今年の憲法記念日は、自民党が改憲の発議に必要な3分の2以上の議席を、衆院で初めて単独で獲得している中で迎えました。高市早苗首相は4月の自民党大会で「時は来た」と、改憲に異様なまでの前のめり姿勢を示しています。新聞各紙の5月3日付の紙面では、例年以上に「憲法」の扱いが大きかったように感じます。いくつか、書きとめておきます。
東京発行の新聞6紙のうち、日経新聞以外の5紙(朝日、毎日、読売、産経、東京)はいずれも憲法に関連した記事が1面トップでした。朝日新聞と読売新聞は、一つ前の記事で紹介した郵送世論調査の結果です。

▽デモを報じるメディア、報じないメディア
東京新聞の1面トップ記事の見出しは「高市政権 動き加速」とともに「反対デモ 訴え活発」が並びました。毎日新聞は社会面トップに「護憲・反戦 デモの輪」「ウェブカレンダーで急拡大」の見出しの記事を大きく掲載しました。
高市政権は米国とイスラエルのイラン攻撃に対して法的な評価を避け続けていること、高市首相が日米首脳会談でトランプ米大統領の賞賛に終始したこと、そして高市首相の前のめりの改憲志向、殺傷能力のある武器の輸出解禁、スパイ防止法制定への動きなどに、憲法の平和主義が危機にあると感じる人が声を上げ始めているのだと思います。3月以降、国会前や全国各地でデモが行われています。個々人が自発的に集まってくることが特徴だと報じられています。
デモや集会は憲法で保障された権利である「表現の自由」の行使です。その権利を路上で行使している人たちがいることを知ることが、異なった考え方や意見に触れる機会となることもあります。同じように、自分も声を挙げようと考える人もいます。デモや集会を報じることには、そうした意義があります。
東京新聞や毎日新聞だけでなく、朝日新聞もデジタル版で例えば「デモ 憲法」で検索すれば、デモを報じるいくつもの記事がヒットします。一方で、読売新聞や産経新聞では、同じようには記事は見当たりません。両紙は憲法改正が社論です。
▽高市総裁インタビュー
目を引いたのは産経新聞の1面トップです。見出しは「改憲 参院選合区解消急ぐ/緊急事態条項も先行」。「高市・自民総裁 単独インタビュー」とある通り、首相としてではなく、自民党総裁の立場で話した内容との位置づけです。1面に本記、2面にサイド記事「改憲 参院野党と連携焦点」、4面に「一問一答」と手厚い扱いです。
新聞が要人の単独取材を狙うのは当然のことです。わたしがここで思うのは取材を受ける政治家の側の問題です。テーマによって政党の党首が取材に応じる媒体を選別することは、あり得ることだとは思います。
ただし、どう立場を使い分けようとも、「高市総裁」と「高市首相」は同一人物です。そして、首相としての「政治家高市早苗」は、記者会見などのマスメディアの直接取材の機会が石破前首相や岸田元首相と比べて少ないことが指摘されています。その一方でX(エックス)では連日、見解を発信。4月には、国会審議への姿勢を巡る報道を「全く事実ではない」と否定。「それにしても、他の事も含めて、最近は事実と全く異なる報道が増え過ぎている事は残念です」と投稿しました。何がどう事実と異なるかを示さず、一方的に「増えすぎている」との表現まで使いました。反論が来ない場で、言いたいことだけを言うのが高市首相の手法だと考えざるを得ません。
https://x.com/takaichi_sanae/status/2040651518668620178
憲法改正を社是にしている媒体を選別して、首相と党総裁の立場を使い分け、持論を述べる手法それ自体が、異論には耳を貸さない、意見の違いを熟議で乗り越える意思も発想もない「政治家高市早苗」の実像をよく表しているように感じました。
なお、紙面に掲載された写真の説明文によると、インタビューは自民党本部ではなく首相官邸で行われたとのことです。
東京発行の新聞6紙はいずれも3日付の社説で憲法を取り上げています。いずれも各紙のサイトで全文が読めます。見出しを書きとめておきます。これだけでも、各紙ごとの論調の違いが分かると思います。
■朝日新聞
「高市政権と憲法 『改憲ありき』を繰り返すのか」/安倍路線の踏襲では/「立憲主義」の不在/中山方式という知恵
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16456058.html
■毎日新聞
「公布80年の憲法論議 主権者として向き合おう」/規範軽んじる政治権力/市民参加の仕組み必要
https://mainichi.jp/articles/20260503/ddm/005/070/104000c
■読売新聞
「憲法記念日 世界の激動踏まえ議論深めよ/偽情報の氾濫への対応も急務だ」/具体的条文が欠かせぬ/地方の声軽視するのか/想定外のデジタル社会
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20260502-GYT1T00360/
■日経新聞
「憲法改正は丁寧で建設的な議論を」/判断材料を国民に広く/次世代につなぐ責任
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK0143W0R00C26A5000000/
■産経新聞
「憲法施行79年 9条の弊害を直視したい 改正実現へ条文化に着手せよ」/「油断!」の危機眼前に/議員身分ばかり大切か
https://www.sankei.com/article/20260503-BDPGOIKPYZN3FLXOUPEAVBK4OA/
■東京新聞(中日新聞と共通)
「憲法記念日に考える 権力縛る原点に返ろう」/「理想語るもの」と自民/政府に戦争起こさせぬ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/486001