地方紙は問題意識共有〜翁長知事・菅官房長官会談の各紙社説

 少し時間がたってしまいましたが、備忘を兼ねて書きとめておきます。
 米軍普天間飛行場名護市辺野古地区への移設をめぐり4月5日に行われた、翁長雄志・沖縄県知事と日本政府の菅義偉官房長官の会談について、新聞各紙は6日付朝刊、7日付朝刊の社説で取り上げました。全国紙では朝日、毎日、読売、産経の4紙、地方紙・ブロック紙ではネット上のサイトで確認できた限りで12紙です。それぞれ見出しは以下の通りです。

【6日】
朝日新聞 「菅・翁長会談―『粛々と』ではすまない」
産経新聞 「菅−翁長会談 対話継続で一致点を探れ」
北海道新聞「国と沖縄の対話 対等な立場で進めねば」
信濃毎日新聞辺野古初会談 政府は寄り添う姿勢を」
中日新聞東京新聞「翁長・菅初会談 民意の重さ受け止めよ」
京都新聞辺野古初会談  民意に向き合ってこそ」
高知新聞「【菅・翁長会談】辺野古以外の道も探れ」
愛媛新聞「菅氏と翁長知事初会談 沖縄の民意をまず誠実に聞け」
熊本日日新聞「菅・翁長氏初会談 『政治の堕落』どう答える」※見出しのみ確認

【7日】
毎日新聞「菅・翁長会談 沖縄が示した強い意思」
▼読売新聞「菅・翁長会談 批判にも相手への配慮が要る」
▼デーリー東北「普天間問題 沖縄と真剣に向き合え」
秋田魁新報「『辺野古』初会談 対話続け事態打開図れ」
北日本新聞「菅・翁長氏会談/本土に向けた沖縄の声」※見出しのみ確認
神戸新聞「菅・翁長会談/政府こそ沖縄への理解を」
南日本新聞「[辺野古会談] まずは沖縄の声を聞け」


 全国紙4紙では、朝日、毎日は辺野古移設を推し進める政府方針に従来から批判的です。対して読売、産経は政府方針支持です。今回の社説でも、基本的に従来の論調を踏まえています。
 目を引かれたのは、毎日新聞が「私たちは辺野古移設の現行計画を白紙に戻し、米政府と再交渉すべきだと考える」と、明確に記したことです。地方紙やブロック紙を含めて、日本政府に批判的な社説の多くは、政府に対し、沖縄の民意に向き合うよう求め、まずは辺野古で強行再開した海底ボーリング調査をやめるよう求めてきました。ただ、多くはその後のことにまで具体的な言及はありませんでした。今回の毎日新聞の社説は、従来より一歩踏み込んだ主張だと感じます。地方紙やブロック紙の中にも、「政府が本当に負担軽減を図ると言うなら、辺野古一本に絞るのではなくさまざまな可能性を検討するべきだ」(高知新聞)などと、趣旨としては同じようなことを主張する社説も目にとまりました。
 地方紙・ブロック紙の社説は、やはり政府に対して批判的なトーンが圧倒しています。沖縄だけでなく日本全体の問題としてとらえるべきだとの受け止めや、中央政府の横暴に地方自治体はどう対抗すればいいのか、との問題意識などが、「地方・地域」の立場で共有されているように感じます。
 以下に、全国紙4紙と、地方紙・ブロック紙のいくつかの社説の一部を引用して、書きとめておきます。


朝日新聞「菅・翁長会談―『粛々と』ではすまない」

 積もり積もったものをはき出さずにはいられない。これまでの政府の対応を「政治の堕落」とまで言い切った翁長雄志沖縄県知事には、そんな強い思いがあったのだろう。
菅義偉官房長官との初の会談に臨んだ翁長氏の言葉を、国民全体で受け止めたい。
(中略)
翁長氏は米軍の「銃剣とブルドーザー」による強制的な基地建設の歴史を振り返り、「県民に対して大変な苦しみを今日まで与えて、普天間の危険性除去のために沖縄が負担しろと。それは日本の国の政治の堕落ではないか」と追及した。
 戦後70年間、沖縄の米軍基地撤去のために、政府がどれほどの努力をしてきたのか。日本の安全保障政策は常に基地負担にあえぐ沖縄の犠牲の上で成り立ってきた現実を、今こそ国民に見つめてほしい。翁長氏の指摘は、そんな重い問いかけだととらえるべきだ。
(中略)
菅氏は「これから国と沖縄県が話し合いを進めていく第一歩になった」と語った。翁長氏も応じる意向だ。これまで「聞く耳持たぬ」という対応を続けてきた政府は、沖縄からの苦言にとことん耳を傾けるところからやり直すべきだろう。
 そのためにまず、辺野古で進める作業を中止すること。それが話し合いに臨む最低限のルールではないか。もはや「粛々と」ではすまない。

