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組織ジャーナリズムに身を置き40年余

「共謀罪」成立、作家高村薫さん「悪いのはぜんぶ私たち」(京都新聞)

 6月15日に「共謀罪」(政府呼称「テロ等準備罪」)法が参院で可決、成立されたことに対して、京都新聞が作家の高村薫さんのインタビューを掲載しました。私が読んだのは同紙のサイトに15日夜にアップされた記事です。「共謀罪」が私たちの社会に生まれ落ちたことの意味をあれこれと考えてきましたが、今の私の気分にもっとも近い指摘だと感じています。高村さんの指摘を一部引用して紹介します。

※「共謀罪」成立、作家高村薫さん「悪いのはぜんぶ私たち」=京都新聞2017年6月15日 22時47分
 http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20170615000152

 しかし、悪いのはぜんぶ私たちですよ。政権のウソを見抜くことができず、高い支持率を与え、好き勝手にさせてしまったのだから。
 「テロ対策」というのはまやかし。再三の指摘にもかかわらず適用範囲はあいまいなままで、対象となる罪もテロとは無関係なものが多数含まれている。他方で、都合の悪い異論を封じ込めるに、これほど便利な法律はない。今は、政府の方針に堂々と言論で反対することができるけれど、共謀罪があれば、そうした行為と、処罰対象となる「反政府運動」とを結び付けるのは簡単。ほんの一歩、あるいは半歩ほどの違いしかない。
(中略)
 では、なぜ政府のウソを見抜けなかったのか。高い支持率を与えてしまったのか。それは考えることを放棄してしまったから。今の日本は情報が多すぎて「何が最善なのか」「何が本当なのか」が見えにくい。分かるのは「結局、世の中難しいね」っていうことだけ。そこで、自分で決断することに限界を感じ、ある種威勢の良い言葉で現状をスパッと切ってくれる政治家に飛びついてしまう。
(中略)
 繰り返しになるけれど、悪いのは私たち。ある意味、平和や民主主義が保障されてきた戦後社会に慣れすぎていた。安心感を覚え、権力に対する警戒心が失われていた。そう、この70年、権力は「優しい顔」をしていたんですよ。よく注視すると本当は違うけれど、市民感覚として権力は怖くなくなっていた。いつ権力が私たちに牙をむくか分からないのに。共謀罪はまさにそういう法律だったのです。私たちは本当に取り返しのつかないことをした、今は、そのことを肝に銘じることしかできない。

 今振り返ってみれば、「テロ対策」を持ち出してきた安倍晋三政権に対して、そうまでして「共謀罪」をなぜ入れたがるのかを社会全体でもっと深く考えるべきだったのだろうと思います。
 そもそも、安倍首相が言うように「共謀罪」がなければ「2020年の東京五輪は開催できないと言っても過言ではない」というのが本当ならば、日本は世界中をだまして五輪を誘致したも同然ということになります。共謀罪が過去3回、国会に提案されたときには、このようにテロ対策が前面に出ることはありませんでした。なぜ今回は「テロ対策」が強調されたのか。それは、3回も廃案になった共謀罪とは別の呼び方にすることに目的があり、意味があったのだろうと推察します。そしてその後の推移は、「テロ対策」がそのこと自体には社会の関心が極めて高いこともあって、安倍政権の思った通りだったのではないでしょうか。賛成意見が圧倒的に多い、とはなりませんでしたが、反対の声が賛成を圧倒することもありませんでした。
 しかし、それでもまだ、ここで絶望してはいけないのだと思います。「私たちは本当に取り返しのつかないことをした、今は、そのことを肝に銘じることしかできない」。そうだとしても、取り返しのつかないことになった、ということを肝に銘じて、その上でどうするのか、どうすればいいのかがより重要なのだと考えています「共謀罪」の乱用をどう防ぐのか、盗聴、私信や電子メールのチェックなどの野放図な拡大にどう歯止めをかけるのか、権力による監視をだれが監視するのかなど、社会的な議論が必要な課題が数多くあります。もちろん「テロ防止」も重要です。それらの議論の一つ一つで論点がかみ合い、議論が担保されるために、今後マスメディアが果たす役割もあるのだろうと思います。

安倍晋三内閣の支持率急落、読売12P減、朝日、毎日、日経、共同10―6P減

 6月15日(木)に「共謀罪」法が成立してから最初の週末に実施されたマスメディアの世論調査結果がいくつか報じられています。安倍晋三内閣の支持率は軒並み急落しました。前回比(前月比)では読売新聞調査では12ポイント減、共同通信調査、毎日新聞調査でも10ポイント減です。不支持率も軒並み上昇し、読売新聞調査では13ポイント増。毎日新聞やNNNの調査では、「支持」を「不支持」が上回りました。
 ネット上で目に止まったものを以下に書きとめておきます。支持率の下落幅の大きい順に並べました。

・読売新聞 「支持」49%(12P減) 「不支持」41%(13P増)※17、18日実施
共同通信 「支持」44・9%(10・5P減) 「不支持」43・1%(8・8P増)※17、18日実施
毎日新聞 「支持」36%(10P減) 「不支持」44%(9P増) 「関心がない」17%(1P増)※17、18日実施
産経新聞・FNN 「支持」47・6%(8・5P減) 「不支持」42・9%(8・2P増)※17、18日実施
日経新聞テレビ東京 「支持」49%(7P減) 「不支持」42%(6P増)※16―18日の3日間実施
・NNN(日本テレビ系列) 「支持」39・8%(6・3P減) 「不支持」41・8%(5・4P増)※16―18日の3日間実施
朝日新聞 「支持」41%(6P減) 「不支持」37%(6P増)※17、18日実施

 安倍内閣の支持率は急落はしましたが、それでも支持率自体は読売新聞、日経新聞テレビ東京の各調査ではそれぞれ49%、共同通信44・9%と、まだ相当に高いと言っていい水準を保っています。2015年に安全保障法制の採決を与党が強行して成立させた直後は、35%から高くても40%ちょっとといった水準でした。

【参考】 2015年9月19日未明:安保法案が参院本会議で可決、成立
※いずれも9月19、20日実施
朝日新聞 支持35%(1ポイント減)不支持45%(3ポイント増)
毎日新聞 支持35%(3ポイント増)不支持50%(1ポイント増)「関心がない」12%(3ポイント増)
・読売新聞 支持41%(4ポイント減)不支持51%(6ポイント増)
日経新聞テレビ東京 支持40%(6ポイント減)不支持47%(7ポイント増)
産経新聞・FNN 支持42・6%(0・9ポイント減)不支持47・8%(3・3ポイント増)
共同通信 支持38・9%(4・3ポイント減)不支持50・2%(3・8ポイント増)
・JNN 支持46・3%(0・8ポイント減)不支持49・5%(0・7ポイント増)

 ただ先月あたりから内閣支持率は低下傾向にありました。政権浮揚のために内閣改造なども取り沙汰されているようですが、どうでしょうか。今回の世論調査では、加計学園問題や森友学園問題、「共謀罪」法を参院法務委員会での採決を飛ばして本会議で採決にかけたやり口などに対して、相当に厳しい評価も表れているようです。2015年の安保法制の際には、まもなく内閣支持率は上向きに転じましたが、今回はそうもいかないのではないかとも感じます。間もなく始まる東京都知事選でどのような結果が出るのかも待ちたいと思います。
※参考過去記事
安倍晋三内閣の支持率の推移(2017年1月―)※随時更新」
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20170111/1484063382


【追記】2017年6月19日7時5分
 朝日新聞の調査結果を追加し、タイトルを「安倍晋三内閣の支持率急落、読売12ポイント、共同10・5ポイント、毎日10ポイント減」から改題しました。


