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地方紙は国葬へ批判が圧倒、撤回求める社説、論説も

 安倍晋三元首相の国葬を巡り、閣議決定による実施は適切だなどと岸田文雄首相が強調した9月8日の国会の閉会中審査について、地方紙も9日付の社説、論説で一斉に取り上げています。ネット上で目にした限りでは、批判的、懐疑的な論調が圧倒しています。
 岸田首相は、国葬の実施を閣議決定で決めたことについて「行政権の範囲内」と強弁しています。また、海外からの弔意の対象が「日本国民全体」になっていることを強調しており、国として応えるためにも国葬が必要だ、ということのようです。この点に関連して、北海道新聞の9日付社説は「思想信条、表現の自由を保障する憲法に照らせば、弔意表明は個人の自由であり、内閣に国民全員の弔意表明を意味する国葬を行う権限はないとの指摘もある」と疑問を投げかけています。同日付の信濃毎日新聞の社説も「国葬はそもそも、内心の自由などを定めた憲法に反する可能性がある。政府は、戦前の国葬とは違って『弔意を強制するものではない』とする一方、『国全体』で弔意を示す行事としてきた」「『国全体』とは何か。国民を指すのか。審議でも取り上げられたが、判然としなかった」としています。
 日本は国家としては三権分立で成り立っています。「国全体」「国民全員」を代表する行為として「国の儀式」を行うのであれば、法令に明記があるならともかく、そうではないものは行政、立法、司法の三権の調整があって然るべきでしょう。「行政権の範囲内」などと解釈するのは無理があり、専制ということになりかねません。そのことを行政権のトップである首相が強弁すること自体、首相としての見識が問われることであり、民主主義にとって非常に危ういと言わざるを得ません。
 地方紙からは「少なくとも静かに元首相の死去を悼む環境ではなくなってきている。いま一度再考を求めたい」(9日付京都新聞社説)などと、国葬の撤回を求める主張も目につきます。10日付では西日本新聞は「国論を二分したまま国葬に突き進むことはない。過去の首相経験者と同じように、内閣と自民党の合同葬にすることを再検討すべきだ」と主張し、琉球新報も「百歩譲っても内閣と自民党の合同葬など従来の葬儀の形式が妥当だろう」と指摘しています。

 全国紙では、読売新聞と産経新聞は国葬を支持する論調です。地方紙では北國新聞(本社石川県金沢市)が、国葬に対して肯定的な評価のようです。同紙のサイトでは、社説は見出しのみ無料公開ですが、9日付の見出しは「国葬16億円余 経費増えても万全の警備を」でした。同紙は8月27日付に「国葬に2億5千万円 弔問外交の効果は費用以上」との社説を掲載していました。

 以下に、地方紙各紙のサイトで確認した限りでの社説、論説の見出しを書きとめておきます。全文が無料域で読める場合は、リンクを張り、本文の一部を引用しています。

【9月9日付】
▼北海道新聞「『国葬』で論戦 首相答弁は納得できぬ」
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/728404/

 思想信条、表現の自由を保障する憲法に照らせば、弔意表明は個人の自由であり、内閣に国民全員の弔意表明を意味する国葬を行う権限はないとの指摘もある。
 泉氏が国葬でなく、内閣葬に変更するよう求めたのは、こうした法理論を踏まえたものだろう。
 首相は、国葬とするかは「その都度、政府が総合的に判断するのがあるべき姿だ」と述べ、法整備は不要との認識を示した。
 時の政権の恣意(しい)的な判断で国葬を実施すれば、政権を支える与党の党派性を帯びる。これを国葬と称するのは無理がある。

▼河北新報「首相の『国葬』説明 独断の後付け、説得力欠く」
 https://kahoku.news/articles/20220909khn000005.html

