東京新聞特報部がILO憲章を特集

 東京新聞が7月9日付朝刊の特報面で、国際労働機関(ILO)憲章を取り上げています。リード部を引用して紹介します。

 「正義及び人道の感情と世界の恒久平和を確保する希望」。国際労働機関(ILO)憲章の一節だ。憲章は、困窮と社会不安から戦争に至った反省に立って制定された。労働条件が改悪される恐れの強い労働法制と、戦争に巻き込まれるかもしれない安全保障法制。安倍政権は、二つを同時に進めようとしている。ILO憲章から見た両法制に横たわる危機を考える。 (沢田千秋、篠ケ瀬祐司)

 「労働・安保法制 つながる危機」「憲章の理念に背反」「派遣法改正案 残業代ゼロ法案 労働法の戦前回帰」「安保関連法案 憲法無視の点で同根」などの見出しが並んでいます。記事はILO憲章前文の全文を掲載し、その理念とILO成り立ちの紹介に始まります。このブログでも何度か紹介してきましたが、国際労働機関は第1次大戦後の1919年に創設。政府、労働者代表、使用者代表の3者構成でさまざまな取り組みを進めています。ひと言で言えば、労働者の地位と労働条件の向上が目的です。その理念の背景にあるのは、貧困や社会不安と戦争は親和性が高く、世界平和、戦争抑止のためには労働条件の向上が必要との、歴史的経験に基づく考え方です。

 そうしたILOの理念を概観した後、記事は、現在の日本の安倍晋三政権の下では、労働条件の悪化を予感させる法整備が進んでいることを指摘。代表例が、企業の派遣労働者の受け入れ期間の制限を事実上撤廃する労働者派遣法改正案や、一部の専門年収の高い専門職を労働時間規制から外す労働基準法改正案です。また、戦前は日本でも長時間労働の横行や格差の拡大があったことを振り返った上で、労働環境が近年、不安定さを増していることを指摘し、労働条件の改悪と戦争の親和性、関連性について、識者、専門家の意見を紹介しています。読み応えのある記事で、特に以下の専門家の指摘は、分かりやすいのではないかと感じました。

 龍谷大の脇田滋教授(労働法)は「リーマン・ショックで非正規労働が広がったとき、打開策として不安定で劣悪な労働条件ならば、世の中をひっくり返して戦争になった方がましとの議論が起きたことがある」と、すさんだ空気の広がりを懸念する。

 このILO憲章前文やILOの理念のことは、広く知られてほしいと思います。とりわけマスメディアで働く人や、その労働組合関係者らは必須だと思います。

 ILO憲章はILO駐日事務所のホームページに日本語訳が掲載されています。もう一つの基幹文書であるフィラデルフィア宣言も掲載されています。「労働は商品ではない」で有名な宣言です。
 ※ILO駐日事務所
  http://www.ilo.org/tokyo/about-ilo/organization/WCMS_236600/lang--ja/index.htm


 新聞労連の専従役員だった2004年に、スイス・ジュネーブのILO本部を会議で訪ねたことがあります。その経験をきっかけに学んだことは少なくありません。そうした思いを書き残した過去記事です。
 ※「ILOの思い出〜プロフィール写真変更」=2015年1月18日
  http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20150118/1421508695