【追記】2017年6月20日8時30分
 産経新聞・FNNの世論調査結果を一覧に加えました。また毎日新聞の調査結果に「関心がない」の回答結果を追加しました。

悪法は民主主義の基本を否定して誕生〜「共謀罪」法成立、在京紙の報道の記録

 かつての共謀罪と本質的に変わりがない「テロ等準備罪」(政府呼称)を新設する組織犯罪処罰法改正案は6月15日朝、参院法務委での採決を飛ばしたまま、本会議で採決が強行され可決、成立しました。安倍晋三政権がどう説明しようとも、改正法の実態をみれば、かつて3度も廃案になった共謀罪が、若干の装いと名前を変えてとうとう現代の日本社会に生まれ落ちたに等しいと思います。
 14日から15日朝にかけての国会の様子は、永く記録にとどめ、語り継いでいかなければならないと思います。「共謀罪」法案は参議院での審議は20時間にも達していませんでした。委員会での採決を飛ばして、いきなり本会議に進む「中間報告」は過去にも例はあるようですが、委員会の委員長が野党のときなどに限られており、今回は異例というより「異常」というほかないのではないかと感じます。与党が議論を一方的に打ち切り、そこへ進めば議席数の差で可決が明らかな採決へとゴリ押ししたのは、何のため、何が目的だったのでしょうか。加計学園の大学獣医学部開設を巡る問題で、安倍首相がこれ以上国会で追及されるのを防ぐために、国会会期を延長させないためだった、との指摘をよく目にします。もしそうなら「安倍1強」への巨大な忖度が働いた、と言うべきでしょう。議会制民主主義の自殺行為です。だれも止められないまま、ここまで来てしまいました。これが「安倍政治」の到達点です。
 「共謀罪」が、民主主義の基本的なルールである「話し合う」ことを否定しながら生まれたことは、そのこと自体が「共謀罪」の危険性を示してもいるのだと感じます。話し合いを否定して、数をたのんで強硬策を強引に進めでもしなければ、可決成立はおぼつかない法案だったということです。皮肉交じりで言えば、悪法にふさわしい誕生の仕方だったのかもしれません。戦前の治安維持法もそうですが、悪法は小さく生まれて大きく育ちます。これで終わりではない、始まりだと考えています。「共謀罪」の乱用をだれが見張るのか、止めるのか。そして、どうやって「表現の自由」を守るのか。いずれもマスメディアのジャーナリズムの課題です。もちろん、テロ対策は否定しませんが、それは別の話です。

 この悪法の誕生をマスメディアはどう報じたか。東京発行の新聞各紙の15日付朝刊と15日夕刊の報道を記録しておきます。各紙とも、東京本社発行の最終版です。

 写真:東京発行新聞各紙の15日付朝刊。経済専門紙の色彩が強い日経新聞は別として、「共謀罪」か「テロ準備罪」か、主見出しのタテ・ヨコ、白抜きかどうかなどの点で、朝日、毎日、東京の3紙と読売、産経2紙の2極化が顕著に読み取れます。日経もどちらかと言えば前者に近いように感じます。
※15日付朝刊の主な記事と見出しは以下の通りです(2017年7月3日追記)。

▼朝日新聞=記事14本、社説
・1面トップ「『共謀罪』法案 きょう成立 自公、参院委審議打ち切る 本会議で採決強行へ」/「疑惑封じ 異例手続き」視点:石松恒・国会担当キャップ
※総合面見開き(2、3面)見出し「疑問残したまま 『共謀罪』自公突進」
・2面:時時刻刻 「会期内ありき 奇策を強行 『加計国会』に幕引き図る」/「中間報告 与党委員長では異例 党議拘束ない法案など前例」
・3面「変遷『周辺者』も処罰 目的『対テロ』外れる」
・4面「2閣僚の問責決議案 否決 加計問題・『共謀罪』法案で野党提出」※賛成、反対意見
・社会面(35面)「不安置き去り 乱暴すぎる 国会で街で 抗議 深夜まで 共謀罪法案」「『熟議ほしかった』」/「仕事帰り、街頭へ」
・第2社会面(34面)問う「共謀罪」※6人「加計問題に『ふた』」ジャーナリスト田原総一朗さん(83)/「国会死にかけてる」宇宙物理学者 池内了さん(72)/「プライバシー危機」弁護士 亀石倫子さん(42)/「中身詰めきれず」評論家 荻上チキさん(35)/「尋常じゃない進め方」ジャーナリスト 青木理さん(50)/「数の力による暴挙」作家 落合恵子(72)
・社説「国会最終盤 極まる政権の強権姿勢」

▼毎日新聞=記事28本、社説
・1面トップ「『共謀罪』法案 成立へ 委員会省略し強行 会期延長なしで調整」/「立法府の劣化深刻」平田崇浩・政治部編集委員
※総合面見開き(2、3面)見出し「疑問点山積のまま 『加計隠し』で奇策」
・2面「『会期内に』官邸意向 都議選控え かじ切る」/「公明 渡りに船」/「中間報告って? 国会法根拠に委員会省略 与野党対決下では10年ぶり」質問なるほドリ
・3面:クローズアップ「『一般人』定義できず 法相答弁ぐらぐら」/「適用 捜査機関任せ」
・5面「『中間報告』で国会紛糾 『究極の強行採決』」/「民進 戦術裏目に」/「疑問点解消されず」政治アナリストの伊藤惇夫さん/「審議無視の禁じ手」武蔵勝宏・同志社大政策学部教授/共謀罪対象となる277犯罪※一覧
・11面:論点 「共謀罪」で社会は:「監視型捜査で市民活動萎縮」白取祐司・金川大法務研究科教授/「犯罪情報 各国共有に不可欠」岡本行夫・外交評論家/「裁判所のチェックには限界」門野博・弁護士、元裁判官
・12面「『共謀罪』テロ等準備罪新設へ」論点整理Q&A「刑事法 大きく変容」/「計画段階で処罰」/「対象犯罪は277」/「『通信傍受』を懸念」
※社会面見開き(26、27面)見出し「市民『だまし討ち』 権力の乱用に懸念」
・社会面(27面)「列島に渦巻く怒り 国会前」/「野党『数の横暴』批判 参院」/「不安しかない/民主主義が危うい/バカげた審議」札幌・名古屋・大阪・広島・博多・鹿児島/「『物言わぬ国民作る法律』消費者団体など相次ぐ反対の声」
・第2社会面(26面)「『白を黒にする力ある』」「『オウム』防げたのか 適切な情報利用必須」被害者・家族の会代表 永岡弘行さん/「政府に異論唱えにくく」佐々木光明・神戸学院大教授(刑事法)/「恣意的捜査にお墨付き」ジャーナリストの溝口敦さん/「国際条約締結に不可欠」萱野稔人・津田塾大教授(哲学)/「共謀罪」私はこう思う・反対「正当な目的 存在しない」首都大学東京教授・木村草太氏(36)/「『監視強化歯止めなし』 別府隠しカメラ 被告の労組危惧」
・社説「強引決着の『共謀罪』法案 参院の役割放棄に等しい」

▼読売新聞=記事7本
・1面トップ「テロ準備罪 きょう採決 委員会省略 与野党 徹夜の攻防 内閣不信任案 提出」/「中間報告」※用語説明
・2面「テロ準備罪 処罰対象は? 市民団体や企業 適用されず」ニュースQ+/ドキュメント テロ準備罪法案
・3面:スキャナー「テロ準備罪 与党『奇策』 自民、公明に配慮 参院『中間報告』」/「野党『戦術ミス』の声も 問責・不信任」
・第2社会面(34面)「緊迫審議 未明も テロ準備罪 与野党応酬 議場騒然」

▼日経新聞=記事5本
・1面トップ「『共謀罪』法案成立へ 与党、参院委採決省く 野党、内閣不信任案で抵抗」
・2面「加計問題 与党幕引き狙う 都議選に波及懸念 野党反発『極めて乱暴』 『共謀罪』巡り攻防」/「過去3度廃案、権限乱用恐れも ▼組織犯罪処罰法改正案」※用語説明
・3面「『中間報告』による国会採決 委員会採決を省略」きょうのことば
・4面「国会会期末 なぜドタバタ? 不信任案で対決色 野党『共謀罪』審議遅れ狙う」Q&A

▼産経新聞=記事5本
・1面トップ「テロ準備罪きょう成立 与党、国会会期延長せず」
・2面「与党、水面下の奇襲 テロ準備罪 委員会採決を省略」/「野党恨み節 時間稼ぎに躍起」
・5面「野党『女の壁』…良識の府? テロ準備罪めぐり 参院委大荒れ」
・27面(社会面)「賛成『テロ防ぐ必要がある』 反対『議論尽くされてない』 テロ準備罪 国会周辺騒然」

▼東京新聞=記事14本、社説
・1面トップ「『共謀罪』成立へ強行 自公 委員会採決を省略 参院本会議 早朝にも可決 野党が内閣不信任案」/「多くの論点 残したまま」/「民主主義ないがしろ」金井辰樹・政治部長
※総合面見開き(2、3面)見出し「『共謀罪』不安尽きず 『加計隠し』野党批判」
・2面:核心「自民、都議選影響を回避」/「与党委員長なのに…異例 与野党対決法案 安倍政権10年前も」/「『共謀罪』、秘密法・安保法の延長線上 改憲へ突き進む安倍政権」
・3面「一般人対象・心の中処罰 テロ対策 根拠曖昧」/ドキュメント「野党『採決ありき』 自民『平和のため』」
・特報面(24、25面)「地方 届かぬ声に怒り 県市町村議会 意見書40以上 国会議員 読んでない?」「反対や危惧『なぜ強引に推し進めるのか』 沖縄では『抗議活動 標的に』」
※社会面見開き(26、27面)見出し「自由が奪われる 国会 死にかけている」
・社会面(27面)「市民ら結集・参院騒然 国会周辺 国会内」/「政権めちゃくちゃすぎる 若者ら怒り」
・第2社会面(26面)「ゴリ押し手法 頂点に 大石芳野さん」※世界平和アピール七人委員会/七人委員会 アピール全文
・28面「数々の問題 置き去り 『共謀罪』9つの論点 国会論戦と取材班の目」※大型表
・社説「『共謀罪』法案 成立強行は疑惑隠しか」


