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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「参院6増」成立、巨大与党が押し切る

 参院の議員定数を6増やすとともに、比例代表に「特定枠」を設けて、得票数に関係なくあらかじめ決めておいた順位に従って当選とする仕組みを盛り込んだ改正公職選挙法が7月18日、衆院本会議で可決、成立しました。賛成は自民、公明両党のみ、野党各党や無所属議員は反対し、自民党の船田元議員は採決時に退席したとのことです。
 法改正は自民党の案で、「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区ではじき出される候補を特定枠で救済するのが主な目的だとされます。複雑で分かりにくい仕組み、筋が通らず合理的な理由が見出せない6議席増などに対して、「自民党の党利党略」とさんざんに批判され、参院通過後は「自民党内にも異論」との報道もありました。世論調査でも反対が賛成を上回り、自民党の政策には支持や理解を示すことが多い読売新聞や産経新聞も批判的な論調を示していました。にもかかわらず、巨大与党が押し切りました。これまでも、「共謀罪」の趣旨を含んだ改正組織犯罪処罰法や集団的自衛権の行使を容認した安保法など、世論が割れた法案を数の力で強引に押し通してきましたが、今回は選挙制度という民主主義の根幹にかかわる事柄です。軽視できません。
 ※参院を通過した際のこのブログの記事です 

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 東京発行新聞各紙の19日付朝刊では、朝日、毎日、読売、東京の4紙が1面トップの扱い、日経、産経も1面でした。主な記事の見出しを書きとめておきます。

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 ▼朝日新聞
1面トップ「参院定数6増 成立/来夏から適用 自公が押し切る」
3面「異論残し 参院6増/拙速批判 自民から造反」/「『熟議なく残念』 経済同友会・代表幹事」
3面「自ら抜本改革、困難」竹中治堅・政策研究大学院大学教授(政治学)
4面「採決の目安? 審議時間とは」

▼毎日新聞
1面トップ「参院6増 自公強行/野党 内閣不信任案提出へ/改正公選法成立」
1面・解説「国民の合意なく」
3面・クローズアップ「自民、露骨な党利党略/選挙制度改革 18年前と同じゴリ押し」「衆参委審議わずか9時間」「合区解消への改憲 不急」

▼読売新聞
1面トップ「参院定数6増 成立/改正公選法 比例選に『特定枠』」
4面「特定枠利用 自民のみか/野党は批判、活用否定 公明も苦言/自民、候補調整を加速」「自民・船田氏が棄権」
10面・1ページ特集「基礎からわかる参院6増」

▼日経新聞
1面「参院6増法が成立/来夏から適用 比例代表に『特定枠』」
3面「定数減の流れに逆行/参院6増、与党からも批判」
3面「自民の党利党略」中北浩爾・一橋大教授/「現職救済を優先」岩崎美紀子・筑波大教授
社説「この参院選改革はごまかしだ」

▼産経新聞
1面準トップ「参院6増 来夏適用へ/『一票の格差』是正 改正公選法成立」
2面「参院6増 野党に恩恵も/見えぬ改憲、抜本改革先送り」/「自民・船田氏『拙速』と棄権」
5面「自民、60人前後 1次公認へ/『70歳定年制』対象7人/参院選」

▼東京新聞
1面トップ「参院6増法 成立/自民 約束守らず強行/定数減『身を切る改革』 選挙制度抜本見直し」
2面・核心「自民『合区』議員救済狙い/特定枠 少ない票数で当選も」/「自民船田氏が造反/『国民に理解されない』」
2面「安倍政権のおごり」新藤宗幸・千葉大名誉教授(行政学)/「本質議論が不十分」飯尾潤・政策研究大学院大教授(政治学)