毎日新聞「菅・翁長会談 沖縄が示した強い意思」

 昨年の名護市長選、県知事選、衆院選の沖縄小選挙区などを通じて、辺野古移設に反対する民意は明確に示され、もう後戻りすることはないということが、今回の会談で再確認されたのではないか。
 菅氏が先日「選挙結果は、基地賛成、反対の結果ではないと思う。総合的な政策の中で選ばれる」と語ったのは、事実をゆがめている。昨秋の知事選で、当時の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事は辺野古移設を前面に掲げ、約10万票の大差で敗れた。政府はその事実から目をそむけるべきではない。
 政府は沖縄の考えをよく分析し、対応を冷静に見直してほしい。安倍晋三首相の訪米や6月23日の沖縄の「慰霊の日」をにらんで、首相と知事の会談が調整されているという。県側が警戒する「首相訪米を前にした米国向けのアリバイ作り」ではなく、真摯(しんし)に向き合うべきだ。
 私たちは辺野古移設の現行計画を白紙に戻し、米政府と再交渉すべきだと考えるが、政府にはまず移設作業を中断し、沖縄とよく話し合い、主張に耳を傾けることから始めるよう求めたい。

▼読売新聞「菅・翁長会談 批判にも相手への配慮が要る」

 疑問なのは、翁長知事が激しい政府批判に終始したことだ。
 普天間飛行場について、「(強制接収で土地を)自ら奪っておいて、(辺野古移設以外の)代替案を持っているのか、という話をすること自体、日本の政治の堕落だ」などと非難した。
 米国が沖縄で民有地を軍用地として強制接収したのは事実だが、普天間飛行場の返還は1996年の日米合意以来、一貫して県内移設が前提だった。翁長知事も県議や那覇市長時代には長年、辺野古移設を容認していた。
 移設が実現しない限り、普天間飛行場の危険な現状が継続する。沖縄県内にも一定の容認論がある辺野古移設を追求することこそが「政治」の役割ではないか。
 翁長知事は、「移設を粛々と進める」との菅氏の発言を「上から目線」と批判し、「『粛々』という言葉を使えば使うほど、県民の怒りは増幅する」とも語った。
 菅氏は翌日、「不快な思いを与えたのであれば」と述べ、「粛々と進める」という表現は使わないと明言した。「粛々」が「上から目線」かどうかは見方が分かれようが、相手に対する配慮は建設的な協議に不可欠である。
 翁長知事も、「普天間飛行場の早期返還」の実現を目指すなら、挑発的な言葉を避けて、冷静に議論してもらいたい。

産経新聞「菅−翁長会談 対話継続で一致点を探れ」

 双方の主張が直ちに変わることはないだろう。特に、移設阻止を掲げて当選した翁長氏にとって、方針転換は難しい。しかし、対話を通じて一致点を見いだす努力をあきらめるべきでない。
 翁長氏が要望した安倍首相との面会も、できるだけ早く実現する必要がある。重要なのは、普天間の危険性がこのまま放置して良いのかについて、腹を割って話し合えるかだ。
 米側も「世界一危険な基地」と認める普天間の早期返還の実現には、国にも沖縄にも責任がある。代案を示さないまま辺野古移設を阻めば、普天間の危険性が固定化される。翁長氏には、その点をどう考えるのか、さらに詳しく語ってもらいたい。
会談では、抑止力における沖縄の地政学的な意味合いも議論された。抑止力の度合いを左右する辺野古移設の行方を、尖閣諸島をねらう中国が注視していることを忘れてはなるまい。
 辺野古問題と併せ、基地負担の軽減策や経済振興策を円滑に話し合える環境の構築も急がれる。

 
北海道新聞「国と沖縄の対話 対等な立場で進めねば」

 翁長氏は先月、沖縄防衛局に対し辺野古での海底ボーリング調査の停止を指示した。防衛局は関係法を所管する林芳正農水相に申し立て、農水相は翁長氏による指示の効力一時停止を決定した。
 これを受け翁長氏は岩礁破砕許可の取り消しを検討していた。このタイミングで菅氏が会談に応じたのは、翁長氏の「次の一手」を封じるためではないのか。
 その一方で国が着々と工事を進めていくのではとても対等な話し合いにはならない。
(中略)
 翁長氏の反発の根拠は知事選や衆院選で示された辺野古移設反対の民意だ。それが国の一存で覆されるなら、選挙で示される原発や農業、その他あらゆる政策に対する民意が無力化されかねない。
 地方自治に十分配慮して丁寧な合意形成を図ることが肝心だ。