 写真:東京発行新聞各紙の15日夕刊。朝刊と同じく朝日、毎日、東京の3紙と読売の違いが明らかです。見出しに「強行」の2文字がないのは読売だけです。その読売は1面の解説記事に「不安解消へ 更なる説明必要」の見出しを立て、本文では「国会審議で理解が深まることが期待されたが、与党による突然の『中間報告』により、審議が打ち切られた」「政府は捜査機関の権限乱用防止を徹底するとともに、引き続き改正法の内容を国民に説明し、不安解消に努めることが求められる」と書いています。さすがに、この採決のやり方は手放しでは支持できないのでしょうか。 ※東京地域では産経新聞は夕刊の発行はありません。

【15日夕刊】
▼朝日新聞
・1面トップ「『共謀罪』法 成立 採決強行 自公維賛成 参院本会議 懸念 消えぬまま」/「徹夜の反対 与党一蹴」
・2面「強引な国会運営『不安増幅』 野党『加計問題追及逃れだ』 『共謀罪』法成立」/「『問題だらけ』・『自由侵さぬ』」※討論要旨
・社会面(12、13面)見開き「『言論失った国会』 社会の萎縮 不安」/「投票時間制限 響く怒号 『共謀罪』法成立」/「『市民は見ている』『反対の声残す』 議場の外 夜通し抗議」/「安倍一強 やりたい放題」作家 室井佑月氏/「強行し幕引き 政権の焦り」国際政治学者 三浦瑠麗氏/「捜索受けたしこり いまも 作家・雨宮さん」/「監視対象拡大の恐れ 捜査関係者指摘」

▼毎日新聞
・1面トップ「『共謀罪』法 成立 早朝の審議 採決強行 計画段階で処罰可能 参院本会議」/「将来に禍根残す」元衆院議員・早川忠孝弁護士/「適切に運用する 安倍首相」
・10面「野党『稀代の悪法』 参院議場に怒号」「共謀罪」法 攻防ドキュメント/「外務省『懸案解消』」
・社会面(12、13面)見開き「徹夜の攻防 数頼み 監視社会 流れ加速」/「議長 投票打ち切る 野党『牛歩』時間切れ」/「政権のおごり 感じる」/「対象犯罪の選別不透明」フィリップ・オステン慶応大教授(国際刑事法)/「暴力団から市民守れる」田村正博京都産業大教授(社会安全政策)/「通信情報収集容易に」/「国民から声奪い 独裁の国に 検閲されるのは真っ平御免 タレントらツイート」

▼読売新聞
・1面トップ「テロ準備罪法 成立 277の組織犯罪処罰 参院委省略 徹夜国会 朝に採決 内閣不信任否決」/「不安解消へ さらなる説明必要」政治部・木村優里記者
・2面「『奇策』採決に野党反発 『適切な選択』与党は評価 テロ準備罪法 成立」/ドキュメント テロ準備罪法
・社会面(11面)「徹夜審議 大荒れ 『成立』拍手と怒号 テロ準備罪法」/「捜査当局 慎重に運用を」日弁連民暴委員長 木村圭二郎弁護士/「『五輪対策必要』元バレー代表 森田さん」

▼東京新聞
・1面トップ「強行『共謀罪』成立 市民処罰 恐れ残す 徹夜の攻防 参院採決」/「数の力で批判封殺」取材班の目:西田義洋・担当デスク
・2面「野党 決議連発し抵抗 審議打ち切りを批判 『共謀罪』成立」/「福島氏ら3氏の投票行動無効に 牛歩で時間切れ」/※賛成、反対討論要旨、民進(反対)、自民(賛成)、共産(反対)、維新(賛成)
・社会面(8、9面)見開き「国民も歴史も許さぬ」「『反対』叫び続ける」/国会周辺ドキュメント「緊急性どこに/参院 良識の府ではないのか」※1社全面/「徹夜講義の市民『あぜん』/「『黙ってたら変わらず』 治安維持法違反で逮捕」/「情報提供 拒否難しい」警察の活動に詳しい清水勉弁護士/「お任せ意識を捨てて」政治学者の姜尚中・東京理科大特命教授

▼日経新聞
・1面トップ「『共謀罪』法が成立 与党、採決を強行 反zない、準備段階で処罰 参院本会議 維新も賛成 自公『会期延長せず』」
・3面「民進代表『怒り込め抗議』 法相『安全安心に必要』 『共謀罪』法成立」/14、15日ドキュメント
・社会面トップ(13面)「徹夜国会 熟議置き去り 与党『牛歩なんて茶番』 野党『やり方荒っぽい』」/「慎重運用求める声 警察庁長官『対テロで意義』」

「共謀罪」法案、委員会採決を飛ばして参院本会議で採決強行へ ※追記:巨大な忖度、「安倍政治」の到達点

 こういうことになるとは思いもしませんでした。
 かつての「共謀罪」と本質的には変わりがない「テロ等準備罪」(政府呼称)を新設する組織犯罪処罰法改正案は6月14日、自民党公明党の与党が、参院法務委員会での採決を飛ばして本会議で採決に持ち込む手続きを進めました。民進党など野党は猛反発し、内閣不信任案などを提出して抵抗しましたが、与党は15日未明にも参院本会議での採決を強行する構えと報じられています。
※47news=共同通信「与党、『共謀罪』成立強行へ/野党、内閣不信任案で対抗」2017年6月14日
 https://this.kiji.is/247674750415144445?c=39546741839462401

 参院は14日夜の本会議で、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案を巡り、参院法務委員会の採決を省略するため「中間報告」の手続きを進めた。自民党が提案した異例の手続きで、公明党と共に15日未明にも本会議採決を強行し成立を図る構えだ。民進党など野党は「暴挙だ」と猛反発。安倍内閣に対する不信任決議案の提出を含めて徹底抗戦した。終盤国会攻防はヤマ場を迎えた。
 夜の参院本会議では、民進、共産両党が提出した金田勝年法相への問責決議案が否決された。その後、中間報告を求めることを議題とする動議が可決された。

 衆院通過のときのように、与党は野党の反対を押し切って採決に入るぐらいのことはやるかもしれないと思っていましたが、まさか委員会の採決を飛ばしていきなりの本会議での採決に持ち込むとは、国会軽視もはなはだしく、民主主義社会の基本ルールである「話し合い」の価値をまったく認めないに等しいものです。法案それ自体に対して数多くの危険性が指摘されていること以上に、危うい発想の元で数をたのんだ横暴とも言える方法で可決成立させようとしていることは、決して忘れずにいたいと思います。
 ※写真は朝日、毎日、読売3紙のの14日夕刊(東京本社版)


【追記】2017年6月15日午前8時45分
 共謀罪法案は15日朝、参院本会議で採決の結果、投票総数235票のうち、賛成165票、反対70票で可決成立しました。共同通信の速報は午前7時47分でした。
 これが「安倍政治」の到達点です。「安倍1強」への巨大な忖度。だれも止めようともしない。とうとうここまで来てしまいました。
 でもこれで終わりではない、始まりだと考えています。共謀罪の乱用をだれが見張るのか、止めるのか。どうやって「表現の自由」を守るのか。マスメディアの課題です。


【追記】2017年6月15日午前8時50分
 東京発行の新聞各紙の15日付朝刊の1面です。
 https://twitter.com/newsworker/status/875115999703384064

「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(4) 6月12―14日

 一つ前の記事「『共謀罪』法案 在京紙の報道の記録(3)」の続きです。

◎6月12日(月)
【朝刊】 ※新聞休刊日明けで発行なし

【夕刊】
毎日新聞=記事2本
・2面・特集ワイド「国連の辛口採点 日本に何が― 政権の暴走の現れ メディアは萎縮」※「共謀罪」法案にも言及
・第2社会面(10面)「『共謀罪』審議を音読 全国44カ所 市民が再現」

