特定秘密保護法と新聞週間〜ブロック紙、地方紙の社説(備忘)

 国民の「知る権利」や、報道の自由が損なわれるとの指摘が続いている特定秘密保護法をめぐって、安倍晋三内閣は14日、特定秘密の指定や解除の運用基準と、同法の施行日を12月10日とする政令を決定しました。

※「特定秘密法の運用基準決定 指定対象55項目、12月施行」(47news=共同通信)2014年10月14日
 http://www.47news.jp/CN/201410/CN2014101401001158.html

 政府は14日の閣議で、国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法をめぐり、特定秘密の指定や解除の在り方を定めた運用基準と、法施行日を12月10日とする政令を決定した。運用基準は行政機関が特定秘密に指定できる対象として、防衛、外交分野などの55項目を列挙。政府側の裁量で指定範囲が広がる余地が残り、国民の「知る権利」や「報道の自由」を損なう懸念が指摘されている。 運用基準で示した55項目には、潜水艦や航空機、武器・弾薬の性能、電波や衛星を活用して収集した情報や画像、外国政府や国際機関から提供された情報などを例示した。

※「【特定秘密保護法の運用基準決定】 『監視』看板倒れも 新機関の権限曖昧」(47news=共同通信)2014年10月15日
http://www.47news.jp/47topics/e/258357.php

 政府は14日に閣議決定した特定秘密保護法の運用基準で、 恣意的な秘密指定に歯止めをかける仕組みとして二つの監視機関設置を盛り込んだ。だが、行政内部の「身内」のチェックとなる上、権限が曖昧で看板倒れの懸念は消えない。特定秘密の取扱者を選別する「適性評価」には人権上の不安が残る。12月10日に法施行を控え、多くの問題点は置き去りのままだ。

 特定秘密保護法をめぐっては、国会審議の段階から数多くの疑問点が指摘され、反対や慎重審理を求める声も広範に上がっていました。国会で自民党が圧倒多数の議席を持つ状況下で昨年12月に可決、成立。それから約1年後の今年12月10日に施行されることが決まったという大きな節目のニュースです。
 この法律に対しては、以前からこのブログでも紹介している通り、マスメディアでは全国紙は反対、支持が分かれていますが、ブロック紙、地方紙では反対が圧倒していました。今もその構図に変わりはないように思えます。15日前後のブロック紙や地方紙の社説のうち、ネットで目についたものを、見出しと書き出しとを備忘を兼ねて書き留めておきます。
 15日はまた新聞週間の初日でした。ブロック紙や地方紙の中には、新聞週間の社説の中で、「知る権利」を守るための課題として、特定秘密保護法に触れているものもあります。朝日新聞の二つの記事取り消し問題(福島第一原発事故の吉田所長調書報道と従軍慰安婦問題の吉田証言報道)や、産経新聞の前ソウル支局長が韓国大統領の動向の記事をめぐり韓国検察に起訴された問題を取り上げ、新聞全体への信頼や「知る権利」「報道の自由」が危機にあることを表明する社説も少なくないように思えました。目についた社説を、合わせて書き留めておきます。


北海道新聞
10月15日付「特定秘密保護法 施行は将来に禍根残す」

 政府は機密の漏えいや取得に厳罰を科す特定秘密保護法に関し、秘密の指定や解除などの在り方を定めた運用基準と、法施行を12月10日とする政令閣議決定した。
 同法は対象となる秘密情報が広範かつ曖昧で、政府が都合の悪い情報を恣意(しい)的に隠せることをはじめ、多くの深刻な欠陥がある。
 それらは運用基準でも補えず、国会に設ける監視機関もその役割を期待できない。
 同法の施行は国民の「知る権利」を侵害して民主主義の土台を崩し、日本の将来に禍根を残す。
 施行に強く反対する。

