備忘のメモを兼ねて書きとめておきます。
TBS系列で11月30日(土)に放映された報道特集の「兵庫県知事選“斎藤現象”を考える」を、インターネト上の見逃し配信サービスTVerで見ました。事の発端から、兵庫県知事選を経て斎藤元彦知事が再選され、それから2週間以上たった今日も、兵庫県の一連の出来事と混乱の本質は「公益通報者の保護」であることがよく分かる内容です。視聴を奨めます。
元県民局長が3月に告発文書を配布したことに対し、斎藤知事の指示で県は作成者を探し出し、公益通報保護の調査が継続していたにもかかわらず、懲戒処分を出しました。告発を受けた張本人である斎藤知事が、告発の内容を「嘘八百」とまで批判し、自らの人事権を行使して処分をしました。この一事を持っても、これでは公益通報そのものが成り立たなくなります。
県知事選でも、この点は焦点の一つのはずでした。しかし、選挙戦期間に入ってマスメディアの報道が控えめになった一方で、「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表が、斎藤知事を当選させるためとして立候補。街頭演説は、斎藤知事の前か後かに、同じ場所に立花代表が登場していました。
こうした経過を、番組はていねいに追っています。特に、「チーム斎藤」というLINEグループの管理者が連日、どんな情報を拡散するかを具体的に指示していたこと、中には立花代表の動向の紹介もあったことなど、斎藤陣営のSNSによる選挙戦を、グループの参加者がスマホの画面を指しながら詳細に証言しているシーンが印象に残ります。拡散を支持した動画の一つに、わたしも見覚えのあるものがありました。一見しただけでデマとしか言いようのない内容で、この内容を信じてしまう人がいるのかと暗然とした気分になったことを覚えています。
新聞やテレビは報道を抑制している中で、リアルの選挙戦では斎藤知事と立花代表があたかも二人がセットであるかのような街頭演説が連日、繰り返されました。その様子も含めて、SNSでは「#さいとう元知事がんばれ」が拡散されていく。その中で公益通報者保護の論点はかき消されていた様子がよく分かりました。
深刻なのは、選挙から2週間以上たった今も、問題は混迷の度を深めていることです。立花代表は元県民局長のプライバシーにかかわる情報を拡散しています。公用パソコンの中にあったデータとの主張ですが、データには不自然な点も指摘されています。兵庫県当局内の情報の取り扱いの適否という問題もあるのに、斎藤知事は事実関係の調査に積極的なようには見えません。公益通報者としての元県民局長は、今も貶められ続けています。そのことがよく分かる番組でした。
「NHKから国民を守る党」を巡る民事訴訟で東京地裁は先週、立花代表が犯罪行為や不法行為を繰り返してきたなどとして、「反社会的カルト集団」との評に対して賠償責任は認めない判断を示しています。
昨12月2日には、知事選を巡ってmerchu社の折田楓代表に報酬を支払ったのは公選法違反の疑いがあるとして、上脇博之神戸学院大教授と郷原信郎弁護士が、斎藤知事と折田氏に対する告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に宛てて発送したことを明らかにしています。
兵庫県の公益通報者保護を巡る問題は何も終わっていませんし、知事選そのものにも多角的な検証が必要です。インターネットを巡る論点では、地域性はあまり意味がありません。兵庫県だけの問題ではなく、全国どこでも起こりうる問題とも思えます。新聞やテレビの組織ジャーナリズムの役割はこれからだろうと思います。
報道特集の兵庫県知事選の特集はTVerで12月8日(日)正午まで見られます。
https://tver.jp/episodes/epdri2bfdm