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記者がオスプレイに搭乗する理由、しない理由〜読者に向き合う沖縄の新聞

 米海兵隊沖縄県普天間飛行場配備する予定の垂直離着陸輸送機オスプレイへの体験搭乗が9月27日、山口県岩国基地で行われました。防衛省が同機の安全性を強調するために企画したもので、沖縄、山口、広島各県の自治体関係者を招待しましたが、応じたのは山口、広島両県の3市町の関係者だけで、首長はいなかったと報じられています。
 体験飛行にはこのほか国会議員らとともに新聞、通信、放送のマスメディアの記者も参加しました。その中で、沖縄の新聞2社は沖縄タイムスが不参加、琉球新報は参加と分かれました。ただ、両者とも不参加、参加を決めたそれぞれの理由を紙面で示しています。
 沖縄タイムスは21日付の紙面に掲載。搭乗してもオスプレイが安全かどうかは判断できない一方で、「記者が搭乗することによって、県民に同機が安全だという根拠のない情報を発信する恐れがある」としました。沖縄タイムスのサイトにはこの記事はアップされていないのですが、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が紹介しています。
 ※「しんぶん赤旗」の9月26日の記事 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-26/2012092615_01_1.html
 琉球新報は28日付の紙面の3面(総合面)に5段で間山栄恵記者の搭乗ルポを掲載。その下に1段の囲み記事「本紙記者搭乗について」を載せています。この記事もサイトにはアップされていないようですが、手元の紙面によると、これまでも米国で2度、琉球新報記者がオスプレイに体験搭乗して飛行状態を報告しているとした上で「一般県民が搭乗することができない中で、体験搭乗は米軍の担当者らに疑問をぶつけ、安全性についての検証ができる機会であり、参加は報道機関の務めであると考えました」としています。
 体験搭乗の機会を設定した防衛省・米軍側の意図は明確で、オスプレイに向けられている「欠陥機」との疑いを真っ向から否定する立場です。そうした体験搭乗にマスメディアは参加すべきなのか、不参加とすべきなのか、それ自体はどちらが正しいと明確に言い切れるものではないと思います。だからこそ、なぜ参加するのか、あるいは参加しないのか、理由を読者に紙面で説明することの意味は小さくないと思います。とりわけ参加の場合は、搭乗ルポなどが紙面に掲載されます。どういう意図で書かれた記事なのかを、読者が判断する際の材料の一つになります。
 日本本土の新聞の中にも、記者が体験搭乗に参加しルポを紙面に載せた例がありますが、なぜ参加したのかの判断(参加しなかった判断も含めて)を開示した例は、わたしがチェックした限りでは見当たりませんでした。沖縄の新聞と本土の新聞の小さくない違いであるように感じています。

【追記】2012年10月2日0時5分
 副題を「読者に説明する沖縄の新聞」から「読者に向き合う沖縄の新聞」に改めました。