10月15日付「新聞週間 真実と真摯に向き合う」

 今更ですが、新聞の使命は真実に迫り紙面を通して国民の「知る権利」に応えていくことです。
 その役割を脅かす障害が特定秘密保護法です。国民の不安や反発が根強いからでしょう。今年12月の施行に向けた運用基準には、国民の知る権利について「十分尊重されるべきだ」との留意事項が盛り込まれました。
 しかし権力には「不都合な真実」を隠そうとする悪弊があります。秘密法は廃止するのが筋です。
 政府が持つ情報は国民共有の財産です。たとえ秘密法があっても、私たちの真実を追求する姿勢に変わりはありません。
 ただ、それは新聞への読者の信頼が前提です。その信頼が揺らぎかねない状況が起きています。
 朝日新聞が過去の従軍慰安婦報道の一部と、福島第1原発事故をめぐる「吉田調書」についての記事に誤りがあったとして取り消しました。
 偏った見立てで誤った報道をすることは決して許されることではありません。検証するのは当然です。
 憂慮するのは、その後の一部メディアによる朝日新聞へのバッシングです。批判は切磋琢磨(せっさたくま)のため大事ですが、度がすぎると報道機関全体の信頼を掘り崩すと同時に公権力の介入を招きかねません。
 まして慰安婦報道に携わった元記者が在籍しているとの理由で北星学園大などに向けられた脅迫は犯罪であり、言語道断です。


▼デーリー東北10月18日付「秘密保護法運用基準 情報隠匿の懸念拭えず」

 政府が閣議決定した特定秘密保護法の運用基準と政令には、政府によって都合の悪い情報は隠す恣意(しい)的な秘密指定が行われないかなどの懸念が相変わらず残る。立法時に指摘された制度的欠陥が運用によって克服されるとの期待は遠のいたというしかない。同法は12月10日に施行される予定だが、今後も抜本的な見直しを求めていきたい。


秋田魁新報10月15日付「特定秘密運用基準 禍根を残す閣議決定だ」

 政府は、安全保障に関わる重要な情報を特定秘密に指定し、漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の運用基準を閣議決定した。国家秘密が際限なく広がり、「知る権利」が脅かされる危険性が消えないまま、12月10日に施行されることになった。
 知る権利が民主主義に欠かせないのは、国民の側にさまざまな情報があってこそ自由に議論し、政策をチェックできるからだ。国家秘密の範囲が広がるたびに、その機会が失われ、民主政治の根幹部分が損なわれる。
 安倍政権は昨年12月に秘密法を強行採決で成立させた際、支持率低下を招いたことを思い起こすべきだ。集団的自衛権の行使容認と同じように、国民の多くは反対しているのである。
 このまま独断的な政策決定が続くようでは、国の将来が危うくなるばかりではない。安倍政権は民意が離れていくことも覚悟すべきだ。


岩手日報10月15日付「新聞週間 重みを増す『知る権利』」

 そんな新聞が揺れている。「従軍慰安婦」に関する虚偽証言、さらに東京電力福島第1原発事故調書をめぐり、朝日新聞が記事を「取り消し」とした問題は、新聞界全体に波紋を広げている。
 週刊誌や月刊誌のみならず新聞からも厳しい批判が起きた。あまりに激しいバッシングは、メディア全体に対する市民の不信感も招いているように思える。
 国内外に大きな影響を与えたことを考えれば、朝日には徹底した検証と報告が求められよう。
 同時に、「他山の石」としたい。朝日の連載コラム掲載を中断しているジャーナリスト池上彰氏は、週刊誌のコーナーで、バッシングに対して「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」という新約聖書の言葉を引用し、問い掛けた。誰もが間違いを謙虚に反省する姿勢を忘れてはならない。そんな訴えだと受け止めたい。
 全国紙、地方紙、地域紙、業界紙など新聞は規模や取材対象によってさまざまあり、多様な言論活動を行っている。どの新聞であっても、事実に基づき報道し、評論することが基本だ。
 しかし今、事実を伝えるという点で憂慮すべき事態が近づいている。特定秘密保護法の施行だ。国民が知るべき重要な事実が、権力による厚い壁に覆われる恐れがある。新聞を含めたメディアは「知る権利」追求のために連帯していくことが求められよう。
 先の大戦時、新聞社は苦い経験をした。言論統制もあり、正しい情報を伝えられなかった。そのような時代を二度と招かないためにも、「知る権利」「言論の自由」を守る必要がある。


福島民報
10月11日付「【秘密保護法】大幅見直しすべき」

 国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法は12月10日に施行される。自民党は10日の総務会で、施行日などに関する政令と運用基準を了承した。政府は14日にも閣議決定する。政府による恣意[しい]的な秘密指定や国民の「知る権利」の侵害が懸念される。国家安全保障会議(NSC)の議事内容が隠され、集団的自衛権の名の下、米国と一緒に戦争への道を進む恐れさえ懸念される。
 施行前に、情報公開法や公文書管理法を改正して、特定秘密保護法による権力の暴走を止める必要がある。同法の秘密の範囲限定、第三者機関による監視の仕組みなども大幅に見直すべきだ。

