高市早苗内閣が10月21日に発足して1週間。主なマスメディアの世論調査で、内閣支持率が出そろってきました。支持率は70%前後と高い水準です。日経新聞・テレビ東京の調査では74%、毎日新聞の調査では65%。いずれの調査でも、昨年10月の石破茂内閣の発足時を23ポイントから13ポイント上回っています。
支持は若い世代で特に高いようです。朝日新聞によると、全体では68%ですが、30代は86%。50代以下で70%以上なのに対し、70歳以上は54%にとどまっています。日経新聞・テレビ東京の調査でも、30代以下の支持は8割を超えているとのことです。
一方で、「政治とカネ」に対して民意は厳しく見ているようです。朝日新聞の調査では、自民党に対して、「政治とカネ」の問題を繰り返してきた体質を「変えられる」との回答が23%なのに対し、「変えられない」は69%に上りました。毎日新聞の調査では、「裏金議員」の起用に対して「問題だ」は60%、「問題だとは思わない」は22%でした。
高市首相にまだ何ら実績はない中でも、若い世代を中心に民意は期待しているようです。ただし、手放しの期待でもなく、白紙委任でもないことは、このブログの一つ前の記事でも触れた通りです。
※参考過去記事
高市内閣の支持率は極めて高いと言っていい水準ですが、政党支持率に目を転じると、興味深いと感じることがあります。
どの調査もおおむね、自民党の支持率は前回調査から上がっています。“高市効果”なのかもしれません。しかし、共同通信の調査では、前回比で下がっています。他紙は前回調査が9月なのに対し、共同通信の前回調査は、高市氏が自民党総裁に選出された直後の10月上旬です。
整理すると、自民党の支持率は、石破総裁当時の9月と比べると上昇しているが、高市総裁選出時と比べると下がっている可能性があります。なぜ下がったのか。公明党の連立離脱、その後の日本維新の会との連立、あるいは自民党役員や閣僚の人事などが要因でしょうか。高市首相には高い期待が寄せられているけれども、自民党に対してはそれほどでもない、ととらえる余地がありそうです。
思い立って、石破政権発足時の自民党の支持率も調べてみました。いずれの調査でも、石破政権発足時の方が今回よりも高い。つまり、高市政権が実現して自民党の支持率が上がったと言っても、石破政権発足当時の水準には達していない、ということです。
以下に、一覧表にまとめてみました。

自民党総裁選の経緯を思い起こせば、当初は小泉進次郎氏が優位と見られていました。しかし、決選投票では、国会議員票は高市氏に多く流れました。右派の高市氏が総裁になれば、リベラル寄りとされた石破総裁を嫌って離れた右派層、極右層の支持が戻ってくると考えた国会議員が多かったためだとの指摘があります。
確かに、右派層、極右層の支持は戻ってきたのかもしれません。自民党の支持率が上がる一方で、国民民主党や参政党は支持を落としています。ただし、高市氏の総裁選出、公明党の連立離脱、維新との連立、NHKから国民を守る党に所属する議員を参議院で統一会派に取り込んだことなどによって、右傾化の度合いを強める方向へ舵を切った自民党を嫌い、離れていった穏健保守層、中道層の支持者も少なくない可能性があるように思います。
自民党総裁選の決選投票で高市氏に票を投じた自民党の国会議員たちが、党の支持を回復し、ひいては自分たちの選挙も有利に戦えるようにと考えたのだとしたら、現実はそうそう思い通りにはいかないかもしれません。今後の焦点は、高市内閣が支持のウイングをどれだけ広げられるかですが、公明党のようなブレーキ役の姿はなく、維新はひたすら右傾化へ突っ走るアクセルのような存在に思えます。今後を注視しています。