「米国第一」突っ走るトランプ政権―新大統領就任、在京紙22日の報道と沖縄2紙社説

 米国のトランプ大統領就任のニュースは、就任演説が日本時間で21日午前2時すぎからという事情から、日本の新聞各紙では21日付朝刊は就任演説のごく大ざっぱな速報にとどまりました(参考:「自国第一」「分断」「予測不能」「高まる緊張」〜米トランプ政権が始動)。就任演説後にホワイトハウスが発表した主要政策も含めて、各紙とも22日付朝刊で詳細に報じています。東京発行6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)の22日付朝刊1面トップ記事の見出しを書き出してみました。

▽1面トップ記事
朝日「『米国第一』次々着手」「TPP離脱、NAFTA再交渉」「トランプ政権 初日に」
毎日「米、協調より国益」「トランプ大統領始動」「TPP離脱/温暖化対策撤廃」
読売「『米国第一』次々」「TPP離脱、NAFTA再交渉」「トランプ流 内外懸念」
日経「米国第一へ政策転換」「TPP離脱・NAFTA再交渉」「トランプ流 就任早々」「オバマケア見直しへ署名」
産経「トランプ氏 TPP離脱表明」「米国第一 アメリカ製品を買おう IS壊滅」「大統領就任」「連日抗議デモ 200人拘束」
東京「予測不能の超大国」「TPP離脱『米国第一』始まる」「『イスラム過激派テロ根絶やしに』」


 各紙とも似たようなトーンで、朝日と読売は主見出しと2本目はほぼ同じです。一番のキーワードは、やはり「米国第一」。次いで各紙とも目立つ扱いにしているのが環太平洋連携協定(TPP)です。日本では安倍晋三政権がTPPを政策の中核に位置付けているのですが、トランプ政権は事前の予告通りに離脱を表明。「TPP離脱」は、新政権に対して発足早々から不安が日本社会でも高まっていることの象徴のように思えます。見出しではトランプ政権の保護主義の象徴として、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉もTPP離脱とセットになっています。

 各紙は社説でも取り上げています。総じてトランプ氏に対して批判的で、就任演説で「自由」や「民主主義」、「法の支配」などの価値観に触れなかったとの指摘も、いくつかの社説で目に付きました。各紙の見出しを書きとめておきます。

▽社説
朝日「トランプ政権 内向き超大国を憂う」
毎日「トランプ新大統領 分断を世界に広げるな」/理念なき政治の危うさ/日本は主体的な外交を
読売「トランプ新政権 価値観と現実を無視した演説/『米国第一』では安定と繁栄失う」/攻撃姿勢は融和妨げる/事実誤認目立つ貿易観/力の支配認められない
日経「『米国第一』を世界に拡散させるな」/保護貿易阻止へ行動を/日米同盟を再確認せよ
産経「トランプ新大統領 世界にどう向き合うのか/自由貿易を日本は働きかけよ」/国益最優先だけなのか/TPP離脱の弊害説け
東京「トランプ米政権船出 建国の精神を忘れるな」/「米国の平和」の幕引き/ソフトパワーはどこへ/お手本のない時代に?


 就任演説は、朝日、毎日、読売、日経の4紙は英語の原文と日本語訳を並べて紙面化しました。共同通信も日英の対訳を配信していますので、地方紙でも同じような紙面を組んだ例があるのではないかと思います。(ちなみに対訳の紙面掲載は、昨年のオバマ前大統領の広島訪問から各紙とも取り組んでいます。学校教育で新聞を教材として活用するNIEを意識しています)。
 矢継ぎ早に繰り出す政策は、昨年の大統領選のさなかからトランプ氏が口にしてきたことばかりであり、その意味では新味はありません。公約が着々と実行に移され始めたということなのでしょう。安倍首相はトランプ大統領と会談すれば、TPPの効用を訴え、説得して翻意を促そうとするのでしょうか。しかし、それでトランプ政権の「米国第一」の象徴のようになっているTPP離脱が撤回されるとは考えづらいと思います。しばらくは、「米国第一」で突っ走るトランプ政権のなすがまま、でしょうか。


 もう一つ、トランプ政権で気になるのは在日米軍基地、とりわけ沖縄への基地集中の問題がどうなるのかです。沖縄タイムス琉球新報の2紙も、22日付けの社説で触れています。一部を引用します。


沖縄タイムス社説「[トランプ大統領就任]多様性こそ米国の魅力」2017年1月22日
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/80849