10月13日付「【新聞週間】復興へ人と人をつなぐ」

 第67回新聞週間が15日から始まる。今年の代表標語は「ふるさとが 元気と知った 今日の記事」。生まれ育った土地を離れた人が、手にした新聞に古里の記事を見つけて胸が熱くなる−。そんな光景が思い浮かぶ。東日本大震災東京電力福島第一原発事故からの復興に向けて進む本県の記事、知恵と情熱を結集して過疎と闘う古里の話題も、県外に住む県人の心を動かす。県出身者や本県に心を寄せる人との絆は、復興の力になる。福島民報社は今後も全国各地の地方紙や関係団体と連携し、「福島の今」を発信し続ける。


福島民友新聞10月15日付「新聞週間/元気なふるさとをつくろう」

 「ふるさとが 元気と知った 今日の記事」を代表標語にした「新聞週間」が今日から始まる。
 東日本大震災原発事故から3年7カ月が過ぎたが、いまだ12万6千人を超える県民がふるさとを離れ、避難生活を送っている。県内の仮設住宅で、あるいは県外の図書館で、新聞を読み、ふるさとの今を確かめている方も多いだろう。新聞週間のスタートにあたり、県民とともに本県の再生、復興を目指す本紙として責任の重さをあらためてかみしめる。


信濃毎日新聞
10月15日付「新聞週間 読者の信頼どうつなぐ」朝日の問題に揺れて/言論封殺の危うさ/権力監視を怠るまい

 もっと大きな問題がある。朝日のつまずきに便乗して、政治権力が報道に介入する動きが強まっていることだ。
 朝日新聞社社長の国会招致を求める声が一時、与野党の政治家から出た。安倍晋三首相もNHK番組で朝日の報道に関し、「世界に向かって取り消していくことが求められている」と述べ、事実関係を国際社会に説明すべきだとの認識を示した。
 この1年を振り返ると、政治から報道への介入が間断なく続いていることが分かる。
 防衛省は2月、沖縄県琉球新報が掲載した陸自部隊配備の動きについての記事に対し、「事実と異なる」として同紙と日本新聞協会に文書で抗議した。松本正之氏から籾井勝人氏へバトンタッチしたNHK会長人事は今回も、政治の舞台裏で決まった。
 そして特定秘密保護法だ。特定秘密の取材、報道を厳罰に処す法律である。言論統制を心配する声に耳を貸さず、政府はきのう14日秘密の指定、解除の在り方を定めた運用基準と、施行日を12月10日とする政令閣議決定した。
 報道へのこうしたあからさまな介入は「言論の自由」をうたう憲法に照らしても容認できない。

10月16日付「秘密法を追う 運用基準決定 反対の声上げ続けよう」

 特定秘密保護法の運用基準と、施行日を12月10日とする政令を政府が閣議で決めた。
 政府が都合よく法律を運用し、情報が国民の手の届かないところに隠されるのではないか、との懸念がぬぐえないままだ。秘密法にはこれからも「反対」の声を上げ続けよう。

10月17日付「共謀罪 心の動きに捜査が及ぶ」

 実行しなくても秘密を得ようと話し合っただけで処罰の対象になる。それが特定秘密保護法の罰則に入り込んでいる共謀罪だ。
 政府は先日、法の運用基準を閣議決定した。ただ、罰則は基準の対象外。昨年12月の法成立時から何も変わっていない。
 再来月に施行されれば、「合意」という人の心の中まで取り締まりの対象になる。戦前の治安維持法のように思想信条の自由を侵しかねない重大な危険をはらむ。
 日本の刑事法は治安維持法時代の反省から、犯罪の実行行為があって初めて罰することを原則としている。「共謀共同正犯」として罪に問う判例があるが、これも実行者がいて初めて、共謀者に同じ刑事責任を負わせるものだ。
 秘密法の共謀罪は誰一人実行していなくても、準備さえしていなくても、合意があった時点で成立する。暗黙の了解も合意に含まれるとされる。捜査の手は心の動きに及ぶ。
 実行されてもいないことをどうやって取り締まるのか。考えられるのは密告と盗聴だ。


