基地建設の強行「沖縄以外でできるか」~翁長知事が埋め立て承認の撤回を表明

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画を巡り、沖縄県の翁長雄志知事が7月27日、前知事が出した沿岸部の埋め立て承認を撤回する手続きに入ることを表明しました。現地では埋め立て予定海面を囲う護岸工事が進み、安倍晋三政権は8月17日以降に埋め立ての土砂を投入する予定とされます。さかのぼって承認を取り消す手続きについては、既に最高裁で翁長知事側の敗訴が確定しています。今度は、承認後の日本政府の工事の進め方などに問題があるとして、承認を撤回して埋め立てを認めない、という手続きになります。普天間飛行場の沖縄県内移設阻止を公約にする翁長知事にとって、埋め立て承認の撤回は最後の手段とされますが、安倍政権が執行停止を裁判所に申し立てる方針とみられ、再び日本政府と沖縄県が法廷で争うことになります。
 28日付の東京発行新聞各紙の朝刊で、この翁長知事の方針表明のニュースは二つの意味で扱いが分かれました。一つは重要度の判断です。朝日新聞は1面トップ、つまり朝刊の最重要ニュースの扱いです。毎日新聞、読売新聞、東京新聞も1面で報じましたが、日経新聞は4面(総合面)、産経新聞は3面(総合面)でした。ちなみに、読売新聞が1面の中で、プロ野球巨人の山口俊投手のノーヒットノーラン達成の次に順位づけていることが目を引きました。
 もう一つは翁長知事の方針への評価です。社説で取り上げたのは朝日、毎日、読売、産経の4紙。それぞれ見出し(後掲)からもうかがえるように、朝日、毎日は政府の強硬姿勢に批判的なのに対し、読売、産経は翁長知事に批判的です。沖縄の基地集中の問題で以前からある「二極化」そのままと言っていいと思います。
 沖縄県外、日本本土に住む人たちから見れば、埋め立て承認の取り消しを巡っては一度決着しているのに、また同じような手続きが始まることは分かりにくいだろうと思います。また、本当に埋め立てを止めることができるか、翁長知事側の勝算は乏しいとの指摘もあるようです。翁長知事が埋め立て承認を撤回しても、最終的には司法が国の主張を認め、結果は変わらないだろうと考えるなら、埋め立て承認撤回は大したニュースではない、ということになるかもしれません。しかし、わたしはそうは思いません。
 このブログでも繰り返し書いてきたように、沖縄の基地集中の問題は、沖縄に固有の問題ではなく、日本全体の安全保障の問題です。基地の過剰な集中の解消を求める沖縄の民意は、例えば翁長氏の知事選勝利一つとっても明らかです。それなのに、地元の反対を押し切り工事が強行される―。国家的な大規模事業で、沖縄以外にそのようなことが行われている例があるでしょうか。現在、沖縄で進んでいることが沖縄差別と呼ぶほかないのだとしたら、突き詰めればその責任は日本国の主権者にあるのだと思います。差別解消のためには、まず沖縄で何が起きているかが広く知られなければなりません。本土マスメディアは繰り返し、丁寧に報じるべきだと思います。
 28日付の琉球新報の社説に以下のような指摘がありました。 

 そもそも国土の0・6%にすぎない沖縄県に全国の米軍専用施設面積の約70%が集中していることが問題の根本だ。基地の過重負担を強いながら、基地縮小を求める県民大多数の民意を無視し、貴重な自然を破壊する工事を強行する。このようなことが沖縄以外でできるだろうか。 

※琉球新報:社説「埋め立て撤回表明 新基地建設断念求める」
 https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-770334.html 

 朝日新聞は28日付朝刊に那覇総局長の署名記事を載せています。その中にも、日本政府の沖縄に対する強硬な措置をいくつも挙げて「沖縄以外で同じ状況が考えられるだろうか」と問いかける一文があります。沖縄県外の日本本土に住む人たちは「自分の周りで同じことが起きたらどうだろうか」と自問するべきなのだと思います。想像力が必要な作業かもしれません。そのためにまず必要なのは、何が起きているかを知り、その歴史的な経緯を知ることだと思います。

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 以下は東京発行各紙の28日付朝刊の主な記事と見出しの備忘です。

▼朝日新聞
・1面トップ「辺野古承認撤回 来月に/翁長知事 防衛局から聴聞へ/国、執行停止申し立て方針」
・2面・時時刻刻「撤回 翁長氏の切り札」「『私の責任。勇気振り絞る』/辺野古 土砂投入迫り表明」「政権は強気 知事選へ着々」
・2面・視点「悲痛な叫び 政府はもっと真摯に」伊東聖・那覇総局長
・37面(第3社会面)「辺野古『傍若無人な工事』/翁長知事 再び法廷闘争へ/支持者 複雑な思い」
・社説「辺野古工事 目にあまる政府の背信」

▼毎日新聞
・1面「辺野古工事 一時停止へ/沖縄知事が証人撤回」/「考え方変わらぬ 官房長官」
・3面・クローズアップ「『最終カード』で対抗/翁長知事 迫られた決断」「知事選へ急ぐ両陣営/移設反対派 出馬を切望/自民党 一本化模索」
・社会面「沖縄知事『傍若無人だ』/辺野古承認撤回 困惑する県民も」
・社説「辺野古埋め立て工事 知事選を待った方がよい」

▼読売新聞
・1面「辺野古工事一時停止へ/政府は推進 影響 限定的か/知事『承認撤回』」
・3面・スキャナー「翁長氏 窮余の策/知事選へ求心力狙う」/「工事中断 政府は冷静/土砂投入へ作業粛々」
・社説「辺野古移設問題 承認撤回は政治利用が過ぎる」

▼日経新聞
・4面「国は対抗措置の構え/翁長知事 移設阻止へ残ったカード/辺野古埋め立て 承認撤回へ」

▼産経新聞
・3面「辺野古埋め立て承認撤回/沖縄知事表明『新基地つくらせぬ』」/「知事選へ『最後のカード』」
・社説(「主張」)「辺野古埋め立て 知事は『承認撤回』中止を」

▼東京新聞
・1面「平和潮流に『取り残される』/翁長知事、辺野古埋め立て承認撤回」
・2面・核心「翁長知事『最後のカード』/迫る土砂投入 政府の法的対抗も必至/11月知事選にらみ徹底抗戦」
・6面・知事会見要旨

 

 琉球新報のサイトには、7月27日の翁長知事の会見での発言全文がアップされています。 

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-769882.html

 会見冒頭の発言の一部を引用して書きとめておきます。

 東アジアにおきましては南北首脳会談、あるいはまた米朝首脳会談のあとも、今月上旬には米国務長官が訪朝をし、24日にはトランプ大統領が北朝鮮のミサイル施設解体を歓迎するコメントを発するなど朝鮮半島の非核化と緊張緩和に向けた米朝の努力は続けられています。 このような中、20年以上も前に決定された辺野古新基地建設を見直すこともなく強引に押し進めようとする政府の姿勢は、到底容認できるものではありません。私としては平和を求める大きな流れからも取り残されているのではないかと危惧していることを申し上げた上で発表事項に入らせていただきます。