「数の力にものを言わせた横暴」「あぜんとする強行劇」の秘密保護法案、衆院通過〜27日付の新聞各紙の社説、紙面

 特定秘密保護法案の衆院通過を報じる27日付朝刊各紙の記録です。
 わたしが身を置く大阪で目にした朝日、毎日、読売、産経、日経、京都、神戸の7紙のうち、日経を除く6紙が1面トップで報じました。日経は1面準トップで、ちなみに1面トップは経済紙らしくパナソニックの工場売却の独自ダネでした。
 論調は、朝日、毎日、日経、京都、神戸の5紙が、「数の力にものを言わせた横暴」(京都)「あぜんとする強行劇」(毎日)「なんとも残念な光景というほかない」(日経)などと批判的であるのに対して、読売、産経の2紙は「与野党の枠を超えた多くの支持によって、衆院を通過したことは評価できる」(読売社説)、「『与党の強引な採決』との批判はあたらない」(産経社説「主張」)と好意的な評価です。一方では「公務員が萎縮して取材に応じず、報道機関が必要な情報を伝えられなくなる恐れは残る」(読売)、「60年の秘密指定期間について、必要がなくなれば、それを待たずに解除することもはっきりさせておく必要がある」(産経)と課題を挙げています。同じ論点は他紙も指摘しており、深刻に受け止め、だからこそ廃案を求めたりしています。比べると、読売、産経両紙は随分と楽観しているようにも思えます。
 以下に7紙の社説の一部を引用、紹介しておきます。余力があれば後日、備忘を兼ねて、全国のブロック紙、地方紙の社説の紹介をまとめてみようと思います。
 なお、全国のブロック紙、地方紙の社説は、NPJ(News for the People in Japan)にリンク集のページがあります。1週間ぐらいはリンクをたどって、各紙のサイトで社説が読めます。便利です。
 ※NPJ http://www.news-pj.net/siryou/shasetsu/2013.html#anchor-himitsuhozen


◇批判
朝日新聞特定秘密保護法案 民意おそれぬ力の採決」

 数の力におごった権力の暴走としかいいようがない。
 民主主義や基本的人権に対する安倍政権の姿勢に、重大な疑問符がつく事態である。
 特定秘密保護法案が、きのうの衆院本会議で可決された。
 報道機関に限らず、法律家、憲法や歴史の研究者、多くの市民団体がその危うさを指摘している。法案の内容が広く知られるにつれ反対の世論が強まるなかでのことだ。
 ましてや、おとといの福島市での公聴会で意見を述べた7人全員から、反対の訴えを聞いたばかりではないか。
 そんな民意をあっさりと踏みにじり、慎重審議を求める野党の声もかえりみない驚くべき採決強行である。

毎日新聞「民主主義の土台壊すな」1面肩掲載

 あぜんとする強行劇だった。
 衆院国家安全保障特別委員会で特定秘密保護法案が採決された場に安倍晋三首相の姿はなかった。首相がいる場で強行する姿を国民に見せてはまずいと、退席後のタイミングを与党が選んだという。
 与党すら胸を張れない衆院通過だったのではないか。採決前日、福島市で行った地方公聴会は、廃案や慎重審議を求める声ばかりだった。だが、福島第1原発事故の被災地の切実な声は届かなかった。
 審議入りからわずか20日目。秘密の範囲があいまいなままで、国会や司法のチェックも及ばない。情報公開のルールは後回しだ。
 国民が国政について自由に情報を得ることは、民主主義社会の基本だ。法案が成立すれば萎縮によって情報が流れなくなる恐れが強い。審議が尽くされたどころか、むしろ法案の欠陥が明らかになりつつある。

日経新聞「秘密保護法案の採決強行は許されない」

 なんとも残念な光景というほかない。政府・与党が衆院特別委員会で特定秘密保護法案の採決を強行した。法案はその後の衆院本会議で自民、公明両党とみんなの党などの賛成多数で可決された。
 この法案には、国民の「知る権利」を損なう危うさがある。日本維新の会みんなの党との間で修正がなされたものの根本的な問題は解決されていない。徹底した見直しに向けて議論を続けるべきだ。私たちはそう主張してきた。
 それが、短期間でまとめた修正案を十分な審議時間を確保することなく採決する拙速ぶりである。
 政府・与党は「慎重に審議してきた」という。だがともに修正案を作った維新の会は「審議が尽くされていない」として、採決を欠席した。このことが実態をよく表している。
 審議の場は参院に移る。「良識の府」の理念に恥じない議論と法案の抜本的な見直しを求めたい。

