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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

旧統一教会と自民党 関係解明を求める地方紙~安倍元首相銃撃から1年の社説、論説

 安倍晋三元首相が奈良市で参院選の応援演説中に撃たれ、死亡してから7月8日で1年がたちました。8日前後に東京発行の新聞各紙がどのような報道を展開したかを、このブログの以前の記事に書きとめました。続いて、地方紙が1年の節目をどのようにとらえていたかを知りたいと思い、各紙の社説・論説を見てみました。対象は、自社サイトで全文を無料で公開している新聞です。そこで気が付いたことがあります。目にした範囲のことですが、ほとんどの地方紙が、旧統一教会と安倍元首相ら政治家や自民党との関係に触れ、調査を尽くし解明するよう求めています。
 例えば、教団と政治の関係を見出しに取っている例として「安倍元首相銃撃1年 教団と政治、関係解明を」(秋田魁新報、7月8日付)や「旧統一教会問題 政治の頬かぶり許されず」(信濃毎日新聞、8日付)、「自民と教団の関係、未清算だ」(京都新聞、8日付)、「教団と政治家/検証なくして断絶できぬ」(神戸新聞、13日付)があります。そのほかの新聞も、いくつか挙げた論点の一つとして、この問題に触れています。
 佐賀新聞は、教団と政治を巡る疑惑を風化させてはならないとする共同通信の論説資料を共同通信のクレジットを付けて掲載。同趣旨の論説はほかのいくつかの地方紙も掲載しています。
 改めて、全国紙の社説も見てみました。朝日新聞、毎日新聞、日経新聞は、教団と自民党の関係に触れ、調査を尽くそうとしない自民党を批判しています。
 その一方で、読売新聞は旧統一教会について、信者が多額の寄付を繰り返し家族が困窮していること、文化庁が解散命令請求を視野に調査を続けていることには言及していますが、教団と政治の関係には触れていません。産経新聞は社説(「主張」)では旧統一教会には一切言及がありません。
 全体を俯瞰してみれば、各紙の社説・論説は、旧統一教会と政治の関係について、事件から1年を経ても区切りがついていない問題、調査と検証を尽くすべき問題、ひとことで言えば「終わっていない問題」ととらえる論調が圧倒していると感じます。

 7月8日前後の報道で、産経新聞は安倍晋三元首相の功績をたたえるトーンが顕著でした。読売新聞も産経新聞ほどではないにしても、安倍政治に批判的な朝日新聞や毎日新聞とは一線を画していました。その産経新聞は「旧統一教会と政治」については社説を含めて一切触れていません。読売新聞も、社会面の片隅の教団の現状の記事の中でわずか数行、触れているだけです。安倍元首相の功績を称賛する一方で、旧統一教会と安倍元首相や自民党との関係に触れない(触れても極めてわずかにとどめる)点は、この「事件から1年」をめぐる新聞各紙の報道の中で、産経新聞、読売新聞2紙の際立った特徴だと感じます。

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 以下に全国紙と地方紙の社説、論説のうち、各紙のサイト上で確認できたものを書きとめておきます。そのうち、全文が読めるものはリンクを張っておきます。また旧統一教会と自民党の関係の記述を中心に、本文の一部を書きとめておきます。


【全国紙】
▽朝日新聞:7月9日付「教団と自民党 社会の不信に向き合え」
 https://digital.asahi.com/articles/DA3S15683143.html

 自民党も教団との関係解明を放置したままだ。それは岸信介元首相と文鮮明(ムンソンミョン)教祖が握手して以来、半世紀以上に及ぶ。安倍氏は韓鶴子(ハンハクチャ)総裁を称賛するビデオメッセージなどで「広告塔」となり、国政選挙で「教団票」を差配していたといわれる。
 安倍氏と教団について、派閥古参の細田博之衆院議長は「大昔から関係が深い」と非公開の場で述べたきり口をつぐむ。教団と長く関係があったとされる萩生田光一政調会長も沈黙を貫く。経済再生相を事実上更迭された山際大志郎氏は、関係を断つとの申告だけで次期衆院選での党の公認候補と決まった。
 政府の調査が続くなか、韓氏は韓国での集会で岸田首相を名指しし、「ここに呼びつけて教育を受けさせなさい」と発言したと伝えられるが、政権はコメントを控えるとしている。
 統一教会問題は何ひとつ解決していない。社会全体で目を凝らし続けたい。