東京新聞=記事2本
・1面トップ「読むと赤面『共謀罪』答弁 『コッカイオンドク!』全国一斉実施」
・社会面(9面)「『なんとしても廃案に』 『共謀罪』反対集会 渋谷」

◎6月13日(火)
【朝刊】
朝日新聞=記事4本
・1面「『共謀罪』週内に成立方針 自公、会期内目指す」
・4面「『加計』封じ 駆け足審議 『共謀罪』巡り政府・与党 会期内成立を優先」
・社会面(35面)問う「共謀罪」「『監視』の先 弾圧懸念 横浜事件ゆかりの人」/「法案反対署名 153万筆」

毎日新聞=記事2本
・5面「『共謀罪』会期末控え攻防 参院法務委 委員長職権で開催」
・社会面(29面)「共謀罪」私はこう思う・賛成「刑法改正での対応が筋」弁護士 加藤久氏(74)※消極的賛成

▼読売新聞=記事1本
・2面「委員長職権できょう一般質疑 テロ準備罪 参院審議」

産経新聞=記事1本
・5面「法相問責決議案 提出へ 民進、テロ準備罪採決で」

東京新聞=記事4本
・2面「『強行採決で空気変わった』 『共謀罪』反対 153万4500筆に 市民団体が追加提出」/「『共謀罪』法案きょう審議へ 参院委、職権で決定」/「法案の英訳応じず 国連報告者ケナタッチ氏要望」
・特報面(24〜25面)「監視社会慣れ 本当にいいの? 防犯カメラ 街中も電車内も 市民も歓迎論 日常の風景に/個人の行動が丸裸 『共謀罪』成立で乱用リスク 他者への疑念助長 排除の温床に」

日経新聞 ※見当たらず


【夕刊】
朝日新聞
・1面「法相問責決議案 民進が午後提出 『共謀罪』採決の動きに対抗」

毎日新聞=記事1本
・1面「『共謀罪』採決巡り攻防 与野党 参院委 午後質疑」

▼読売新聞=記事1本
・1面トップ「テロ準備罪 採決巡り攻防 民進党 法相問責決議案 提出へ」

東京新聞=記事2本
・1面「『共謀罪』午後採決の構え 参院委 審議20時間で与党」
・2面「『共謀罪、冤罪の懸念』『テロ対策に不可欠』 参院委、有識者3人質疑」

日経新聞=記事1本
・3面「『共謀罪』採決で駆け引き 参院法務委」

◎6月14日(水)
【朝刊】
朝日新聞=記事4本、質疑詳報
・1面「『共謀罪』採決強行の方針 自公、あすの参院委で」
・2面「『共謀罪』疑問解消せず 参院審議 あいまい答弁続く」
・5面・焦点採録 参院 法務委「犯罪集団と共に疑われるのが『周辺者』 『共謀罪』巡り政府答弁」表・参考人質疑での主な意見 ※質疑詳報
・第2社会面(30面)問う「共謀罪」「パロディー文化 萎縮懸念 著作権法『販売前の介入可能』」/「あきらめない」※法案反対の市民集

毎日新聞=記事4本
・1面トップ「『共謀罪』週内成立へ 参院委 与党あす採決」
・5面「野党『加計』も絡め抗戦 法相、地方創生相 問責案提出 『共謀罪』審議」
・第2社会面(26面)「『テロ防止 条約の目的に含まず』 『共謀罪』巡る政府説明否定 国連『立法ガイド』執筆・米大教授」/「『審議不足 廃案を』 『共謀罪』反対集会に5200人」

▼読売新聞=記事3本
・1面トップ「テロ準備罪 会期末へ攻防 野党 2閣僚問責案 提出 与党 小幅延長も」
・2面「『加計』追及へ徹底抗戦 内閣不信任案も視野 野党4党」/『時間切れ』狙い/戦略練る与党
・4面「捜査権限『拡大しない』 金田法相『監視社会』に反論 テロ準備罪」

産経新聞=記事5本、質問・回答2本、発言要旨1本
・1面トップ「日弁連幹部と類似 テロ準備罪批判 偏重か 国連特別報告者 ケナタッチ書簡 中立・公平性 疑問も」
・3面「『嘘』まき散らす国連報告者 ずさん調査『沖縄に行ってない』 ケイ氏、反米基地運動にも言及」/「政府、反発強める」/「テロ準備罪 16日にも成立 民共は法相問責決議案 提出」
・5面「民進『下手すぎる』国会戦術 テロ準備罪の質疑 法相問責で参会 自民『国会延長 短く済む』」/「海渡弁護士『ケナタッチ氏へ事前に助言せず』」質問状(要旨)/海渡氏からの回答/「日本はジャーナリストの結束がない」国連特別報告者 ケイ氏発言要旨

東京新聞=記事8本、質疑詳報
・1面トップ「共謀罪」国会論戦チェック「『歯止め』答弁 次々変わる 一般人対象→処罰あり得る 計画段階での役割特定→不要」
・3面「民共 法相問責案を提出 与党あす参院委採決目指す 『共謀罪』法案」/「強行採決、絶対許すな 日比谷野音で5200人集会」
・7面「『共謀罪』法案 参考人の発言要旨 参院法務委/人権に配慮、抑制的 福田充・日本大危機管理学部教授/監視データに規制なし 山下幸夫弁護士/『行為主義』ないがしろ 村井敏邦・一橋大名誉教授」/論戦のポイント※質疑詳報
・特報面(24、25面)「国会って何だ 不誠実な審議=国民への侮辱 『共謀罪』答弁ドタバタ■加計問題ウヤムヤ/丁寧に『理屈』尽くす場 『一強の緩みそのもの』 首相自ら議論ケイ氏」
・社会面(27面)トップ「背中いっぱい『共謀罪反対』 ネットに投稿、反響呼ぶ ラーメン『なんつッ亭』経営者『皆が関心を持って』」

日経新聞=記事1本
・4面「法相の問責決議案提出 民進と共産『共謀罪』で抵抗」

■6月12日〜6月14日の掲載記事数(朝刊のみ)と5月30日からの累計
朝日新聞:記事8本、質疑詳報1本 累計・記事34本、質疑詳報4本、社説1本
毎日新聞:記事6本 累計・記事22本、質疑詳報3本
・読売新聞:記事4本 累計・記事14本
産経新聞:記事6本 累計・記事15本
東京新聞:記事12本、質疑詳報1本 累計・記事55本、質疑詳報5本
日経新聞:記事1本 累計・記事12本

「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(3) 6月7―11日

 「『共謀罪』法案 在京紙の報道の記録(2)」の続きです。
▽6月7日(水)
 朝日新聞毎日新聞は朝刊の社会面にそれぞれ「問う『共謀罪』」(朝日)、「『共謀罪』私はこう思う」(毎日)のタイトルのコーナーを設けて、様々な分野の人たちの意見を断続的に紹介してきています。この日も朝日は国際政治学者 三浦瑠麗さん、毎日は企業法務に詳しい弁護士の意見を掲載しました。東京新聞は反対運動や集会をこまめに取材して紹介しています。一方の読売新聞、産経新聞は、国会の動き。一般紙5紙のそれぞれの特徴がよく分かる朝刊でした。

◎6月7日(水)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・4面「『共謀罪』審議 会期末へ攻防 小幅延長か 焦点」
・第3社会面(29面)問う「共謀罪」学問の世界から「安全と自由の両立、議論足りない」国際政治学者 三浦瑠璃さん(36)

毎日新聞=記事2本
・2面「『共謀罪』与党に強硬論 野党 内閣不信任案を検討 参院法務委」
・社会面(27面)「共謀罪」私はこう思う・反対「企業活動の停滞 懸念」弁護士 山中真人氏(43)

▼読売新聞=記事1本
・4面「会期末へ 民進徹底抗戦 参院法務委 委員長解任決議案」

産経新聞=記事1本
・5面「民進、テロ準備罪遅延戦術 参院法務委員長 解任決議案提出」

東京新聞=記事5本
・1面「『共謀罪』広がる音読 『国会審議は不条理』 再現劇 6・11全国一斉開催」/「反対署名144万人」
・3面「審議日程が窮屈に 『共謀罪』法案 『加計』問題 与党、延長に慎重」
・6面「『日本は国連から心配される国に』 『共謀罪』反対集会」
・特報面(24・25面)「強硬あおるネット世論 『内政干渉だ』擁護する声 国連特別報告 政府が猛反発 重なる『リットン調査団』対応/書き込み 実は少数派 『炎上』参加わずか1% 目立つ『1人が何度も』 国内と世界 視点の溝 深まる」

日経新聞=記事2本
・4面「国会 大幅延長見送り 加計問題、早期幕引き図る 政府・与党方針 受動喫煙法案の成立断念」/「内閣不信任案を検討 野党、週内にも党首会談」


