懸念はあっても希望を失わない~米朝首脳会談、在京紙の報道の記録

 史上初めての米朝首脳会談となるトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の会談が6月12日、シンガポールで行われ、両首脳が共同文書に署名しました。日本人拉致問題にも直接、影響することもあって、日本のマスメディアも大きく報じています。東京発行の新聞6紙(朝日、毎日、読売、日経、産経、東京)はいずれも13日付朝刊で1面、総合面、国際面、オピニオン(社説や識者の論評)、社会面を通じて大量の記事を掲載しました。会談と共同文書については、北朝鮮の核開発を巡って米国が掲げていた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」が明記されなかったことから、従来の域を超えるものではなく、北朝鮮が本当に完全な非核化を達成するのか、トランプ大統領は譲歩し過ぎではないか、といった厳しい指摘が米メディアでも紹介されているようです。在京各紙の紙面も、全体としても、また個々の各紙としても、会談の歴史的意義に対する評価と、北朝鮮の非核化に対する懸念とが二分というよりも、懸念が評価を上回っている印象を持ちました。
 ここでは、在京各紙の1面の記事の見出しと総合面の見開きの見出し、編集責任者や外信部長らの署名評論と社説の見出しを書きとめておきます。

 わたし自身は、会談と合意文書の意義について、これまでの北朝鮮の核問題の経緯に鑑みれば懸念はもっともと思いつつ、それを上回って、これからの朝鮮半島と北東アジア情勢に希望を見出し得る、希望を失わずにすむと受け止めています。北朝鮮がミサイル発射を繰り返したあげく、6回目の核実験を行ったのは昨年9月3日のことでした。安倍晋三首相が少子化社会とともに北朝鮮の核問題を「国難」と呼んで危機をあおり立てて衆院を解散したのは同月28日です。年が明ければ、米軍が北朝鮮の攻撃に踏み切る可能性がある、といった報道すらありました。あれからわずか1年もたたずに、当面は戦争の危機が去ったと実感できるようになりました。今後も紆余曲折はあるのでしょうが、平和を永続させるために、日本を含めて国際社会が英知を集める時だと思います。
 敬意とともに思い起こされるのは、韓国の文在寅大統領の朝鮮半島の平和への強い思いです。日本で「国難」が叫ばれるような緊張状態の高まりの中でも、「朝鮮半島で二度と戦争は起こさせない」と言い続けていました。文氏への韓国の人たちの支持がある限り、北朝鮮の非核化と永続する平和への希望は失われることはないと思います。平和であればこそ、様々な懸案も解決を期待できます。 

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【朝日新聞】
1面本記「正恩氏『非核化』を約束/期限・具体策に触れず/トランプ氏『体制保証』/朝鮮戦争終結盛らず/米朝共同声明」
1面「米『拉致問題を提起』」
2・3面見出し「非核化 あいまい合意/異端の2人 成果強調」
2面「自賛の合意 軽率な譲歩に不安」坂尻信義・国際報道部長
社説「初の米朝首脳会談 非核化への重大な責任」過去の教訓に学べ/人権問題の監視を/日本、積極関与の時

【毎日新聞】
1面本記「北朝鮮『完全非核化』約束/共同声明 具体策盛らず/米、体制を保証/史上初 首脳会談」/「トランプ氏『拉致提起』」
1面「ここから先が長い」澤田克己・外信部長
2・3面見出し「米朝 会談を最優先/日本 安保なお不安」
社説「史上初の米朝首脳会談 後戻りさせない転換点に」非核化の担保が不十分/トランプ流の危うさ

【読売新聞】
1面本記「米朝『非核化』確認/初の首脳会談 共同声明/具体策は示さず/北の体制保証/トランプ氏 日本人拉致提起」
1面「首相 正恩氏と会談意欲」
2・3面見出し「非核化 課題多く/北の姿勢 見極め」
2面「正念場はここから」広瀬英治・国際部長
社説「米朝首脳会談 北の核放棄実現へ交渉続けよ 『和平』ムード先行を警戒したい」合意は具体性に欠ける/圧力の維持が必要だ/日朝会談の環境整備を

【日経新聞】
1面本記「米朝『完全非核化』確認/体制保証を約束/時期や検証 先送り/共同声明/朝鮮戦争終結 盛らず」
1面「『拉致を提起』トランプ氏」
1面「半島の激変に備えを」内山清行・チーフエディター
2・3面見出し「非核化 時間稼ぎ懸念/米朝 敵対解消を演出」
社説「米朝が真に新たな歴史を刻むには」北の完全な核放棄促せ/拉致解決は日朝首脳で

【産経新聞】
1面本記「北、検証なき半島非核化/米は体制保証表明/米朝会談 共同声明/米韓演習中止 首脳相互訪問 ミサイル実験場破壊」/「日米韓外相が会談へ」
1面「背中に手…主導権争い」
1面「トランプ氏 拉致提起/首相『北と直接向き合う』」
1面「それでもショーは続く」乾正人・執行役員東京編集局長
2・3面見出し「制裁圧力なお切り札/朝鮮戦争終結に言及」
社説(「主張」)「米朝首脳会談 不完全な合意を危惧する 真の核放棄につながるのか」/「前のめり」は戒めたい/拉致めぐる情報生かせ

【東京新聞】
1面本記「北、完全非核化署名/具体策示されず 米『体制保証』/初の首脳会談 共同声明/トランプ氏『拉致問題提起』」
1面「拙速だった『歴史的会談』」久留信一・外報部長
2・3面見出し「『拉致』正恩氏の反応不明/不完全な完全非核化」
社説「米朝首脳会談 非核化の意思を現実に」対立から対話への転換/今後の見通しは不透明/日本も首脳会談目指せ

※追記 2018年6月16日7時40分
 当初、サブタイトルを打ち間違え、「日朝首脳会談」となっていました。「米朝首脳会談」に訂正しましたが、フェイスブックへのリンクなどでは「日朝」のまま表示されてしまうようです。