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辺野古の代執行 自治の根幹揺るがす~普天間の危険性除去につながらない可能性も危惧、地方紙の社説、論説

 沖縄の普天間飛行場移設を巡り、沖縄県の玉城デニー知事は12月25日、辺野古沖の軟弱地盤改良工事の設計変更を承認しないことを表明しました。代執行訴訟の判決で福岡高裁那覇支部は20日、承認するよう命じ、期限をこの日に指定していました。斉藤鉄夫・国土交通相は26日、28日に承認を代執行することを明らかにしました。代執行を経て、工事は来年1月に始まる見通しです。玉城知事は高裁那覇支部判決を不服として上告する方針ですが、逆転勝訴しなければ工事は止められません。
 20日の高裁那覇支部判決の後、地方紙も相次いで社説でこの代執行の問題を取り上げています。ネット上の各紙サイトで読める範囲でのことですが、判決や日本政府に批判的なトーンが目につきます。国と自治体は対等であるはずなのに、ろくに審理もないまま判決に至ったこと、判決が付言で触れた話し合いによる解決は日本政府が拒否してきたこと、この付言に対しても日本政府が一顧だにしないことなどなどの事情から、ことは沖縄だけではない、国と自治体の対等の原則を揺るがし、全国どこでも同様のことが起きうる、との危機感が地方紙の中に高まっていることが見て取れます。全国紙と異なる、地方紙の役割と責任の発露であると感じます。
 日本政府=行政に対するのと同等に、あるいはそれ以上に厳しいトーンで司法を批判している社説が目を引きます。信濃毎日新聞は「住民の暮らしを預かる県の裁量は認めず、米国との約束を最優先する政府の主張を追認した。憲法に記された地方自治を司法が踏みにじったに等しい」「抑圧される少数者を法で救済することなく、国防を掲げた国家による統制に、結果的に加担している」と指摘しました。北海道新聞も「二つの『公益』がぶつかり合うのであれば、合意に至るまで協議を続けるのが筋だろう」「自治をないがしろにし、切り捨てる判断は認められない」と記しています。
 もう一つ、目につくのは、いくつもの社説、論説が、辺野古の新基地建設を進めても、普天間飛行場の危険性除去にはつながらない可能性を危惧として指摘していることです。根拠がないことではないと感じます。11月に沖縄の米軍幹部が「純粋に軍事的な観点から」と断りつつ、辺野古よりも普天間飛行場にいたほうがいいと発言したことが報じられています。

※朝日新聞デジタル「辺野古の制約挙げ、『軍事的には普天間がいい』 沖縄の米軍幹部発言」=2023年11月6日
 https://digital.asahi.com/articles/ASRC77F67RC7UTIL01T.html

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、在沖縄米軍幹部は7日、辺野古に建設する代替施設の課題を挙げ、「純粋に軍事的な観点からはここ(普天間)にいたほうがいい」と述べた。日本政府が辺野古移設を「唯一の解決策」として、埋め立て工事を加速する姿勢を続ける中、現役の幹部が軍事的な制約を指摘した形だ。
 在沖縄米軍が7日、地元メディアなどに普天間飛行場などについて説明し、活動を公開した中で、幹部が発言した。

 この米軍幹部の発言に触れた地方紙の社説、論説は少なくなく、信濃毎日新聞は「米側が辺野古基地では支障があると言い出した場合、屋久島沖の事故後、米オスプレイの飛行さえ止められなかった政府は返還の履行を迫れるのか」と指摘しています。同感です。
 11月29日にオスプレイが墜落した後、米軍が全機の飛行停止を決めたのは1週間余りもたってからでした。墜落原因は不明なまま、その間、人命は危険にさらされ続けていました。軍事的なニーズの前には人命は最優先とは限らない、ということの実例です。普天間飛行場がいくら危険であっても、米国内で軍事的ニーズが優先されれば、米国が普天間の使用継続を言い出し、辺野古移設への移転を白紙に戻すよう求めてくることは、実際にそうなるかどうかはともかく、可能性として想定しておくことは、政治の現実的な対応として必要なはずです。「辺野古移転が唯一の解決策」などと繰り返す現状は思考停止だとの指摘があるのも理解できます。
 加えて、オスプレイ墜落後の1週間余り、日本政府が住民を守るために何かしたのか。その実相をよく見れば、信濃毎日新聞が指摘するように、米国が普天間居座りを言い出した時に、日本政府がそれでも返還の履行を迫れるとは到底思えません。
※参考過去記事