 安倍晋三首相は20日の施政方針演説で、「日米同盟こそが外交・安全保障の基軸であり不変の原則だ」と述べた。
 同盟強化のために米国の要求を積極的に受け入れる政権の姿勢を考えれば、トランプ氏が求める在日米軍駐留経費の負担増にも応える用意があると読むことができる。沖縄の基地負担増や機能強化につながらないか懸念する。
 翁長雄志知事は新政権の発足に合わせ31日からワシントンを訪問し新基地建設計画の見直しをアピールする。誰と会い、何を訴えるか、周到に練り上げなければ要請行動が空回りに終わりかねない。


琉球新報社説「トランプ大統領就任 敵対ではなく融和の道を」2017年1月22日

 米軍については興味深い指摘をしている。「米軍の嘆かわしい劣化を招いた」と言っている。沖縄では昨年、AV8Bハリアー戦闘攻撃機と垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが墜落した。米軍属で元米海兵隊員による女性暴行殺人事件も起きた。沖縄は「米軍の嘆かわしい劣化」の犠牲を受け続けている。
 トランプ政権には日米同盟の変質を模索する動きがある。ぜひとも普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設を見直し、県外・国外移設を検討してほしい。


 以下に備忘のため、東京発行各紙の22日付朝刊から、1面や総合面を中心に主な記事の見出しを書きとめておきます。 

朝日新聞
・1面
トップ「『米国第一』次々着手」「TPP離脱、NAFTA再交渉」「トランプ政権 初日に」
・2面(総合)
自由貿易に激震」/「米国人雇用を」強まる圧力/メキシコ既に痛手/NAFTA離脱なら日本打撃/演説 安倍首相と正反対
・3面(総合)
「『強い米国』同盟語らず」/「他国防衛」不満にじむ トランプ氏/具体策見えず負担増警戒 日本政府
「温室ガス対策 行動計画撤廃」「削減目標達成 不透明に」
・4面(総合)
「トランプ相場 先行きは」「専門家『日本株にマイナス』『ドル高円安続く』」「経済具体策乏しく」
与野党幹部は」/自民「TPPの利点説明」/民進「保護主義気がかり」
・6面(国際)
「第一声 世界が警戒」/中国、独自報道を規制/「テロ撲滅」歓迎と反発※ロシア、エジプト、シリア、フィリピンなど
孤立主義の歴史 繰り返すのか」山脇岳志・アメリカ総局長
・社会面
トップ「『米国第一』トランプ政権 揺れる日本」/輸入圧力「政府はブレーキを」/語られぬ課題 軍縮は 基地は
【社説】「トランプ政権 内向き超大国を憂う」

毎日新聞
・1面
トップ「米、協調より国益」「トランプ大統領始動」「TPP離脱/温暖化対策撤廃」
「リーダーなき世界に」小倉孝保・外信部長
・2面(総合)
「日本 戦略練り直し」/通商政策の柱失う/同盟 見えぬ役割
・3面(総合)
クローズアップ「世界 保護主義警戒」/「自由貿易に打撃」「米、NAFTAも再交渉」/「理念なき実利追求宣言」「『私たちは自国を犠牲に外国を潤わせた』」
「脱オバマに躍起」「初日から大統領令」「『ケア』見直し」
・社会面
トップ「女性『黙ってない』」「首都『20万人』行進」
「『自国第一』日本でも」
「急進的改革に危うさ ポピュリズム」水島治郎千葉大政経学部教授
【社説】「トランプ新大統領 分断を世界に広げるな」/理念なき政治の危うさ/日本は主体的な外交を

▼読売新聞
・1面
トップ「『米国第一』次々」「TPP離脱、NAFTA再交渉」「トランプ流 内外懸念」
「『損得外交』日本に危機感」=動き出すトランプ主義(上)
・2面(総合)
「軍備増強へ転換」「『力による平和』目指す」※基本政策の主な内容
「首脳会談 麻生氏同行へ」「米が要請 信頼構築に期待」
「見えぬ『新たな秩序』」大塚隆一・企画委員
・3面(総合)
スキャナー「保護主義前面に」/米国民 生活に打撃も/「NAFTA見直し」日本企業 北米戦略影響
・社会面
トップ「抗議と喝采 交錯」「デモ暴徒化 負傷者も」
「メラニアさんの服装『ケネディ夫人「ほうふつ』」
・第2社会面
「TPP離脱 農水幹部『苦労 水の泡』」
ツイッター次々と反応」
「『トランプの輪』100回以上」「指で強調のしぐさ 熱狂生む」
【社説】「トランプ新政権 価値観と現実を無視した演説/『米国第一』では安定と繁栄失う」/攻撃姿勢は融和妨げる/事実誤認目立つ貿易観/力の支配認められない