新潟日報10月15日付「新聞大会 使命果たす誓いを新たに」読者の信頼こそ支え/戦後70年を前にして/地方の視点を失わず

 来年は日本の敗戦から70年となる。この年月をどう考えていくかは、日本のこれからの針路に大きく影響するはずだ。
 安倍晋三首相は戦後レジーム(体制)からの脱却を言う。新たな未来を開く意味であり、まさか戦前、戦中の暗い時代への回帰を願う表現ではあるまい。
 ただ、私たちがいま手にしている「平和」が、案外にもろい地盤の上に建っていることを思い起こすのは大切なことだ。
 8月15日を境に違う国になったのではない。民主主義を突き詰めて、国民が自らの力でもぎとった平和ではなかったのだ。
 ある意味で戦前と地続きのまま「平和」を享受して来られたのは、戦争はごめんだという国民の思いと、それを具現化した憲法の平和主義によるだろう。
 本紙を含め新聞は戦争の遂行に協力した過去がある。その反省も深めなければならない。
 平和と自由をこれからも保障していくため、新潟日報集団的自衛権の行使を容認する閣議決定と、特定秘密保護法に反対の姿勢を取ってきた。
 国民の間で、新聞、メディアによって、さまざまな意見がある。当然のことだが、生きた議論をしていくことが大事だろう。


中日新聞東京新聞10月15日付「秘密保護法 欠陥は残ったままだ」

 特定秘密保護法の運用基準などが閣議決定された。施行は十二月十日だ。政府の裁量で秘密指定の範囲が広がる恐れなど心配の材料は尽きない。国民の「知る権利」を脅かす法には反対し続ける。


福井新聞
10月15日付「特定秘密 運用基準決定 強権力は知る権利を奪う」

 政府は、国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の運用基準と政令閣議決定した。昨年12月、自民、公明両党の強行採決で同法を成立させ国民が反発、内閣支持率は急落した。「知る権利」侵害への懸念が強いからだ。政府は有識者会議や国民の意見を聴くパブリックコメントも実施したが、大半は官僚が練った原案のままだ。チェック機関も独立性が疑われる。国による恣意(しい)的な運用に依然不安が残る。これで国民理解は得られるだろうか。

10月16日付「新聞週間 果たすべき使命は足元に」

 読者はマスメディアの状況をどう感じているだろうか。朝日新聞慰安婦報道や東京電力福島第1原発事故の「吉田調書」をめぐる誤報問題に端を発し、産経新聞や読売新聞などの糾弾記事がエスカレート。それに輪を掛けた雑誌の過激な記事が問題の本質から離れ“朝日バッシング”が目的化してしまっている。
 新聞は社会の事実と判断材料を提供し、真実に迫ることが最大の使命である。それゆえ客観報道が重要性を増す。主張はその土台の上に立つべきではないか。
 マスメディアが本来の使命からずれている一つに政治報道がある。安倍政権は今や圧倒的な数の力と権力を持つ。「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げる安倍晋三首相は、特定秘密保護法集団的自衛権の行使容認を実現し、安全保障政策の大転換を図ろうとしている。根底にあるナショナリズムは、立憲主義から逸脱する憲法改正を目指しているようだ。
 「平和希求」は万人の思いである。それは力による平和なのか、対話による平和なのか、新聞論調はここでも大きく分かれ、二項対立に陥っている。もし政治権力と一体化してしまえば健全な世論をリードできなくなる恐れがある。それこそ新聞、ジャーナリズムの危機だ。責任のないネットメディアが勢いを増す中で新聞の役割は重みを増す。


京都新聞
10月16日付「秘密法の施行  国民の不安置き去りか」

 国民の反対や不安は、お構いなしということか。
 特定秘密保護法をめぐり、政府は秘密の指定や解除のあり方を定めた運用基準を閣議決定した。12月10日の施行も決めた。
 秘密の判断基準はあいまいで、政府の裁量で指定範囲が際限なく広がる恐れがあるうえ、国民の「知る権利」や「報道の自由」を損なう懸念は残されたままだ。こうした疑問や懸念は解消できるのか。なぜ今、特定秘密保護法なのか−議論は尽くされていない。