news-worker.hatenablog.com

 以下に、12月21日以降の地方紙の社説、論説のうち、ネット上の各紙のサイトで確認できた見出しと、本文を確認できたものはその内容の一部を書きとめておきます。

【12月21日付】
■北海道新聞「辺野古訴訟判決 自治軽視の代執行容認」
 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/955847/

 地方自治法が代執行訴訟の要件とする「著しく公益を害する」状態かどうかが争点だった。
 県側は、辺野古埋め立て反対の意思を示した県民投票の結果などを根拠に「民意こそが公益だ」と主張していた。
 判決は、県が工事の設計変更申請の事務を放置しているのは、社会公共の利益を侵害するなどと、国の主張に沿う判断を下した。
 二つの「公益」がぶつかり合うのであれば、合意に至るまで協議を続けるのが筋だろう。
 国と地方は対等なのが大前提だ。自治をないがしろにし、切り捨てる判断は認められない。

■東奥日報「負担押し付ける国の強権/辺野古代執行で承認命令」
 https://www.toonippo.co.jp/articles/-/1692648

 在日米軍専用施設の7割が集中する沖縄に、県民の反対を押し切ってさらに米軍基地を建設する。それも知事の権限を奪う代執行という強権で負担を押し付ける。政府の姿勢には問題点が多い。安全保障戦略は変化している。政府は既定方針に固執するのではなく、最新の安保戦略に沿って方針を見直し、沖縄の負担軽減に取り組むべきだ。

■山形新聞「辺野古代執行判決 負担を強い続けるのか」
 https://www.yamagata-np.jp/shasetsu/index.php?par1=20231221.inc

 だが、安保政策上も辺野古の新基地建設が本当に有効で「公益」に沿うかは疑問だ。南西諸島周辺で有事が起きれば、沖縄の米軍基地は真っ先に攻撃の対象となるだろう。米軍の最近の戦略は機動性を重視する。沖縄の米海兵隊は11月、小規模な即応部隊を発足させた。辺野古の新基地は普天間飛行場よりも滑走路が短く使い勝手が悪い。在沖縄の米軍幹部は辺野古移設を「最悪のシナリオ」と呼び、「純粋に軍事的な観点からは普天間にいた方がいい」と報道陣に語った。
 移設合意を「唯一の解決策」と言い続けるよりも、最新の戦略に沿って既定路線を見直していくことが、日米同盟を本当に機能させるためには必要だろう。

■信濃毎日新聞「辺野古代執行訴訟 まかり通った国家の論法」/まともな審理なく/数々の懸案と疑念/繰り返される恐れ
 https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023122100137

 抜き難い国家の目線を感じる。
 沖縄県名護市の沿岸で進む米軍辺野古基地の建造を巡り、福岡高裁那覇支部は玉城デニー知事に対し、国が申請した設計変更を承認するよう命じた。
 申請を承認しなかった県の処分の妥当性を審理せず、知事の対処を違法とした9月の最高裁判決を盾に取っている。
 住民の暮らしを預かる県の裁量は認めず、米国との約束を最優先する政府の主張を追認した。憲法に記された地方自治を司法が踏みにじったに等しい。
 (中略)
 在沖縄米軍の幹部は「軍事面では普天間にいる方がいい」と発言している。米側が辺野古基地では支障があると言い出した場合、屋久島沖の事故後、米オスプレイの飛行さえ止められなかった政府は返還の履行を迫れるのか。
 日米の軍事連携の深化が招き寄せる危険性を「抑止力」の一言で覆い隠す。四半世紀も前の決定である辺野古基地の必要性について、国民に説いてもいない。
 15年から続く辺野古基地を巡る一連の訴訟で、司法は政府のうたう「公益」を裏書きしてきたと言っていい。抑圧される少数者を法で救済することなく、国防を掲げた国家による統制に、結果的に加担している。
 岸田文雄政権は有事の際の部隊展開に備え、9道県の空港や港湾を「特定重要拠点」とし、活用する計画を立てている。
 敵基地攻撃ミサイルの配備先や130棟の弾薬庫の整備地は、広く本土にも及ぶだろう。人口が比較的少ない地域を見定め、振興策をちらつかせて住民の分断を図る。国の無理押しは、もはや沖縄だけの問題ではない。
 公益は本来、人それぞれに身近な自治を国が保証し、非効率ではあっても、利害をぶつけ合いながら合意をたぐり寄せることでしか成り立たない。
 過去に例のない代執行は、地方自治の趣旨に反し、民主的であるべき社会の営みに国家権力が割って入ることを意味する。

