ミサイル発射でも目立つ右傾化主張 ※追記・抜け落ちている沖縄の基地負担論議

 北朝鮮の事実上の長距離弾道ミサイルの発射は、12月13日付の朝刊でも各紙とも引き続き大きな扱いでした。自民党日本維新の会集団的自衛権の行使容認や憲法改変を掲げている中で、衆院選の投票にも影響を及ぼしかねないと感じています。
 13日付朝刊の社説では、手元で目を通している朝日、毎日、読売、日経、産経の全国紙5紙と京都新聞神戸新聞のうち、京都新聞を除く6紙がこの北朝鮮のミサイル発射を取り上げました。北朝鮮を批判し、国際協調を強めることが必要とする点は各紙共通ですが、読売、産経はさらに集団的自衛権の行使容認にまで踏み込んでいます。読売はほかに「安保の『欠陥』正す時だ」との見出しの編集委員の署名原稿が1面にあり、政治面では「『安保』焦点に急浮上」「問われる具体策」と、ミサイル発射を衆院選と直接結びつけたサイド記事も掲載しています。
 今回の選挙戦とその報道では、政党が乱立する中で、改憲集団的自衛権行使の容認など右傾化の主張が目立ち、対抗するはずの護憲の主張が有権者や読者に十分届いているかは疑問です。北朝鮮のミサイル発射をめぐっても同様だと感じます。これまでも触れてきましたが、このまま選挙後に、あたかも「白紙委任」を受けたかのように改憲手続きが始まるのだとしたら、それでいいわけがありません。


 ほかに日本維新の会の動向に関連して、産経新聞の第2社会面の記事が目に留まりました。「維新 終盤は大阪終結集結」「松井氏『最後の追い込み』」との見出しで、全国の衆院選候補者の支援に派遣している日本維新の大阪府議、大阪市議、堺市議を13日から大阪に呼び戻し、終盤戦は大阪の公認候補の応援に集中させるとの内容です。この記事はネットでも読めます。
 ※日本維新、地方は不用?「大阪に集中」 旧太陽との決別は否定
  http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121213/stt12121311220001-n1.htm

 維新は府議らに担当地域を割り振って全国各地の支援に回る選挙戦を展開。9日の「選挙サンデー」にいったん大阪に呼び戻したのに続き、終盤戦は大阪に張り付ける。地方の候補者からは「地方軽視」と不満の声があがるが、松井氏は「選挙に出るにあたり、候補者に自己責任、自己完結、自己負担を約束してもらっている」と述べた。

 この期に及んで「自己責任、自己完結、自己負担」「自己責任」の再確認を迫られている候補者たちの声も聞いてみたい気がします。


 ※以下は各紙の主な衆院選の関連記事の記録です。全国紙は大阪本社発行の最終版です。

▼12月13日付朝刊
【朝日】
4面「対自民 定まらぬ維新」「松野氏 距離置く 園田氏 連携模索」「熊本の2候補 対照的な戦い」
4面「『9条あるから同胞殺される』」「石原氏、拉致問題巡り発言」
8面「有権者も問われている」「連載『何を問うか』編集委員会座談会」
9面(経済)「消費増税は矛盾 財源は金持ちから 所得税相続税で」徳山高専准教授(政治哲学)小川仁志氏(焦点を聞く 上)
31面(生活)「若い人にもっと支援を」「18歳、埼玉で農業研修中」(10代私の声聞いて3 食と農)
第3社会面「新顔あれこれ選挙術」

【毎日】
1面「沖縄の負担 直視せよ」布施広・専門編集委員(私の視点6)
3面「自公になお勢い」「終盤情勢 民主、劣勢続く」=共同通信電話調査
  ※11〜12日実施、150選挙区、6万3181人から回答
4面「成長戦略 看板倒れ」「短命政権 指導力乏しく」
5面「被災地で続く政争」「『小沢王国』継続か終止符か」(乱戦5 岩手3区)
5面「『拉致は9条のせい』」「維新・石原氏、演説で主張」/「小沢氏、憲法改正に懸念」
9面(経済)「『復活へ挑戦的政策を』」「ものづくり不信深刻」(衆院選緊急点検 下 景気対策
第2社会面「防衛、外交 訴え熱く」「『政策見極めたい』有権者」「北朝鮮ミサイル発射」
第2社会面「争点 わたしは思う TPP」「利益を農業保護に(北海道、農業54歳)」「農業はインフラ整備(長野県、農業39歳)」

【読売】
1面「安保の『欠陥』正す時だ」飯塚恵子編集委員
4面(政治)「『安保』焦点に急浮上」「問われる具体策」「北ミサイル発射」
4面「業界団体 支持割れる」「民か自か 地方組織任せ」
15面「経済政策の争点 分析」(1ページ)

