自公政権の与党が多数を占める今の国会に任せればこうなることは分かっていたことを書きました。民意もおおむね同じように受け止めているのだと思います。

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 規正法の改正は最重要と言ってもいい政治課題だったのに、この評価です。政治資金改革にリーダーシップを取れなかった岸田首相への評価が上がるはずがありません。自民党の政党支持率も低迷が続いています。そうかと言って、野党の支持率が伸びているわけでもありません。いずれの調査でも、政党の支持率では「支持政党はない」のいわゆる無党派層が47~32%を占めてトップです。政権と与党が支持を失っている、野党がその受け皿になっているとは言い難い。政治不信が高まっていると感じます。

 こうした状況で、少なからず気になることがあります。
 折しも東京では都知事選挙の運動期間です。56人もの立候補者がいますが、うち20人以上は同一の党派です。この党派によってポスター掲示板のスペースが事実上売買されて、選挙と関係があるとは思えない同一のポスターが大量に張られる事態となり、社会的な論議を呼んでいます。別の候補の掲示スペースには、全裸に近い女性の写真のポスターが張られたりもしました。警視庁が警告を発した事例もありますが、「法の不備」を突かれた形になり、ただちには対応を取れないケースもあるように伝えられています。
 都知事選に先立つ衆院補選では、表現の自由を主張して他陣営の選挙運動を激しく妨害した党派の代表や候補者が逮捕、起訴されています。
 選挙は民主主義の根幹の手続きであり、掲示板のポスターや街頭の演説は、有権者が一票の行使先を決める上で重要な役割を果たします。民主主義社会の一員であれば、そうした価値観の共有は当然のことだと思うのですが、そうは考えない人たちが選挙に立候補しているのが現状です。
 民主主義は原理的には、民主主義を破壊しようという思想であっても、思想の自由の枠内に置いて保護しなければなりません。だから倫理的な問題としてはともかく、現実的な法の上では、そうした思想を持つ党派からの立候補を排除できません。また民主主義の理念を尊重するなら、排除すべきではないようにも感じます。そうした主張は、まったく支持を得られなければ、民主主義の維持の観点からはさして問題になりません。しかし現実には一定の支持を得ています。
 政権と与党が支持を失い、既存の野党が交代の受け皿の期待を集めているとは言い難い状況で、さらに過激な主張を掲げる党派が登場してくればどうなるのか。政治不信の裏返しのように、民主主義を危うくするほどに過激な主張がさらに支持を受けることにならないか。気になっているのは、その点です。