 政治家としての評価が分かれる安倍晋三元首相の葬儀を「国葬」とすべきか否か。少なくとも16億6000万円と見込まれる経費を全て国民の税金で賄ってよいか。
 岸田文雄首相の説明によれば、いずれも「行政権の範囲内」だから、内閣が独断で決められることになる。
 最初の判断から民意を軽視していたのだから、いかに言葉を尽くしても説得力が生まれないのは当然だろう。
 (中略)
一方、安倍氏の評価を巡っては、首相が旧統一教会との関係解明に消極的なことも、国葬の正統性に疑念を抱かせる大きな要因だろう。
 「サタンの国・日本」は「神の国・韓国」を植民地支配した罪を償わなくてはならない-。そんな教義を掲げ、巨額の献金が韓国に流れる仕組みを作っていた団体だ。
 安倍氏が岸信介元首相以来3代にわたって深い関係を保っていたことには、多くの国民が衝撃を受けている。
 憲政史上最長の在任期間や経済、外交上の成果など評価すべき点があったとしても、首相の姿勢に「旧統一教会隠し」が感じられる限り、国葬への共感は広がりにくいに違いない。

▼東奥日報「『岸田政治』が問われる/安倍元首相の国葬問題」
 https://www.toonippo.co.jp/articles/-/1328301

 安倍晋三元首相の国葬問題を巡り、衆参両院は閉会中審査を実施した。国民の間では国葬反対論が根強いが、岸田文雄首相が法的根拠をはじめとするさまざまな疑問に対し、説得力ある答弁をしたとは言いがたい。
 国葬批判の背景には、安倍氏ら自民党議員が霊感商法や多額献金で指弾された世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側から、選挙支援を受けるなどしていた問題がある。
 自民党は閉会中審査の終了を待っていたかのように、旧統一教会と所属国会議員との接点確認を求めた調査結果を公表した。しかし、安倍氏の関わりには踏み込まず、この調査をもって国民の不信感は払拭できまい。
 いずれの問題も説明責任を負っているのは岸田首相であり、問われているのは「岸田政治」の民意への向き合い方だともいえよう。

▼秋田魁新報「『国葬』の首相説明 理解深められたか疑問」
 https://www.sakigake.jp/news/article/20220909AK0008/

 しかし国会に諮って理解を得るやり方をとらず、国葬の会場設営費約2億5千万円に予備費を充てるのは本来の形と言えない。国葬費用に警備費などが含まれないことへ批判が高まってから、概算の警備費や海外要人の接遇費計約14億円を公表した「後手」もいただけない。
 政府は国民一人一人に弔意を示すことは求めないとしているが、7月の安倍氏の家族葬で一部の自治体が学校現場などに半旗掲揚を依頼した。国葬で弔意が強いられる懸念が残る。
 時間不足からか野党の追及も迫力を欠いた。同じ言葉の繰り返しが目立つ首相答弁は「丁寧な説明」には程遠く、説得力を欠いた。「なぜ国葬なのか」という疑問への答えは最後まで見えなかった。これ以上、国民の分断が深まることのないように、政府にはより明確な説明を行う機会を求めたい。

▼山形新聞「『安倍氏国葬』閉会中審査 説得力欠いた首相説明」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/?par1=20220909.inc
▼茨城新聞「安倍氏国葬問題 『岸田政治』が問われる」
▼神奈川新聞「『国葬』国会説明 疑念解消にはほど遠い」
▼山梨日日新聞「[安倍氏国葬問題]教団との関係 ふたをするな」

▼信濃毎日新聞「国葬の国会審議 疑問は一向に晴れぬまま」
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022090900043

 「今後も説明する」と強調するが、重要なのは中身だ。同じ対応を重ねるようなら、中止を含め国葬の実施は見直すべきだ。
 今回、実施の意義について岸田首相が最も強調したのは、海外から数多く寄せられた弔意のメッセージの対象が「日本国民全体」になっている、という点だ。
 外交に力を入れた安倍氏の「遺産」を、「国として」受け継ぐために必要な行事なのだという。
 対外的な体面を重視し、国民の反対を押してでもやり抜く。そんな本末転倒が受け入れられるだろうか。「民主主義を守る決意を示す」ための行事、との位置付けにも矛盾する。
 国葬はそもそも、内心の自由などを定めた憲法に反する可能性がある。政府は、戦前の国葬とは違って「弔意を強制するものではない」とする一方、「国全体」で弔意を示す行事としてきた。
 「国全体」とは何か。国民を指すのか。審議でも取り上げられたが、判然としなかった。
 法的根拠について、首相は今回も「国の儀式」を内閣府の所掌とする内閣府設置法を挙げた。事務所管の規定を実施できる根拠とするのは、やはり無理がある。

