沖縄の「構造的差別」と憲法〜衆院選報道で問われてしかるべきもの

 衆院選が4日、公示されました。投開票日の16日まで、マスメディアの報道も連日、選挙が大きな比重を占め、取材に多大な労力を割くことになります。この選挙で問われるものは多々あると思いますが、個人的には各党もさることながら各マスメディアが沖縄の問題をどのようにとらえるのかに着目していこうと考えています。
「きょう公示」という4日付の朝刊紙面で、沖縄の新聞の沖縄タイムスは社説の結びで以下のように指摘しています。

 普天間問題やオスプレイ配備問題などで露呈した日本の安全保障政策の欠陥とは何か。今回の選挙は、それを掘り下げ、問い直していく、またとない機会でもある。
 公示までのテレビ報道や全国メディアの扱いを見ると、普天間問題がすっかり争点から消えたような印象を受ける。基地を一方的に沖縄に押しつけ、争点からもはずす−その姿勢こそ「構造的差別」である。

沖縄タイムス:社説[きょう公示]公約の違い明確に示せ(2012年12月4日)
 http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-12-04_42337

 私が身を置く大阪で、身の回りで手に取ることができる同じ4日付朝刊の新聞紙面をチェックしてみました。朝日新聞毎日新聞、読売新聞、日経新聞産経新聞京都新聞神戸新聞の7紙の社説は、震災復興、原発、TPP、消費増税尖閣領有等々、それぞれに言説を展開していますが、「沖縄」の2文字はどこにもありませんでした。公示後の各党党首の第一声や注目選挙区の情勢、有権者の声などを載せた4日夕刊では、朝日新聞が社会面に「一票 基地動かす党に」の見出しとともに沖縄の有権者の思いを紹介する記事を掲載。しかし、他の全国紙にはやはり「沖縄」に触れた記事は見当たりませんでした。
 沖縄タイムスの社説の指摘は、政治だけの問題ではないのだと思います。普天間問題が争点から外される、という構造的差別に対し、本土マスメディアが異を唱えず、結果的にであれ認めてしまう(ないしは黙認してしまう)のだとしたら、それは差別への加担です。
 これも個人的な見解ですが、今度の衆院選で問われているのは、突き詰めれば国家と個人の関係だと思います。国家を個人の上位に位置付けるのか否か。個人は一方的に国家に奉仕すべき存在なのか否か。わたしは否です。そして、沖縄の人々だけが例外であるはずもありません。国家と個人の関係は、憲法のありように収れんしていくのだと考えています。憲法について、国家が個々人の諸権利を保障する側面に重きを置くのか、国家が個々人に義務を課す側面を重視するのか。この憲法観の違いは、戦争をする社会であることを容認するのか、否定するのかの違いに行き着くのかもしれない、とも考えています。この衆院選では、憲法をめぐる論戦とマスメディアの報道にも注目しています。

 以上の問題意識をもとに、しばらくの間、この衆院選をマスメディア、中でも新聞がどう伝えたか、備忘を兼ねて記録に留めていこうと思います。

※注:ウオッチの対象は朝日、毎日、読売、日経、産経(いずれも大阪本社発行の最終版)と、京都、神戸の関西有力地方紙2紙です

▼4日付朝刊各紙の主な記事の見出し(原則として1面のトップ記事とそれに次ぐ記事、1面以外でも目についた記事)
【朝日】
1面トップ「政党乱立 1500人出馬へ」「衆院選きょう公示」
1面準トップ「公約を問う1 異なる憲法観 吟味を」
3面・1面から続き「改憲叫ぶ自民、維新と共鳴」「民主は『憲法を活かす』」
第3社会面「『核』今こそ考えたい」「相次ぐ発言 被爆地注視」

【毎日】
1面トップ「脱原発 問われる本気度」「衆院選きょう公示」
1面準トップ・私の視点1「4年託す吟味と覚悟を」(倉重篤郎論説委員長)

【読売】
1面トップ「消費増税原発 争点に」「1400人超立候補へ」
1面準トップ「『苦い薬』で吟味しよう」(永原伸政治部長

【日経】
1面3番手「立候補1500人に迫る」「衆院選、きょう公示」
※1面トップは「ローソン、ヤフーと宅配」

【産経】
1面準トップ「きょう公示」
※1面トップは「つり金具 全区間で落下」「中日本高速きょう捜索」(中央道トンネル事故続報)
3面「改憲 問われる各党」「自民『国防軍を』、民主は争点否定」

【京都】
1面トップ「政権選択問う」「1500人立候補見通し」
1面準トップ「京都 小選挙区31人」

【神戸】
1面トップ「立候補1500人に迫る」「政党乱立で最多規模」
1面準トップ「県内 50人立候補へ」

▼各紙の4日付朝刊の社説
【朝日】総選挙 主権者と政治 民主主義の主人公として
【毎日】衆院選きょう公示 政治に魔法の杖はない
【読売】12衆院選 震災復興 歩みを加速させる具体策示せ
【日経】12衆院選 政策を問う 人気取りの政策に惑わされるな
【産経】衆院選公示 国家再生 どの党に託す 「尖閣危機」克服策聞きたい
【京都】きょう公示 政策実現性に目を凝らして
【神戸】きょう告示 政策実現への覚悟が問われる

▼各紙の4日夕刊の主な記事の見出し(1面と社会面)
【朝日】
・1面「12党 政策対決」「原発増税景気対策」「民主・自公・第三極競う」
・社会面「岐路 明日へ選ぶ」「原発是非 政治任せに終止符」南三陸、沖縄、山口1区(原発)、群馬4区(世襲
・第2社会面「乱立 民意つかめ」「集合離散 わが党こそ受け皿」大阪1区(6人出馬)、12区(民主前・樽床総務相と自民元)、兵庫8区(公明)、東京18区(菅前首相)、北海道1区(メダリストvs民主前)

【毎日】
・1面「民主vs自民vs第三極」「景気 原発 消費税問う」「福島で4党首第一声」
・社会面「見極めるのは私」「復興 安心 願い切実」被災の東北3県、景気と雇用、TPP、税と社会保障原発・エネルギー
・第2社会面「飛び交う将来像」大阪7区(官房長官)、京都1区(維新vsみんな)、奈良2区(5党激戦)、山口1区(原発

【読売】
・1面「民・自 政権かけ対決」「維新・未来の伸長焦点」「原発増税で論戦」
・社会面「日本再生 誰に託す」大阪、東京、福島
・第2社会面「乱立 政策見極め」京都4区(8人出馬)、大阪12区(民主前・樽床総務相)、広島4区(世襲)、兵庫8区(公明)

【日経】
・1面「政権懸け激突」「枠組み・第三極焦点」「経済再生・原発で論戦」
・社会面「師走の乱戦幕開け」大阪7区(民自共・第三極対決)、東京18区(菅前首相)、愛知5区(民主前vs自民新)
・第2社会面「被災地『復興 誰に』」「『全国で道筋 議論を』」「被災3県 激戦」

【産経】
・1面「日本再生 民意問う」「12党乱戦 1480人超届け出」
・社会面「第三極vs閣僚 大阪の陣」「維新・みんな連合に民主危機感」大阪1区(民主前が未来へ、6人出馬)、7区(官房長官)、12区(民主前・樽床総務相)、17区(民主分裂、前職が未来へ)
・第2社会面「骨肉・乱立 師走駆ける」「離党組 本家と仁義なきバトル」京都1区(民主前、自民新が離党し、みんな、維新へ)、和歌山2区(民主前が維新移籍)、滋賀4区(自民元の息子が維新から)