「自民の『党利党略』」(朝日)、「『議席増』期待 野党弱腰」(毎日)~参院定数6増法案が参院通過 ※追記・読売、産経も改正案を批判

  参院の議員定数を6増やすとともに、比例代表に特定枠を設けて、候補者の得票数に関係なく当選順位をあらかじめ決めておく仕組みを盛り込んだ公職選挙法改正案が7月11日、参院本会議で可決されました。法案は自民党が提出し、採決では公明党も賛成。野党では国民民主、共産、日本維新の会、希望の各党などは反対。立憲民主、自由、社民各党などは退席したとのことです。
 複雑な仕組みの説明はここでは割愛しますが、自民党の狙いは「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区で公認できない候補者を特定枠で救済することだと指摘されており、野党からは「自民党の党利党略」との批判が出ています。議席を六つも増やすこと、特定枠を設けることによる比例代表の仕組みの複雑さ、選挙区の1票の格差の抜本是正とは言い難いことなど、この改正案に合理性や納得性があるかは極めて疑問です(なお私見ですが、議員定数は少なければよいとは必ずしも思いません。議員の仕事とは何か、との命題と合わせて考えるべきだと思っています)。
 翌12日付の東京発行新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)の扱いには差が見られました。1面トップに据えた朝日、東京両紙は主見出しでも「採決強行」(朝日)、「与党押し切る」(東京)と与党の強硬ぶりを強調しています。朝日新聞は1面の解説で「自民の『党利党略』」と、社説では「自民の横暴、極まれり」とまで記しています。一方で毎日新聞は出稿の全体を通じてトーンは自民党と改正案に批判的ですが、1面の見出しは「『6増』法案参院通過/自民、17日成立目指す」と淡々としています。
 興味深く感じたのは、実は改正案は野党の一部には議席増につながる可能性があるとの指摘です。毎日新聞は総合面の記事の見出しで「『議席増』期待 野党弱腰」と、産経新聞も「定数増 埼玉・比例で野党に利も」と、それぞれ指摘しています。採決に当たって野党の中で、退席と「反対」表明とに対応が分かれたのも、そうした事情の反映なのかもしれないと感じました。
 衆参両院は、互いの選挙制度改正に異議を唱えないのが慣例とされています。17日は与党の目論見通り、粛々と衆院で採決が行われ、「複雑怪奇な選挙制度」(毎日新聞社説)が有権者に押し付けられることになるのでしょうか。注視したいと思います。

 以下に東京発行6紙の12日付朝刊の扱いと主な見出しを書きとめておきます。

▼朝日新聞
1面トップ「参院6増 採決強行/参院通過 今国会 成立確実に」
1面・視点「自民の『党利党略』」
3面「参院 熟議なき6増/質疑6時間 遠い抜本改革」
3面・考論「特定枠 ご都合主義」中北浩爾・一橋大教授(政治学)/「各党共通理念 欠く」高見勝利・上智大名誉教授(憲法学)
社説「参院選挙制度 自民の横暴、極まれり」

▼毎日新聞
1面「『6増』法案参院通過/自民、17日成立目指す」
3面・クローズアップ「『6増』本質議論乏しく」/「『議席増』期待 野党弱腰」/「『特定枠』説明つかず」
社説「『合区救済』法案が成立へ 参院は主権者を遠ざけた」

▼読売新聞
1面「参院定数『6増』可決/自民案 今国会成立へ/参院本会議」
2面「特定枠・比例増 批判根強く/野党『党利党略だ』」
4面「参院自民 後手後手/維新に根回し不足 1日遅れ」

▼日経新聞
4面「参院6増法案 参院通過/与党、今国会成立目指す」

▼産経新聞
3面「『6増』参院通過/参院選改革 今国会成立へ」
4面「格差と合区救済 自民苦渋/定数増 埼玉・比例で野党に利も」

▼東京新聞
1面トップ「参院6増案 与党押し切る/野党『身を切る改革に逆行』/参院で可決」
2面・核心「人口減なのに6増?/参院選『合区』救済、『党利党略』/参院可決『負担年4億円増』」

 

【追記】 2018年7月13日23時45分
 読売新聞、産経新聞は13日付朝刊に社説を掲載しました。
 読売新聞の社説の見出しは「参院選挙制度 弥縫策は混乱を広げるだけだ」。書き出しは「小手先の対策では、国民の理解は得られない。参院選挙制度の抜本改革が出来なかったことを、与野党は深刻に受け止める必要がある」となっており、自民党案に対しては「選挙の約1年前になって、自らに都合の良い改正案を急きょ提示し、実現を図る自民党の姿勢は疑問だ」「改正案は、弥縫びほう策に過ぎず、改革の名に値しない」と批判しています。13日付朝刊の4面(政治面)にも「参院選改革 自民も批判/衆院側『6増 説明できぬ』」の記事を掲載しています。
 産経新聞の社説(『主張』)は「公選法改正案 参院無用論を広げるのか」。参院を通過した法案に対して「日本の人口が否応なく急速に減る時代の流れを踏まえず、国会議員だけはお手盛りの定数増を図ろうという案である」と厳しい評価で「与党は国会会期末の22日までに衆院本会議で成立させる方針というが、頭を冷やしたらどうか。国会閉会後も与野党で協議を続け、秋に想定される臨時国会で、もっとましな内容の改正案を成立させるべきだ」と与党を批判しています。
 東京発行の新聞各紙は、各紙ごとの力点に違いはあっても、おおむね法案に批判的という点では共通していると言っていいように思います。