労働委員会が「支配介入」の可能性を指摘〜大阪市の政治・組合活動アンケート

 ひとつ前のエントリーで取り上げた大阪市の職員に対する政治活動・組合活動アンケートで新しい動きがありました。市労働組合連合会から救済申し立てを受けている大阪府労働委員会は22日、不当労働行為に当たるかどうか判断を下すまでの間、アンケートを中断するよう勧告しました。質問の一部が、不当な支配介入に当たる可能性を指摘しています。民事訴訟になぞらえるなら、本格的な審理に入る前に仮処分が出た、というところでしょうか。
 アンケートは、市特別顧問の弁護士で中央大法科大学院教授の野村修也氏が既に「凍結」を表明しており、府労委の今回の勧告は実態として何ら影響はなく、また法的拘束力もありません。しかし、アンケートを府労委が厳しく見ているのは確実で、大阪の新聞各紙も朝日、毎日、読売の3紙が23日付朝刊にそろって1面トップという大きな扱いでした。各紙の記事の主な見出しを書き留めておきます。

【朝日】
1面トップ:本記「『不当労働行為の恐れ』」「大阪市職員アンケで府労委」
社会面トップ:サイド「橋下流に『待った』」「府労委の勧告 市長なお強気」
社会面:識者談話(1)脇田滋龍谷大教授(労働法)「アンケ『不当』歴然」(2)愛敬浩二・名古屋大教授(憲法)「勧告 極めて妥当」

【毎日】
1面トップ:本記「府労委『不当行為の恐れ』」「職員調査 大阪市に中断勧告」
1面:「法に抵触しない 橋下市長」

【読売】
1面トップ:本記「大阪市調査に凍結勧告」「府労委『支配介入の恐れ』」
1面:識者談話・浦部法穂・神戸大名誉教授(憲法
社会面トップ:サイド「職員調査 危うい手法」「『信頼関係崩す』指摘も」

【産経】
1面:本記「府労委が中止勧告」「大阪市の職員アンケート」
1面:「橋下市長『法には抵触せず』」

【日経】
社会面:本記「府労委が一時停止勧告」「政治活動巡る大阪市職員調査」

 アンケートに回答するよう業務命令を発していた橋下徹大阪市長は、勧告に対してコメントを求められた際、何も問題はないとの見解をあらためて表明したと、各紙は伝えています。報道されている言動から判断すると、橋下市長は職員組合を政敵ととらえているようにも思えます。やはり橋下氏の憲法観は知りたいところです。
 読売の識者談話、浦部法穂・神戸大名誉教授の記事には見出しがありませんが、内容は、勧告は当然とし「大衆の支持を根拠に、違法なことも押し切ろうとする市長の手法は法治国家の根幹を揺るがすものだ」と指摘しています。浦部氏を含めて、わたしが確認している限り、各紙の識者談話記事でアンケートを是認する立場の識者はこれまで登場していません。取材・報道の実務から言えば、通常は多様な意見を紹介するために賛否両論、あるいは「是」「非」双方の識者を人選し取材します。アンケートを支持する識者談話が掲載されない憲法や労働法制の専門家から見れば、このアンケートが違法・不当であることは明らかということなのでしょう。

【追記】2月24日午前7時30分
 一晩たって読み返し、見出しの引用をはじめ誤りが多々あったので修正しました。