京都新聞辺野古初会談  民意に向き合ってこそ」

 本土防衛のために県民の4人に1人が犠牲になった沖縄戦を経て、戦後も安全保障のために在日米軍専用施設の約74%を背負い続ける現実がある。それを「差別」と受け止める県民感情にどう向き合うか。政府のみならず、国民全体が問われている問題である。
 翁長氏は3月、沖縄防衛局の作業で許可区域外のサンゴ礁が損傷した可能性が高いとして作業停止を指示。防衛局の申し立てを受けた林芳正農相が指示効力を一時停止するなど異例の展開となり、法廷闘争に発展しかねない状況が続いている。
 菅氏は会談後、「国と沖縄県が話し合いを進めていく第一歩になった」とし、基地負担軽減策と振興策で連携していきたい考えを示した。だが、移設への作業を続けたままで冷静な対話ができるだろうか。
 ここは作業をいったん止めて話し合いを深めるべきだ。安倍首相も沖縄に出向き、早期に対話に応じる必要がある。ごり押しは許されない。

高知新聞「【菅・翁長会談】辺野古以外の道も探れ」

 会談で菅氏は「(辺野古移設が)唯一の解決策だ」と理解を求めた。しかし本当にそうだろうか。
 かつての米軍再編計画で普天間の移設は、在沖縄海兵隊約8千人のグアム移転とセットで実施することになっていた。それが8千人の半分強を先行移転させる方針に変わっている。
 沖縄に集中する海兵隊が攻撃されれば、米軍は大打撃を受けかねない。そこでグアムの拠点化を急ぎ、沖縄からの分散化を進める狙いが指摘されている。そうであるなら普天間の移設ではなく閉鎖も、選択肢として浮上してくるのではないか。
 辺野古移設は沖縄県民にとって基地の「県内たらい回し」にすぎない。大規模な恒久基地建設による新たな負担の押しつけとも映っていよう。
 「この道しかない」は安倍政権の決まり文句である。だが政府が本当に負担軽減を図ると言うなら、辺野古一本に絞るのではなくさまざまな可能性を検討するべきだ。菅氏だけでなく安倍首相も翁長知事と会い、原点に立ち戻って議論をやり直す時である。

愛媛新聞「菅氏と翁長知事初会談 沖縄の民意をまず誠実に聞け」

 国と沖縄県がようやく直接会談の場を持ち、対話継続を確認できた意義は大きい。しかし、あまりに遅きに失しよう。しかも菅氏は会談直後、「工事を進める考えに変わりはない」と断言した。会談しようがしまいが結論ありきで沖縄の「民意」など一顧だにする気がないと明言したに等しい。頑迷な安倍政権の姿勢に、強い憤りを禁じ得ない。
 まずは直ちに移設工事を中断し、誠実に地元の声に耳を傾けるべきだ。その上で丁寧に説明し、全国に応分の負担を求める国の責務を果たし、真摯(しんし)に理解を乞うのが最低限の政治の振る舞いであろう。
 にもかかわらず、翁長氏が知事に就任した昨年12月以降の、政権の強硬な態度は苛烈というほかない。
 何度も上京し会談を求めた知事を無視し、基地とは関係ないはずの沖縄振興予算を報復のように減額する。ついには知事が辺野古沖の作業停止を指示したが、防衛局は応じないばかりか同じ国の農林水産省に申し立て、指示の効力停止を決めた。国と県の対立悪化の原因はひとえに国側にあり、責任は極めて重い。
 圧倒的に権力を持つ国が、会談をアリバイに利用し、沖縄の訴えを黙殺しては大きな禍根を残そう。他の地方にとっても、県や住民を無視し、追い詰める政権の姿勢は人ごとではない。国民全体の信頼さえ失われかねない危機と肝に銘じ、謙虚な対応で事態打開に努めねばなるまい。

南日本新聞「[辺野古会談] まずは沖縄の声を聞け」

 政治の堕落という強い言葉をあえて口にした知事の支えは、昨年の選挙で示された沖縄県民の民意だ。知事選は大差で勝利し、衆院選も反対派が全勝した。
 菅氏は「沖縄と連携しながら信頼を取り戻したい」と呼びかけた。そうであるなら、これまでの「冷遇」を改め、民意と誠実に向き合うほかあるまい。
だが、菅氏は会談後も「工事計画は法令に沿って進める」と従来の立場を変えなかった。「信頼を取り戻したい」というのなら、いったん作業を止めるべきだ。
 そのうえで安倍首相も沖縄を訪れてほしい。誠実に県民の声に耳を傾ける姿勢だけが、もつれた糸を解きほぐす手段だろう。
(中略)
普天間飛行場の全面返還で日米が合意してから来年で20年になる。「最低でも県外」と表明した鳩山政権を挟み、移設計画は迷走を続けてきた。
 戦後70年を経ても、米軍施設の約74%が国土面積0.6%の沖縄県に集中する現実がある。
 「上から目線だ」という翁長知事の言葉は、沖縄だけに痛みを強いてきた多くの国民に向けられた怒りでもあると受け止めたい。