5月3日の憲法記念日に合わせて、朝日新聞、読売新聞、共同通信がそれぞれ郵送の世論調査を実施。紙面では5月2日付、3日付に掲載されました。高市早苗首相が4月12日の自民党大会で「時は来た」と憲法改正に前のめりの姿勢を示しましたが、3件の世論調査の結果を見ていくと、民意は冷静に憲法改正論議を見ている様子が浮き彫りになるように思います。
憲法を改正する必要かあるかどうかでは、いずれの調査も改正に肯定的な回答が否定的な回答を上回っています。読売新聞の調査では「改正する方がよい」57%に対して、「改正しない方がよい」40%です。ただし、朝日新聞の調査では「変える必要がある」49%に対して「変える必要はない」44%と、賛否は拮抗しているとも言えそうです。調査によって、賛否の状況にはかなりの違いがあります。「改正」という肯定的イメージが伴う用語を使うか、「変える」「変えない」の用語を使うかによっても結果は異なるように思います。ただし、憲法自体の条文に「改正」の手続き規定があり、「改正」の用語を設問に使うことにも理由はあると感じます。
憲法改正をめぐる3件の調査の主な回答の状況を以下にまとめてみました。

高市政権の元での改正に期待するかどうかでは、読売新聞の調査では「期待する」54%、「期待しない」43%。同紙は3日付朝刊の1面トップの記事に「高市首相に期待感」の脇見出しを立て、詳報面では、岸田、石破内閣当時より期待感の水準が高まっているとする識者(井上武史・関西学院大教授)のコメントに「高市政権 改憲機運高まる」との見出しも付けています。ただし、朝日新聞の調査では、高市政権の元での改憲に対して「賛成」47%、「反対」43%。同紙は3日付朝刊の1面トップに「高市政権で改憲 賛否拮抗」の主見出しを取っています。
国会で改憲の議論を急ぐ必要があるかどうかについて、朝日新聞調査と共同通信調査が尋ねており、回答は「急ぐ必要がある」は朝日33%、共同46%に対し、「急ぐ必要はない」はそれぞれ62%、53%です。共同通信の調査結果を掲載した東京新聞の2日付朝刊は「改憲『急ぐ必要ない』53%」を主見出しにしています。
興味深いのは、朝日新聞調査が、政治にもっとも優先的に取り組んでほしい政治課題を尋ねていることです。12の選択肢から一つを選ぶ設問で、トップは「年金・医療・介護」で37%。次いで「財政・税制・金融」17%、「こども・子育て、教育」13%と続き、「憲法(改憲・護憲)」はわずか1%です。
このブログでは、2月の衆院選後にマスメディア各社が実施した世論調査の結果から、選挙で投票に際して重視した政策や、選挙後の高市政権に期待する政策をまとめました。そこでも「憲法」の優先順位は下位でした。その状況に変わりはないと言っていいように思います。
※参考過去記事
「時は来た」とまで口にする高市首相の高揚感が何に基づくのか、民意の何を見ているのかを疑問に思うほど、社会で憲法改正の機運は高まっていないと言わざるを得ません。
このほか、3件の世論調査結果で興味深く感じた回答状況を以下にまとめました。

憲法9条を変えるかどうかの回答状況は調査によってかなり異なります。9条の全文を提示して尋ねる(朝日新聞)かどうかなど、設問によっても結果が異なる可能性があります。
一方で、尋ね方の違いを問わず、回答状況の傾向が同じなのは、いわゆる「首相の衆院解散権」です。「衆院解散は首相の専権事項」との言辞もあり、マスメディアの政治報道でもしばしば何の留保もなくそのまま報じられています。しかし、憲法にそのような明文はありません。解散権の根拠になっているのは憲法7条の「天皇の国事」です。全文は以下の通りです。
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
一 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
二 国会を召集すること。
三 衆議院を解散すること。
四 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
五 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
六 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
七 栄典を授与すること。
八 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
九 外国の大使及び公使を接受すること。
十 儀式を行ふこと。
3番目の「衆議院を解散すること」が「内閣の助言と承認により」と定められているために、内閣総理大臣=首相の固有の権限のように行使されています。
3件の世論調査では、設問で憲法7条に触れているのは共同通信だけですが、回答状況は3件とも現状に懐疑的な回答が、現状容認の回答より13~9ポイント多くなっています。民意を踏まえて、憲法改正論議の対象には「首相の解散権の制限」も加えるべきではないかと感じます。
同性婚と選択的夫婦別姓は、朝日新聞の調査では「分からない」との回答がともに3割前後あるものの、肯定的な回答が否定的な回答を上回っています。人権にかかわることであり、まさに、時代の変化に合わせて変えて行くべき事項だと思います。
※メモ:各調査の概要は以下の通りです
朝日新聞 3000人対象 有効回答1827人 61%
読売新聞 3000人対象 有効回答2030人 68%
共同通信 3000人対象 有効回答1913人 63.8%