10月17日付「新聞週間  報道の原点を見つめて」

 とりわけ正確な事実の報道は読者の信頼の根幹部分だ。その意味で朝日新聞が過去の慰安婦報道の一部と、福島第1原発事故の「吉田調書」報道が誤報だったとして記事を取り消したことは、残念な出来事だった。深い反省と厳しい検証で信頼を取り戻すしかない。
 もちろん、朝日だけの問題ではない。他の全ての新聞が他山の石として受け止めるべき問題だ。
 新潟市で開かれた第67回新聞大会は、一連の問題を踏まえ「新聞への読者・国民の信頼を揺るがす事態が起きている。これを重く受け止め、正確で公正な報道に全力を尽くす」とする決議を採択した。気を引き締め、報道の原点を見つめ直したい。
 憂慮するのは、誤報問題を機に言論封殺のような動きが出てきたことだ。一部メディアには「売国」「国賊」といった戦前、戦中に使われたような乱暴な文字が躍る。慰安婦報道に携わった元記者の勤め先の大学には、脅迫文まで届いた。許されない行為である。
 言うまでもなく、民主主義の基本は多様な意見を認め合うことにある。当然ながら批判も論争も生まれるが、そこには異論を尊重する態度が欠かせない。一方を力で封殺するような言論や行動が民主主義の基盤を崩し、窒息させた暗い歴史を思い起こしたい。


神戸新聞
10月15日付「秘密法の運用/これで理解は得られない」

 特定秘密保護法の運用基準が閣議決定された。12月10日の法施行も決まった。
 反対の声を押し切る形で法律が成立したのは昨年12月のことだ。この時、安倍晋三首相は「今後も国民の懸念を払拭(ふっしょく)すべく、丁寧に説明していく。説明していけば必ず国民の理解を得られる」と強調していた。
 その強行採決から10カ月。運用基準の作成に当たり、有識者会議の意見を聴き、パブリックコメント(意見公募)も実施された。丁寧な手続きを演出したのだろうが、納得のいく説明があったとは言えず、結局、制度の根幹は変わらなかった。

10月16日付「新聞週間/批判封じる動きは危うい」

 事実を曲げる記事を書いてはならないが、歴史の陰の部分にも真摯(しんし)に向き合う報道は続けねばならない。それさえ否定しかねない動きがあるのが気掛かりだ。
 ネットだけでなく、一部雑誌にも「国賊」「売国」などの過激な言葉が躍る。一方的にレッテルを貼り、国への批判を封じるような傾向が強まりつつあることを危惧する。
 くしくも新聞週間が始まる前日、特定秘密保護法の12月10日施行や運用基準が閣議決定された。
 政府が情報を恣意(しい)的に秘密指定する余地が残る法律だ。都合の悪い情報が国民に伝えられず、「知る権利」が損なわれないか。
 重ねて強調したい。「言論の自由」は民主主義を支える基本的な権利である。それが揺らぎかねない状況だけに信頼と共感を得られる報道が求められていると肝に銘じたい。


山陽新聞
10月15日付「新聞週間 ひた向きに地域のために」

 新聞界全体への不信が増幅しかねない状況で迎えた新聞週間(15〜21日)である。新聞がどう読者の信頼を得ていくか、あらためて重い問い掛けが突きつけられている。
 地方紙として山陽新聞は、地域に寄り添うことを立ち位置としてきた。時に主張は全国紙とは異なる。地方分権を進めて地方の権限を強め、自分たちで考える地域づくりを是としている。今、政府が進める「地方創生」に関しては、東京一極集中の是正や地方への優遇税制導入を社説などで求めている。それぞれの地域が輝くことで国全体の利益になると思うからだ。
 今後も立ち位置は変えない。ひた向きに地域のために考え、取材し、報道していく。それを繰り返すことで、読者に応えていくしかないと考える。あくまでも独善的にならぬよう自戒しながら。

10月17日付「秘密保護法 懸念は一向に拭えない」

 国民の「知る権利」が侵害される懸念は依然払拭(ふっしょく)できないままだ。政府は特定秘密保護法の運用基準と、同法を12月10日に施行する政令閣議決定した。だが、制度の骨格部分は変わっておらず、指摘されてきた行政による恣意(しい)的な情報隠しなどへの疑念は置き去りにされている。


愛媛新聞10月13日付「秘密保護法運用基準 懸念は何一つ解消していない」

 国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法をめぐり、秘密の指定や解除の在り方などを定めた運用基準案と政令案を、安倍政権が14日にも閣議決定する見通しとなった。法施行は12月10日とする方針をすでに固めている。
 国民の「知る権利」が損なわれることを強く危惧する。
 秘密保護法は成立を急いだ結果、秘密の範囲の曖昧さや監視機関の実効性への疑問など多くの問題点を抱えたままだ。政府は7月の運用基準素案から大幅修正したと胸を張るが、多くは微修正にとどまる。懸念は何ら解消されず、解消に努めた跡も見えない。真摯しんしな反省と法律の廃止をあらためて求めておきたい。