▼新潟日報「国葬の閉会中審査 納得いく説明には程遠い」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/109972

 釈然としなかったのは、安倍氏の国葬を決めた経緯だ。
 首相は安倍氏の死去から6日後の7月14日に記者会見で国葬実施を表明し、その8日後の22日には正式に閣議決定した。
 しかし国民の代表が集まる場である国会には全く説明しなかった。行政権の範囲内だとして即断即決したことが混乱を招いたことを、首相は深く反省すべきだ。
 (中略)
 国葬に対する国民の賛否は割れ、報道各社の世論調査でも反対が賛成を上回る状況が続く。
 国葬開催が決まってから、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と安倍氏の関係の深さが次々と明らかになったこともあるだろう。
 自民党が8日に発表した調査結果では党所属国会議員の半数近くが教団との接点を持っていた。
 党は今後、教団との関係を断つというが、安倍氏と教団との関係を調べずに、国葬とすることに矛盾はないか。党総裁として首相は国民にさらに説明するべきだ。

▼中日新聞・東京新聞「故安倍氏『国葬』 実施形式の再考求める」
 https://www.chunichi.co.jp/article/541434?rct=editorial

 故安倍晋三元首相の国葬を巡り岸田文雄首相が衆参両院の議院運営委員会で開かれた閉会中審査に出席し、質疑に応じた。
 しかし、首相は従来の説明を繰り返すにとどまり、国民の幅広い理解が得られたとは言い難い。国葬形式での実施は再考し、内閣葬や内閣・自民党合同葬への切り替えを検討すべきではないか。
 (中略)
首相は当初、国葬を「敬意と弔意を国全体として表す国の公式行事」と説明していたが、閉会中審査では「国全体」の表現を控え、地方公共団体や教育委員会、一般国民には弔意表明を求めない考えを強調した。国を挙げて弔うことは事実上断念したに等しい。ならば国葬である必要があるのか。
 過去の首相経験者の内閣・自民党合同葬にも各国首脳らが参列し弔問外交に支障はなかった。
 政府が閣議決定で決められるのは内閣葬や政党などとの合同葬までだ。首相がこのまま国葬形式での実施にこだわり続けるなら、故人を静かに見送ることすら難しくなりかねない。

▼北國新聞「【国葬16億円余】経費増えても万全の警備を」
▼福井新聞「安倍氏国葬問題 説得力ある答弁だったか」
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1626283
▼京都新聞「国葬で国会論議 説得力欠く首相の説明」
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/875769

 拙速な国葬の決定を発端に、説明不足も重なって、反対の高まりを招いた。首相は「具体的、丁寧な説明」と繰り返したが、審議は両院それぞれわずか1時間半に限られ、生煮え感が強い。
 少なくとも静かに元首相の死去を悼む環境ではなくなってきている。いま一度再考を求めたい。

▼神戸新聞「閉会中審査/国葬への疑問は消えない」
 https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/202209/0015624386.shtml

 新たに強調したのは「多くの国から示された弔意に、国として礼節をもって応える」という外交儀礼である。「国民に弔意を強制するものではない」とも繰り返した。
 弔問外交を前面に掲げることは故人への礼を失しないのか。多額の国費を使いながら国民に弔意を求めることもできない。国葬の大義が揺らいでいると言わざるを得ない。
 75年、当時最長の在任記録を有しノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作元首相の死去時も国葬が検討されたが、野党の反対などで政府、自民党、有志による「国民葬」になった。80年の大平正芳氏以降は内閣と党の「合同葬」が踏襲されてきた。
 今回との整合性について、首相は「国内外の情勢によって評価は変わり、時の内閣が判断する」と述べた。内閣だけで誰を国葬とするかを決められるなら政権の恣意(しい)的判断が可能となり、反発は避けられない。今回の決定過程を客観的に検証し、開催基準を定める議論が不可欠だ。

▼中国新聞「『国葬』首相の国会説明 疑問の解消には程遠い」
 https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/212296