【日経】
2面「道州制前向き 維新にらむ」「分権の象徴、熱意は温度差」「自民内に慎重論も」(衆院選争点8)
4面(政治)「トロイカ 今は昔」「求心力陰り危機感」東京18区、岩手4区(乱戦7)
5面(経済)「社会保障の議論 独立で」ライフネット生命保険副社長岩瀬大輔氏(U−40私の視点5)

【産経】
1面「民主 危機管理能力をアピール」「自民 官房長官失言徹底追及へ」
5面(政治)「5党首 独自色を模索」「北ミサイル 反応に格差」「終盤 舌戦ヒートアップ」
5面「中小6党 埋没の危機」「選挙後にらんだ動きも」
5面「自公300議席超の可能性 共同通信調査」
5面「嘉田氏『憲法改正まで話が進むこと懸念』」
11面(経済)「ルール作りへの関与が鍵」(経済政策の焦点2 TPP)
第2社会面「8人乱立 思惑交錯」(乱戦のゆくえ2 京都4区)
第2社会面「維新 終盤は大阪終結」「松井氏『最後の追い込み』」

【京都】
1面トップ「自民300議席迫る勢い」「維新伸びず50弱 民主60台も」「終盤情勢」=共同通信出稿
5面(政治)「消費増税、民事公に温度差」
5面「衆院選にも影響 北朝鮮ミサイル発射」「民主 対応力アピール」「自民 失言追及で攻勢」
5面「共助か自助か、理念に差」(選択の意義5 子育て支援
25面(地域)「応援演説 十人党色」
25面「原発政策『現実』を重視」(京都5区)
第2社会面「非正規、激務…遠い結婚」「親の婚活交流会 子に代わり奔走」(託す ここから2)

【神戸】
1面準トップ「自公、300議席超の勢い」「終盤情勢調査 民主60台に後退か」
2面「自民批判、卒原発を訴え」「みんな、未来代表神戸入り」
10面(地域経済)「若年雇用依然厳しく」「カギ握る景気動向」「各党公約も実効性未知数」
13面(くらし)「出口見えないデフレ不況」「右肩下がりの平均年収」
第2社会面「“1票の値段”格差最大106万」

▼社説
【朝日】「北朝鮮ミサイル 国際社会への挑戦だ」
【毎日】「北朝鮮ミサイル 断固たる対応が必要だ」
    「衆院選こう考える 復興と防災 政治の決意が伝わらぬ」
【読売】「北ミサイル発射 安保理は制裁強化を決議せよ」
【日経】「厳しい安保理決議で北朝鮮に猛省促せ」
【産経】「北ミサイル発射 暴挙に厳しい制裁加えよ 集団的自衛権を認める時だ」
【京都】「衆院選 憲法改正 冷静かつ分厚い論議を」
【神戸】「ミサイル発射 新たな脅威にどう備える」

▼13日夕刊
【朝日】
第2社会面「ネット活用 試行錯誤」「『政治活動』と主張」「有権者と直接対話」
第2社会面「保育所不足 声上げて 子育て支援NPO代表理事 駒崎弘樹さん

【毎日】
1面「演説スマホ投稿OK?」「選挙運動なら公選法抵触」
1面・写真囲み「元祖『第三極』の自負」みんな・渡辺代表(東奔西走)
社会面トップ「公約 ここに注目」(早大マニフェスト研次席研究員ら)

【読売】
2面(囲み記事・数字で見る)
第2社会面「『将来より今』非正規の叫び」「昼食250円 奨学金返せず」「月給半減 ボーナスゼロ」
第2社会面「高齢者 胸張って一票」作家なだいなださん83歳(語る6)

【日経】
1面・写真囲み「投票所へ 若者いざなう」共産・志位委員長、社民・福島党首(師走の決戦6)
社会面トップ「原発避難者の1票必ず届ける」「福島の自治体など」
社会面「候補者、1日数百キロ移動」「避難中の有権者多い福島5区」

【産経】
1面「投票率 低下注意報」「厳寒 年越し準備 政党乱立 争点なし」
第2社会面「投票率アップへ有権者も奮闘中」
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※追記 2012年12月14日午前8時5分
 毎日新聞の13日付朝刊1面「私の視点」で、布施広・専門委員は「沖縄の負担 直視せよ」と題して、領土問題や北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、集団的自衛権改憲、さらには核武装論まで飛び交う状況を紹介した上で「安全保障を論じるのはいい。が、沖縄の基地負担をめぐる論議が抜け落ちていないか」と指摘しています。
 選挙後も沖縄への基地押し付けが、これもやはり「白紙委任」のように何も変わらないのだとすれば、この選挙を経て沖縄以外の日本人が沖縄差別に結果的に、無意識的に加担したことになりかねません。少なくとも民主主義の原理上はそうであることを否定できないと感じます。沖縄に基地を押し付けているのは「誰か」と問われれば、「日本政府」であり「米国」であるということになります。その日本政府の成り立ちは選挙に信任の根拠を持っていることを意識することで、差別の構造を「見える」化させる努力が必要だと考えています。