■中日新聞・東京新聞「『代執行』判決 辺野古は『唯一』なのか」
 https://www.chunichi.co.jp/article/825262?rct=editorial

 しかし、日米合意を盾に「辺野古が唯一の解決策」と繰り返す政府側に非はないのだろうか。
 「マヨネーズ並み」の軟弱地盤は深さ最大90メートルにも達する。国は海底に7万本もの砂杭(くい)を打ち込むというが、実際に可能なのか。
 政府の地震調査委員会は昨年、沖縄でマグニチュード(M)8の巨大地震が起きる可能性を公表した。工事の難度が高い上に、さらなる地震対策も迫られる。そのような海域に基地を建設する発想自体が危ういのではないか。
 費用も膨大だ。当初見積もりで3500億円以上だった総工費は再試算で約2・7倍に膨らんだ。資材や人件費などはさらに高騰しており、工費がどの程度まで膨れ上がるのか、予測は困難だ。
 そもそも建設予定地の大浦湾は約260種の絶滅危惧種を含めて多様な生物が生きる自然の宝庫であり、厳格な環境保全が求められる。貴重な海は破壊ではなく、保護の網をかけるべきだ。
 (中略)
 辺野古新基地は滑走路の短さなど、米国側からも軍事的見地からの疑義が出ているという。
 普天間返還は当然だとしても、辺野古への移設は到底、合理的とは言えない。国には移設先の見直しを含めて、米国側と再協議するよう求めたい。

■中国新聞「辺野古代執行判決 地方自治の根幹にも関わる」
 https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/400540

 今回の判決は司法判断に従わないのは法令違反とし、設計変更申請の放置は「社会公共の利益を侵害する」と断じた。しかし代執行という手法が抱える本質的な問題点を置き去りにしてはいないか。
 国と地方の関係を「対等」と位置づけた地方分権改革に伴って2000年に導入された手続きであり、もとより厳しい要件を定める。基地問題であろうとなかろうと、国の方針に逆らうと権限を取り上げる手法は一度でも行使されれば乱発を招く恐れもある。
 玉城知事も自治体の処分権限を国が奪う介入手段だとして「沖縄県の自主性および自律性を侵害する」と主張していた。自治の根幹に関わるだけに慎重な判断が求められるはずなのに、第1回口頭弁論で即日結審するなど、「結論ありき」で進んだようにも思える。少なくとも辺野古移設がどのように「公共の利益」なのかは、議論が尽くされていない。
 今こそ辺野古移設の現状についての謙虚な検証が求められよう。着工済みの工区では埋め立ての土砂搬入がほぼ完了し、国は年明けに大浦湾側の工事に着手する構えだ。ただ国が普天間基地の危険除去において「唯一の解決策」と繰り返してきたのに対し、米軍側から計画に疑問の声があることをどう考えるのか。

■山陰中央新報「辺野古代執行判決 強権で負担押し付けか」
 https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/500815

