「公約貫く重い判断」(沖縄タイムス)、「遺志を実行に移したことを評価」(琉球新報)~辺野古埋め立て承認撤回の報道の記録

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設計画に対して沖縄県は8月31日、日米両政府が移設先として合意している沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認を撤回しました。8月8日に死去した翁長雄志前知事が承認撤回の方針を明言していました。日本政府は辺野古地区への新基地建設の法的根拠を失い、建設工事はただちに中断することになりました。いずれ、日本政府は撤回の執行停止などを裁判所に申し立てる方針と報じられており、9月30日投開票の県知事選とともに、推移を注視していきたいと思います。
 この沖縄県の埋め立て承認撤回について、沖縄の地元紙である沖縄タイムス、琉球新報がどう受け止めているか、9月1日付の両紙の社説の一部を引用します。両紙とも撤回を評価し、日本政府に対して辺野古への新基地建設を断念するよう求めています。

※沖縄タイムス:社説「[『辺野古』承認撤回]工事強行の瑕疵明白だ」
 http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/307645

 翁長氏が撤回表明してから1カ月余り。翁長氏の公約を貫く重い判断である。
 (中略)
 撤回によって工事は法的根拠を失い、即時中断した。
 ただ、国は対抗措置として撤回の取り消しを求める訴訟や撤回の効力の一時停止を求める申し立てなどを取る方針だ。再び法廷闘争に入るとみられる。
 県と国の対立がここまで深まったのはなぜか。
 ずさんな生活・自然環境の保全策。選挙で示された沖縄の民意無視。「辺野古が唯一の解決策」と言いながら、果たされぬ説明責任…。県外から機動隊を導入するなど強行姿勢一辺倒の安倍政権のやり方が招いた結果である。
 安倍政権は県が撤回せざるを得なかったことを謙虚に受け止めるべきだ。
 小野寺五典防衛相は「法的措置を取る」と明言しているが、裁判に訴えるのではなく、県の撤回を尊重し、工事を断念すべきである。

※琉球新報:社説「県が辺野古承認撤回 法的対抗措置やめ断念を」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-794750.html

 政府が工事中断に伴う損害賠償の可能性をちらつかせる中で、謝花喜一郎、富川盛武両副知事ら県首脳が故・翁長雄志知事の遺志を実行に移したことを評価したい。
 (中略)
 県民の間に強い反対がある中で新基地建設を強行するのは政府に対する不信感を増幅させるだけだ。沖縄に矛先を向けるのではなく、米国政府と真正面から向き合って、県内移設を伴わない普天間飛行場の返還を提起すべきだ。
 承認撤回を受け、政府は法的対抗措置を取ることを明らかにした。国、県の対立がまたしても法廷に持ち込まれる。
 強い者にへつらい、弱い者に強権を振りかざす。今の日本政府は時代劇でお目にかかる「悪代官」のように映る。
 政府首脳はこれまでの対応を省みて恥ずべき点がなかったのか、胸に手を当ててよく考えてほしい。対抗措置をやめ、新基地建設を断念することこそ取るべき選択だ。

 また、埋め立て承認撤回を東京発行の新聞各紙が9月1日付朝刊でどのように報じたか、扱いや主な見出しを書きとめておきます。
 1面トップで扱ったのは毎日新聞と東京新聞でした。両紙とも総合面のほか社会面にも記事を掲載しています。ともに以前からこの問題では日本政府・安倍晋三政権の方針に批判的な論調です。
 朝日、読売、産経の各紙も1面です。毎日、東京と同じく安倍政権に批判的な朝日は、写真や地図、図表もなく、見た目に地味だと感じました。安倍政権の方針支持が明確な読売、産経と比べても控え目な扱いが目立つように思います。日経新聞は1面の掲載はなく、総合面の扱いでした。

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▼朝日新聞
1面準トップ「辺野古埋め立て承認撤回/沖縄県 国、法的対抗措置の方針」
2面・時時刻刻「辺野古 知事選控え神経戦」「オール沖縄勢力 移設反対の機運に弾み/「政権 悪影響懸念 工事再開に慎重」「民意示す手段 市民模索/県民投票や条例 現状変える一歩」写真、図表
社説「辺野古工事 全ての自治体の問題だ」

▼毎日新聞
1面トップ「県 辺野古承認を撤回/埋め立て 翁長氏方針通り/政府 法的措置へ」写真、地図
3面・クローズアップ「知事選にらみ日程攻防/オール沖縄歓迎」「工事延期 政府、渡りに船」図表
社会面「県、翁長氏の遺志継ぐ/『国に勝てぬ』冷めた声も」写真

▼読売新聞
1面・中「辺野古承認 県が撤回/工事中断 国、法的措置で対抗へ」地図
2面「辺野古撤回 知事選を意識/政府、移設問題過熱を懸念」写真、図表

▼日経新聞
4面「辺野古埋め立て承認撤回/県『翁長氏 強い意志』/移設工事中断 政府は対抗措置へ」/「米軍普天間基地の辺野古移設」※用語説明

▼産経新聞
1面準トップ「沖縄県、辺野古承認を撤回/政府は法的措置で対抗」図表、地図
2面「辺野古撤回 隠せぬ政治性/沖縄知事選 県側、玉城氏に期待」
社説(「主張」)「辺野古埋め立て 知事選目当ての『撤回』だ」

▼東京新聞
1面トップ「沖縄県が承認撤回/辺野古埋め立て中断/知事選控え国と対決/防衛省は法的対抗措置へ」
3面「知事選争点 新基地際立つ/玉城氏『強く尊重』」
社会面トップ「沖縄だけの問題じゃない/沖縄 翁長氏の遺志継ぐ」(琉球新報)「首都圏・市民団体 『移設強行は自治破壊』」

 このブログで繰り返し触れているように、沖縄の基地集中は日本の安全保障政策の問題であって、沖縄一地域の問題ではありません。日本全体の問題です。そして、地域の民意は反対が明らかなのに、それが無視されて国家的政策が強行されていくようなことがほかの地域では起こっていないのだとしたら、辺野古の工事強行は沖縄に対する差別としか言いようがありません。
 沖縄の基地集中の問題は、沖縄県外、日本本土に住む日本国の主権者がどう考えるかによって変わりうるだろうと思います。そのためにはまず、沖縄で何が起こっているかが沖縄県外、日本本土でも広く知られなければなりません。その意味で、日本本土のマスメディアが何をどう伝えるかには大きな意味があります。9月30日の沖縄県知事選へ、さまざまな動きが続くと思われます。日本本土での報道も注視しています。