京都新聞「秘密保護法案 数の横暴は許されない」

 衆院国家安全保障特別委員会での審議はたった3週間足らず。しかも、特別委で強行採決後、本会議に緊急上程されて即日採決である。基本的人権にかかわる重要法案であるにもかかわらず、与党とみんなの党日本維新の会による4党修正案の審議は素通りも同然である。数の力にものを言わせた横暴と言わざるを得ない。
 特別委が法案への地方公聴会福島市で開き、首長や学者、弁護士らから法案への反対論や慎重審議を求める声が相次いだのはおとといのことだ。それらの意見を全く無視する翌日の強行採決である。いったい何のための公聴会だったのか。これでは意見を聞くというより、衆院通過へのアリバイづくりだったとしか思えない。

神戸新聞「秘密法案採決 『数の力』で押し切るのか」

 多くの野党が反対する中で採決を強行した。菅義偉官房長官は「審議の中で(野党からの)それなりの理解は得られてきている」と語ったが、修正協議で合意した日本維新の会からも「なぜ急ぐのか分からない」との声が上がるほどだ。とても審議が尽くされたとはいえない。
 何より「知る権利」を制約する懸念は消えておらず、不安は膨らんだままだ。「数の力」で押し切るやり方は断じて容認できない。


◇評価
▼読売新聞「秘密保護法案 指定対象絞り『原則公開』確実に 参院で文書管理の論議を深めよ」

 日本にも他の先進国と同様の機密保全法制が必要だとの意思が、明確に示されたと言えよう。
 安全保障に関する機密情報を漏えいした公務員らへの罰則を強化する特定秘密保護法案が、衆院本会議に緊急上程され、自民、公明の与党とみんなの党など議席の7割もの賛成多数で可決、参院に送付された。
 法案修正で合意していた日本維新の会は採決に反発し、退席した。維新の会が賛成票を投じなかったのは残念だが、与野党の枠を超えた多くの支持によって、衆院を通過したことは評価できる。
 ただ、与党とみんな、維新がまとめた修正案に対する審議は十分ではない。「知る権利」が制限されることなどへの国民の懸念が払拭されたとも言い難い。
 政府・与党は参院審議で、幅広い支持を目指し、制度の運用のあり方も丁寧に説明すべきだ。

産経新聞「秘密保護法案 成立に向け大きな前進だ」

 特定秘密保護法案が与党とみんなの党の賛成多数により、衆院本会議で可決された。
 日本維新の会は審議が不十分だとして、衆院特別委員会の採決を棄権し、本会議でも採決時に退席した。
 党派を超えてより多くの勢力が賛同する形にならなかったのは残念だ。だが、与党と維新、みんなの4党はすでに、法案修正で合意しており、その内容を実現に向けて進めるべきだった。「与党の強引な採決」との批判はあたらない。
 国として安全保障の機密を守る法整備は欠かせない。その認識は維新も含め今後とも共有できるはずだ。知る権利や報道の自由が損なわれないかとの懸念を払拭するため、政府には参院審議でも丁寧な説明を求めたい。


 以下は各紙の主な記事と見出しです。全国紙5紙は大阪本社発行の最終版です。
▼11月27日付朝刊
【朝日】
1面トップ「秘密保護法案 衆院通過」「審議2時間 採決強行」「修正案 自公み賛成、維新棄権」表・特定秘密保護法案の根本的な問題点、表・当面の政治日程
1面肩「参院の修正力 問い続ける」曽我豪・政治部長署名評論
2面「1強の慢心 民意軽視」「政権、世論懸念し採決急ぐ」「維新誤算 みんな一部造反」表・特定秘密保護法案の経過と首相答弁
2面「チェック機関必要・『60年』長すぎる」「秘密保護法案 他国と比較」表・外国の秘密保護制度
2面「消えた『自民内野党』」担当記者はこう見た
3面「秘密法制 増す疑念」/「知る権利は守られるか 答弁迷走不安消えず」/「秘密の範囲はどうなる 際限なく広がる恐れ」/「第三者のチェック機能は 首相が関与する矛盾」表・特定秘密保護法案の課題は解決されず
3面「監視なき権力は危うい」担当記者はこう見た
4面「首相の秘密チェック可能」「有効期間60年 闇に葬れぬ」安倍氏答弁・国会論戦
4面「法案、自信持てない」「自・み 4議員反対・退席」
7面・修正法案の全文
社会面(全面)「何でも秘密法」「懸念・不信 国会前で全国で」表・衆院特別委での法案の審議時間/「『知る権利奪うな』抗議の声」/「福島『被災地を利用』沖縄『戦前回帰のよう』」
社会面・写真5枚、東京、高松、仙台、福岡、神戸の反対デモ、抗議行動など、表・近畿で今後予定されている集会やデモなど
第2社会面「再考 今しかない」/「行動で社会変わる」中谷雄二・弁護士/「徹底的な議論 必要」高見勝利上智大教授/「抗議声明相次ぐ」