 だが、安保政策上も辺野古の新基地建設が本当に有効で「公益」に沿うのかは疑問だ。南西諸島周辺で有事が起きれば、沖縄の米軍基地は真っ先に攻撃の対象となるだろう。このため、米軍の最近の戦略は機動性を重視。沖縄の米海兵隊は11月に、小規模で機動的な即応部隊を発足させた。大規模な基地建設はもはや時代遅れと言うべきだ。
 さらに辺野古の新基地は普天間飛行場よりも滑走路が短く、米軍には使い勝手が悪い。在沖縄の米軍幹部は11月、辺野古移設を「最悪のシナリオ」と呼び、「純粋に軍事的な観点からは普天間にいた方がいい」と報道陣に語った。本当に返還されるのかも不明確だ。
 25年以上も前に決まった移設合意を「唯一の解決策」として進めるのは思考停止ではないか。最新の戦略に沿って既定路線を見直して行くことが日米同盟を本当に機能させるためには必要だ。固定化をやめれば、沖縄の基地負担は軽減できる。

■大分合同新聞「辺野古代執行判決 強権で負担押し付けるのか」

【12月22日付】
■河北新報「辺野古『代執行』判決 地方の民意封じていいのか」

■神戸新聞「辺野古代執行/国は自治を尊重し対話を」
 https://www.kobe-np.co.jp/opinion/202312/0017154702.shtml

 代執行訴訟では、地方自治法が要件とする「著しく公益を害する」かどうかが主な争点となった。「明確な民意こそが公益」と主張した県側に対し、判決は「県民の心情は十分理解できる」としながらも、普天間の危険性除去が公益と述べた。
 ただ、承認をしても軟弱地盤のため事業完了まで約12年かかり、辺野古移設は早くて2030年代半ばになるとされ、危険の早期解消は困難だ。投じられる国費の膨張も想定される。これが公益にかなうのか。
 さらに問題なのは、沖縄県の自主性と自律性が侵害される点だ。1999年の地方自治法改正で、国と地方の関係は上下・主従から対等・協力に転換した。国が代執行に踏み切れば、初のケースとなる。
 にもかかわらず、訴訟は第1回口頭弁論で即日結審し、移設の是非について実質的な審理はなされなかった。「結論ありき」で自治をないがしろにするような判決は、県民の反発をさらに強めるのではないか。
 辺野古への土砂投入から今月で5年となった。沿岸部南側の埋め立てはほぼ完了したが、軟弱地盤のある東の大浦湾側の方が広く、投入した土砂は全体の約16%にとどまる。後戻りできない状況ではない。

■山陽新聞「辺野古『代執行』判決 自治体の権限奪う危機感」
 https://www.sanyonews.jp/article/1493046?rct=shasetsu

 今回の訴訟は、国が進める埋め立ての設計変更を県が認めないことに対し、国が代執行を求めた。判決は、9月の最高裁判決で県の法令違反が確定しているとして、代執行の要件に該当するとした。
 しかし、その最高裁の判決自体に問題がある。本来は国民を救済するための制度を利用し、国が「私人」の立場で行政不服審査を請求したもので、国による制度の乱用だと行政法学者から批判が相次いだ。国が国を救済できるなら、自治体の決定はいくらでも覆せることになるからだ。
 地方自治の根幹にもかかわらず、最高裁も今回の高裁も国の主張を追認し、十分な審理が行われなかったことには失望せざるを得ない。
 今回の訴訟で争点だった公益のとらえ方にも疑問が拭えない。県は「移設反対の民意が公益」と主張したが、判決は普天間飛行場の早期の危険性除去を公益とした。当事者である地域の意向を一切顧みないのは公益と言えるのか。

■愛媛新聞「辺野古代執行訴訟判決 地方自治の形骸化 強く危惧する」

■西日本新聞「辺野古の代執行 抜本的解決に向け対話を」
 https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1160107/