▽毎日新聞:7月8日付「安倍氏銃撃から1年 民主主義守る決意新たに」
https://mainichi.jp/articles/20230708/ddm/005/070/122000c

 首相は「次の時代を切り開いていくことこそ、安倍氏の遺志を継ぐこと」だと語ったが、安倍政治の功罪は検証されていない。
 事件で表面化した教団と自民の関係は、安倍氏の祖父・岸信介元首相にさかのぼる。高額献金などのトラブルが問題となった後も続いてきた。
 首相は「関係を清算する」と言うが、これまでの経緯を究明しようとせず、安倍氏と教団の関係についての調査も拒んでいる。これでは政治への信頼を取り戻すことはできない。

▽読売新聞:7月8日付「安倍氏銃撃1年 教訓を生かして安全な社会に」 ※旧統一教会と政治家のかかわりには言及なし
 https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230707-OYT1T50249/

 安倍氏の事件を機に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者が多額の寄付を繰り返し、家族が困窮している実態が明らかになった。文化庁は解散命令請求を視野に入れて調査を続けている。
 組織性や悪質性を見極め、しっかりと結論を出してほしい。

▽日経新聞:7月8日付「安倍氏銃撃事件の教訓を着実に生かせ」
 https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK072TE0X00C23A7000000/

 教団について岸田首相は自民党として関係を断絶すると言明したが、過去の経緯を含め検証がすんだとはいえない。政策決定への影響などはなかったのか。「すでに終わった話」と考えているとすれば、有権者の不信は拭えない。

▽産経新聞 ※旧統一教会への言及なし
7月8日付「元首相暗殺1年 安倍氏の『遺言』に応えよ」
 https://www.sankei.com/article/20230708-UCXWYU6T4ZIXRMSUSM7QDFEJG4/
7月9日付「安倍氏銃撃1年 警護『現場の力』を高めよ」
 https://www.sankei.com/article/20230709-UM5Z6C2LFFKABHBQZF5KJ5JFUM/

【地方紙】
■7月14日付
▽宮崎日日新聞「旧統一教会問題/政府は対処の手を緩めるな」
 https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_72299.html

■7月13日付
▽神戸新聞「教団と政治家/検証なくして断絶できぬ」
 https://www.kobe-np.co.jp/opinion/202307/0016578278.shtml

 安倍晋三元首相の銃撃事件を契機に、自民党を中心とした政治家と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との不明朗な関係が相次いで発覚した。事件から1年を経ても、教団との長く深い関わりの解明は進んだとは言い難い。それどころか、疑惑をうやむやにしたまま幕引きを図ろうとしている印象すら受ける。本当に関係を断ち切ったのか。徹底した検証が不可欠だ。

■7月12日付
▽山形新聞「旧統一教会問題 対処の手緩めてならぬ」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/index.php?par1=20230712.inc

▽山陰中央新報「旧統一教会問題 対処の手を緩めるな」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/415444

■7月11日付
▽宮崎日日新聞「安倍元首相銃撃1年/疑惑解明 今も進んでいない」
 https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_72239.html

▽佐賀新聞「旧統一教会問題 対処の手を緩めるな」※共同通信
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1069626

 事件の背景として、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の高額寄付問題などを浮き上がらせた安倍晋三元首相銃撃から、1年が過ぎた。政府はこの間、世論に強く背中を押される形で問題に対処してきた。
 宗教法人法に基づく質問権を行使し、文化庁が昨年11月に始めた教団の調査は長期化、いまも継続している。解散命令を裁判所に請求するか否かが、最大の焦点だ。
 悪質な献金強要などを規制するため、昨年末に成立した不当寄付勧誘防止法は6月に完全施行され、行政措置や罰則などすべての規定の適用が可能になった。
 解散命令の請求可否は、調査に時間がかかっても徹底的に証拠を積み上げた上で厳正に判断すべきだ。国会審議が拙速との指摘もあった同防止法も、実効性確保のための不断の改善が不可欠だろう。
 政府は決して対処の手を緩めてはならない。

■7月8日付
▽北海道新聞「安倍元首相銃撃1年 民主主義守る決意新たに」/不寛容さが生む暴力/分断の加速止まらず/社会のひずみ直視を
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/874650/