 最近の世論調査のほとんどで反対や「評価しない」が過半数を占める。遅きに失した感はあるが、首相が閉会中審査に出てまで議員に直接説明するのは近年、まれだった。評価できる。
 (中略)
 見過ごせないのは、銃撃事件のきっかけとなった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を不問に付した点だ。調査を迫られても「亡くなられたから実態を確認するのは限界がある」と繰り返すだけ。都合の悪いことには、ふたをするのか。
 国際的評価にも疑問が残る。国民全体への弔意を示すメッセージが海外から相次いだ、と説明した。しかし中曽根氏死去の際、当時のトランプ米大統領は日本国民に対しても深い哀悼の意を示す声明を発表した。シラク元フランス大統領の死去の際は、当時の茂木敏充外相がフランス国民にも哀悼の意を表すメッセージを出している。単なる外交辞令を大げさに受け止めているとしたら滑稽過ぎよう。
 小渕恵三元首相の合同葬ではクリントン米大統領をはじめ海外の要人が多く参列した。説明を重ねるにつれ、政府の挙げた根拠は乏しくなっていく。

▼山陰中央新報「安倍氏国葬問題 『岸田政治』が問われる」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/266088
▼愛媛新聞「国葬の閉会中審査 首相の説明では理解深まらない」
▼徳島新聞「国葬で閉会中審査 首相の説明、疑問拭えぬ」

▼高知新聞「【安倍氏の国葬】世論と向き合うのが遅い」
 https://www.kochinews.co.jp/article/detail/592195

 丁寧な説明で、政権に批判が向けられる局面を転換したいのだろう。しかし、そもそも世論と正面から向き合わなかったことが事態を複雑にした。懸念が消し去られたとは言い難い。
 安倍晋三元首相の国葬に関して初の国会論戦となる衆参の閉会中審査が、岸田文雄首相も出席して実施された。
 首相は、国葬を巡る説明が不十分だとの指摘を謙虚に受け止めるとの姿勢を示した。国民の理解が重要であることを念頭に、説明責任を果たし続けるとも述べた。
 その通りだろう。だが、国葬実施の意向を早々に示し、閣議決定からも時間がたっている。参院選を受けた臨時国会での言及もなく、賛否が割れる問題をやりすごそうとするような姿勢が続いた。首相の言葉はそのままには受け止めにくい。

▼大分合同新聞「安倍氏国葬問題 『岸田政治』が問われる」
▼宮崎日日新聞「安倍氏国葬問題 説得力を欠いた閉会中審査」
 https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_65770.html
▼佐賀新聞「安倍氏国葬問題 『岸田政治』が問われる」
 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/914342

 安倍晋三元首相の国葬問題を巡り、衆参両院は閉会中審査を実施した。国民の間では国葬反対論が根強いが、岸田文雄首相が法的根拠をはじめとするさまざまな疑問に対し、説得力ある答弁をしたとは言いがたい。
 国葬批判の背景には、安倍氏ら自民党議員が霊感商法や多額献金で指弾された世界平和統一家庭連合(旧統一教会)側から、選挙支援を受けるなどしていた問題がある。
 自民党は閉会中審査の終了を待っていたかのように、旧統一教会と所属国会議員との接点確認を求めた調査結果を公表した。しかし、安倍氏の関わりには踏み込まず、この調査をもって国民の不信感は払拭できまい。
 いずれの問題も説明責任を負っているのは岸田首相であり、問われているのは「岸田政治」の民意への向き合い方だともいえよう。

▼南日本新聞「[国葬閉会中審査] 説得力欠いた首相説明」
 https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=162434

 国葬に対する国民の疑念は解けなかったのではないか。岸田首相が掲げる「信頼と共感の政治」には程遠いと言わざるを得ない。
(中略)
 国民の賛否が大きく割れているのは、早々に国葬を実施すると決めながら、ここまで国会審議も野党との話し合いも行わず、政府が独断で進めてきたからに他ならない。
 国葬を行うなら、国民の幅広い理解が必要なのは言うまでもない。明らかにされた16億円超の費用にも、疑問が噴出している。政府は丁寧な説明を続けるべきである。

▼沖縄タイムス「[岸田首相「国葬」説明]これでは懸念拭えない」
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1021314