【毎日】
1面トップ「秘密保護法案 衆院通過」「自公が採決強行」「自民1人、みんな3人造反」「維新 本会議も退席」/「『知る権利』懸念残る」表・解決されていない特定秘密保護法案の問題点
2面「NSCと一体 念頭に」「改憲への布石」
2面「『11・26は巨大与党の暴走が始まった日』」「民主・海江田氏 無念にじむ」
3面・クローズアップ「肥大化する情報統制」/「首相明言、中身不明 第三者機関」/「『半永久』余地残す 秘密指定の期間」/「従属的立場のまま 国会の関与」表・特定秘密保護法案の修正案と首相の国会答弁
3面「秘密が解除されたら公文書館で公開される?」「詳細は今後の運用基準次第」なるほどり
5面「維新の退席を気にする石破氏」「『最後までわからずじまい』」/「菅官房長官強行採決じゃない』」
5面「『防衛秘密』の解除前廃棄4万2100件 07〜12年」/語句堤秘密保護法案 要旨
7面「新聞vs南ア政府」「大統領私邸写真巡り」
社会面トップ「『密約公開』覚悟知れ」「30年後なら非公開と同じ」「沖縄返還密使の著作 編集者」/「沖縄への核兵器持ち込みの密約」とはもの
社会面「『政治家として賛成に自信ない』」「与党議員も戸惑い」/「『福島バカにするな』」「公聴会翌日 強行可決に怒り」
社会面「政権の本質表れ」砂川浩慶・立教大准教授(メディア論)/「野党、失地回復を」西川伸一・明治大教授(政治学
第2社会面「戦前の社会に戻る」/「各地で抗議の声」/「女性団体デモ 東京・銀座」/「原水協が抗議文」/「メディア関係者廃案求めて集会」/「『言論』団体から相次ぐ反対の声」
第2社会面「『中東の交流』萎縮を懸念」中東研究者、千葉大教授 栗田禎子さん(53)・ワッペン:特定秘密保護法案に言いたい


【読売】
1面トップ「秘密保護法案 衆院通過」「自公み賛成 維新は退席」「NSC法きょう成立」表・特定秘密保護法案ポイント
2面「与党 国会延長避ける」「予算編成作業を重視」
3面・スキャナー「同盟国と機密共有へ」/「NSC法案とセット」「首相 情報提供促進に期待」/「指定対象 曖昧さ残る」表・特定秘密保護法案の主な修正点、図解・秘密指定のしくみ
4面「野党共闘不発に」「民・維・み 採決そろわず」表・特定秘密保護法案を巡る民主党日本維新の会みんなの党の対応/与野党の主なコメント
13面・法案の要旨
第2社会面「識者『参院で一層審議を』」「防衛幹部ら通過に安堵」


【産経】
1面トップ「秘密保護法案 衆院通過」「自公み賛成 会期内成立へ」「維新は棄権」/秘密保護法案修正案ポイント
1面「第三者機関 見えぬ具体像」「首相『設置すべきだ』」
3面「維新、『強調』の欠席戦術」「松井幹事長『反対ではない』」「秘密保護法案 首相『決める政治』意識」
5面「国会運営 強気の与党」「『参院では数の力使う』」「野党 共闘できず」
5面「みんな 江田氏ら3人造反」/「『菅政権が対応誤った』」「原発事故情報 首相、民主質問に反論」/「特別管理秘密の9割が衛生画像」「慰安婦調査公表せず」/秘密保護法案要旨