徳島新聞
10月15日付「新聞週間 ふるさとを元気にしたい」

 情報通信技術が日進月歩で発達し、インターネットがますます便利になる中でも、新聞が果たすべき役割は変わらない。健全な民主社会を守るための権力監視、正確な情報と多様な意見の提供、的確な論評と解説などである。
 それには、自由な取材・報道ができる環境が不可欠だ。政府が施行を目指す特定秘密保護法がその妨げにならないか。民主主義の基盤である言論・表現の自由、国民の知る権利が損なわれないよう、これからも厳しい目を注いでいく決意だ。
 もちろん新聞発行に携わる私たち一人一人が、常に自省・自戒しなければならないのは言うまでもない。
 先月には、朝日新聞が二つの誤報について謝罪した。東京電力福島第1原発の元所長が事故当時の状況を語った調書の記事と、従軍慰安婦をめぐって「済州島で強制連行した」とする日本人の証言記事である。
 いずれも、関係者への確認を怠るなど慎重さを欠いた結果といえよう。正確で公正な報道はジャーナリズムの原点である。私たちはいま一度、そこに立ち返らなければとの思いを強めている。

10月16日付「秘密法基準決定 『知る権利』が損なわれる」

 国民の「知る権利」や「報道の自由」を損なう懸念が払拭されたというのだろうか。
 国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の運用基準と、法律の施行日を12月10日とする政令を、政府が閣議決定した。
 運用基準は特定秘密の指定や解除の在り方を定めたものだ。政府は適正に運用される仕組みを整えたとしているが、曖昧な表現があるなど欠陥が多過ぎる。国民の強い反対を押し切り、施行に踏み切ることは認められない。


高知新聞10月15日付「【特定秘密の運用 安倍政治を問う】閣議決定で終わりでない」

 安倍内閣はなぜ国民の懸念を置き去りにしたまま重要な決定を行うのか。
 特定秘密保護法をめぐって政府は、秘密の指定や解除の在り方を定めた運用基準と12月10日を法施行日とする政令閣議決定した。
 この法律は、政府側の裁量で秘密指定の範囲が恣意(しい)的に広げられたり、国民の「知る権利」や「報道の自由」が侵害されたりする恐れがある。
 運用基準で政府は、秘密指定できる対象を防衛や外交など4分野55項目とし、「必要最小限の情報を必要最低限の期間に限り指定する」との留意事項も示した。
 ただし法律は、「国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある情報」を指定するとしており、留意事項が歯止めにならない可能性がある。
 政府は7月、運用基準素案を有識者会議に示し、パブリックコメント(意見公募)で懸念も寄せられたが抜本修正は行われなかった。恣意的な秘密指定など根本的な不安は残ったままだ。
 安倍政権もそれを承知している。
 菅官房長官閣議決定後の会見で国民の不安に触れて「丁寧に説明して払拭(ふっしょく)したい」と述べた。この欄で何度も触れたように「丁寧な説明」は、昨年末に自民と公明両党が法案を強行採決した後に安倍首相も口にしている。
 成立後約10カ月が過ぎ、運用基準を閣議決定した段階で政権中枢から同じ言葉が出るのはあまりにもおかしい。仮に安倍政権が閣議決定を法施行の「最終関門」と考えているとすれば大間違いだ。
 国民の数々の権利を侵害する恐れがあるこの法律は廃止すべきだが、まずは払拭できていないと自ら認めた国民の懸念に誠実に答える必要がある。


西日本新聞
10月15日付「新聞週間 ふるさとを見つめてこそ」

 記者が持ち歩くメモ帳に、本紙の編集綱領が印刷されています。
 一、言論の自由と独立を守り、報道の公正、真実を貫く
 一、あらゆる暴力、偏見を排し、人間愛と人権尊重に徹する
 この二つは、すべての言論機関に共通する基本姿勢です。
 加えてもう二つ、綱領には本紙独自の軸足が刻まれています。
 一、地域とともに歩み、その自立と発展に尽くす
 一、国際社会と地域を結び、世界の平和と繁栄を目指す
 今年のノーベル賞のうち、物理学賞は青色の発光ダイオードを開発した鹿児島県出身の赤崎勇さん(85)ら3人に、平和賞はパキスタンで女子教育の権利を訴え続けたマララ・ユスフザイさん(17)ら2人に決まりました。いずれも九州にとって意味深い出来事として紙面を大きく割きました。
 九州生まれのノーベル賞受賞者は初。凶弾に倒れ一命を取り留めたマララさんらの苦難は、パキスタンアフガニスタンで医療・農業支援を続ける福岡市出身の中村哲さんらペシャワール会の活動とも重なります。85歳と17歳の受賞は九州の高齢者や若者を勇気づけるニュースでもありました。

