「緊急事態宣言下での市民の『知る権利』を守るために」「『新型コロナ』を理由にした批評の封殺に抗議する」 新聞労連が声明

 新聞労連(日本新聞労働組合連合)が4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して2件の声明を発表しました。新インフルエンザ特措法に基づく緊急事態宣言が発せられている中で、いずれも「知る権利」と「表現の自由」、あるいは「報道の自由」の観点から重要な内容だと感じます。

 ※新聞労連トップ http://shimbunroren.or.jp/

 緊急事態宣言下での市民の「知る権利」を守るために

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍晋三首相は7日に「緊急事態宣言」を出す考えを表明しました。報道機関として、市民への正確な情報提供と、強い権限を持つ政府や自治体が適切に権限を行使しているかの監視が重要になる一方で、取材を行う記者の安全確保も喫緊の課題です。収束時期が見通せないなか、それらを両立し、市民の「知る権利」に資する持続可能な報道の体制づくりが急務です。政府などの公的機関や報道機関に以下の対策を早急に進めるよう求めます。

記者会見などの「質疑権」と「安全性」の両立
●感染拡大の状況やその対策について、記者が質疑を行う記者会見の重要性が増す一方、会見場の安全性が十分に確保されていない状況があります。特に取材拠点の一つである厚生労働省では、1月の国内初の感染確認以降、密集した空間のなかでの記者会見が続けられています。防衛省の対応を参考に、各省庁において、それぞれが十分な間隔を空けて取材ができる広めの会議室や講堂に会見場を早急に移設すべきだと考えます。

●安全性を確保するため、政治家などが10分以上の「冒頭発言」を行う場合には、あらかじめ「冒頭発言」と「質疑」を分離して実施し、記者会見の主である「質疑」の時間を十分に確保するよう求めます。

●ネット会議システムなどを活用し、会見場に集まらなくても質疑に参加できるオンライン上の記者会見・ブリーフの導入を求めます。安全性を確保するとともに、学校の休校なども相次ぎ、通常の出勤が困難な記者も増えるなか、多様な角度からの質疑・検証を行ううえで必要なためです。

●今回の事態はさまざまな分野と関連しており、多様な角度からの質疑が保障されるべきです。記者登録制を導入し、「大本営発表」一色に染まった戦前の報道の過ちを繰り返さないためにも、質疑権の確保は重要です。報道機関側は、公権力側から「記者の人数制限」を要請された場合には慎重な対応が必要です。

●庁舎内への報道関係者の入庁制限には反対します。その一方で、万が一の備えとして、報道機関側は自前の取材拠点を確保すべきと考えます。永田町・霞ケ関周辺で、300人収容の会見場がある「日本記者クラブ」の活用も含めて対応を検討することを求めます。

公文書等による説明責任の強化など
●政府は3月10日、新型コロナウイルス感染症への対応について、行政文書管理ガイドラインに定めのある「歴史的緊急事態」に該当すると閣議了解で決定しています。政府内の会議について、会議録の作成と早急な公開を求めます。特に従来、報道機関に公開されていた会議については、オンライン化するか、音声データを報道機関に即時公開するよう求めます。また、報道機関側も、従来の密着型の取材の継続が難しくなるなか、公権力の「説明責任の強化」を業界あげて具体的に求める必要があります。

●緊急事態宣言が発令されると、NHKが「指定公共団体」として、新型コロナウイルス対策に関して首相や都道府県知事の指示を受ける対象になります。報道機関への過度な介入は危険です。また、新型コロナウイルスへの対応を理由に、批判的な言説を封じるような公権力の動きがあります。過度な報道自粛要請には連帯して抗議しましょう。

2020年4月7日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南  彰 

 

「新型コロナ」を理由にした批評の封殺に抗議する

 愛媛県の中村時広知事が3月27日の記者会見で、県のPR施策を批評する愛媛新聞の記事に対し、「タイミングというものがあると思う。いま県としても(新型)コロナ対策に集中している最中でありまして、いまこのタイミングで出ると問い合わせなどが県の方に来ますので対応しなければならない。そういった影響を是非お考えいただきたい」と発言しました。

  中村知事の発言は、批判記事の掲載を牽制するものです。新型コロナウイルスの感染拡大という、いわば「緊急事態」を理由にして、あらゆる批判や言論を封じ込めようとする発言であり、看過することはできません。言論の自由、報道の自由に対する侵害であり、抗議します。

  中村知事が会見で取り上げたのは、愛媛新聞が3月26日付朝刊から3回連載で掲載していた「再考 まじめえひめ 識者に聞く自治体PR」です。この連載は、「介護・看護時間の長さ全国1位」や「彼氏がいない独身女性の多さ」などのデータを示して「愛媛県民はまじめ!」とくくる動画を配信した愛媛県のPRプロジェクト「まじめえひめ」の問題点を指摘したものです。問題点を認めぬまま、3月末に配信を停止する県の施策を再考するもので、時宜にかなったまっとうな論評です。中村知事の主張する論理がまかり通れば、「新型コロナウイルス対策をしているから、森友学園への国有地売却に関する公文書の改ざん問題や、桜を見る会の問題についても、政府を追及するな」ということにもつながります。

 「危機」にあっても、公権力の信頼性や歪みをチェックし、指摘することは報道機関の大切な役割です。特に「まじめえひめ」のプロジェクトで問題になった「歪んだ女性像の押しつけ」や介護の美徳化は、危機対応のときにこそ、ひずみが生じやすく、公権力が注意すべきテーマです。

  「新型コロナ」を理由に、3月28日の安倍晋三首相の記者会見で質問を求める際に声を上げることが規制されましたが、「危機」を理由にした過度な規制は危険です。為政者に強く自省を求めるとともに、報道の現場が萎縮せず、国民・市民に正確な情報を届ける報道機関としての役割を果たせる環境をつくるよう、新聞労連としても努力していく考えです。

 2020年4月7日 
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長 南  彰