【夕刊】
朝日新聞=記事1本
・2面「委員長の解任決議案を否決 参院本会議『共謀罪』審議巡り」

毎日新聞=記事1本
・1面「法務委員長解任案 否決 『共謀罪』与党審議急ぐ 参院本会議」

▼読売新聞=記事1本
・3面「法務委員長の解任案を否決」

東京新聞=記事1本
・1面「法務委員長解任案 否決 参院

日経新聞=記事1本
・3面「参院法務委員長 解任案を否決 『共謀罪』の審議再開へ」

▽6月8日(木)
 朝日新聞の夕刊の文化面に、「共謀罪」法が成立した後の近未来を描いた演劇の紹介記事が載りました。主見出しは「『共謀罪』の怖さ 笑いで描く」。東京新聞は社会面に、映画の専門誌「キネマ旬報」が戦前の治安維持法の特集を組む、との記事を載せています。「多様な意見や情報を紹介しているか」という命題は、政治だけではなく文化の面の報道でも存在するように感じます。

◎6月8日(木)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・4面「『共謀罪』きょう審議再開 参院 委員長解任案を否決」
・第2社会面:問う「共謀罪」学問の世界から「空気読まない者に疑いの目が向かう」文学者 小澤俊夫さん(87)

毎日新聞=記事1本
・5面「会期小幅延長へ 与党『共謀罪』法案成立期す」

▼読売新聞 ※見当たらず

産経新聞=記事2本
・1面「国会会期延長 不可避 テロ準備罪優先 与党、1〜2週間」
・5面「与野党攻防 最終章へ 自民 刑法改正案成立を重視 民進 審議遅延戦術ちぐはぐ」

東京新聞=記事1本、社説
・2面「『共謀罪』きょう審議再開 参院 廃案へ野党党首会談」
・社説「『共謀罪』と条約 政府の説明は崩れた」

日経新聞=記事1本
・4面「党首討論 初のゼロ 政治主導へ改革遠く 通常国会、野党が予算委優先」/「民進などの野党 きょう党首会談 内閣不信任案など協議」


【夕刊】
朝日新聞=記事3本
・1面「加計巡り内閣不信任検討 野党4党『共謀罪』の審議再開」
・3面(文化)「『共謀罪』の怖さ 笑いで描く 劇団チャリT企画が新作」
・社会面(15面)問う「共謀罪」・「疑問4コマで迫る 横浜の漫画家 SNS拡散」

毎日新聞=記事1本
・8面(総合面)「内閣不信任案の提出視野に協力 野党4党首一致」

▼読売新聞=記事1本
・3面「4野党が党首会談 内閣不信任も視野」

東京新聞=記事2本
・2面「『共謀罪』廃案へ連携 4野党党首『内閣不信任案も視野』」
・社会面(9面)トップ「『共謀罪』に危機感反映 治安維持法キネマ旬報』が特集 学問の自由を弾圧 思想犯として摘発 『黒沢監督ら先人の思い今こそ』」

日経新聞=記事1本
・1面「政府・与党、会期小幅延長へ 内閣不信任案検討 野党4党首が一致」

▽6月9日(金)
 朝日、毎日、東京の3紙が、そろって国会の質疑の詳報を掲載しました。質疑の詳報は、その作業を担当する記者が必要になりますし、紙面上も大きな紙幅を割きます。そうしてでも、読者に伝える必要がある、意味があると新聞社が判断しています。対して、読売新聞は政府見解のみ、産経新聞は記事自体が見当たりません(見落としの可能性はありますが)。この日も新聞の「2極化」がよく表れた各紙紙面だったと感じます。

◎6月9日(金)
【朝刊】
朝日新聞=記事5本、質疑詳報
・3面「『共謀罪』条文あいまい 『2人以上で計画した者』処罰対象 説明変転 『準備行為』何が該当 審理不足」/「国連報告者の懸念『追って対応』」
・4面「国会会期末へ 攻防激化 『共謀罪』対向の構え 野党4党、内閣不信任案を検討」/焦点採録参院法務委員会「労組への配慮規定 あえて置かず 刑事局長」※質疑詳報
・第2社会面(30面)問う「共謀罪」学問の世界から「時間切れの多数決 やっちゃいけない」教育評論家 尾木直樹さん(70)/「国内外の142団体 法案に反対表明 平和問題NGOら」

毎日新聞=記事2本、質疑詳報
・2面「『共謀罪参院委審議再開 民進・共産 攻勢強める」
・25面(第3社会面)「共謀罪」私はこう思う・反対「監視社会 さらに加速」元北海道警釧路方面本部長 原田宏二氏(79)/「『共謀罪』廃案を環境団体ら声明 14カ国142団体賛同」/参院委『共謀罪』法案 論戦ポイント ※質疑詳報

▼読売新聞=記事1本
・3面「『継続的な結合体』に適用 政府見解 参院法務委で審議再開 テロ準備罪」

産経新聞 ※見当たらず

東京新聞=記事4本、質疑詳報
・2面「周辺社も処罰対象 法相見解 一般人と協会曖昧 『共謀罪』」/「法案英訳 国連報告者に未提供 外務大臣『追って対応』」
・6面:参院法務委 論戦のポイント ※質疑詳報
・特報面(24、25面)「80年前 信念が罪に 末永敏事 『思想犯』にされた医師 拙者は反戦主義 治安維持法下の犠牲 『普通の市民』一変/痛恨の過去学ばぬ政府 拡大解釈の捜査横行『共謀罪』でも懸念 『維持法は適法』法相発言に反発も」
・第2社会面(26面)「『市民運動萎縮する』 『共謀罪』に反対声明 NGO4団体」

日経新聞 ※見当たらず

【夕刊】 ※見当たらず

▽6月10日(土)
 各紙とも天皇退位の特例法成立で大展開の朝刊でした。その中で「共謀罪」関係では、国連特別報告者のケナタッチ氏が日弁連のシンポにスカイプで参加したことを朝日、毎日、東京の3紙のほか、産経新聞もごく短く報じました。東京新聞は見出しが丁寧です。

◎6月10日(土)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・第3社会面(37面)問う・「共謀罪」学問の世界から「科学者の思想 裁かれた歴史も」宇宙物理学者 池内了さん(72)/「『共謀罪』法案は『非常に危険』 国連報告者、シンポで警鐘」

毎日新聞=記事1本
・第3社会面(28面)「警察の監視活動 監督必要と提言 共謀罪国連報告者」

▼読売新聞=記事1本
・4面「参院委 テロ準備罪 自民来週採決提案」

産経新聞=記事1本
・第3社会面(24面)「国連報告者『政府は質問答えるべきだ』」※短信

東京新聞=記事2本
・2面「『共謀罪』で自民 来週の採決提案」
・社会面(27面)「『共謀罪』プライバシー保障措置を 国連特別報告者ケナタッチ氏 日弁連シンポ 電話参加」

日経新聞 ※見当たらず

 10日付朝刊は重要なニュースが多い紙面でした。その中で、各紙がどのニュースを、どんな見出しで、どんな優先順位で伝えたか、各紙それぞれの1面掲載の記事の見出しを書きとめておきます。

◎6月10日付朝刊
朝日新聞
1「象徴天皇 初の退位へ/来年12月か19年3月軸/特例法が成立」
2「加計文書 職員の報告放置/当初の調査後『省内に保管』/文科省再調査」
3「英与党 過半数割れ/総選挙 メイ首相は続投を表明」

毎日新聞
1「陛下退位 実現へ/特例法が成立/皇太子さま 来年末にも即位」
2「英総選挙 与党過半数割れ/メイ首相続投へ」
3「内閣府は行わず/加計文書 文科省再調査へ」

▼読売新聞
1「元号選定 本格化/天皇退位特例法 成立」
2「英保守党 過半数割れ/総選挙 EU離脱 影響必至」
3「柔道・卓球混合など追加/全339種目が決定/東京五輪
4「加計文書 再調査結果 会期中に」

日経新聞
1「英総選挙、与党が敗北/EU強行離脱に影/メイ首相、続投表明」
2「天皇退位時期 2案軸/18年2月末 19年4月1日/来年通常国会後に判断」
3「WD、日米連合入り協議/東芝と再会談、なお平行線」※WD=ウエスタンデジタル社

産経新聞
1「譲位 200年ぶり 上皇/特例法成立 今夏に皇室会議天皇誕生日 2月23日」
2「英与党 過半数割れ/総選挙 メイ首相続投表明」
3「柔道混合団体など新種目/東京五輪 バスケ3人制、卓球混複も」
4「領収書改竄 指示認める/除染費不正 安藤ハザマ社長謝罪」