日経新聞
・1面
トップ「米国第一へ政策転換」「TPP離脱・NAFTA再交渉」「トランプ流 就任早々」「オバマケア見直しへ署名」
「ワシントン大規模デモ」
「『法の番人』なき危うさ」秋田浩之・編集委員=トランプの米国 身構える世界2
・2面(総合・政治)
「日米同盟 新局面に」「首相、トランプ氏と会談急ぐ」「米軍駐留費増を警戒」
「手ごわい『内向き宣言』」
「演説 にじむ不満」/「権力を米国民に戻す」/「米製品買う」がルール
与野党、注文相次ぐ」/自民副総裁「TPP利点説得を」/民進代表「保護主義 気がかり」
・3面(総合)
自由貿易 視界不良」「NAFTA再交渉へ」「企業の北米離れも」
「TPP離脱を表明」「メガ協定 総崩れの危機」
「自動車、揺らぐ戦略」「生産体制変更 コスト多大」
・社会面
トップ「漂う不寛容 憂う米邦人」「『少数派排除の動き心配』」
「『全人類の立場に立って』」「『核の怖さ知らぬ』広島・長崎 懸念」
「デモ参加者 店や車襲撃」
【社説】「『米国第一』を世界に拡散させるな」/保護貿易阻止へ行動を/日米同盟を再確認せよ

産経新聞
・1面
トップ「トランプ氏 TPP離脱表明」「米国第一 アメリカ製品を買おう IS壊滅」「大統領就任」「連日抗議デモ 200人拘束」
「『日本第一』主義で行こう」乾正人・編集局長
「軍備増強もアジア安保触れず」=トランプ新時代(中)
・2面(総合)
大衆迎合 色濃く 大統領就任演説」/就任演説要旨
「日米首脳会談 来月にも」「首相、同盟強化目指す」
・3面(総合)
「初日から公約実行」/内政:オバマケア見直し 署名/経済:NAFTAは「再交渉」/安保:訪露検討 対中牽制含み
「2国間協定要求へ」「日本、さらなる市場開放警戒」
・4面(総合)
「減税・投資踏み込まず」「『保護主義 予想以上に強い』」
「自動車 戦略見直しも」「メキシコ進出 トヨタなど4社」
※就任演説全文、日本語のみ
・5面(総合)
「1100万移民 退去おびえ」「『壁ではなく橋を』抗議の横断幕」
・社会面
トップ「暴徒と炎 続く騒乱」「『これが今の米国』『また新たな戦い』」
被爆地訪問を/核増やさないで」
【社説(「主張」)】「トランプ新大統領 世界にどう向き合うのか/自由貿易を日本は働きかけよ」/国益最優先だけなのか/TPP離脱の弊害説け

東京新聞
・1面
トップ「予測不能の超大国」「TPP離脱『米国第一』始まる」「『イスラム過激派テロ根絶やしに』」
「実利優先の取引外交」後藤孝好・アメリカ総局
・2面(総合)
核心「根幹揺らぐ日米関係」「『他国軍に援助 米軍劣化した。』」/IS掃討 自衛隊の協力要請も/駐留費負担増の懸念
「日本の通商戦略 崩壊」「2国間交渉 迫られる可能性」
・3面(総合)
「国際協調よりも国益」「『今日からひたすら米国第一だ』「『力による平和 外交の中心』」」
ツイッターは『二刀流』」「公式と個人用使い分けか」
・4面(総合)
「輸出企業 保護主義の暗雲」「『米国製品を買い 米国人を雇う』」「2国間交渉 農産物の開放圧力懸念」
「光明はペンス副大統領?」「知日派 企業幹部らと人脈」
・社会面
トップ「分断 きしむ米国」「衝突、発煙…『こんな不穏なの初めて』」/「『祝うべき』冷めた目も」
・第2社会面
「従属脱す機会」米軍基地 自衛隊増強の不安も/「本気なら戦争」排外主義 アジア人も対象に?/「日本に追い風?」経済政策 意外と株価伸びず
【社説】「トランプ米政権船出 建国の精神を忘れるな」/「米国の平和」の幕引き/ソフトパワーはどこへ/お手本のない時代に?