10月16日付「秘密法運用基準 見切り発車は許されない」

 国家機密の漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法について、政府は特定秘密の指定や解除の在り方を定めた運用基準と施行日を12月10日とする政令閣議決定した。
 だが、政府による恣意(しい)的な情報隠蔽(いんぺい)の懸念は払拭(ふっしょく)できず、監視機関の権限も限定的なままだ。
 日本弁護士連合会や日本ペンクラブなどの団体も法施行への反対や懸念を表明している。多くの地方議会が法律の廃止や慎重な運用を求める意見書を可決した。秘密保護法への危機感の表れである。
 見切り発車は許されない。手続きは終えたと施行へ突っ走るのではなく、政府は国民の不安や懸念に謙虚に耳を傾けるべきだ。


熊本日日新聞
10月15日付「秘密法運用基準 国民の懸念は解消されず」

 国民の「知る権利」や報道、取材の自由を侵害する懸念が払拭[ふっしょく]されないまま、特定秘密保護法の運用基準が閣議決定され、施行日は12月10日と決まった。
 同法は、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野に関する事項のうち「国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあり、特に秘匿が必要」な情報を特定秘密に指定し、漏えいした公務員には最高で懲役10年を科す。公務員が秘密を扱えるかどうか判断する「適性評価」についても定めている。
 「特定秘密」の範囲があいまいで、官僚組織による恣意[しい]的な情報管理が行われかねないなど、多くの問題点が指摘されてきた。しかし、秘密保護法自体は成立後に変更がなく、秘密の指定や解除、適性評価の詳しい手続きなどを定めた運用基準も、7月に政府が初めて示した素案と大差ない内容での閣議決定だ。国民の懸念は、一つとして解消されていない。

10月17日付「新聞週間 民主主義の『根っこ』として」

 朝日新聞への厳しい批判は続いている。特に慰安婦報道では「きちんと謝罪していない」「取り消しは遅きに失した」といった声がある。当然というほかないが、一部全国紙などがここぞとばかりに朝日批判を繰り返している現状には鼻白む思いがする。メディア間の「争い」と受け止められれば、信頼回復は遠のきかねない。
 雑誌やネット上にあふれる「反日」「売国」といった言葉はさらに受け入れがたい。そうした安易なレッテル貼りで言論統制が進められた戦前を想起してほしい。慰安婦報道に関わった元記者の勤務する大学に、脅迫状を送り付けた卑劣な行為も決して許されない。
 9月27日付本紙「視界良好」のコーナーで、ジャーナリストの江川紹子さんからありがたい言葉を頂戴した。「民主主義国家を樹木にたとえるなら、メディアは水分や養分を吸収する根っこのようなもの。その根が朽ちては、樹木は立ち枯れていくばかりだ」
 萎縮せず、しかし、目線は低く−。「根っこ」としてあるべき姿をあらためて肝に銘じたい。


宮崎日日新聞10月17日付「新聞週間 地道に信頼を取り戻したい」

 朝日問題だけではない。特定秘密保護法集団的自衛権の行使容認などで、この国のありようが変わろうとしている。この大きな転換点にあって、どれだけ読者に考える材料を提供できるかが問われよう。民主主義社会を支える国民の「知る権利」を保障する担い手となりたいという新聞倫理綱領の一節を、あらためて肝に銘じたい。


南日本新聞
10月15日付「[秘密法閣議決定] 国民の懸念は消えない」

 政府は、国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法をめぐり、特定秘密の指定や解除の在り方を定めた運用基準と、施行日を12月10日とする政令閣議決定した。
 秘密保護法は昨年12月、行政の恣意(しい)的な運用によって「知る権利」や「報道・取材の自由」が侵害されかねないという世論の強い反対を押し切り、強行採決によって成立した。
 あれから10カ月、政府が決定した運用基準は、秘密指定や情報開示などが依然不明確であり、国民の不安や懸念は何ら払拭(ふっしょく)されていない。問題点が解消されないまま、施行することは容認できない。