東京新聞
1「天皇陛下 上皇に/退位 来年末にも/特例法 成立」
2「文科省『加計再調査』、内閣府は『行わず』/認定前 今治市と再三協議/獣医学部新設で特区担当」
3「英与党 過半数割れ/総選挙 メイ首相 続投に意欲」


▽6月11日(日)
 新聞各紙とも日曜日の朝刊には読書面を設け、新刊書の書評や話題の本の紹介記事を載せています。地方紙も含めて、多くの新聞に共通しています。朝日新聞はこの日、読書面でも「共謀罪」の特集記事を掲載。京都大の高山佳奈子教授が「共謀罪」法案を批判する立場から何冊かの本を紹介しました。

◎6月11日(日)
【朝刊】
朝日新聞=記事3本
・1面「辺野古も『共謀罪』もNO」※国会周辺の辺野古移設・「共謀罪」反対集会・写真
・読書面(11面)ひもとく「共謀罪京都大学教授(刑法)高山佳奈子「監視拡大 民主主義の危機」/テロとは無関係/背景に米の圧力
・第2社会面・問う「共謀罪」学問の世界から「政府の狙いは隣人を密告するマインド」哲学者 内田樹さん(66)※学者たちに聞くシリーズは終わり

毎日新聞=記事1本
・2面「政府、国連と溝 特別報告者見解 相次ぎ反論 『共謀罪』、秘密保護法 日韓合意見直し」

▼読売新聞=記事1本
・4面「会期延長幅 悩める自民 『加計』問題 批判集中を懸念 与野党攻防 最終盤へ」

産経新聞 ※見当たらず

東京新聞=記事1本
・1面・声 国会前「『共謀罪』廃案へ訴え」※国会周辺の辺野古移設・「共謀罪」反対集会、写真も

日経新聞 ※見当たらず

■6月7日〜6月11日の掲載記事数(朝刊のみ)と5月30日からの累計

朝日新聞:記事14本、質疑詳報1本 累計・記事26本、質疑詳報3本、社説1本

毎日新聞:記事7本、質疑詳報1本 累計・記事16本、質疑詳報3本

・読売新聞:記事4本 累計・記事10本

産経新聞:記事4本 累計・記事8本

東京新聞:記事13本、質疑詳報1本 累計・記事43本、質疑詳報4本

日経新聞:記事3本 累計・記事11本

「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(2) 6月4―6日

 以前の記事「『共謀罪』法案 在京紙の報道の記録(1)」の続きです。
 ▽週明け6月5日の月曜日、東京新聞は1面トップで、国際組織犯罪防止条約TOC条約)を巡って各国が立法作業をする際の指針とする国連の「立法ガイド」を執筆した刑事司法学者ニコス・パッサス氏のインタビューを掲載しました。日本政府はTOC締結のため「共謀罪」が必要と主張していますが、パッサス氏は「条約はテロ防止を目的としたものではない」と明言。また「テロは対象から除外されている」「非民主的な国では、政府への抗議活動を犯罪とみなす場合がある。だからイデオロギーに由来する犯罪は除外された」とも述べています。これは重要な指摘だと思います。自民党石破茂氏はかつて、特定秘密保護法案に対する国会周辺でのデモ活動を指して「単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらないように思われます」とブログに書きました(その後、撤回)。沖縄・辺野古では、政府への抗議活動が物理的に抑圧され、微罪で長期にわたって身柄が拘束される事態が起きました。

 ▽6日から朝日新聞が朝刊社会面で「問う『共謀罪』」の新しいシリーズを始めました。さまざまな専門分野の学者に受け止め方を聞く、としています。6日は「それでも日本人は『戦争』を選んだ」の著者、歴者学者の加藤陽子さん。国連特別報告者のナカタチ氏に日本政府が反発していることを、戦前の満州事変と国際連盟リットン調査団になぞらえ、「共通するのは『偽りの夢』と、国民の『人気』」と指摘しています。
 あまり大きなニュースにはなっていませんが、安倍晋三内閣と国連の確執・反目はほかにもあります。5月27日に安倍首相がグテレス国連事務総長と懇談した際のこととして、事務総長が慰安婦問題の日韓合意への「賛意」を示したと日本政府は発表しました。しかし、事務総長は翌日、これを否定。韓国政府の問い合わせにはグテレス氏は「(懇談では)いかなる特定の合意も指していない」と回答したと報じられています(4日の共同通信出稿記事)。何をやろうとも内閣支持率が高止まりしたままの国内状況に、安倍首相はさぞや万能感に包まれているのではないでしょうか。その感覚が国連に対しても向けられているのだとすれば、極めて危ういと感じます。

 ▽毎日新聞夕刊の特集ワイドは、いつも読みごたえがあります。6日の夕刊では「共謀罪」を取り上げました。記事の中で、通算36年を捜査部門の第一線で過ごした元兵庫県警刑事の飛松五男さんは「政府は次に、盗聴法(通信傍受法)の改正に着手するでしょう。電話やメールの盗聴をより広範囲に、合法的にするためです」と指摘。さらには「新しい法律ができたら、息が詰まるような監視社会の始まりです。警察はいったん法律が通ったら、それに向かってまい進する。冤罪がどんどん出ますよ」と断言しています。盗聴の拡大は、かつての共謀罪法案が3回目の廃案になった当時から指摘されていたことです。電子メールをはじめ、私信の検閲容認の流れに進むことも想定できます。憲法が保障する通信の秘密、検閲の禁止は有名無実化するのではないでしょうか。

◎6月4日(日)
【朝刊】※見当たらず

◎6月5日(月)
【朝刊】
朝日新聞 ※見当たらず

毎日新聞 ※見当たらず

▼読売新聞=記事1本
・4面「与党 法案審議急ぐ テロ準備罪、性犯罪厳罰化 18日の会期末にらみ」

産経新聞=記事1本
・4面「守る与党 攻める野党 党首討論 めど立たず 国会最終盤」※「テロ等準備罪」に言及

東京新聞=記事3本
・1面トップ「『条約 テロ防止目的でない』 『共謀罪』崩れる政府根拠 国連の立法指針執筆 ニコス・パッサス氏 『新法導入の正当化に利用してはならない』」/「国際組織犯罪防止条約TOC条約)」※用語説明
・3面「金銭目的の国際的犯罪が対象 現行法対応可能なら新法不要 組織犯罪防止条約 指針執筆 パッサス氏一問一答」

日経新聞=記事1本
・2面「終盤国会 攻防激しく 『加計』『共謀罪』野党が追及 与党、成立法案見極めへ」

【夕刊】※見当たらず

◎6月6日(火)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・第2社会面:問う「共謀罪」学問の世界から「怒りの抗議 重なるリットン調査団歴史学者 加藤陽子さん(56)/「国際ペン 反対声明」

毎日新聞=記事1本
・第3社会面「国際ペン、『共謀罪』法案に反対声明」※短信

▼読売新聞=記事2本
・4面「テロ準備罪法案 きょう6時間質疑 参院法務委」
・第3社会面「国際ペン会長が反対声明」※短信

産経新聞 ※見当たらず

東京新聞=記事2本
・1面「世界の作家も『共謀罪』NO 国際ペン『表現の自由侵害』」
・2面「きょう審議、職権で決定」※短信

日経新聞=記事1本
・4面「民進きょうにも解任決議案提出 参院法務委員長巡り」

【夕刊】
朝日新聞=記事1本
・2面「委員長の解任案提出 民進、参院共謀罪』審議」

毎日新聞=記事2本
・1面「委員長解任決議案 民進提出 『共謀罪』審議8日以降 参院法務委」
・2面:特集ワイド「改めて問う『共謀罪』 成立させていいのか 『次は通信傍受拡大』 揺らぐ憲法理念」