 国葬を実施するだけの根拠はどれをとっても説得力に欠ける。
 閣議決定だけで、国会で諮ることなく実施するのは、恣意(しい)的な運用につながりかねない。
 (中略)
 自民党は、党所属国会議員379人中179人に、旧統一教会側と何らかの接点が確認されたとする調査結果を公表した。対象は現職の国会議員だけで、安倍氏との関わりには踏み込んでいない。
 国民の関心には応えず、これで幕引きを図れば、政治不信に拍車がかかる。安倍氏の国葬を巡る議論と旧統一教会との関係は切り離すことはできない。
 国葬の説明が不十分との指摘を謙虚に受け止めるというなら、実態を解明する責任がある。さらに国会で審議を尽くすべきだろう。
 (中略)
 国葬を機に、国民の意見が二分されたままでは、政治への諦めや無関心がさらに広がる恐れがある。
 説得力がない政治では民主主義は守れない。

【9月10日付】
▼福島民友新聞「安倍氏の国葬/説明で納得は得られたのか」
 https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20220910-728013.php

 岸田氏の説明は、国葬に反対する人たちにも納得のいくものだったのかは疑問だ。ただ国際社会に対して国葬実施を表明した以上、それを覆すのは日本に対する諸外国からの信用低下につながる可能性が高い。今は国の責任で海外からの要人の警護に万全を期すことを優先すべきはないか。その意味で、警備に関する国費出費はやむを得ない面がある。
 岸田氏は、国葬にハリス米副大統領などの要人が出席予定であるとして、可能な限り会談するとの考えを示している。弔問外交でどういった成果が残せるか。岸田内閣の手腕が問われる。
 (中略)
 なぜ国葬なのか、国民のふに落ちる説明と議論をさらに求めたい。国葬後には決定の経緯や費用などの検証、今後のルールづくりを視野に入れた議論が不可欠だ。

▼山陽新聞「国葬の首相説明 理解深まったとは言えぬ」
 https://www.sanyonews.jp/article/1306061

 参院選後に首相が記者会見で国葬実施を発表してから閣議決定するまで、国権の最高機関である国会への相談や説明がなかった。こうした手続きに、野党から「法的に瑕疵(かし)がある」と批判の声が上がったことを重く受け止めるべきだ。選挙中に安倍氏が凶弾に倒れたことを受けて「国葬で民主主義を守る決意を示す」と強調する首相だが、幅広く合意を得ようとする姿勢が欠けていると言われても仕方あるまい。

▼西日本新聞「首相の国会説明 国葬に突き進める環境か」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/985711/

 私たちは社説で、国葬を巡って国民が激しく対立することにならないよう、首相はその意義を丁寧に説明すべきだと主張してきた。安倍氏を静かに送るためでもある。
 残念ながら、首相の言葉に賛同する国民が増えるとは思えない。「今後も説明責任をしっかり果たしていく」と述べたものの、国葬前の国会説明は今回が最後となる可能性が高い。
 国論を二分したまま国葬に突き進むことはない。過去の首相経験者と同じように、内閣と自民党の合同葬にすることを再検討すべきだ。

※西日本新聞は9月5日付と7日付でも関連の社説を掲載しています

・9月7日付「国葬の費用 不信高める小出しの説明」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/984114/
・9月5日付「なぜ国葬か 国民の疑問点は尽きない」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/983248/

▼琉球新報「首相の『国葬』説明 内閣葬ではいけないのか」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1581028.html

 首相の説明は牽強付会であり、過去の政府見解に照らしても納得できる内容ではなかった。例えば朝日新聞は、過去の佐藤栄作元首相が死去した際に、当時の内閣法制局長官が国葬について「法制度がない」「三権の了承が必要」との見解を示していたことを報じている。
 国葬とは、国費を投じて国民に追悼を求めるものにほかならない。戦前は国葬の実施や対象者を定めた勅令の「国葬令」が法的根拠になっていたが、戦後、言論・表現の自由、内心の自由(19条)、政教分離(20条)を定めた現行憲法の制定に伴って失効した。繰り返し主張するが、憲法に抵触しかねない国葬には反対である。百歩譲っても内閣と自民党の合同葬など従来の葬儀の形式が妥当だろう。

※全国紙の9日付の社説は、以下の記事に書きとめています

news-worker.hatenablog.com