10月16日付「[新聞週間] 『知る権利』に応えたい」

 入選標語の中には「事実が伝われば 変えられる未来がある」「伝えたいと 知りたいを つなぐ新聞」など、「知る権利」の大切さを訴えるものが目立つ。
 安倍政権は昨年末、世論の強い反対を押し切って特定秘密保護法を成立させた。12月10日の法施行に向けた運用基準には、国民の知る権利について「十分尊重されるべきだ」と留意事項に盛り込まれたが、制度の根幹はそのままで国民の懸念は消えていない。
 言論・表現の自由のもと、国民の知る権利に応えるのが新聞の使命と心得る。使命を担うには読者の信頼が欠かせない。課された責任の重さをかみしめたい。
 今年は、こうした責任と報道のあり方が例年以上に問われる中での新聞週間となった。


沖縄タイムス
10月15日付「[新聞週間に]言論が脅かされ始めた」

 朝日新聞慰安婦報道をめぐって「朝日たたき」が今も続いている。政府や国会を巻き込んで、これまで見られなかった事態が表面化しており、健全な言論の発展を危うくしかねない深刻な事態だ。15日から始まった新聞週間にちなんで、この問題を取り上げたい。
 言論には言論で応じる−これが大前提である。言論を暴力で封じ込めたり、脅迫やどう喝を加えて言論を封殺するようなことがあってはならない。だが、朝日新聞が8月5日、慰安婦報道に関する検証記事を掲載して以来、ネット上では、慰安婦報道にかかわった元朝日新聞記者を攻撃する憎悪に満ちた言葉が飛び交っている。
 元朝日記者2人が勤めていた北星学園大(札幌市)と帝塚山学院大(大阪狭山市)には、退職を要求する脅迫状が届いた。元記者の高校生の長女は、ネット上に実名入りで写真をさらされ、「自殺するまで追い込むしかない」と書き込まれた。
 一部の週刊誌は検証記事掲載後、毎週のように特集を組み、朝日たたきを続けた。表紙や見出しには「国賊」「反日」「売国奴」などの扇情的な言葉が並ぶ。読者の感情に訴え、激しい反発を呼び起こし、その感情に応えるような特集をさらに展開する、といった具合だ。
 安倍晋三首相は6日の衆院予算委員会で「日韓関係に大きな影響や打撃を与えた。国際社会における日本人の名誉を著しく傷つけたことは事実だ」と、最大級の言葉を使って朝日を批判した。
 日本の社会はどこかで危険な曲がり角を曲がってしまったのだろうか。

10月16日付「[秘密法運用基準]危機感持ち監視続けよ」

 国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の運用基準が閣議決定された。
 国民の知る権利や報道の自由に対する懸念が払拭(ふっしょく)されないまま、12月10日の施行が迫る。 
 運用基準では、特定秘密に指定できる対象を防衛、外交、スパイ活動防止、テロ防止の4分野で55項目に細分化する。潜水艦や航空機、武器・弾薬の性能、電波や衛星を活用して収集した情報や画像、外国政府や国際機関から提供された情報などが列挙される。
 「必要最小限の情報を必要最低限の期間に限り指定する」との留意事項を明記するものの、盛り込まれた項目には「自衛隊、米軍の運用、これに関する見積もり、計画、研究」など、あいまいな文言が多く、意図的な情報隠しを否定できない。
 焦点とされた秘密が適切に扱われているかをチェックする機関は、府省庁の事務次官級でつくる「内閣保全監視委員会」を新設するほか、内閣府に審議官級の「独立公文書管理監」、その下に「情報保全監察室」を置くとする。
 一見、二重三重に歯止めがかかっているように見えるが、いずれも行政内の組織だ。大臣が指定した秘密を、官僚がチェックできるのか、その独立性は疑わしい。
 結局、「国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある情報」を特定秘密とする法律の規定を盾にすれば、政府の裁量で秘密の範囲は際限なく広がる。


琉球新報10月15日付「新聞週間 『知る権利』守る使命胸に」

 きょうから「新聞週間」が始まった。今年入選した標語には知る権利の大切さを訴える読者の思いが寄せられた。「事実が伝われば 変えられる未来がある」「伝えたいと 知りたいを つなぐ新聞」「新聞と 読者が守る 知る権利」とあり、読者が求めている事実を伝える重要性をかみしめたい。同時に新聞に課せられた使命と責任をあらためて確認したい。
 こうした中、政府は国民の知る権利と報道の自由に背を向けた法律の施行へと突き進んでいる。政府は国の機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法の施行日を12月10日とする政令閣議決定した。10日の自民党総務会で異論が出され、議論不足を理由に途中退席者も出るなど、党内でも意見が割れている。昨年12月の法案成立から10カ月余り、政府の手続きは疑問だらけだ。