▼読売新聞=記事1本
・1面「委員長解任決議案を提出 民進 テロ準備罪審議で反発 参院法務委」

東京新聞=記事1本
・1面「委員長解任案を提出 参院法務委『共謀罪』審議 民進」

日経新聞=記事1本
・3面「参院法務委員長 解任案 『共謀罪』めぐり民進提出」


■6月4日〜6月6日の掲載記事数(朝刊のみ)と5月30日からの累計

朝日新聞:記事2本 累計・記事12本、質疑詳報2本、社説1本

毎日新聞:記事1本 累計・記事9本、質疑詳報2本

・読売新聞:記事3本 累計・記事6本

産経新聞:記事1本 累計・記事4本

東京新聞:記事5本 累計・記事30本、質疑詳報3本

日経新聞:記事2本 累計・記事8本

「労働情報」6月号に「共謀罪」報道2極化のリポート寄稿

 かつての「共謀罪」と本質的には変わりがない「テロ等準備罪」(政府呼称)を新設する組織犯罪処罰法改正案の新聞の報道ぶりについて、労働問題専門誌に拙稿を掲載していただきました。「協同センター・労働情報」が発行する月刊の「労働情報」6月号(958号)です。
 編集部の知人の打診を受けてテーマを相談し、「共謀罪」法案の新聞報道の現況をまとめました。見開き2ページ、タイトルは「二極化した『共謀罪』報道」です。東京発行の新聞6紙について、「共謀罪」法案と安倍晋三政権に批判的な朝日新聞毎日新聞東京新聞と、法案にも政権にも理解を示す読売新聞、産経新聞との二極化を軸にしたリポートです。これまで、このブログで書いてきた内容を下敷きにしています。締め切りの関係で、5月のゴールデンウイーク明けの時点までの情勢を元に書きました。「共謀罪」法案は労働組合運動とも無縁ではなく、国会での政府答弁を聞いても、その危険性への危惧は消えないように思います。

 「労働情報」は、ことしに入って編集部の知人の勧めで購読するようになりました。「労働」をキーワードに、戦いの最前線の方々や支援する法律家、研究者ら専門家の方々のリポートが読みごたえがあります。
 「労働組合」とは働く者が団結する権利を具現化したものであり、交渉権、行動権の基にもなります。「労働組合」それ自体が権利であり、権利は権利として正しく行使しなければ、やがてはそれを手にしていることもできなくなります。正しく行使することの中には、いまだその権利を手にできていない人たちが権利を手にできるよう、既に団結している者が支援していくことも含まれるというのが、わたし自身、かつて労働組合運動に身を置いて体験的に学び取ったことの一つです。いくら企業内組合であるといっても、正社員だけの組合が、いつまでたっても正社員だけの利益や権利の保護のためにしか動かないのであれば、いずれその「団結」は危うくなるでしょう。
 「労働情報」が紹介しているのは、まさに権利を権利として行使し、戦っている現場からの報告であり、そのまま今の社会の問題点と課題を映し出してもいます。あらためて労働運動とは社会運動なのだと感じます。


 「労働情報」のホームページは以下です。
 http://www.rodojoho.org/
 定期購読のほか、特定の号単独でも購入できるそうです。

「共謀罪」法案 在京紙の報道の記録(1) 5月30日―6月3日

 かつての「共謀罪」と本質的には変わりがない「テロ等準備罪」(政府呼称)を新設する組織犯罪処罰法改正法案の参院での審議が5月29日に始まりました。東京発行の新聞各紙ではかねてより、この「共謀罪」法案に反対ないし批判的な朝日、毎日、東京の3紙と、賛成ないし支持の読売、産経とに二極化しています。紙面の上でも、朝日、毎日、東京は見出しに「共謀罪」を使うのに対し、読売と産経は政府呼称の「テロ等準備罪」を使うなど、法案と政権に対するスタンスの差を反映した大きな違いがあります。以前の記事(「『共謀罪』報道、朝日、毎日、読売各紙の記事量に開き」=2017年5月22日)でも触れましたが、論調の違いから来るもう一つの大きな差異が報道の量です。政権支持の新聞の報道量は、批判的な新聞に比べて少ないのが特徴です。特定秘密保護法や安全保障法制、沖縄の基地集中の問題でも同じことが言えます。違いの理由もはっきりしています。政権支持、法案支持の新聞は、法案への批判意見をめったに載せないからです。
 以上のことをあらためて検証してみる意味で、参院での「共謀罪」法案の審議中に、新聞各紙がどれだけの報道をしたか、記事の主な見出しを書きとめてみようと思います。
 期間は5月30日付朝刊からとしました。対象の新聞は、朝日、毎日、読売、産経、東京が中心です。日経新聞は経済専門紙の色彩が強く、5紙とは同列には比べられないと思うのですが、記録します。各紙とも東京本社発行の最終版です。産経新聞は東京本社では夕刊の発行がありません。
 分類としては、記事、社説、質疑詳報の3種にします。質疑詳報とは、国会でのやり取りを質問と答えとを並べて一問一答形式にした記事です。専従する記者が必要で紙面上もスペースが必要になります。質疑詳報が載るということは、それだけその新聞がその問題の報道に力を入れていることを示しています。
 記事の本数を比較する際には、条件をそろえるため、朝刊だけを対象にします。記事本数の数え方は人によって差異があるかと思います。あくまでも、大まかな目安としてとらえたいと思います。
 「共謀罪」を巡る記録の一つとして後々、なにがしかの意味を残せるかどうかの試みとの意味もあります。
 1週間分程度をまとめてアップする予定です。今回は5月30日付朝刊から、6月3日付朝刊までです。

◎5月30日(火)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本、質疑詳報、社説
・1面「『共謀罪参院論戦開始」
・4面「必要性 議論は平行線 首相また国連報告者非難」/焦点採録参院本会議「任意捜査『計画疑われ、準備行為の蓋然性高ければ』金田法相」※質疑詳報
・社説「『共謀罪』審議 国内外の懸念に応えよ」

毎日新聞=記事3本、質疑詳報
・2面「首相『テロ対策』強調 参院審議入り 野党強く反対 『共謀罪』」
・社会面(27面)トップ「『国連』書簡巡り応酬 首相『一方的な見解』 野党『敵視通用せぬ』」/「共謀罪」私はこう思う・反対「違法な証拠収集の恐れ」弁護士 上柳敏郎氏(60)=「ムスリム違法捜査弁護団」副団長/「共謀罪参院本会議質疑 要旨※質疑詳報

▼読売新聞=記事1本
・2面「テロ準備罪 参院で攻防開始」

産経新聞=記事2本
・2面「テロ準備罪 参院審議入り」
・5面「虎の威を借る民進 ケナタッチ書簡 前川前次官証言 幹部『内閣支持率なぜ下がらない。不思議で…』」

東京新聞=記事11本、質疑詳報
・1面トップ「『共謀罪』嫌疑なら捜査 人権・環境団体 対象認める 参院審議入り 法相『当局が判断』」/「歴史の審判に堪えられるのか」瀬口晴義・社会部長
・3面「合意の判断 根拠不明 『共謀』→『計画』に言い換え 『いいね』『既読スルー』も対象の恐れ」・「共謀罪」3つの「限定」を考える(上)/「政府と国連 公表内容に差 政府 日韓合意で『事務総長が賛意』」/「『バランス欠く』首相が強く批判 国連報告者書簡」
・6面:「共謀罪」審議入り 参院本会議質疑の詳報 ※質疑詳報
・7面:「共謀罪参院審議入り[取材班の目]6人=法務省・警察・外務省・首相・与党・野党

日経新聞=記事1本
・4面「『共謀罪』法案参院審議入り 『一般人』の定義 最大の焦点」


【夕刊】
毎日新聞=記事1本
・1面「『共謀罪』実質審議入り」

東京新聞=記事2本
・2面「『共謀罪』本格審議入り 参院委 首相『テロ資金絶つ』」/「政府参考人の常時出席決定 野党は反発」

日経新聞=記事1本
・3面「『共謀罪』実質審議入り 参院委 首相『五輪控え必要』」

◎5月31日(水)
【朝刊】
朝日新聞=記事5本、質疑詳報
・3面「『共謀罪』適用範囲で応酬 オウム真理教は?基地抗議行動は? 参院委」
・4面:焦点採録参院法務委員会「『共謀罪』2名は『団体に当たらぬ』金田法相」※質疑詳報/「刑事局長の出席 与党と維新決定」
・5面(全ページ)「『共謀罪』何が問題? 『共謀罪』法案とはどんな法律か 今のままでは不十分なのか 一般の人への影響は 普通の会社や労働組合、市民団体でも『組織的犯罪集団』とされてしまう可能性はあるのか 『組織的犯罪集団』かどうかを警察はどのように調べるのか」/「改正案、準備段階で取り締まり」/大型表・対象の法律と277罪
・社会面(39面)トップ「国連報告者 どんな人? 『共謀罪』書簡に政府ピリピリ 反論を閣議決定/人権状況を調査/『無視できない』」

毎日新聞=記事3本、質疑詳報
・第3社会面(25面)「共謀罪参院法務委質疑(要旨)※質疑詳報
・社会面(27面)トップ「『共謀罪』議論堂々巡り テロ対策有効性は/捜査機関の乱用懸念 参院審議」/「熟議へ時間確保 不透明」/「国連報告者書簡 『誤解』と答弁書 政府」