 被害と同時に明るみに出たのが教団と自民党の不透明な関係だった。国会議員らが教団側から選挙支援を受ける見返りに、教団側の会合に出席するなどしていた。
 首相は関係遮断を党に指示したが、党の調査では安倍氏や安倍派会長だった細田博之衆院議長を対象から外した。
 教団との関係が被害救済の不作為に影響していないか。政策が左右されることはなかったか。検証するには、安倍氏らの関わりから詳しく調べなければならない。

▽東奥日報「教団問題 風化させるな/安倍元首相銃撃1年」
 https://www.toonippo.co.jp/articles/-/1591399

▽河北新報「安倍元首相銃撃1年 問われる日本の民主主義」

▽秋田魁新報「安倍元首相銃撃1年 教団と政治、関係解明を」
https://www.sakigake.jp/news/article/20230708AK0015/

 安倍晋三元首相が奈良市で参院選の街頭演説中に銃撃を受け、死去してから1年となった。選挙活動のさなかの元首相銃撃は民主主義を脅かす蛮行だ。どんな理由があったにせよ自由な言論を暴力で封じる行為は許されない。安倍氏の無念を思い、改めて哀悼の意を表したい。
 一方、銃撃事件を機に浮上した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と安倍氏ら政治家との不透明な関係や、教団の高額献金問題などの実態はいまだ明らかではない。同様の事件の再発防止のためにも、背景にある問題の徹底解明は不可欠だ。

▽山形新聞「安倍元首相銃撃1年 悲劇の教訓を忘れるな」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/index.php?par1=20230708.inc

▽福島民友新聞「安倍氏襲撃1年/暴力に屈せぬ誓いを新たに」
 https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20230708-790082.php

 政治と反社会的な団体が深い関係を築いてきたことは検証、改善の必要があるのは事実だ。しかし、それが誰かに危害を加えて良い理由にはならない。事件を起こしたことと、その背景や動機は分けて考える必要がある。
 憂慮されるのは、この事件以降、街頭演説で訪れた首相に向けて爆発物を投げ付ける、首長に銃撃をほのめかすメールを送るなどの事件が発生していることだ。脅迫メールを送信した容疑者の男は、銃撃事件を参考に銃を作ったと供述していることなどから、銃撃事件がこれらの事件のきっかけや参考になったとの指摘がある。
 インターネット上では、銃撃事件が政治と教団との関わりに目を向けさせたとして、被告の男を英雄視するような書き込みが多くみられる。勾留中の男の元にはファンレターや現金に加え、衣類などの差し入れが届いているという。
 事件に関与した容疑者などを持ち上げ、それを多くの人が閲覧できる場所で発信することは模倣事件を誘発する恐れがある。人命を奪うことを助長するような情報発信は厳に慎むべきだ。

▽神奈川新聞「安倍元首相死去1年 民主主義の修復を急げ」
▽山梨日日新聞「[安倍元首相銃撃1年]教団巡る疑惑 風化させるな」

▽信濃毎日新聞「旧統一教会問題 政治の頬かぶり許されず」/形だけだった調査/救済はこれから/社会的な議論を
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023070800114

 教団にまつわる問題は長年放置され、寄付の実態も不明のままだ。宗教法人であっても社会的に許容されない活動には厳正に対処する必要がある。
 とはいえ、質問権の行使は憲法が保障する信教の自由を阻害する可能性もはらんでいる。質問と回答の具体的な中身が明らかにならないまま、調査が進むことに懸念は拭えない。
 教団と政治家との関わりを含め、主権者である国民の判断材料が乏しいまま時間だけが過ぎていく。政府と自民党は関心が薄れるのを待っているとしか思えない。
 必要なのは、これまでの経緯と実態を公開し、改めて社会的な議論をしていくことだ。問題はまだ何も終わっていない。

▽新潟日報「安倍氏銃撃1年 教訓は生かされているか」/なお続く被害の訴え/国葬基準に禍根残す
 https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/244575

 教団と政治家の関係に焦点が当たり、自民党を中心に接点を持つ国会議員が多数に上ることが判明した。
 一方で安倍氏と教団の詳しい関係については、岸田文雄首相が「本人が亡くなられた今、十分に把握することは限界がある」として調査を拒否した。
 歴代最長政権を担った元首相がなぜ狙われたのか、その背景を調べもせずに幕引きが図られたことは残念だ。政治と教団の関係検証が足りない。
 (中略)
 松野博一官房長官は今月、今後の首相経験者の国葬について、実施基準を明文化しないと表明した。国葬の検討は「時の内閣が責任を持って判断する」とし、国会には実施決定後と国葬終了後に説明するとした。
 決定前に国会の声を聞こうとせず、時の政権の裁量に任せるのでは、再び意見対立を招く可能性があり、禍根を残す。
 議論を尽くし、国民的な合意形成を図る努力をしようとしない岸田政権の姿勢がまた表れたと言えるだろう。