【日経】
1面準トップ「秘密保護法案が衆院超過」「自公み賛成 今国会成立の公算」表・特定秘密保護法案の概要
1面「懸念払拭へ議論尽くせ」(大石格・編集委員
3面「『秘密』乱用なお懸念」「チェック機能不十分」/「期間60年超も可能」/「指定の範囲 骨格変えず」表・特定秘密の対象例と対象外の例、表・与野党による修正案の主な内容
4面「官邸、会期内成立に固執」「維新切り捨て 空転回避見込む」/「江田氏ら3人が造反」「みんな、分裂危機再燃も」/「維新、賛否は玉虫色」「修正合意でも採決棄権」
社会面トップ「『修正・議論 足りぬ』」「『生活萎縮』不安の声」


【京都】
1面トップ「秘密法案 衆院通過強行」「与党、今国会成立図る」「首相『不安を払拭』」「自公み賛成」表・政府、与党が描く審議・政治日程/「特定秘密保護法案」とはもの/「時間をかけ熱心に議論」「首相、衆院通過を評価」
1面・解説「政権の『独断専行』」
2面「根幹部分は譲らず」/「小幅修正 妥協誘う」表・特定秘密保護法案をめぐる修正協議と国会審議の経過/「恣意的運用に懸念」
3面・表層深層「数頼み 安倍流突破」「分断野党 有効打なし」
3面「第三者機関は不明確」「修正案の問題点」/「第三者機関」「国会への情報提供」「秘密指定の期間」「指定の主体・対象」「首相の関与」表・特定秘密保護法案に関する政府原案と修正案の論点
5面「与党『ほぼ正常な採決』」「会期末にらみ 審議急ぐ構え」/論戦のポイント/「暴走に怒り 野党が批判」「みんなは賛同」/「十分な時間確保/突貫工事だ」京滋選出国会議員反応
24面(地域・総合)「京の各党意見割れる」
社会面「市民『民主主義の危機』」「『隠蔽進む』批判や危惧」
社会面「怒りのデモ 京や大津」
第2社会面「野党『暴挙 廃案にしろ』」「国会。飛び交う怒号」/「新聞労連が声明」


【神戸】
1面トップ「秘密保護法尾案 衆院通過」「今国会成立へ与党強行」「『知る権利』侵害の恐れ」「参院きょう審議入り」表・政府、与党が描く審議・政治日程
1面・解説「問題山積み『独断専行』」
2面「『数は力』安倍流突破」「熟議なされた」「分断の野党、有効打なく」
2面「みんな・江田氏ら造反」
2面「ほぼ正常な採決−与党」「巨大与党の暴走−野党」
4面「恣意的運用残る懸念」「指定対象は依然不明確」「首相の指揮監督も困難」表・特定秘密保護法案に関する政府原案と修正案の論点/「修正小幅 他党抱き込み」表・特定秘密保護法案をめぐる修正協議と国会審議の経過
5面「第三者機関なお曖昧」「『漏えいリスク高い』」「政府、否定的意見根強く」
5面「法案も審議も お粗末すぎる」「85年国家機密法反対の元自民議員ら」
5面「米国は運用方法注視」「静観の中韓、報道も低調 各国反応」
5面「強権政治への危険性秘める」「米軍情報チェックできるのか」「ジャーナリストから見た課題」共同通信元編集主幹・原寿雄氏
5面・特定秘密保護法案の要旨/衆院本会議 各党の討論要旨/衆院特別委 論戦のポイント
社会面トップ「『暴挙だ』議場に怒声」「『あまりに拙速、強引』」「機密化拡大に危機感」
社会面「『なぜ急ぐ』野党批判」「与党『国益のため』強調 兵庫県関係議員」
社会面「あきらめムード、思考停止に」精神科医香山リカさん
第2社会面「『監視社会』憤る市民」「『公聴会、声聞くふり』」「福島 原発の『情報隠し』憂慮」/「神戸 市民ら300人抗議デモ」
第2社会面「秘密指定適当か検証のしくみを」「識者から批判の声」/「関係団体、相次ぎ声明」浅田ペンクラブ会長「深い失望」・日弁連参院で審議尽くせ」・新聞労連「成立阻止に全力」