▼読売新聞=記事1本
・4面「『基地抗議の団体 対象外』 首相 テロ準備罪、論戦本格化 参院法務委」

産経新聞=記事1本
・5面「テロ準備罪 審議入り 首相、加計問題『恣意的だ』 参院法務委」

東京新聞=記事4本、質疑詳報
・2面「テロ情報 事前取得不明 『共謀罪』根拠の条約締結後 参院法務委 答弁に詰まる外務審議官」/「『共謀罪』懸念指摘は批判/拉致問題担当者には叙勲 報告者対応『二重基準』の声」/「一般人処罰 見え隠れ 『団体』→『組織的犯罪集団』に」・「共謀罪」3つの「限定」を考える(中)
・6面:論戦のポイント ※質疑詳報
・社会面(27面)「『共謀罪』自由奪わせない」声・国会前

日経新聞=記事1本
・4面「『オウム一変時期分からず』 首相『共謀罪』適用対象巡り 実質審議入り」


【夕刊】
▼読売新聞=記事1本
・3面「『独立した専門家』 国連側改めて強調 特別報告者巡り」

◎6月1日(木)
【朝刊】
朝日新聞=記事1本
・第2社会面(30面)「審議を吟味 音読広がる 臨場感あふれる再現 苦笑いとため息」・問う「共謀罪

東京新聞=記事3本
・2面「『心の中』も捜査対象 『準備行為』線引きあいまい」・「共謀罪」3つの「限定」を考える(下)/「心の底から『共謀罪反対』」声・日比谷
・24、25面(特報面)「イスラム教徒監視 米国で違憲判決 『共謀罪国際人権規約違反の恐れ 米法学者 レペタ氏に聞く 裁判所の歯止め 日本では機能せず 国連の指摘より深刻 市民をターゲット 警察の業務を逸脱」

日経新聞=記事3本
・4面「政府と国連すれ違い 続く応酬、溝は深く 秘密保護法/『共謀罪』…」/「国連特別報告者」※用語説明/「主観色濃く反映 冷静な対応必要 明石康・元国連事務次長の話」


【夕刊】
東京新聞=記事1本
2面「国際条約締結に『共謀罪は不要』 参院参考人3人中2人」

◎6月2日(金)
【朝刊】
朝日新聞=記事2本
・7面「条約に必要?歯止め利く? 『共謀罪参院委 専門家も二分 『一般人』再度焦点」/「『不安広げるための議論』首相、国会審議を批判」

毎日新聞=記事2本
・第3社会面(25面)「『共謀罪』審議 参考人賛否割れ」/「共謀罪参院参考人発言要旨・西村幸三弁護士、新倉修・青山学院大名誉教授、松宮孝明立命館大法科大学院教授

▼読売新聞=記事1本
・4面「組織的犯罪集団の『周辺者』も処罰対象 テロ準備罪」

産経新聞 ※見当たらず

東京新聞=記事7本、質疑詳報
・1面「『共謀罪 監視が日常に』 元CIAスノーデン氏警鐘」※共同電
・2面・核心「『方でなく人の支配』 『人権侵害 疑義残る』 賛成の識者『テロ防止に役立つ』 参考人 乱用を懸念」・「共謀罪」国会論戦チェック/「維新修正案を参考人が非難」/「監視システム 日米共有 元CIAスノーデン氏一問一答」※共同電
・6面「『共謀罪』法案 参考人の発言要旨 参院法務委」「謙抑的、処罰範囲狭めた」西村幸三弁護士/「刑法原則ひっくり返す」新倉修・青山学院大名誉教授/「戦後最悪の治安立法」松宮孝明立命館大法科大学院教授/論戦のポイント

日経新聞=記事1本
・4面「『共謀罪』一般人巡り論戦 参院委」※短信


【夕刊】 ※見当たらず

◎6月3日(土)
【朝刊】※見当たらず


■5月30日〜6月3日の掲載記事数(朝刊のみ)
朝日新聞:記事10本、質疑詳報2本、社説1本
毎日新聞:記事8本、質疑詳報2本
・読売新聞:記事3本
産経新聞:記事3本
東京新聞:記事25本、質疑詳報3本
日経新聞:記事6本

25年前の検察庁ペンキ事件―特捜検察の威信とマスメディア

 東京・霞が関検察庁庁舎で、「検察庁」と刻まれた石の看板にペンキがかけられたと報じられています。
 ※47news=共同通信「『検察庁』石看板にペンキ/器物損壊容疑で60代男逮捕」:2017年5月27日
  https://this.kiji.is/241165609937387529

 警視庁丸の内署は27日、東京地検などが入る中央合同庁舎6号館(東京都千代田区霞が関)の入り口にある「検察庁」と書かれた石看板に、赤いペンキをかけたとして器物損壊容疑で、60代の男を現行犯逮捕した。男は「私がやりました」と容疑を認めている。
 丸の内署によると、27日午後0時40分ごろ、男が石看板にペンキを垂らしている様子を、防犯カメラのモニターで守衛が確認。男を5人で取り押さえて110番し、駆け付けた署員に引き渡した。同署が動機などを調べている。

 「検察庁にペンキ」で思い出したのは、25年前の1992年に東京地検特捜部が捜査を手掛けた東京佐川急便事件です。
 東京佐川急便オーナー経営者らによる巨額の特別背任事件の捜査を経て、当時「政界のドン」「キングメーカー」と呼ばれていた金丸信自民党副総裁が、オーナー経営者から5億円もの闇献金を受けていた疑いが浮上しました。東京地検特捜部は92年8月、金丸氏に出頭を要請しますが、金丸氏は代理人を通じて5億円の受け取りと政治資金規正法違反の容疑を認める上申書を提出して、出頭には応じませんでした。政治資金の無届けは当時、最高刑が罰金20万円で、禁固刑や懲役刑の罰則がなく、特捜部は逮捕も事情聴取もしないまま9月に略式起訴し、金丸氏側が罰金20万円を支払って捜査は終結してしまいました。
 この結末に対して世論の批判は検察に向かい、表札にペンキがかけられました。私の記憶では、このときのペンキは黄色でした。「検察は正義を行っているのかあ」と叫びながら近づいた男性が瓶入りのペンキを投げつけ、その場で警備員に取り押さえられたと報じられました。男性は公判で、巨悪の摘発を特捜部に期待していたのに裏切られて腹が立った、という趣旨の供述をしました。検察への批判は、翌93年3月に特捜部が、ひそかに金丸氏周辺の内偵を進めていた東京国税局との合同捜査で金丸氏の巨額脱税を暴き、逮捕するまで続きました。おおむね以上のように記憶しています。
 この金丸氏の逮捕によって検察は面目を施し、以後、仙台市長や茨木茨城県知事を逮捕するゼネコン汚職捜査へと進みました。一時的に地に墜ちていた威信もその以前と同じように取り戻し、特捜検察は「正義の味方」であるかのように、マスメディアももてはやす状況が続いていきました。実は、マスメディアの「権力の監視」はそうした特捜検察にも向けられていなければならなかったはずですが、そうした報道はほとんど目にすることがありませんでした。そして2010年、大阪地検特捜部の検事が証拠に不正に手を加えていたことが発覚しました。証拠改ざん・隠ぺい事件です。結果的に特捜検察は驕るだけ驕ってしまい、結果を出せば何でも許されると思ったのか、証拠に手を加える検事が出てくるまでに堕落してしまいました。それは一面では、マスメディアが特捜検察を極限まで増長させてしまったことの帰結でもあったのだと、私は考えています。
 東京佐川急便事件の捜査が行われていた当時、私は30代前半の社会部記者で、司法担当としてこの事件を取材していました。今振り返ると、この事件はいわゆる「55年体制」の崩壊へとつながる大きな出来事だったのですが、当時の私と言えば取材に追われる日々を生き抜くのがやっとでした。目の前に見えていたのは、すごく狭い光景でした。それでも、と言うべきか、だからこそ、かもしれませんが、特捜検察を増長させたマスメディアの当事者性から私も逃れえないと考えています。

 以下は、2011年に特捜検察腐敗とメディアについて書いたこのブログの記事です。よろしければご覧ください。

※「メディア総研が『提言・検察とメディア』公表〜検察問題にマスメディアは当事者性がある」2011年2月13日
 http://d.hatena.ne.jp/news-worker/20110213/1297540628

 「検察庁にペンキ」と聞いて、以上のようなことを思いました。さて、今回のペンキは赤だそうです。容疑者は何を思ってのことでしょうか。

※参考
・ウイキペディア 金丸信
・ウイキペディア 東京佐川急便事件
・ウイキペディア 大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件


【追記】2017年5月28日12時45分
 「25年前の『検察庁にペンキ』―特捜検察の威信とマスメディア」から改題しました。