 判決を受けて、国は近く辺野古の大浦湾側の埋め立てに着手する方針だ。軟弱地盤の存在で移設事業の費用や期間に大幅な狂いが生じているのに、国は辺野古にこだわる構えを崩さない。力でねじ伏せるようなやり方では、県の反発は一層強まるだろう。
 判決は国の主張を認めながら、一方でこう付言している。「県民の心情も十分に理解でき、国もそれに寄り添った政策実現が求められる。国と県が相互理解に向け対話を重ね、抜本的解決が図られることが強く望まれている」
 安全保障の国策を遂行しつつ、これ以上の基地負担を拒否する沖縄の民意も切り捨てない。そんな「公益」の在りかを見つけるのが政治の仕事ではないか。国は判決に勢いづいて工事を強行するのではなく、まず県との対話を再開することで、誰もが納得する「公益」の姿を探るべきだ。

【12月24日付】
■高知新聞「【辺野古代執行】民意と自治の軽視を危惧」
 https://www.kochinews.co.jp/article/detail/709041

 地域住民がいくら反対の民意を示しても、国策の下では国は強硬手段が許されるのか。今回の判決が国が民意を軽視し、自治体の権限を奪う先例にならないか、同じ地方の住民として危惧する。
(中略)
 マヨネーズ並みとも表現される軟弱地盤の存在が表面化して以降、普天間の危険性の早期除去には疑問が膨らんでいる。
 改良工事は難航が予想される。砂を固めたくい約7万本を海面から70メートルの深さまで打ち込む必要がある。国は事業完了まで約12年とするが、専門家の間ではさらに長期化するとの見方もある。
 当初は3500億円と見込んだ総工費も、約2・7倍の約9300億円に膨らんだ。沖縄県の見立てでは2兆円を超える。国民の負担が膨らみ続けかねない状況は、「公益」として検討されたのだろうか。
 加えて在沖縄米軍幹部は先月、辺野古の滑走路は普天間より短い約1800メートルとなることに不満を表明している。「辺野古は最悪のシナリオ」として普天間の利便性の高さを強調したと報じられた。
 判決は付言で、「国と県が相互理解に向け対話を重ね、抜本的解決が図られることが強く望まれている」ともしている。国は問答無用の姿勢を改めていったん立ち止まり、県や米国との対話に臨んで真の「公益」を探るよう求める。

【12月26日付】
■新潟日報「辺野古代執行へ 自治体の権限を奪うのか」
 https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/333297

 高裁支部は20日の判決で、別の訴訟の最高裁判決で敗訴が確定した県側が承認しないのは法令違反であり、代執行以外での是正は困難だと指摘した。
 だが地方自治法は、国が自治体に委ねる「法定受託事務」への国の関与は最小限度とし、代執行を例外的と位置付けている。自治体の自主性と自立性が配慮されなければならず、国の主張を追認した判決は残念と言うほかない。
 注目したいのは、判決が、国と県の対話による解決を図ることに付言した点だ。
 移設問題を巡って県は、国に対話を求め続けてきたが、実現していない。国と地方の関係は「対等・協力」であり、対話の場を設けようとしない国の対応は著しく誠意を欠いている。

■京都新聞「沖縄代執行判決 地方自治の根幹を揺るがす」
 https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/1172152

 代執行は地方自治法の改正に伴い導入されたが、法改正の本義は自治を保障する憲法規定の具体化で、代執行には厳しい要件が定められている。
 ところが裁判所は第1回口頭弁論で即日結審するなど、公益について議論を尽くそうとはしなかった。
 代執行は最終的な手段であり抑制的であるべきだ。結論ありきの判決だったと言わざるを得ない。
 一方で判決は歴史的な県民の心情を「十分理解できる」とし、「対話による解決を望む」と「付言」した。さらに、今後また設計変更が必要になれば再び法廷闘争になる懸念も示唆した。それなら、沖縄県が提起した問題を司法の場で十分に検討すべきではなかったか。
 (中略)
 問題は、政府が「沖縄の心に寄り添う」と言うばかりで、県民に向き合う努力が見えないことにほかならない。地域住民の理解を欠いた安全保障は危うい。
 こうした政府の追認とも言える判決が続くことで、沖縄県民の複雑な思いを軽んじる空気が政府や本土の世論に浸透しかねないことも懸念する。防衛の論理に自治や民意が置き去りにされてはならない。