マティス長官「一つは辺野古。二つ目も辺野古」に「県民感情逆なで」(沖縄タイムス)「民意無視の愚論」(琉球新報)

 米国のトランプ政権のマティス国防長官が2月3、4日、日本を訪れ、安倍晋三首相や稲田朋美国防相と会談しました。報道によると、マティス氏は、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象に、中国が領有権を主張する沖縄県尖閣諸島が含まれるとする立場を確認。また、「核の傘」を含め「米国の同盟上の関与を再確認する」と述べました。これに対して安倍首相は、日本の防衛力強化を表明しました。トランプ大統領が大統領選の時から、日本に米軍駐留経費の負担増を求める発言を行っていましたが、この点では具体的なやり取りはなかったとされます。トランプ大統領の誕生で、安倍政権には日米同盟に変化が生じるのでは、との懸念がありましたが、「トランプ政権下での『強固な同盟』の継続を印象付けた」(共同通信)というのが、東京のマスメディアのおおむね一致した見方のようです。
 沖縄の米軍基地を巡っても、双方は普天間飛行場宜野湾市)の名護市辺野古への移設を着実に推進すること、沖縄の基地負担の軽減に向けて努力することで一致したと報じられています。
 この点に関しては気になることがあります。マティス氏が安倍首相に対して、普天間飛行場の移設をめぐって「プランは二つしかない。一つは辺野古。二つ目も辺野古だ」として、唯一の解決策との認識を示したと報じられていることです。辺野古への移設には二つの選択肢があるという意味でしょうか。しかし、現状では辺野古移設案は沿岸部を埋め立てV字滑走路を設置する案で日米両政府が合意しており、ほかに選択肢は取り沙汰されていません。それでは「一つは辺野古。二つ目も辺野古だ」というこの言い回しは、辺野古への移設しかないことを強調するための、ある種の比ゆ的な文言なのでしょうか。そうだとしたら、沖縄の民意を随分と逆なでして省みない発言だと感じますし、安倍首相もそうした物言いを唯々諾々と聞いていただけだとすれば、いったい「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」と言ってきたことは何だったのかが、とりわけ沖縄の方々から問われるだろうと思います。
 折しもこの時期、沖縄県の翁長雄志知事は、普天間飛行場辺野古移設計画の見直しを求めるために米国を訪問していましたが、思うような成果を得られなかったと報じられています。翁長知事は2014年11月の知事選で、辺野古移設を容認した仲井真弘多・前知事を破って初当選しています。その直後の同年12月の衆院選でも、沖縄の四つの小選挙区ではいずれも自民党候補が野党系候補に敗れました。普天間飛行場の県内への移設への反対は、最近の選挙のたびに示されてきた沖縄の民意です。米国で政権が交代しても、この民意が尊重されることはないのでしょうか。


 以下に、マティス長官訪日に対する沖縄タイムス琉球新報の社説を引用します。沖縄の民意を反映したメディアの受け止め方として、日本本土でも広く知られていいと思います。

沖縄タイムス:社説「[マティス長官来日]基地強化は許されない」=2017年2月5日
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/82838

 米軍普天間飛行場辺野古移設についてマティス氏は、安倍首相との会談でこう語ったという。「プランは二つしかない。一つは辺野古、二つ目も辺野古だ」
 新基地建設の中止を要請するため翁長雄志知事が訪米している最中に、知事の要請行動は無意味だと言わんばかりの、県民感情を逆なでする発言が飛び出したのである。
 会談相手の安倍首相にこのような表現を用いるのは不自然だ。メディア発表用の、つまりは日本国民向けの、イメージ操作を意識した発言と見るべきだろう。
 米国の政府関係者や議員の間では「辺野古問題は終わった」との空気が広がっているという。
 昨年来、多発している米軍機の事故やオスプレイの旋回飛行に伴う騒音などの各種被害は、沖縄の基地被害が世界的に見ても例のない「複合過重負担」であることを示している。
 県内移設を前提とした米軍再編計画を推進するだけでは、負担軽減としてはまったく不十分だ。
 知事の要請行動は日米の壁に阻まれ、目に見える成果を上げることができなかったが、責めるべきは知事ではなく、軍事上・防衛上の理由を優先して「複合過重負担」の現実を放置してきた日米両政府である。


琉球新報:社説「日米『辺野古唯一』 民意踏みにじる愚論だ」=2017年2月5日
 http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-439193.html

 訪米中の翁長雄志知事は「辺野古固執すると日米安保体制に大きな禍根を残す」と批判した。当然だ。翁長氏は2014年11月の知事選で、辺野古移設反対を公約に掲げて圧勝して当選した。
 県内では14年1月の名護市長選、12月の衆院選全選挙区、16年7月の参院選のいずれも新基地建設を拒否する候補が当選した。16年1月の宜野湾市長選は現職が勝利したが、選挙戦で辺野古移設の賛否を明言していない。6月の県議選では翁長県政与党が圧勝した。
 これらの選挙結果を見ても、沖縄の大多数の民意は「新基地建設拒否」であることは明らかだ。それにもかかわらず、日米両政府は辺野古移設で強硬姿勢を取り続けている。沖縄の自己決定権を踏みにじる行為が民主主義社会でまかり通っていいはずがない。
 (中略)
 外務省によるとマティス氏は普天間移設について、こう述べたという。
 「プランは二つしかない。一つは辺野古。二つ目も辺野古だ」
 民意無視の愚論だ。沖縄からマティス氏に、言葉を投げ返したい。
 「プランは二つしかない。一つは県外。二つ目は国外だ」