▽中日新聞・東京新聞「安倍氏銃撃1年 暴力ではなく票の力で」
 https://www.chunichi.co.jp/article/724709?rct=editorial

 一方、教団がこれまで国の政策に影響を与えたか否かの検証は不十分なままだ。安倍政権当時の二〇一五年、文化庁が教団の名称変更を認めた経緯を徹底的に解明するよう重ねて求める。
 自民党も所属議員と教団との関係を巡り、うわべだけの調査をしたにとどまる。深い関係を指摘された細田博之衆院議長は公の場での説明から逃げ続けている。これでは、教団との関係を断つという決意を疑わざるを得ない。
(中略)
岸田首相の国会軽視は国葬に限らない。安全保障や原発を巡る政策を独断で転換し、国会には追認を求めるばかりだ。第二次安倍政権で顕著になった議会制民主主義の空洞化はより深まっている。
 そうした状況を変えるのは、銃弾でも爆弾でもなく、私たち主権者が持つ票の力だ。それが安倍氏銃撃事件から一年を機に改めて確認すべき、最大の教訓である。

▽京都新聞「安倍氏銃撃1年 自民と教団の関係、未清算だ」
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1063212

 旧統一教会と政治との関係は深い霧が晴れず、国民の政治不信は深まっている。
 自民は「党として組織的な関係はない」と弁明する一方、自己申告の調査だけでも安倍派を軸に半数近い国会議員につながりが判明した。
 岸田文雄首相(党総裁)は「過去を反省し、関係を絶つ」と宣言した。だが、選挙で教団票を振り分けていたと元議員の証言のある安倍氏についても「本人が亡くなり、限界がある」とし、客観的な調査自体を放棄している。
 教団の名称変更に、自民議員が関与した疑惑も残されたままだ。
 反社会的と問題視されてきた教団と、どういう経緯と関係性でつながったのか。政治をゆがめていないか。
 地方を含め全議員・組織でつまびらかにしなければ、関係を清算したとはいえまい。岸田氏の指導力が問われる。

▽神戸新聞「元首相銃撃1年/政治は変わろうとしたか」
 https://www.kobe-np.co.jp/opinion/202307/0016560463.shtml

 なぜ安倍氏が狙われたのか、事件の背景に迫る取り組みも乏しい。山上徹也被告(42)は、自身の家庭崩壊の原因となった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と、3代にわたり密接な関係があった安倍氏に矛先を向けたと供述している。
 だが首相は安倍氏と教団に関する調査を拒み続けている。自民党は教団との関係断絶を宣言したが、党としてチェックする手だては定かでない。教団の教義が政策決定に影響したかどうかの検証も不十分だ。
 「聞く力」を掲げて始動した岸田政権だが、重大な政策決定で国民への説明と国会での議論を軽視する手法が目につく。防衛力の強化、原発回帰への転換と並び、国葬執行はその典型と言える。異論を封じ、数の力で押し通す「安倍政治」の負の部分を検証せず、自らも変わろうとしない首相の姿が政治不信を一層膨らませるのではないか。

▽山陰中央新報「安倍元首相銃撃1年 疑惑を風化させるな」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/413471

▽愛媛新聞「安倍元首相銃撃1年 残った課題の解決はこれからだ」
▽徳島新聞「安倍氏銃撃1年 暴力に屈さぬ決意新たに」

▽高知新聞「【安倍氏銃撃1年】積み残る課題と向き合え」
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/664158

 事件の直接の動機を被告の政治的思想と関連づける見方が後退する一方で、社会的に問題が指摘される教団と政治側との関係が相次いで表面化した。自民党は所属議員180人に教団との接点があったと公表した。会合出席や組織的な選挙支援を受けた事例があった。野党議員にも接点が判明している。
 教団とどのような関係にあるのか実態の把握が欠かせない。政策決定への関与の有無を探ることも重要だ。岸田文雄首相は議員自らが説明責任を尽くすように求めた。だが解明を主導する意欲はうかがえない。
 また、細田博之衆院議長も教団との関係は認めたものの、非公開の場での説明にとどまり、記者会見などには応じていない。責任を果たすべきだ。

▽西日本新聞「安倍氏銃撃1年 テロの未然防止の徹底を」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1105373/

 安倍氏は背後から2発撃たれた。背後を1人で警戒する警察官が側面に配置換えされ、補充もなく背面は空白のままになった。交通規制もされていなかった。
 警察庁は報告書で、約2週間前に同じ場所に立った自民党幹事長の警護計画を、安易に踏襲したと総括し、現場には「明らかな警護上の危険があった」と認めた。
 安倍氏銃撃を受け昨年、警察庁の「警護要則」が見直された。1994年以来、約30年ぶりである。都道府県の警察の警護計画を同庁が事前審査し、主導するという。
 それでも和歌山県の漁港で首相が狙われた事件は防げなかった。聴衆は漁協関係者のみで金属探知機検査は不要とした自民党側の措置を県警は容認し、警察庁も疑問視しなかった。その結果、容疑者の会場侵入と首相まで約10メートルの距離からの爆発物投げ入れを許した。
 警察当局は猛省し、政治家と聴衆をテロから守る決意を新たにしてもらいたい。

▽佐賀新聞「安倍元首相銃撃1年 疑惑を風化させるな」※共同通信
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1068073

 安倍晋三元首相が参院選の応援演説中に銃撃され、不慮の死を遂げてから1年。改めて哀悼の意を表するとともに、何人も保障されるべき言論の自由を守る決意を新たにしたい。
 同時に思い起こすべきは、銃撃事件をきっかけに発覚した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と安倍氏ら自民党議員の不明朗な関係である。
 党総裁の岸田文雄首相は批判を受けて教団との関係断絶を宣言したが、真相解明には後ろ向きだ。旧統一教会問題への対応を一過性のものにしないためにも、疑惑を風化させてはいけない。

▽熊本日日新聞「安倍氏銃撃1年 疑惑の検証続けるべきだ」
▽沖縄タイムス「安倍元首相銃撃1年 背景も疑惑も残る曖昧」

▽琉球新報「安倍元首相襲撃1年 正義覆す暴力を拒否する」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1742908.html

 事件を契機に、閣僚を含む自民党国会議員や同党の地方議員に至るまで選挙支援などのかたちで旧統一教会と接点を持っていたことが判明した。旧統一教会の影響力は一部野党にも広がっていた。自民党は旧統一教会との関係を絶つと明言した。事件から1年を経て、方針が徹底されているのか説明してほしい。
(中略)
憲政史上最長を誇った安倍政権は強いリーダーシップを掲げ、さまざまな施策を進めた。政権が放つ光が強い分、深い影を落としたことも事実である。国民の間に貧富の差が広がったことは、その最たるものであろう。多くの国民は富の再分配が機能したとは考えていない。
 沖縄では基地の整理縮小を求める県民の訴えとは逆に、基地機能の固定化・強化に向かった。辺野古新基地建設が普天間飛行場返還の「唯一の解決策」との立場を崩さず、沿岸部埋め立てを強行した。
 安倍政権下で本格化した「戦争ができる国づくり」は、現岸田政権で戦後日本の防衛政策の基本であった「専守防衛」を逸脱する安保関連3文書の閣議決定に至った。この方針に基づく軍備増強が沖縄で進んでいる。
 「安倍政治」とは何だったのか。国民や県民にいかなる影響を及ぼしたのか。多角的な検証が求められる。

■7月7日付
▽中国新聞「元首相銃撃1年 暴力許さぬ誓い新たに」
 https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/328615

 統一教会と自民党との長く深い関わりも解明は進んでいない。関係を断つと党本部は指示したが、選挙などで濃厚に結び付いた議員も多い。本当に縁を切ったのか。検証が必要だ。
 というのも、絶縁が形だけではないか疑わしいからだ。例えば教団との接点が相次ぎ判明して閣僚を更迭された山際大志郎衆院議員(神奈川18区)は次の選挙でも党の公認候補になる。今春の統一地方選では、教団との接点を認めた現職の9割を超す240人が当選した。現役信者を公言する徳島市議もいる。到底本気とは思えない。
 事件から1年たつが、選挙中の警備や統一教会の問題は残されたままだ。対策の不十分さを政府は自覚し、取り組みを加速させなければならない。

▽南日本新聞「[安倍氏銃撃1年] 対話の力信じ続けたい」